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1. 離婚時の財産分与とは
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2. 財産分与には請求期限や時効がある
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2-1. 請求期限は離婚成立から2年
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2-2. 受け取りは10年で時効が成立する
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2-3. 除斥期間と時効の違い
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3. 請求期限が過ぎても財産分与や金銭請求が可能なケース
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3-1. お互いが合意する場合
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3-2. 相手が財産を隠していた場合
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3-3. 共有物分割請求をする場合
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4. 離婚後に財産分与を請求する方法
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4-1. 直接請求する
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4-2. 財産分与請求調停を申し立てる
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5. 離婚後の財産分与をスムーズに進めるには
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6. 財産分与の期限や時効に関するよくある質問
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7. まとめ 財産分与の請求は期限を意識して早めの準備を
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1. 離婚時の財産分与とは
財産分与とは、離婚時に夫婦が築いた財産を原則2分の1ずつ分け合う制度です。対象は預貯金や不動産、株式、退職金、自動車など多岐にわたります。
名義は問われず、婚姻中に取得したものであれば、どちらの名義でも共有財産とみなされます。たとえば、専業主婦が家事や育児を担っていた場合でも、夫名義の財産の半分を請求できます。
一方で、結婚前からの財産や相続・贈与によって得た財産は「特有財産」とされ、分与の対象外です。婚姻とは無関係の借金も含まれません。財産分与は請求された側が一方的に拒否することはできません。
2. 財産分与には請求期限や時効がある
離婚後に財産分与を請求できる期間は限られており、過ぎると権利を失う場合があります。調停や審判で内容が確定した後も、請求には時効があるため注意が必要です。ここでは請求期限と時効の違いや基本的な仕組みを解説します。
2-1. 請求期限は離婚成立から2年
財産分与の請求には期限があり、離婚の成立から2年を過ぎると、請求は認められなくなります。
この「離婚後2年以内」の期間は、除斥期間と呼ばれ、過ぎると原則として請求できなくなります。時効と異なり、中断や延長はできません。
なお、現在はこの除斥期間は2年とされていますが、民法の改正により5年に延長される予定です。改正法の施行は2026年5月までとされており、それ以降に離婚が成立したケースでは、財産分与の請求期限は5年に延びる見込みです。
2-2. 受け取りは10年で時効が成立する
調停や審判、裁判で財産分与の金額が確定した場合、その権利は10年で時効が成立します。時効が成立しても自動的に権利がなくなるわけではありませんが、相手が「もう時効なので支払わない」と主張すると、権利は消滅します。
また、除斥期間とは異なり、時効は強制執行などの裁判手続や一部の支払いによって進行が止まる場合があります。
2-3. 除斥期間と時効の違い
財産分与は、離婚後2年(改正後は5年)という除斥期間内に調停や審判を申し立てる必要があります。調停や審判で内容が確定すると、その権利は10年間維持されます。
除斥期間は離婚成立の翌日から、時効は権利が確定した日の翌日から進行し、除斥期間には途中で止めたり延長したりする仕組みはありません。
3. 請求期限が過ぎても財産分与や金銭請求が可能なケース
離婚後に財産分与を請求できる期間を過ぎると、原則として権利は行使できません。ただし例外的に、相手の合意や隠された財産の発覚などで請求が認められる場合があります。ここではその具体的なケースを説明します。
3-1. お互いが合意する場合
離婚から2年(改正後は5年)の除斥期間が過ぎると、調停や審判で財産分与を請求することはできません。
それでも、元配偶者との任意の話し合いで合意が成立すれば、財産分与を実施することは可能です。ただし、相手に法的な支払い義務はないため、現実には合意を得るのは難しいケースが多いでしょう。
3-2. 相手が財産を隠していた場合
