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1. 新築離婚とは?
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2. 新築の家を建てたのに離婚する原因は?
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2-1. 価値観の相違
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2-2. 経済的な負担の増加
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2-3. 両親との同居
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3. マイホームを新築したばかりで離婚したら家はどうなる?
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3-1. 売却する
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3-2. 賃貸に出す
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3-3. どちらかが住む
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4. 新築に夫婦のどちらかが住み続けるケースの法律関係
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4-1. ローンの名義人が住み続けるケース
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4-2. ローンの名義人でないほうが住み続けるケース
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4-3. ローンの名義人を変更して住み続けるケース
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5. 新築中に離婚する場合の法律関係
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6. ペアローンで新築して離婚する場合の法律関係
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6-1. ペアローンを一本化する
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6-2. ペアローンの物件を売却する(仲介による売却)
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6-3. ペアローンの物件を売却する(任意売却)
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7. 新築の家があるのに離婚する際の注意点
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7-1. 契約を解除できないか検討する(建築前と建築中)
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7-2. 誰がローンを負担するのか、家をどうするのかを明確にする
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7-3. 公正証書を作成する
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7-4. 弁護士に相談する
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8. 新築離婚に関してよくある質問
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9. まとめ 新築のマイホームがある状況で離婚を検討中の場合は弁護士に相談を
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1. 新築離婚とは?
マイホームを建てることが原因で夫婦関係が悪化し、離婚に至ることを一般的に「新築離婚」と呼びます。マイホームは多くの夫婦にとって人生で最も大きい買い物であり、通常は住宅ローンを組むことになります。しかし、大きな買い物であるからこそ、マイホーム新築をきっかけに夫婦関係が悪化し、離婚に至るケースがあります。このような新築離婚のケースでは、ローンの状況などに応じた対応が必要です。
2. 新築の家を建てたのに離婚する原因は?
マイホームを建てることに起因する新築離婚の原因として、次のようなものが考えられます。
2-1. 価値観の相違
マイホームを建てる際は、立地と予算を決めたあと、具体的なデザインや間取りを施工業者と相談しながら決めていきます。しかし、マイホームの完成までには決めなければならないことが多く、思った以上にストレスを感じる人もいます。
また、マイホームはその後の人生設計に深く関わるものです。そのため、たとえば、結婚当初には漠然と子どもを望んでいた夫婦が、マイホームを計画する段階になって子どもをもつことに対するモチベーションや教育方針について価値観の違いがあると気づき、夫婦関係が険悪になるケースがあります。
2-2. 経済的な負担の増加
マイホームを建てる場合、多くの人は住宅ローンを組みます。近年の不動産価格の上昇を背景に、返済期間が長期にわたるローンやペアローンを選択する夫婦も増えています。住宅ローンの負担を抱えた状態で収入が下がった、あるいは子どもができたなどの理由で急な出費が発生すれば、家計が圧迫されます。
このような場合、経済的なプレッシャーがストレスとなり、夫婦関係に亀裂が入るケースがあります。
2-3. 両親との同居
マイホームの計画を立てるなかで、一方の両親が「実家の近くに建ててほしい」「同居してほしい」などと要求してくるケースがあります。夫婦がともに同意している場合は問題ありませんが、一方が受け入れられない場合は不満を抱えることになります。同居などを希望する両親が「頭金を援助する」と申し出てきた場合、経済的なプレッシャーを軽くしたいという思いと、マイホーム完成後の両親との関係を考え、悩むケースも多いでしょう。
マイホーム建築は夫婦2人だけでなく、双方の両親も強い関心を寄せる事案です。両親とのコミュニケーションがうまくいかない場合、夫婦関係が悪化する可能性があります。
3. マイホームを新築したばかりで離婚したら家はどうなる?
