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1. 【2024年4月~】民法改正により女性の再婚禁止期間が撤廃
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1-1. 女性の再婚禁止期間とは
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1-2. 女性だけに再婚禁止期間が設けられていた理由
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1-3. 女性の再婚禁止期間が撤廃された理由
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2. 離婚後の再婚に関わる民法改正のポイント|嫡出推定規定の見直し
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2-1. 嫡出推定規定の変更内容
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2-2. 変更後の嫡出推定規定が適用される子どもの出生時期
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3. 離婚後に再婚した場合、苗字はどうなる? そのまま変えないときの対応は?
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3-1. 再婚による自分の苗字の取り扱い
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3-2. 再婚による子どもの苗字の取り扱い
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4. 離婚後に再婚した場合に生じる3つの影響
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4-1. 再婚による戸籍への影響
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4-2. 再婚による親権への影響
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4-3. 再婚による養育費への影響
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5. 離婚から再婚までの期間は、平均してどのくらい?
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6. 2026年5月までに施行|共同親権制度による離婚後の再婚への影響は?
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7. 今の配偶者と離婚してから再婚したい場合の対処法
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7-1. 不倫などをしていない場合
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7-2. 不倫などをしている場合
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8. 離婚後の再婚に関してよくある質問
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9. まとめ 離婚後に再婚した際の対応には弁護士のアドバイスが有用
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1. 【2024年4月~】民法改正により女性の再婚禁止期間が撤廃
2024年4月1日に施行された改正民法により、女性の再婚禁止期間が撤廃 されました。従来のルールでは、女性は離婚後100日間が経過しなければ再婚できなかったものの、改正によって離婚直後から再婚できるようになりました 。
1-1. 女性の再婚禁止期間とは
再婚禁止期間とは、離婚などによって婚姻関係を解消したあとに、再婚できない一定の期間です。
従来の民法では、女性だけに再婚禁止期間が設けられていました。女性の再婚禁止期間は、前婚が解消された日、または取り消された日から起算して100日間とされていました。
1-2. 女性だけに再婚禁止期間が設けられていた理由
従来の民法において女性だけに再婚禁止期間が設けられていたのは、「嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)」の重複を防ぐためです。嫡出推定とは、妻が婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定するというルールです(民法772条1項)。
従来の嫡出推定に関する規定では、婚姻の成立日から200日を経過したあと、または婚姻の解消や取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に妊娠したものと推定されていました。この旧規定の下では、離婚後100日以内に再婚すると、前婚と後婚の嫡出推定が重複する期間が生じていました。
嫡出推定が重複すると、誰がその子の父親なのかについて争いが生じ、複雑なトラブルに発展するおそれがあります。そのため、嫡出推定の重複を避ける目的で女性の再婚禁止期間が定められていました。
1-3. 女性の再婚禁止期間が撤廃された理由
2024年4月1日に施行された改正民法によって女性の再婚禁止期間は撤廃され、離婚後ただちに再婚できるようになりました。
女性の再婚禁止期間が撤廃されたのは、男女平等の観点から問題点が指摘されていたためです。男性は離婚直後から再婚できるのに、女性は離婚後100日間が経過しないと再婚できないのは不平等であるとの指摘を受けて、女性の再婚禁止期間が撤廃されました。
2. 離婚後の再婚に関わる民法改正のポイント|嫡出推定規定の見直し
女性の再婚禁止期間に加えて、前述の嫡出推定の規定についても、無戸籍問題などの観点から見直しの必要性が指摘されていました。無戸籍問題とは、再婚予定のパートナーなど前夫以外との子を出産した女性が、前夫の子と記載されることを避けるために出生届を提出しなかった結果、その子が無戸籍になってしまう問題を指します。
2024年4月1日に施行された改正民法では、再婚禁止期間の撤廃と併せて、嫡出推定の規定も抜本的に変更されています。
2-1. 嫡出推定規定の変更内容
旧民法では、婚姻の成立日から200日を経過したあと、または婚姻の解消や取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したもの(=夫、または元夫の子である)と推定されていました。
改正後の現行民法では、婚姻成立後に生まれた子は、一律で現夫の子と推定
するものとされています(民法772条)。そのため、嫡出推定の重複はなくなり、女性の再婚禁止期間を撤廃することが可能となりました。
2-2. 変更後の嫡出推定規定が適用される子どもの出生時期
現行民法の嫡出推定に関する規定は、2024年4月1日以降に出生した子に適用されます。
ただし、2024年3月31日以前に生まれた子やその母は、同年4月1日以降1年間に限り、嫡出否認の訴えを提起して、生物学上の父ではない者が子の父と推定されている状態を解消できます。
3. 離婚後に再婚した場合、苗字はどうなる? そのまま変えないときの対応は?