財産分与の請求ではなくても、不法行為に基づく損害賠償を求められる場合があります。
離婚から2年が経過していても、元配偶者が財産を隠した事実を知ってから3年以内であれば、その分も請求できる可能性があります。隠されていた財産の半分は本来、財産分与として受け取ることができたため、その金額を請求できる可能性があります。
請求を通すには、具体的な財産の特定と、元配偶者が意図的に隠していたことの立証が必要です。
3-3. 共有物分割請求をする場合
夫婦が共有で所有していた不動産は、共有物分割請求を行うことで、財産分与と同じ結果を得られる場合があります。私が担当した事例では、元配偶者と共有していた不動産があり、離婚時に不動産の分割(離婚後に誰が取得するのか)について決めないまま離婚後2年が経過してしまいました。
法律上は財産分与請求はできませんでしたが、共有物分割の調停を行い、最終的には元配偶者に代償金を支払ってその不動産を自分のものにする形で解決しました。
このように、財産分与の期限を過ぎても、夫婦で共有している不動産であれば、共有物分割請求を行うことで解決できる場合があります。なお、この共有物分割請求には時効はありません。
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4. 離婚後に財産分与を請求する方法
離婚後に財産分与を求める際は、元配偶者への直接請求から始めるのが一般的です。ただし時効が迫る場合は調停や審判を申し立てる必要があります。ここでは離婚後の請求を進める具体的な方法を解説します。
4-1. 直接請求する
離婚後の財産分与は、まず元配偶者に直接請求し、話し合いで解決するのが基本です。交渉がまとまれば、手続きの手間や費用を抑えることができます。
ただし、交渉中も除斥期間(原則2年)は止まらず進行するため、時間が限られている場合は注意が必要です。とくに期限まで3カ月を切っている場合は、話し合いを挟まずに調停や審判の申し立てを優先した方が確実です。
調停や審判には、申立書の作成や、預貯金通帳の写し・登記事項証明書などの準備が必要となるため、直前での対応は困難になるおそれがあります。また、元配偶者が拒否したり、協議に応じなかったりするケースも少なくありません。その場合は速やかに家庭裁判所の手続きに切り替えるか、弁護士に交渉を依頼しましょう。
4-2. 財産分与請求調停を申し立てる
元配偶者との話し合いでまとまらない場合は、元配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てます。
申立てには、申立書、離婚時の夫婦の戸籍謄本、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳の写しといった財産に関する資料が必要です。
申立書を提出してから1カ月〜2カ月ほどで調停が開かれるのが一般的です。調停では、夫婦が婚姻中に築いた財産の内容や、それぞれの貢献度について調停委員が双方から話を聞き、双方が合意できるよう調整します。合意に至らなかった場合は、自動的に審判に移行し、裁判官が提出された資料をもとに最終的な判断を下します。
5. 離婚後の財産分与をスムーズに進めるには
離婚後に財産分与を行う場合は、財産が使用されたり処分されたりする前に早めに動く必要があります。
別居後は相手の財産状況を把握しづらく、話し合いも進みにくくなるため、できれば離婚前の同居中に、預貯金や不動産の名義、退職金の有無などを把握しておくのが望ましいです。
財産分与に不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談し、進め方を確認しておきましょう。離婚後に進める場合でも、除斥期間の2年を過ぎると請求できなくなるため、少なくとも期限の半年前には準備を始めておきましょう。
6. 財産分与の期限や時効に関するよくある質問
財産分与の判断は、原則として別居した時点(離婚時)の財産を基準に行われます。離婚後に元配偶者が財産を処分しても、基準時の財産の半分を請求する権利は残ります。もし、相手に現金や資産が残っていない場合でも、調停や審判を経て給与を差し押さえるなどの方法で回収ができます。
財産分与の除斥期間は離婚が成立した日から始まります。正確には、離婚した翌日から2年間がカウントされます。別居期間が長くても、離婚前には除斥期間は進行しません。
財産分与の請求権は自分で放棄できますが、離婚後に元配偶者が財産を隠していたことが判明した場合は例外があります。「隠されていた財産の存在を知っていたら放棄しなかった」と判断できる状況であれば、離婚時の合意が無効とされ、あとから財産分与を請求できる可能性があります。
7. まとめ 財産分与の請求は期限を意識して早めの準備を
財産分与は、離婚時に夫婦が築いた共有財産を公平に分ける制度です。ただし、離婚後に請求できるのは、原則として離婚成立から2年以内(改正後は5年)に調停や審判を申し立てた場合に限られます。一方、調停や審判で金額が確定した場合、その権利は確定から10年間有効です。
除斥期間を過ぎても、任意に分与する合意があれば支払いを受けられることもあります。共有不動産がある場合は共有物分割請求、隠された財産がある場合は損害賠償請求が検討されるケースもあります。
財産分与を円滑に進めるには、離婚前からの情報収集と準備が重要です。とくに財産の全体像を把握しておくことで、後の交渉や請求がスムーズになります。
請求の期限を逃さないよう、早めに弁護士へ相談しておくことをおすすめします。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)