マイホームの新築後に離婚する場合の対応として、次の3つが考えられます。
売却する
賃貸に出す
どちらかが住む
3-1. 売却する
夫婦ともに新築したマイホームに居住せず、売却する選択肢もあります。
離婚時に夫婦共有の財産を分配することを「財産分与」と言います。財産分与の際は、売却価格から住宅ローンの残高を差し引いて残った金額を夫婦で分割します。
しかし、売却価格が住宅ローンの残高より低い、いわゆるオーバーローンの場合、住宅ローンの残高から売却価格を差し引いた残りの住宅ローンは、住宅ローン契約の名義人が引き続き支払います。離婚したからといって住宅ローンの名義人が自動的に変更されることはなく、離婚後も住宅ローン契約時の名義人が残った住宅ローンを返済しなければなりません。
こうしたオーバーローン状態での離婚の場合は、財産分与の場面で住宅ローンの名義人が離婚後に負担するローン残高を考慮し、残ったローンの半分に相当する金額を名義人ではないほうの取り分から差し引くなどの方法で、実質的に平等に負担することもあります。
とはいえ、売却が思うように進まず希望した売却金額が得られない結果、単純に住宅ローンを半分ずつにできないケースがあります。離婚後に残る住宅ローン残高が高額となってしまうケースや、マイホーム以外の財産が乏しく離婚後のローン返済能力に不安が残るケースなどです。
ちなみに、高い金額で売却するには、できるだけ新築に近い状態で売却するのが一番です。法律上「新築」として売却するためには、次の2点を満たしていなければなりません。
建築後1年以内である
人が住んだことがない
そのため、新築直後の売却にあたっては早めの決断が必要です。
3-2. 賃貸に出す
夫婦ともに新築したマイホームに居住せず、賃貸物件として第三者に貸し出すかたちも考えられます。
もし住宅ローンの月々の支払い額以上の賃料で貸し出すことができれば、負担なしに住宅ローンの返済が可能です。
もっとも、賃貸人として賃借人とのやりとりや物件の修繕を行うなど、離婚後に賃貸物件として管理する必要があるため、どちらが管理を行うか決める必要があります。
また、住宅ローンが残っているマイホームを賃貸物件として貸し出すことは原則として住宅ローン契約の規約違反となる点にも注意が必要です。貸し出す前に金融機関に相談して、賃貸住宅向けのローンに借り換えるなどの対策を行ってください。
3-3. どちらかが住む
夫婦の一方が、離婚後に新築したマイホームに居住するパターンもあります。この場合、住宅ローンの名義や連帯保証人をどうするかが問題になります。
住宅ローンの名義人が居住するのか、夫婦のうち名義人でないほうが居住するのかによって発生する問題が異なるため、次項でそれぞれの場合について解説します。
4. 新築に夫婦のどちらかが住み続けるケースの法律関係
新築したマイホームに離婚後も夫婦のどちらかが住み続ける場合の対応は、居住者が名義人であるかどうかによって変わります。
4-1. ローンの名義人が住み続けるケース
住宅ローンの名義人が住み続ける場合、住み続けること自体に問題はありません。財産分与においては、マイホームの評価額が住宅ローン残高を上回っているかどうかによって扱いが異なります。
まず、評価額が住宅ローン残高を上回る、いわゆるアンダーローンの場合、評価額とローン残高の差額が財産分与の対象となります。たとえば、評価額が2000万円、住宅ローン残高が1000万円の場合は、差額の1000万円を500万円ずつ財産分与することになるため、名義人でないほう(居住しないほう)は名義人に対して、財産分与として500万円請求できます。
一方、評価額が住宅ローン残高を下回る、いわゆるオーバーローンの場合は、マイホームは財産分与の対象になりません。したがって、名義人が居住しながら住宅ローンを支払い続けることになります。
4-2. ローンの名義人でないほうが住み続けるケース
住宅ローンの名義人ではないほうが居住し続ける場合、名義人ではないため住宅ローンを支払う必要はありません。
離婚後も住宅ローンは夫名義のまま、母と子どもが住み続けるというのがこのケースの代表例です。このケースでは、離婚時に、養育費や財産分与の支払いに代えて父が住宅ローンを支払い続ける取り決めをする場合もあります。
ただし、このケースで名義人による住宅ローンの支払いが滞ると、マイホームが差し押さえられたうえで強制的に売却(競売)され、ある日突然自宅を追い出されるリスクが生じます。また、知らないうちに名義人によって売却されてしまうリスクもあります。住宅ローンの期間は数十年に及ぶことも少なくありません。この間に名義人の就労不能や再婚による支出の増加といった事情の変化があれば、名義人の返済能力が低下し、リスクが現実のものとなる可能性もあります。
なお、住宅ローンの名義は変更しないまま、住宅の登記名義だけを変更することも手続き上は可能です。しかし、住宅ローンは名義人が居住することを前提に金利が低く抑えられているため、不動産の登記名義を変更する際は金融機関の承諾を得るよう契約上定められているケースが多いです。金融機関に無断で不動産の名義変更を行うのは避けましょう。
