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1. 離婚後のシングルマザーの生活費はいくらかかる? 金額相場を紹介
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2. 元配偶者に対して、離婚後の生活費の請求はできる?
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3. 離婚時に請求できるお金の種類
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3-1. 財産分与
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3-2. 養育費
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3-3. 慰謝料
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3-4. 年金分割
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4. 離婚後の生活費をシミュレーションする際のポイント
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4-1. 収入と支出をすべて書き出し、比較する
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4-2. 不確実性や将来的な支出増も考慮する
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5. 離婚後の生活費が足りない可能性が高い場合の対処法
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5-1. 収入を増やす方法を検討する
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5-2. 親などからの援助を受ける
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5-3. 公的支援制度を利用する
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5-4. 支出を減らす
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6. 離婚後の生活費に関することも含め離婚前に弁護士に相談するメリット
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7. 離婚後の生活費に関してよくある質問
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8. まとめ 離婚後の生活費に不安がある場合は弁護士に相談を
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1. 離婚後のシングルマザーの生活費はいくらかかる? 金額相場を紹介
弁護士である筆者が離婚の相談を受ける女性のなかでも、「離婚を希望しているものの、離婚後の生活費が心配だ」と話す人は非常に多い印象です。また、夫が現に借金を抱えている、あるいは夫の性格上、離婚後に子どもの養育費を支払ってもらえない可能性が高いと考えて、離婚後の生活に不安があり、離婚を思いとどまっているケースもあります。
自分や子どもの将来の生活のためには、離婚したあとの金銭面について考えることは非常に重要です。
あくまで一つの例ですが、離婚後、子どもと生活していくための生活費がどれくらいかかるのか具体的に見てみましょう。18歳未満の子ども1人がいる母子家庭の生活費とその内訳の目安は次のとおりです。
【18歳未満の子ども1人とシングルマザーの母子家庭の1カ月の生活費(目安)】
合計 23万3000円
(内訳)
家賃(賃貸):5万9000円
食費(外食、給食費含む):5万6000円
水道光熱費:1万8000円
家具・家電・家事消耗品:1万2000円
交通費:2万1000円
通信費(インターネット、携帯電話代など):1万2500円
教育費:1万3000円
衣服費:9300円
医療費:5900円
交際費:9300円
雑費(理美容院代、身の回りの用品、化粧品などを含む):1万7000円
総務省の調査を参考にすると、上記に子どもが1人増えるごとに、平均で合計約2万5000円が増える計算になります。増額分の内訳は以下のとおりです。
【子どもが1人増えた場合の増額分の内訳】
食費:7000円
教育費:1万円
光熱水費:1000円
交通費:3000円
通信費:1000円
衣服費:3000円
たとえば、母親1人、子ども2人の場合は、25万8000円が1カ月の生活費の目安となります。
なお、これらの数字は総務省統計局2023年家計調査家計収支編2人以上の世帯の世帯類型別(18歳未満の子どもとの母子家庭)の全国平均値と、同分類のうち世帯人員別で見た全国平均値を参照、し、統計上の数字を基に算定した参考金額です。ただし、住居費については総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果」における賃貸物件の賃料の2023年の全国平均を参照しています。統計上の全国平均値を参照しているため、地域ごとの賃料や物価の差などは考慮していません。
配偶者との離婚を考える際は、上記の支出が一つの目安になります。そのうえで、自分の収入や、ひとり親に対する行政からの各種手当、配偶者からの養育費などを合わせた月の収入と比べるなどして、離婚後の生活の見通しを検討するとよいでしょう。
2. 元配偶者に対して、離婚後の生活費の請求はできる?
