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1. 配偶者からのDVの現状
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2. DVに該当する行為
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3. DVを受けたときの通報・相談先
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3-1. 110番|緊急性が高く身の危険を感じる場合
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3-2. #9110番|緊急性がなくても警察へ相談したい場合
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3-3. 配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)|加害者から逃げたい場合
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3-4. #8008番| DV相談ナビ|まずは話を聞いてほしい場合
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3-5. DV相談+(DV相談プラス)|詳しく話を聞いてほしい場合
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3-6. 弁護士|離婚や慰謝料を考えている場合
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4. 警察にDVを通報したらどうなる?
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4-1. 被害者の場合
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4-2. 加害者の場合
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5. DVで相談した後で申し立てることのできる保護命令とは
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6. DVを通報・相談する際のポイント
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6-1. DVの証拠を集める
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6-2. DVの内容や頻度などを記録する
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7. 通報以外のDVへの対処法
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7-1. 身の安全の確保
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7-2. 保護命令の申し立て
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7-3. 自立支援制度の活用
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7-4. 離婚や慰謝料の請求
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8. DVの通報に関するよくある質問
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9. まとめ DVの通報は身の安全を守るための第一歩
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1. 配偶者からのDVの現状
内閣府の調査によると、2023年度の配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は12万6743件にのぼります。
同年度の調査では、結婚経験のある人の25.1%(女性で27.5%、男性で22.0%)が配偶者から暴力を受けたことがあると回答しています。さらに、「命の危険を感じた」と答えた人は女性で15.6%、男性で7.5%と、深刻かつ継続的な暴力が多数報告されています。
一方で、被害を受けても「どこにも相談していない」と答えた人が女性で36.3%、男性は57.2%にのぼっており、表面化しないDVが多く存在していることがわかります。
2. DVに該当する行為
DVは、殴る・蹴るといった身体的な暴力だけでなく精神的、経済的、性的な暴力も含まれます。見えにくい形のDVも多く、被害者自身が「暴力」と認識しにくいケースもあります。
主なDVは、以下の行為が当てはまります。
身体的暴力:殴る、蹴る、髪を引っ張る、物を投げつけるなど
精神的暴力:人格を否定する発言、長時間の無視、怒鳴る、脅すなど
経済的暴力:働くことを禁止する、生活費を渡さない、使途を厳しく制限するなど
性的暴力:同意のない性的関係の強要、避妊の拒否、性的行為への圧力や羞恥を与えるような言動
こうした行為は、被害者の心身に大きな負担を与えるものであり、たとえ一度の出来事でもDVに該当する可能性があります。
3. DVを受けたときの通報・相談先
DV被害に気づいたとき、どこに相談すればいいか迷う人も少なくありません。緊急性の高い場合から、まずは話を聞いてほしいというケースまで、状況に応じた窓口があります。以下では、主な相談先と、それぞれの特徴をご紹介します。