4-3. ローンの名義人を変更して住み続けるケース
ローンの名義人と実際に居住する人が異なる場合でも住宅ローンの名義人を変更することは義務ではありません。しかし、さまざまなリスクを考慮し、居住する人に住宅ローンの名義を変更したい場合もあるでしょう。
住宅ローンは名義人の返済能力をもとに総額や月々の返済金額が組まれるため、変更後の名義人の返済能力が十分でないと金融機関の審査が通らない可能性があります。審査に通らなければ、名義変更はできません。
また、夫婦のどちらか一方が名義人となり、もう一方が連帯保証人となっているケースで、離婚後は連帯保証人の地位から離れたいという場合にも、新しい連帯保証人を探して金融機関などの許可をもらう必要があります。
このように、住宅ローンの名義人や連帯保証人の変更のハードルは高いため、ローンの組み替えや借り換えも検討しましょう。

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5. 新築中に離婚する場合の法律関係
建築途中で離婚が決まった場合、民法上は工務店やハウスメーカーとの建築請負契約を途中で解除し工事を中止してもらえます。
しかし、離婚したからといって当然に建築請負契約を解除する理由にならないため、工事の途中までにかかった費用の損害賠償や、契約内容によっては違約金を支払わなければならない可能性があります。現実的には、建築の完成を待ってから新築物件として売却するか、賃貸に出す、またはどちらかが住むという選択をする場合が多いでしょう。
また、建築請負契約を解除して建物の工事を中止しても、土地の購入がなかったことにはなりません。土地の処分についても別途検討が必要です。土地の購入にあたって手付金を支払っている場合は、売主が土地の登記の移転などをする前であれば、支払った手付金を放棄して売買契約を解除できます。
6. ペアローンで新築して離婚する場合の法律関係
ペアローンとは、一つの物件に対して夫と妻がそれぞれ住宅ローンを組み、お互いに連帯保証人となる契約のことです。
ペアローンの場合、自宅の所有名義は夫婦の共有となります。共働き夫婦の増加や住宅価格の高騰などの理由により、特に若い世代でペアローンを利用する人が増えています。
ペアローンで新築して離婚する場合でも、離婚を理由にペアローンや連帯保証契約を当然に解消することはできません。この場合、次の3つの対処法が考えられます。
ペアローンを一本化する
ペアローンの物件を売却する(仲介による売却)
ペアローンの物件を売却する(任意売却)
6-1. ペアローンを一本化する
ペアローンを一本化するには、「免責的債務引受」「住宅ローンの借り換え」のどちらかを選択することになります。
免責的債務引受とは、たとえば、夫が妻の住宅ローンの負債を譲り受けることで、夫名義のローンに一本化する方法です。金融機関に申し込んで抵当権の登記を変更するだけでよく、登録免許税も安く済むなど手続きがシンプルであるというメリットがあります。
しかし、免責的債務引受をするために必要となる金融機関の承諾が得られないケースが多く見られます。金融機関にとっては、免責的債務引受を承諾すると、妻と夫との間で別々に組んでいたローンが一つになってしまい、ローンの支払いを担保する人数が減るためです。
一方、住宅ローンの借り換えとは、新たな住宅ローンを借り入れることで現在の住宅ローンを完済する方法です。たとえば、夫が2000万円、妻が1000万円のペアローンを組んでいる場合に、夫が別の金融機関で新たに3000万円の住宅ローンを組み、それまでのローンを一括返済するケースが該当します。この場合、新たに3000万円の住宅ローンを組む金融機関の審査を通過する必要があります。
免責的債務引受の場合も住宅ローンの借り換えの場合も、金融機関の協力を得るためには、一本化によりローンを引き受ける側の収入が十分にあることが前提となります。
6-2. ペアローンの物件を売却する(仲介による売却)
ペアローン解消のため、新築した物件を売却するという選択肢もあります。
売却価格がペアローンの残高を上回る、いわゆるアンダーローンの場合、売却したお金でペアローンを完済すれば足ります。
これに対し、売却価格がペアローンの残高を下回る、いわゆるオーバーローンの場合は、売却したお金だけではペアローンを完済できず、ペアローンを解消できません。そもそも、売却のためには金融機関が設定した抵当権を外す必要があります。抵当権がついたままの物件は買い手がつきにくいためです。
しかし、オーバーローンの場合は金融機関が抵当権をなかなか外してくれず、結果として売却を認めてくれません。抵当権を外してもらうには、売却したお金とペアローン残高との差額を別途用意してペアローンを一括返済する必要があります。
6-3. ペアローンの物件を売却する(任意売却)
オーバーローンかつ一括返済が難しいため、金融機関が売却を認めてくれない場合は、「任意売却」という方法もあります。
これは、ローンを滞納したあと、物件が競売にかけられる前に、金融機関からの許可をもらって自宅を売却する方法です。任意売却では市場価格と同等の金額で取引されるため、金融機関としては、競売にかけるよりも任意売却の方が良いと判断して売却を許可する場合があるのです。
