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1. 熟年離婚をする前に準備すべきこと
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1-1. 夫婦の財産を把握する
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1-2. 希望の離婚条件を考えておく
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1-3. 離婚原因の証拠を集めておく
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1-4. 年金分割で得られるお金を把握する
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1-5. 離婚後の生活費を計算する
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1-6. 離婚後の住居を確保する
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1-7. 趣味や目標をつくっておく
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1-8. 弁護士に相談をしておく
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2. 【ケース別】熟年離婚前に準備しておきたいこと
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2-1. 専業主婦の場合
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2-2. 会社員男性の場合
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2-3. 夫婦共働きの場合
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3. 熟年離婚の準備を怠るとどうなる?
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3-1. 離婚の交渉が難航する可能性がある
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3-2. 金銭的に損をする可能性がある
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3-3. 離婚後の生活が不安定になる
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4. 熟年離婚の準備から離婚成立までの流れ
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4-1. 事前準備
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4-2. 離婚の話し合い
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4-3. 離婚の成立
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5. 熟年離婚の準備でよくある質問
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6. まとめ 熟年離婚に自立した生活を送るためにも、事前準備が重要
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1. 熟年離婚をする前に準備すべきこと
熟年離婚では、財産や生活の見通しなど考えることが多く、事前の準備がとても重要です。離婚後に後悔しないよう、話し合いを始める前に確認しておきたいポイントを解説します。
1-1. 夫婦の財産を把握する
離婚では「財産分与」が大きなテーマになります。結婚後に築いた財産は原則として分ける対象になるため、夫婦でどんな財産があるかを事前に整理しておくことが重要です。
特に熟年夫婦の場合、家や車、預貯金、保険、証券口座など資産が多岐にわたることが多く、全体像を把握するのは手間がかかります。また、離婚の話し合いがこじれてからでは、情報を開示してもらえないこともあるため、今のうちに取引している金融機関などを調べておくと安心です。
1-2. 希望の離婚条件を考えておく
離婚の話し合いをスムーズに進めるためには、あらかじめ「自分が望む条件」を整理しておくことが大切です。財産分与や慰謝料、子どもがいる場合は親権・養育費など、希望する条件をリストアップしておきましょう。
すべてを通そうとすると、かえって交渉が難航することもあります。「ここは譲れる・譲れない」などの優先順位を決めておけば、話を進めやすくなります。