3-1. 110番|緊急性が高く身の危険を感じる場合
いま暴力を受けている、あるいはすぐにでも被害を受けるおそれがある場合には、迷わず110番へ通報してください。DVによる身体的暴力は、暴行罪や傷害罪などの犯罪にあたる可能性があります。警察はこうしたケースを「民事不介入」(個人間のトラブルに警察が介入しないという原則)とせず、対応してくれます。
【電話番号】110
【受付時間】24時間
3-2. #9110番|緊急性がなくても警察へ相談したい場合
身体的暴力だけでなく、精神的・性的・経済的DVについても、状況によっては刑事事件として立件できる可能性があります。加害者に刑事罰を科すことを視野に入れている場合には、警察相談専用電話「#9110」に連絡する方法があります。
この番号は全国共通で、各都道府県の警察本部につながります。DV被害の相談であることを冒頭で伝えてください。受付時間は平日8時30分から17時15分(地域により異なる)。急を要さない場合に適した相談窓口です。
【電話番号】#9110
【受付時間】8時30分〜17時15分
3-3. 配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)|加害者から逃げたい場合
加害者との同居が困難になったときは「配偶者暴力相談支援センター」への相談が有効です。このセンターの機能は、都道府県が設置する婦人相談所や女性センター、福祉事務所、または都道府県や市町村が設置する配偶者暴力相談支援センターが担っています。
一時保護やカウンセリング、医療機関・法的機関への同行支援など、状況に応じた支援を受けられます。
内閣府のページでは、全国のセンター一覧を確認できます。最寄りのセンターに直接連絡するか、後述のDV相談ナビを利用してもつながります。
3-4. #8008番| DV相談ナビ|まずは話を聞いてほしい場合
「DVかどうかもわからないけど、不安がある」「誰かに話を聞いてほしい」と感じたときには、「DV相談ナビ」が役立ちます。全国共通番号「#8008」にかけると、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。
匿名での相談も可能で、カウンセリングや一時保護、保護命令の申立てに関する支援など、状況に応じたサポートを受けられます。
【電話番号】#8008
【受付時間】12時〜22時
3-5. DV相談+(DV相談プラス)|詳しく話を聞いてほしい場合
「DV相談+」は、より幅広い相談ニーズに対応する窓口として、2020年4月に設けられました。電話やメールは24時間受付、チャット相談も毎日12時から22時に対応しています。
必要に応じて、面接や同行支援、安全な避難先の手配も行っています。また、毎週日曜の15時から21時には男性専用の相談時間が設けられています。専門の相談員に丁寧に対応してもらえる点が特徴です。
【電話番号】0120-279-889
【受付時間】24時間
【URL】https://soudanplus.jp/
3-6. 弁護士|離婚や慰謝料を考えている場合
DVを理由に離婚したい、慰謝料を請求したいと考えた時には弁護士に相談するのが適切です。弁護士であれば、証拠の集め方や申立てに必要な準備や今後の見通しなど、状況に即した具体的なアドバイスを受けられます。
また、依頼すれば加害者との交渉を代理してもらうこともでき、精神的な負担を軽減できます。経済的に不安がある場合は、法テラスを通じて無料相談や弁護士費用の立替制度を利用できる場合もあります。
4. 警察にDVを通報したらどうなる?
DV被害を警察に通報した場合、状況によっては加害者の制止や逮捕、裁判所への保護命令申立てなど、さまざまな対応がとられます。加害者にとっても、刑事事件として処理されたり、勾留(刑事施設への拘束)されたりするなど大きな影響を及ぼすことがあるため、通報は深刻な意味を持ちます。
ここでは、被害者・加害者それぞれの立場で、警察に通報したあとの流れを説明します。
4-1. 被害者の場合
緊急の通報により警察が出動した場合、まずは加害者の制止や引き離し、事情聴取などの対応がとられます。暴力の態様によっては、その場で加害者が逮捕される可能性もあります。
通報の内容が切迫していない場合でも、事前に警察に相談することは有効です。被害状況を伝えておけば、パトロールの強化、緊急連絡先の共有などの支援を受けられることがあります。
さらに、警察に相談した事実があればDV防止法に基づき家庭裁判所へ「保護命令」を申し立てられます。保護命令には、6カ月間の接近禁止命令や2週間の退去命令などがあり、これに違反した場合、加害者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。保護命令が出されると、警察が被害者宅を訪問し、連絡体制の確認なども行います。
また、相談に加えて「被害届」を提出すれば、状況によっては加害者が正式に刑事事件の被疑者として捜査され、逮捕に至る場合もあります。
4-2. 加害者の場合
被害者や第三者が警察に通報すると、加害者は暴行罪や傷害罪の疑いで処分を受ける可能性があります。特に、暴力の証拠がはっきりしていたり、逃げるおそれや証拠を隠すおそれがあると判断されたりすると、その場で逮捕されることもあります。
逮捕されると最大72時間身体を拘束され、検察官が勾留を求めて裁判所が認めれば、さらに10日間(延長で最大20日間)拘束されます。その間に起訴されれば刑事裁判となり、有罪になると前科がつきます。通報された加害者は起訴を避けるために、被害者に謝罪や治療費・慰謝料の支払いを行い、示談を結ぶ必要に迫られる場合もあります。一方で、もしDVの事実がなく虚偽の通報を受けたと感じる場合には、早めに弁護士へ相談することが重要です。適切な対応をとらなければ、不当な処罰を受けるおそれがあるためです。