離婚後に再婚した場合は、自分や子どもの苗字が短期間で何度も変わるケースがあります。離婚と再婚に伴う苗字の取り扱いについて、あらかじめ正しく理解しておきましょう。
3-1. 再婚による自分の苗字の取り扱い
夫婦が離婚した場合、結婚時に苗字を変えた側は旧姓に戻るのが原則 です。
ただし、離婚の日の翌日から起算して3カ月後までは、市区町村役場に「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出すれば、婚姻中に名乗っていた苗字を離婚後も使い続けることができます。
現行民法では夫婦同姓とされているため、再婚する際には夫婦いずれかの苗字を選択 することになります。婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」の欄において、「夫の氏」または「妻の氏」のいずれかを選択しましょう。
3-2. 再婚による子どもの苗字の取り扱い
夫婦が離婚した際、子どもの苗字が自動的に変わることはありません 。
子どもの苗字を旧姓に戻る側の親と同じものに変えたい場合は、家庭裁判所の許可を得て子どもの苗字を変更し、市区町村役場で入籍の手続き(=同じ戸籍に入れる手続き)を行う必要があります。
また、親が再婚した場合も、子どもの苗字が自動的に変わるわけではありません 。再婚する親が苗字を再婚相手のものに変える場合、そのままでは親と子どもの苗字が違うものになります。
子どもの苗字を再婚した親と同じものに変えたい場合は、家庭裁判所の許可を得て子どもの苗字を変更して入籍の手続きを行うか、または再婚相手との間で養子縁組をする必要があります。
4. 離婚後に再婚した場合に生じる3つの影響
離婚後に再婚をすると、さまざまな方面で影響が生じることがあります。離婚後の再婚によっては、主に3つの影響を受けることになります。
4-1. 再婚による戸籍への影響
離婚と再婚の事実は、いずれも戸籍上に記録されます。
離婚する際には、婚姻前の苗字に戻る側が夫婦の戸籍から離脱します。子どもは何もしなければ元の戸籍に残るものの、家庭裁判所の許可を得て子どもの苗字を変更して入籍の手続きを行えば、夫婦の戸籍から離脱した親と同じ戸籍に入れることができます。
再婚する親は、再婚相手と同じ戸籍に入ります 。一方、子どもは、何もしなければ元の戸籍にいるままです。
親が苗字を再婚相手のものに変える場合、そのままでは親と子どもの戸籍が別々になります。この場合、子どもを親と同じ戸籍に入れるには、家庭裁判所の許可を得て子どもの苗字を変更して入籍の手続きを行うか、または再婚相手と子どもの間で養子縁組 をする必要があります。
4-2. 再婚による親権への影響
離婚後に再婚したとしても、子どもの親権者が変わることはありません。自身が親権者であれば、再婚を理由に元配偶者に親権を奪われることはありませんし、「再婚したら親権者を変更する」という合意も認められません。
子どもの親権者を変更するためには、家庭裁判所に親権者変更の調停および審判を申し立てる必要があります。家庭裁判所は、どちらの親が親権者にふさわしいかを判断したうえで、親権者変更を認めるかどうかを決定します。
4-3. 再婚による養育費への影響
再婚したからといって、自分が支払っている、または相手から受け取っている養育費の金額がただちに変わることはありません。
ただし、以下のような事情は養育費の減額が認められる要因になります。
権利者(=養育費を受け取る人)の再婚相手が裕福であり、経済的に大きな余裕が生まれた
子どもと再婚相手が養子縁組をした
義務者(=養育費を支払う人)が再婚相手の連れ子と養子縁組をした
義務者と再婚相手の間に子どもが生まれた
養育費の減額を請求する場合は、まず元配偶者と話し合いを行うのが一般的です。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てましょう。
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5. 離婚から再婚までの期間は、平均してどのくらい?