1-3. 離婚原因の証拠を集めておく
相手に明らかな離婚理由がある場合、慰謝料を請求できることがあります。不貞行為(肉体関係を伴う浮気)やDV(暴力)などがその典型です。
ただし、こうした問題は証拠がないと離婚原因として主張するのが難しく、離婚を切り出したあとでは証拠を集めづらくなる傾向があります。疑わしい段階で相手に問い詰めると警戒され、以後の証拠収集が困難になるおそれがあるため、慎重な対応が求められます。
証拠が足りているか不安な場合は、離婚問題に詳しい弁護士に一度相談してみると安心です。
1-4. 年金分割で得られるお金を把握する
熟年離婚では、老後の生活を支える「年金」も重要です。相手が会社員や公務員で厚生年金に加入している場合、婚姻中の保険料納付実績に応じて年金を分け合う「年金分割」が可能です。
共働き夫婦の場合は、自分の方が受け取れる年金が少ないこともあるので、分割の対象になるかどうか確認しておきましょう。
婚姻期間中の年金の情報「年金分割のための情報通知書」は年金事務所(公務員は共済組合)で取得できます。また、50歳以上であれば、実際にもらえる見込み額の試算も可能です。
1-5. 離婚後の生活費を計算する
離婚を考えるとき、まず気になるのが「一人で生活していけるかどうか」です。総務省の家計調査(令和6年)によると、単身世帯の月の平均消費支出は約17万円。年間では約203万円が必要になる計算です。
自分の収入や年金の見込み額、財産分与で得られる金額などをもとに、離婚後の生活が成り立つかどうか、現実的にシミュレーションしておきましょう。
1-6. 離婚後の住居を確保する
生活費と同じくらい重要なのが住まいです。今の家に財産分与で住み続けるのか、売却して新たに住まいを探すのか、実家に戻るのかなど、複数の選択肢があります。
公営住宅や高齢者向け賃貸、将来的には老人ホームという選択も考えられます。病院へのアクセスや生活環境を含め、自分のライフスタイルに合った住まいを選びましょう。実家に戻る場合は、あらかじめ親族と話し合っておくことも大切です。
1-7. 趣味や目標をつくっておく
熟年離婚では、子育てが終わり、仕事もリタイアに近づき、人生の節目を迎える人が多いものです。離婚後の生活で「孤独感」や「喪失感」を感じやすいという声もあります。
そこで、始めたい趣味や、地域とのつながり、目標を持っておくと心が前向きになります。いきなり人間関係を築くのは難しいので、離婚前から少しずつ準備しておくのがおすすめです。
1-8. 弁護士に相談をしておく
熟年離婚では、財産や年金、今後の生活設計など幅広い問題が関わります。弁護士に早めに相談することで、財産分与の方針や慰謝料請求の見通し、証拠の有無などを具体的に確認することができます。
正式に依頼すれば、相手との交渉や調停、裁判まで任せることができますが、自分で交渉する場合でも、事前に法的なアドバイスを受けておくと自信を持って対応できます。「どこから手をつけていいかわからない」と感じたときこそ、まずは専門家の意見を聞いてみましょう。
2. 【ケース別】熟年離婚前に準備しておきたいこと
熟年離婚では、夫婦の状況や働き方によって、離婚前に準備しておくべきことが異なります。ここでは「専業主婦」「会社員男性」「共働き夫婦」の3つのケースに分けて、それぞれ注意すべきポイントを紹介します。
2-1. 専業主婦の場合
離婚後の暮らしを安定させるためには、収入と支出のバランスを事前に確認しておくことが大切です。財産分与や年金分割で得られる金額を見積もり、老後にかかる生活費と照らし合わせて、不足が出そうな場合は、できるだけ早めに仕事探しを始めることが望ましいでしょう。
なお、同居中のうちに、夫が利用している金融機関や保険会社、証券会社などの情報を把握しておくと、財産分与の際に役立つ場合があります。
長く専業主婦だった人にとって、仕事を探すのは不安かもしれませんが、ハローワークや求人サイトに加え、業界団体の採用ページなども活用してみましょう。高齢者向けの就労支援や職業訓練を提供している自治体もあるため、自分に合った方法で少しずつ準備を進めることがポイントです。
2-2. 会社員男性の場合
日本では、夫が主に働き、妻が専業主婦やパートという家庭も多く見られます。このような場合、財産分与の金額が高額になることもあるため、離婚後の生活費や支払いの見通しについて、あらかじめ考えておく必要があります。
また、これまで家事を担ってこなかった場合には、炊事や掃除、洗濯など、最低限の家事をこなせるよう準備しておくことで、離婚後の生活がスムーズになるでしょう。
2-3. 夫婦共働きの場合
共働き夫婦の場合、生活費を出し合いながら、各自で収入や資産を管理しているケースが少なくありません。そのため、いざ離婚となった際、相手の財産が把握できずに財産分与でもめてしまうこともあります。
離婚後のトラブルを避けるためにも、離婚前から相手が利用している金融機関や証券会社、保険などの情報を把握しておきましょう。給与口座や貯金、投資、保険など、共有財産になり得るものはリストアップしておくと、話し合いもスムーズに進みます。
3. 熟年離婚の準備を怠るとどうなる?