ただし、任意売却のためには意図的に住宅ローンを数カ月間滞納することが必要です。この場合、クレジットカードやローンに関する情報を扱う信用情報機関にローン滞納の事実が登録されてしまうデメリットを覚悟しなければなりません。
なお、ペアローンの物件は夫婦の共有財産となっているため、売却するかどうかや売却方法については両者の合意が必要です。どうしても意見がそろわない場合は、2人以上で共有する財産の共有状態を解消するための「共有物分割請求」をしなければなりません。
7. 新築の家があるのに離婚する際の注意点
新築のマイホームがある状況で離婚する場合、次の4点に注意しましょう。
契約を解除できないか検討する(建築前と建築中)
誰がローンを負担するのか、家をどうするのかを明確にする
公正証書を作成する
弁護士に相談する
7-1. 契約を解除できないか検討する(建築前と建築中)
建築前もしくは建築中に離婚が決まった場合は、その段階で最も経済的負担が少ない方法を検討します。
建築工事の着工前であれば、手付金を放棄するなどして工事自体を中止したほうが経済的メリットが大きい場合があるでしょう。他方、すでに建築工事が始まっている場合は、工事の進捗にもよりますが、工事自体の中止は現実的ではありません。完成を待ってから処分を検討することになります。
7-2. 誰がローンを負担するのか、家をどうするのかを明確にする
新築離婚においては、住宅ローンという多額の債務をどのように処理するかが離婚協議の大きな争点となります。個別の事情によっては、養育費などのほかの離婚条件との兼ね合いで、どちらが自宅に住み続けるのか、売却するのかについての結論が変わるケースもあります。
どのような結論になるにせよ、自宅の査定額をふまえて話し合わなければならないため、まずは不動産会社に査定を依頼しましょう。
7-3. 公正証書を作成する
住宅ローンの取り扱いに関して意見が分かれている場合、明確な合意をせずに離婚してしまうと離婚後に新たなトラブルとなるおそれがあります。
特に、夫婦のうち住宅ローンの名義人ではないほうが住み続ける場合には、もしローンの支払いが滞った場合はどうするかについて、公正証書を作成して合意しておくことをお勧めします。公正証書とは、公証人によって作成される公文書であり、高い証明力を持ちます。
7-4. 弁護士に相談する
新築離婚は、住宅そのものやローンの取り扱いをめぐって激しい争いとなり、離婚協議自体が長期化するケースもあります。しかし、長期化することで売却価値が下がることは双方ともに望まないでしょう。また、2人とも比較的年齢が若く、小さな子どもがいる場合の新築離婚では、養育費や将来の相続を見据えた話し合いになります。
このように、財産分与以外の離婚条件との調整が必要となる場合は、全体を俯瞰したアドバイスができる弁護士への相談をお勧めします。弁護士に依頼すれば、公正証書の作成のほか、調停や裁判に進んだ場合にも対応を一任できます。

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8. 新築離婚に関してよくある質問
新築した物件が夫婦の共有である場合、離婚後であっても物件全体を売却するには双方の同意が必要になります。
ただし、「共有持分」と呼ばれる所有権の割合に応じて自分の持ち分のみを売却することは、もう一方の同意がなくても可能です。
離婚しても、住宅ローンは当然に折半することにはなりません。基本的には、住宅ローンの名義人が引き続き返済することになるため、名義人の負担を考慮してほかの離婚条件を調整するケースが多いでしょう。
ペアローンは、離婚したとしても解消されません。ペアローンを解消するには、ローンを一本化するか、売却する必要があります。
しかし、アンダーローンの状態で売却する場合を除いて、名義人の収入が十分でないとペアローンの解消が難航する可能性が高いです。実際、離婚後もペアローンを解消できないまま、双方がそれぞれローンを返済し続けているというケースも珍しくありません。
新築から1年以内で、かつ、一度も住んでいない場合は新築物件として売却できます。1年を経過するか、一度でも住んでしまうと中古物件としての扱いになり、売却価格が下がるため注意しましょう。
9. まとめ 新築のマイホームがある状況で離婚を検討中の場合は弁護士に相談を
新築離婚は、住宅評価額がローン残高を上回る「アンダーローン」の場合を除き、紛争の原因となってしまうケースが多く見られます。新築に絡む離婚の話し合いにおいては、離婚後のマイホームをどうするのか、ローンは誰が負担するのかといった点を明確にしておく必要があります。特にペアローンの場合は、ローンの一本化やマイホームの売却を検討しなければなりません。
不動産の評価額は時間の経過とともに変化するため、新築離婚では早めの対応が必要です。住宅ローンの存在が離婚後の生活の足かせとならないよう、弁護士などの専門家に相談したうえで対処することをお勧めします。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)