厚生労働省の人口動態調査によると、前婚解消後から再婚までの期間(各届出年に結婚生活に入り届け出たものについて)は、図版「前婚の解消から再婚までの期間」 のとおりです。これは2022年に再婚したケースを集計したもので、男女ともに前婚の解消後5年未満で再婚した人の割合が50%前後(男性が54.1%、女性が49.9%)となっています。
前婚の解消後1年未満で再婚した人の割合が、男性の13.7%に比べて11.8%と女性のほうがやや低くなっているのは、再婚禁止期間の規定が影響しているのかもしれません。女性の再婚禁止期間が廃止された2024年以降のデータが出てくれば、その影響があったのかどうかが明らかになるでしょう。
一方、前婚の解消後10年以上が経過してから再婚した人は男性が22.2%、女性が26.2%と、男女ともに20%を超えています。離婚後の再婚は、それぞれの人にとってのタイミング次第と言えそうです。
6. 2026年5月までに施行|共同親権制度による離婚後の再婚への影響は?
2026年5月までに新たな改正民法が施行され、離婚後の子どもの共同親権が認められるようになる予定です。
離婚後の共同親権が選択された場合、再婚との関係では、主に再婚相手と子どもの養子縁組に影響が生じることが想定されます。15歳未満の子どもが養子縁組をする場合には、法定代理人である親権者の承諾を得なければなりません(民法797条)。
共同親権の場合は、原則として法定代理人である父母の双方の承諾が必要です。たとえば、元配偶者が再婚相手のことを快く思っていない場合には、養子縁組について元配偶者の承諾が得られない かもしれません。
養子縁組への承諾の可否について、共同親権者間に協議が調わない場合には、家庭裁判所に対して親権の単独行使の許可を申し立てることができるとされています(改正民法824条の2第3項)。家庭裁判所の許可が得られれば、共同親権者の一方が単独で、再婚相手と子どもの養子縁組を承諾できます。
また、再婚相手と子どもが養子縁組をすると、子どもの親権者は、養親である再婚相手とその配偶者である親の2名になります(改正民法818条3項)。離婚時には父母の共同親権であったとしても、養子縁組によって父母の一方が親権を失う ことになる点には注意が必要です。
7. 今の配偶者と離婚してから再婚したい場合の対処法
今の配偶者と離婚したうえで、別の人と再婚したいと考えている場合にとるべき対応は、自分が不倫などの責められるべき行為をしているかどうかによって異なります。
7-1. 不倫などをしていない場合
自分が不倫などをしていない場合には、基本的には協議または調停における話し合いによる離婚をめざしつつ、合意が難しければ離婚訴訟の提起も視野に入れて対応する流れになります。
離婚訴訟で離婚を認める判決を得るためには、配偶者の不貞行為を含む法定離婚事由を立証しなければなりません。客観的な証拠に基づく立証が求められるため、弁護士のサポートを受けるのが望ましいです。
なお、再婚したい相手がいるとしても、離婚成立前に性的関係をもつと離婚請求が認められにくくなってしまう 点は理解しておきましょう。
7-2. 不倫などをしている場合
自分が不倫などをしている場合は、離婚の原因をつくった有責配偶者として扱われるため、訴訟を通じた離婚請求は認められにくくなります。長期間にわたって別居しているなどの事情がない限りは、協議または調停を通じて離婚の合意をめざすほかないと言えます。
有責配偶者からの離婚請求には難しい対応が求められるので、弁護士に相談 することをお勧めします。
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8. 離婚後の再婚に関してよくある質問
9. まとめ 離婚後に再婚した際の対応には弁護士のアドバイスが有用
2024年4月1日以降、女性の再婚禁止期間が撤廃され、男女問わず離婚の直後から再婚できる ようになりました。
ただし、離婚後に再婚すると、苗字や養育費、さらには親権をどうするかなど、生活面でさまざまな影響が生じる可能性 があります。弁護士のアドバイスを受けつつ、どのような影響が生じるのかについて正しく理解し、必要に応じて対策を講じましょう。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)