離婚問題に強い弁護士を探す
朝日新聞社運営の離婚情報ポータルサイト
更新日: / 公開日:

養育費は子どもが15歳になったら増額できる? 認められる理由や請求方法を解説

更新日: / 公開日:
調停や審判では、子どもが15歳になったという理由で一律に養育費の増額が認められるわけではありません (c)Getty Images
子どもが大きくなるにつれて、教育や生活にかかる費用が増加することはよくありますが、養育費もその成長に応じて増額できるのでしょうか。特に子どもが15歳を迎えた際に、養育費の増額を請求できるのかどうか、親としては気になるところです。養育費の増額が認められる理由や、その請求方法について弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 養育費は子どもが15歳になったら増額できる?
  • 1-1. 子どもが15歳になったら養育費を増額できる根拠
  • 1-2. 養育費はいくら増額できる?
  • 2. 養育費の増額が認められるケースと認められないケース
  • 2-1. 養育費の増額が認められるケース
  • 2-2. 養育費の増額が認められないケース
  • 3. 15歳になった子どもの養育費増額が認められた事例
  • 4. 15歳になった子どもの養育費増額請求のポイント
  • 4-1. 事情変更の内容を具体的に主張する
  • 4-2. 養育費増額を定めた公正証書を作成する
  • 4-3. 弁護士に相談する
  • 5. 養育費増額の手続き
  • 5-1. 協議
  • 5-2. 内容証明郵便の送付
  • 5-3. 養育費増額調停
  • 5-4. 養育費増額審判
  • 6. 2026年5月までに導入|共同親権制度が養育費増額請求に与える影響は?
  • 7. 養育費の増額に関してよくある質問
  • 8. まとめ 養育費の増額に関する総合的な判断は弁護士の力を借りて
今すぐ電話できる!
無料相談OK 事務所も!
朝日新聞社運営「離婚のカタチ」で
離婚問題に強い弁護士を探す

1. 養育費は子どもが15歳になったら増額できる?

子どもが15歳になった際、当事者間の話し合い(=協議)で合意が得られる場合には養育費を増額できます

話し合いがまとまらず、それでも養育費の増額を希望する場合には、家庭裁判所の調停や審判手続きを利用する流れになります。調停や審判では、子どもが15歳になったという理由で一律に養育費の増額が認められるわけではありません。子どもの年齢だけでなく、養育費を支払う側と受け取る側の収入や家族構成の変化など、ほかの要素を総合的に考慮して判断されます。

1-1. 子どもが15歳になったら養育費を増額できる根拠

子どもが15歳に達したタイミングを理由に養育費の増額を求める背景には、家庭裁判所が公表している養育費算定表が関係していると考えられます。

裁判所が公表している養育費算定表は、親の収入や子どもの人数のほか、子どもの生活費の割合(生活費指数)を考慮して作成されています。大人の生活費指数を100とした場合、子どもが0歳から14歳までの場合の指数は62、15歳以上の場合は85となります。つまり、15歳未満の子どもより15歳以上の子どものほうが、生活に必要な費用が大きいことを示しています。

この指数の違いにより、子どもが15歳を迎えると、その年齢に応じた養育費の増額を検討するケースが多く生じると考えられます。

関連
養育費算定表の見方【最新版】 計算方法を弁護士がわかりやすく解説

1-2. 養育費はいくら増額できる?