熟年離婚は、精神的・経済的な影響が大きくなりやすいため、準備をせずに進めるとさまざまなトラブルに発展します。ここでは、準備不足によって起こり得る代表的なリスクを紹介します。
3-1. 離婚の交渉が難航する可能性がある
突然離婚を切り出しても、相手が納得せず、話し合いが進まないケースもあります。協議でまとまらなければ、調停や裁判に発展し、解決までに時間や費用、精神的負担がかかります。
離婚の理由や希望する条件をあらかじめ整理し、相手に説明できるようにしておきましょう。財産の把握や離婚原因に関する証拠を事前に準備しておくと、交渉を有利に進められる可能性が高まります。
3-2. 金銭的に損をする可能性がある
財産分与や年金分割は、離婚後の生活を左右する大事な要素です。夫婦の共有財産や退職金の金額、年金記録などを確認せずに進めてしまうと、本来受け取れるはずの金銭を逃してしまうおそれがあります。
また、自分の方が多く財産を持っていることに気づかず、不用意に話を進めた結果、想定以上の金銭的負担を負うことになる場合もあります。経済的な不利益を防ぐためにも、財産状況は事前にきちんと整理しておきましょう。
3-3. 離婚後の生活が不安定になる
離婚後は、収入や住まい、人間関係など生活の多くが一変します。準備をしていないと、思っていたより収入が少なかった、賃貸住宅が借りられなかった、実家に戻れなかったといった問題が起こり得ます。
生活面だけでなく、孤独感や精神的な負担から体調を崩してしまう人もいるので、離婚後に頼れる人がいるか、どのように暮らしていくのか、現実的に考えておくことが重要です。

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4. 熟年離婚の準備から離婚成立までの流れ
熟年離婚では、経済面や生活面の不安から、なかなか踏み切れない人も少なくありません。焦らず段階を踏んで準備を進めることで、離婚後の生活の見通しが立ちやすくなります。
4-1. 事前準備
離婚を考え始めたら、まずは「準備」を行います。離婚原因に関する証拠の有無を確認したり、夫婦の共有財産や相手の取引金融機関を調べておいたりと、できることから少しずつ始めましょう。
また、離婚後の暮らしをイメージして、生活費や住まい、収入のシミュレーションを行うことで、自分にとって無理のない選択かどうかを見極めることにもつながります。準備の段階で、意外と現状の生活が悪くないと気づく人もいます。それもまた、大切な気づきと言えるでしょう。
4-2. 離婚の話し合い
離婚を切り出す際は、事前に考えておいた条件を落ち着いて伝えることが大切です。日本では、約88%の離婚が協議によって成立しています(2023年政府統計)。そのため、まずは夫婦での話し合いが解決の基本となります。
一方で、相手が離婚に納得していなかったり、感情的なやり取りになったりすると、話が前に進みにくくなります。感情的に相手を責めると関係がこじれやすいため、なるべく冷静な態度を心がけましょう。
相手が離婚理由を知りたがる場合もありますが、納得してもらうのは簡単ではありません。ただし、理由を丁寧に伝えることで、スムーズに進展することもあります。
話し合いが難しい場合や、DVなどの事情があるときには、無理をせず第三者に相談することも検討しましょう。
4-3. 離婚の成立
夫婦の話し合いで離婚に合意できれば、協議離婚届を市区町村役場に提出すれば離婚は成立します。ただし、年金分割は別途手続きが必要です。
合意内容は、あとで揉めないように文書にして残しておいた方がいいでしょう。とくに子どもの養育費について取り決めた場合には、合意内容を公正証書にすることをおすすめします。
夫婦で話し合ったけれども合意できなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所で話し合うことになります。調停でも合意ができない場合は、離婚訴訟を提起して、裁判官に決めてもらうことになります。
5. 熟年離婚の準備でよくある質問
熟年離婚に最適なタイミングは人によって異なりますが、子どもが独立していることや、経済面での見通しが立っていることが一つの目安になります。
たとえば、子どもが成人済みで、正社員として働いている女性の場合、夫が定年退職する時期に離婚を切り出せば、退職金や年金なども含めた財産分与の交渉がしやすくなる場合があります。
一方で、専業主婦の方は、離婚後の収入源を確保する必要があるため、まずは働き口を見つけて経済的な土台を築いてから離婚を進める方が安心です。
一番のメリットは、これまで我慢してきた相手と離れられることです。日々のストレスから解放され、自由な時間を取り戻せる点に魅力を感じて離婚を選ぶ人もいます。「定年後ずっと一緒に過ごすのはつらい」と感じていた人にとっては、大きな転機になることもあります。
法律上の不利はありませんが、生活環境の変化で孤独や生活水準の低下を感じることがあります。家事に不慣れだと健康を損なう恐れもあり、専業主婦やパート勤務の人は収入確保が難しくなるため、事前の生活設計が欠かせません。
離婚前に新しいパートナーができると、性交渉がなくても交際の状況によっては不貞行為または不貞に準じる関係があるとして慰謝料を請求される場合もあるため注意が必要です。
また、有責配偶者と認定され、裁判上の離婚が認められない可能性もあるのでおすすめはできません。
6. まとめ 熟年離婚に自立した生活を送るためにも、事前準備が重要
熟年離婚は、長年のすれ違いや不満が積み重なった結果として選ばれることがあります。自由な時間を得られる反面、経済的不安や周囲への説明の難しさなど、新たな課題も生じます。
特に年金分割や財産分与など、離婚後の生活に直結する問題への備えが欠かせません。感情だけで決断せず、離婚後の生活設計や法的手続きについて考え、離婚に備えることが大切です。迷いや不安がある場合は、早めに弁護士へ相談し、客観的な助言を得ておきましょう。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)