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5. DVで相談した後で申し立てることのできる保護命令とは
警察や配偶者暴力相談支援センターに相談したあと、必要に応じて家庭裁判所に「保護命令」を申し立てることができます。保護命令とは、加害者が被害者に近づいたり連絡したりすることを裁判所が禁止する命令で、被害者の安全を確保するための制度です。
2024年4月に施行された法改正により、申立ての対象となるDVの範囲が拡大され、精神的・経済的な暴力についても申し立てが可能になりました。さらに、保護命令に違反した場合の罰則も強化されています。
保護命令の種類はいくつかあります。具体的には以下のとおりです。
被害者への接近禁止命令
被害者への電話・SNSなどの禁止命令
同居する子どもへの接近禁止命令
同居する子どもへの電話・SNSなどの禁止命令
被害者の親族などへの接近禁止命令
被害者と住んでいる住居からの退去命令
6. DVを通報・相談する際のポイント
DVは緊急の場合を除き、証拠があるかどうかによって対応が変わります。ここでは、DVを通報、相談する際のポイントを解説します。
6-1. DVの証拠を集める
今まさに暴力を受けている場合は緊急通報が優先されますが、事前に相談する際には、DVの証拠の有無が重要になります。証拠が乏しいと、警察や支援機関がすぐに対応できないことがあるためです。
DVの証拠となり得るものは、例えば以下のようなものが挙げられます。
けがの写真や診断書(身体的DV)
暴言や脅迫の録音・録画データ(精神的DV)
生活費を一方的に制限された記録(経済的DV)
無理やり性的関係を強要されたときの記録(性的DV)
なるべく複数の証拠を集めるようにしましょう。
6-2. DVの内容や頻度などを記録する
証拠がすぐに手に入らない場合でも、日々の記録を残すことが有効です。たとえば、日記やメモ帳などに、DVを受けた日時、場所、行為の内容、けがの有無、精神的な影響などを具体的に記録しておきましょう。
このような記録は、数が多くなるほど信頼性が高まります。長期にわたるDVの記録は、警察や裁判所にDVの深刻さを伝える材料になります。小さなことでも、できるだけこまめに書き残しておきましょう。
7. 通報以外のDVへの対処法
DVに直面したとき、警察への通報以外にも取れる手段があります。自分の身を守りつつ、生活の立て直しや加害者からの法的保護、経済的な支援など、状況に応じた対処を検討していきましょう。
7-1. 身の安全の確保
暴力が日常的に続いていたり、今まさに危険が迫ったりしている場合は、まず安全な場所に避難しましょう。配偶者暴力相談支援センターでは、緊急性が高いと判断された場合に、シェルター(一時保護施設)への入所を案内してくれることがあります。
シェルターの場所は安全のため非公開となっており、直接向かうことはできません。利用を希望する場合は、必ず専門の窓口に相談してください。
7-2. 保護命令の申し立て
警察や配偶者暴力相談支援センターに相談したうえで、裁判所に「保護命令」を申し立てることも可能です。保護命令とは、加害者に対して被害者への接近や連絡などを禁じる命令です。
たとえば、面会禁止、電話・メールの禁止、住居からの退去命令などがあります。申立てには、被害状況を示す資料や証言が必要になることがあるため、支援機関や弁護士に相談しながら進めるのが安心です。
7-3. 自立支援制度の活用
DVを受けている方の中には、経済的な不安や住まい、仕事の確保が課題になるケースも少なくありません。
配偶者暴力相談支援センターでは、職業訓練や就職のサポート、公営住宅の案内、生活保護などの制度についての情報提供も行っています。自立の準備を進めるうえで、不安なことがあれば遠慮せず相談してみましょう。
7-4. 離婚や慰謝料の請求
DVを理由として、離婚や慰謝料の請求を検討することもできます。加害者に対して損害賠償請求を行いたい場合は、内容証明郵便による通知や、弁護士を通じた代理交渉、家庭裁判所への離婚調停の申立てなど、複数の手段があります。
DVの被害を受けながら一人で対応するのは困難な場合もあるため、法テラスや弁護士への相談を活用しましょう。

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8. DVの通報に関するよくある質問
加害者からの報復やさらなる混乱を防ぐためにも、逃げるようにすすめる前に、まずは専門機関に相談するのが適切です。なお、暴力の現場を目撃したなど緊急性が高い場合は、ためらわずに110番通報してください。
事前相談の段階であれば、配偶者暴力相談支援センターなどの相談機関では秘密が守られるため、安心して相談できます。また、緊急時の通報であれば、警察が加害者との引き離しや事情聴取を行い、必要に応じてシェルターの紹介や逮捕といった対応が取られます。
警察に相談しても動いてくれないと感じた場合でも、あきらめないことが重要です。まずは物理的に加害者から離れることを優先しましょう。そのうえで、弁護士に相談することで、被害状況に応じた適切なアドバイスが受けられます。
9. まとめ DVの通報は身の安全を守るための第一歩
DVの被害を受けている、あるいはその可能性がある場合、ためらわずに警察や配偶者暴力相談支援センターなどに通報・相談することが重要です。警察による現場介入や加害者との引き離し、保護命令の申し立てといった措置により、被害者の安全が確保されるケースも少なくありません。
通報や相談に際しては、暴力の証拠や記録を残しておくことで、支援や手続きをより確実に進めやすくなります。一人で抱え込まず、必要に応じて弁護士や専門機関の力を借りながら、早めの行動を心がけましょう。
(記事は2025年10月1日時点の情報に基づいています)