調停や審判では、養育費算定表を用いて決めるのが一般的です。ただし、算定表の金額はあくまで目安ですので、個別具体的な事情を考慮しつつ具体的な金額を算定します。当事者間で合意できるのであれば、算定表どおりの金額でなくても構いません。

2. 養育費の増額が認められるケースと認められないケース

養育費の増額が認められるためには、事情の変更が生じていることが必要です。養育費の増額が認められるほどの事情の変更が生じているかどうかは、主に以下の要素を基準に判断されます。

  • 当初の取り決めの前提となった事情に重要な変更が生じたこと

  • 事情の変更を当事者が予見できなかったこと

  • 当初の取り決めどおりに養育費の支払いを維持するのが不公平や不合理であること

事案によっては、事情変更について当事者に帰責性がないか、公平な視点から増額を認めることが不当でないかなども検討されます。

2-1. 養育費の増額が認められるケース

子どもが15歳になったときに養育費の増額が認められる可能性があるのは、養育費を取り決めた時点で15歳に達するまでの期間が相当程度ある場合、あるいは子どもが15歳に達したときにあらためて協議する旨の合意がある場合です。

たとえば、養育費の取り決めをした当時、子どもが小学生だった場合、高校進学については将来の不確定な事由と言えることもあるでしょう。この場合、高校への進学が具体化した場合に事情変更が認められる可能性があります。

子どもが15歳に達するまでの期間が短い場合でも、15歳に達したときにあらためて養育費について協議する旨の合意をしていれば、養育費の増額が認められる可能性があります。

上記に当てはまらない場合でも、以下の事情がある場合には、増額が認められる可能性があります。

  • 養育費を支払う側の年収が増加した

  • 養育費を受け取る側の年収が減少した

  • 子どもの進学により教育費が増加した

  • 病気や障害などにより子どもの医療費が増加した

関連
養育費の特別費用とは? 増額して請求できる内容や方法を解説

2-2. 養育費の増額が認められないケース

当初の取り決め時に、子どもが15歳以上になったときに必要な費用も含めて養育費の額を定めていた場合には、増額は認められにくいと言えます。たとえば、取り決め時にすでに高校進学が決まっており、その学費を考慮して養育費の金額を定めていたケースなどです。この場合、子どもが15歳に達したことは養育費を増額すべき事情の変更に該当するとは言い難いでしょう。

15歳に達したあとも養育費を増額しない旨の合意を当事者間でしていた場合も、その合意内容を維持することが公平に反すると言えない限り、増額が認められる可能性は低いです。また、当初取り決めた養育費の金額が養育費算定表の目安よりも高めに設定されているケースでは、増額を請求しても認められない可能性があります。

もっとも、養育費の増額の可否は、養育費を支払う側と受け取る側の収入や家族構成によっても異なりますので、それらの変化によっては増額請求が認められる場合もあります。

養育費について悩んでいる人へ
養育費を弁護士に無料相談できる窓口3選 それぞれの特徴から選び方まで解説

3. 15歳になった子どもの養育費増額が認められた事例

15歳になった子どもの養育費増額が認められた裁判例を紹介します(東京高等裁判所令和3年3月5日判決)。

長男Aの親権者である母親が、父親に対して以下の事情を理由に養育費の増額を求めた事案です。

  • 父親の収入が調停成立時よりも増額したこと

  • 長男Aが15歳に達して高校に進学したにもかかわらず、その教育費が養育費に盛り込まれていないこと

東京高等裁判所は、「標準算定方式を採用する場合、子が15歳に達すると生活費指数が増えるのであるから、当事者双方において子が15歳に達したあとも養育費を増額させないことを前提として養育費の金額について合意したなどの特段の事情が認められない限り、子が15歳に達したことは原則として養育費を増額すべき事情の変更に該当するもの」として、養育費の増額を認めました。

この事例では、それまで月額5万円であった養育費が、月額6万円に増額されています。

なお、一つ前の段階の原審では、これらの事情変更は離婚調停当時に予測不能であったとは言えないとして、養育費の増額は認められていませんでした。

4. 15歳になった子どもの養育費増額請求のポイント

養育費の増額を請求する場合には、取り決め時に予測し得なかった事情の変更を具体的に主張することが重要です。当事者間の協議により増額の合意に達した場合は、合意内容を公正証書にすることをお勧めします。公正証書は、公務員である公証人が当事者からの委任により作成した公文書であり、強い証拠力をもちます。