離婚前であれば、夫婦は相互に助け合う義務があり、結婚期間中の生活費(婚姻費用)を分担しなければなりません。そのため、配偶者のほうが収入が多ければ、離婚に向けた別居期間中であっても、配偶者に対して自分自身と子どもの生活費を請求できます。
一方、離婚後は夫婦ではなくなるため、原則として配偶者に対して自分の生活費を請求できません。子どもの生活費を養育費として請求することになります。
事情によっては、離婚後も生活費の請求をすることが可能な場合があります。たとえば、配偶者が不倫をしたり、暴力をふるったりしたなど、配偶者に離婚の原因があるようなケースです。離婚を余儀なくされた側が持病を持っている、あるいは専業主婦ですぐに就職先が見つからない、といった状況の場合は、慰謝料以外に離婚の条件として、離婚後も一定期間の生活費を請求することが裁判で認められるケースがあります。これを「扶養的財産分与」と言います。
3. 離婚時に請求できるお金の種類
離婚後は、原則として離婚した相手に自分の生活費を請求することはできません。しかし、離婚に伴って相手に請求できる可能性のあるものはいくつか存在します。具体的には以下の4つです。
3-1. 財産分与
婚姻期間中に夫婦で貯めた財産は、離婚時に夫婦間で分配します。分配の割合は事情により若干変動することもありますが、原則として2分の1ずつです。
財産は夫婦の一方の名義になっていても関係なく、結婚している期間に増えた分を分配して清算します。たとえば、夫名義の預貯金のみで妻名義の預貯金がなかった場合でも、夫名義の預貯金の総額のうち2分の1を離婚時に妻に渡すのが原則です。
基本的に、財産的価値のあるものはすべて分配の対象になります。たとえば、現金や預貯金、不動産のほか、株式や投資信託などの有価証券、積立金、財形貯蓄、退職金、車両、保険の積立金や解約返戻金、宝石や骨董品、ブランド品などの貴重品です。
3-2. 養育費
離婚時に未成年の子どもがいる場合は、親権者を決める必要があります。この場合、親権者とならなかった親には、離婚後の子どもの生活費を養育費として支払う義務が生じます。
養育費は、離婚時の夫婦双方の年収や子どもの人数、年齢などを考慮して、通常は裁判所の基準に従うか、または夫婦間の合意によって、月々の支払い額を決定します。
なお、私立高校や私立大学への進学を希望する子どもの将来の学費や学習塾への費用、子どものための特別な医療費など、通常の養育費には含まれない費用が発生する場合は、養育費とは別にその支払いについて検討する必要があります。
3-3. 慰謝料
配偶者の不倫やDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)、モラハラ(モラル・ハラスメント)などの原因により離婚を余儀なくされた場合は、配偶者に対して慰謝料を請求できます。
慰謝料の金額は、個別の事情や原因となる相手の行為の程度などによってさまざまですが、たとえば配偶者の不倫が原因で離婚する場合に請求する慰謝料は150万円から300万円の間で決定されるケースが多くあります。
3-4. 年金分割
離婚時に直接相手に請求できるお金ではないものの、将来自分が受け取れる厚生年金の金額が増える可能性のある方法として、年金分割の制度があります。
年金分割とは、離婚した際に、夫婦の結婚していた期間中の夫婦それぞれの厚生年金の保険料納付額を、合意または裁判で決定した割合に応じて分割する制度です。分割の割合は、夫婦で2分の1ずつとなるケースがほとんどです。
4. 離婚後の生活費をシミュレーションする際のポイント
離婚の話し合いを始める前に、離婚後の生活費をシミュレーションしましょう。離婚後に自分と子どもがお金に困らずに生活していける状況なのかどうかを客観的に把握することが重要です。
4-1. 収入と支出をすべて書き出し、比較する
まずは、現在の家計の状況をもとに、離婚して配偶者の収入や支出がなくなった場合の家計がどうなるかシミュレーションをしましょう。また、離婚後に利用できる行政からの各種手当や援助制度、配偶者からの養育費などの概算額も含めて、離婚後の収入と支出を比較するとよいでしょう。
ただし、配偶者からの養育費については、金額の目安を事前に計算できるとはいえ、最終的には配偶者との話し合いや裁判所の決定により決まります。養育費を含めたうえでギリギリの収支になっているのであれば、注意が必要です。
4-2. 不確実性や将来的な支出増も考慮する
離婚後は、元配偶者から月々の養育費を支払ってもらいます。しかし、現実問題として養育費が支払われなくなるケースも残念ながら相当数存在します。そのため、養育費の支払いを前提としたギリギリの収支ではなく、養育費が不払いになるリスクも想定しなければなりません。できれば養育費を将来のための預貯金分に回せるほどの収支をめざすのが理想的です。
また、日用品や食費、教育費などは子どもが成長するほど高くなる傾向にあるため、それも見据えたシミュレーションをしたほうがよいでしょう。将来の子どもの学費に備えて学資保険などで積立を行う選択肢も考えられます。
また、医療費や子どものための費用など、将来的に急な出費が必要になる場合に備えることも必要です。慰謝料や財産分与でまとまったお金が得られたのであれば、できる限り預貯金に回すなど資産として残す方法を検討してもよいでしょう。

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5. 離婚後の生活費が足りない可能性が高い場合の対処法
離婚後のシミュレーションをした結果、収支がギリギリもしくはマイナスになる可能性がある場合、離婚自体を考え直すという選択肢もあり得るかもしれません。しかし、離婚を前提とするのであれば、主に以下の4点を検討するのが望ましいです。
収入を増やす方法を検討する
親などからの援助を受ける
公的支援制度を利用する
支出を減らす
5-1. 収入を増やす方法を検討する
筆者が弁護士として離婚の相談や依頼を受けるケースでも、離婚に向けて、もともと専業主婦だった人が就職先を探したり、パートから正社員への転換を希望したり、あるいは収入を増やすために転職や副業を検討したりと、さまざまな方法で収入を増やせないかと考える場合が多くあります。
また、ハローワークの職業訓練などを利用してスキルアップしたり、資格を取ったりして収入を増やすことをめざす人もいます。
この方法を実践するには、一般的にある程度の時間がかかります。離婚後から着手するのではなく、離婚前から、できれば離婚を決意した時点から早めに準備を進めるとよいでしょう。
5-2. 親などからの援助を受ける
収入を増やすための準備をしている間など、安定した収入を得られない間は、親などからの援助を受けたり、実家で両親と同居して支出を抑えたりするなど、周りの人に一時的に頼る選択肢も考えられます。
5-3. 公的支援制度を利用する
離婚後は、児童手当などひとり親に限らず子どもを養育している親に支給される手当に加えて、以下のような「ひとり親世帯」を対象とした公的な手当や助成金制度を利用する方法も考えられます。自治体によって名称や利用条件などが異なるため、詳しくは自治体の窓口に相談することをお勧めします。
児童扶養手当
児童育成手当
ひとり親世帯家賃助成制度
ひとり親家庭等医療費助成制度
母子(または父子)福祉資金の貸し付け制度
なお、上記のほかにも、ひとり親世帯を対象としているわけではないものの、以下のような制度の利用も考えられます。
生活福祉資金貸付制度
生活保護
各種減免制度(国民年金、健康保険、住民税など)
5-4. 支出を減らす
すぐに収入を増やすのが難しい場合には、まずは固定費などの支出を減らすことを検討してみましょう。
家賃を減らすことを目的として公営住宅に応募する、家賃の低い物件へ引っ越す、光熱水費や食費などを節約する、保険や車の維持費などを見直す、といった方法が考えられます。
6. 離婚後の生活費に関することも含め離婚前に弁護士に相談するメリット
離婚に向けて、生活費に関する悩みがあれば、配偶者と離婚の話し合いをする前に、一度弁護士に相談することをお勧めします。
財産分与や慰謝料、養育費、年金分割といった各費用が実際に自分のケースで請求できるのか、具体的な金額はいくらになるのかについて、法的観点から検討したうえで、アドバイスをもらえます。
離婚に伴って配偶者に請求できる費用の見通しが立てば、それらを前提に、離婚のタイミングや進め方、今後の生活費について具体的なイメージを持てるようになります。
また、離婚後の具体的な生活をシミュレーションすることで、配偶者との話し合いでどのような離婚条件を提示すべきかを逆算し、実現性の高い目標を設定できます。弁護士に依頼すれば、目標を達成するために、交渉の仕方についてアドバイスを受けたり、弁護士に交渉を任せたりすることもできます。
なお、ファイナンシャルプランナーの資格を持っている弁護士に相談すれば、生活費の見直しによる家計の改善や、資産運用など今後のライフプランに関するアドバイスなど、離婚後の生活も含めた総合的なアドバイスを受けられるでしょう。
7. 離婚後の生活費に関してよくある質問
配偶者に対して離婚を切り出す前、できれば離婚を検討する段階から、離婚後の生活設計を考えるとよいでしょう。具体的なシミュレーションをしたうえで、離婚後も生活費の不安がなさそうだという見通しが立てば、配偶者と離婚の話し合いをする際も、経済面での過度な不安がなくなり、気持ちの余裕が生まれます。
基本的に配偶者名義の借金は、配偶者に支払い義務があります。そのため、離婚したあとは元配偶者の借金を支払う義務は生じません。
ただし、配偶者の借金の保証人や連帯保証人になっていたり、配偶者との連帯債務として借り入れたりしている場合、または、配偶者があなたに無断であなた名義での借金をつくっていた場合などは、離婚後でも自身に支払いの義務が発生する可能性があります。
8. まとめ 離婚後の生活費に不安がある場合は弁護士に相談を
結婚している間も配偶者と家計を完全に分けているようなケースでない限り、離婚することで家計が大きく変わります。
離婚を考えた際は、離婚後の自分や子どもの生活を具体的にシミュレーションしなければなりません。生活費が不足する可能性がある場合には、収入を増やす、または支出を減らす手立てを考えるなどの対処も必要です。また、離婚時に分配される財産や年金について知っておくことも重要です。
離婚後のシミュレーションをするとしても、自分一人では何から手をつければよいか悩むこともあると思います。
離婚後の生活費に不安がある場合は、離婚前の早めの段階で、弁護士への相談をお勧めします。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)