4-1. 事情変更の内容を具体的に主張する

養育費の増額に関して相手の合意を得る、あるいは裁判所に認めてもらうには、客観的な証拠を示しつつ増額の必要性を具体的に示すことが重要です。

たとえば、養育費を受け取る側の収入が減少したことを理由に養育費の増額を求める場合には、その減収が一時的ではなく恒常的である点も主張し、立証する必要があります。不慮の事故や病気、勤務先の業績不振や倒産などによって退職や転職を余儀なくされた場合には、それを示す証拠を示しながら、養育費の取り決め当時には予測し得なかったことを主張します。

子どもに重い病気や障害が判明し、高額な医療費が発生した場合には、医師の診断書や意見書、医療機関の領収証などを提示して、相手に分担を求めます。

4-2. 養育費増額を定めた公正証書を作成する

当事者間の協議により養育費の増額の合意に至った場合には、その合意内容を公正証書として残しておくことをお勧めします。公証人が作成する公正証書には当事者間の合意内容が明確に記録されるため、「言った」「言わない」の論争を回避できます。

支払いが滞った場合には直ちに強制執行を受けてもやむを得ないという強制執行認諾文言を付しておけば、相手が増額後の養育費を支払わない場合に、裁判を経ずに強制執行の手続きに移れます。

公正証書を作成する場合の流れは、以下のとおりです。

【STEP1】当事者間の合意内容をメモにまとめる

【STEP2】最寄りの公証役場に連絡をして必要書類を確認し、公証人との打ち合わせ日時を予約する

【STEP3】打ち合わせ当日、公証役場へ行き、公正証書の内容について公証人と打ち合わせをする

【STEP4】打ち合わせの内容と提出書類に基づいて、公証人が公正証書の原案を作成する

【STEP5】作成当日は当事者双方が公証役場に出向き、公証人の面前で公正証書の内容を確認し、署名捺印する

【STEP6】公正証書作成手数料を支払い、公正証書の正本と謄本を受け取る

4-3. 弁護士に相談する

養育費の増額を請求する場合には、経験豊かな弁護士に相談するとよいでしょう。

弁護士に相談すれば、養育費の増額が認められる可能性や交渉の進め方について、適切なアドバイスが受けられます。相手の合意が得られない場合でも、弁護士が交渉窓口となることで、相手から譲歩を引き出せる可能性があります。

調停や審判での解決を図る場合にも、養育費の増額を求める理由を弁護士が説得的に主張し、立証することで、有利な結果を得られる可能性が高まります。

養育費の相談ができる弁護士をお探しなら朝日新聞社運営 「離婚のカタチ」
初回無料
相談アリ
離婚が
得意な弁護士
エリアで
探せる

5. 養育費増額の手続き

養育費の増額を求める場合は、まずは当事者間の話し合いによる合意をめざします。相手の合意が得られない場合には、家庭裁判所の調停や審判手続きによる解決を図ります。

5-1. 協議

まずは相手に連絡し、養育費の増額を直接求めてみましょう。

相手の合意を引き出すためには、増額を求める理由を丁寧に説明することが大切です。どの程度の養育費の増額を望むのか、金額を裏づける資料も準備しましょう。

相手が婚姻中も子どもの監護に積極的に関わっていなかったり、離婚後に相当期間が経過していたりするケースでは、子どもの養育にどのくらいの金銭的負担が生じるのか理解していないこともあります。

客観的証拠を示して説得的に説明すれば、相手も増額が必要な理由を理解してくれるかもしれません。

支払う側の事情も考慮して、どのくらいまで増額が可能か、冷静に話し合うことが重要です。

5-2. 内容証明郵便の送付

相手と連絡がつかない場合や話し合いに応じてもらえない場合には、内容証明郵便を送付し、養育費を増額してほしい旨の意思表示をしましょう。内容証明郵便は、差出人や受取人、送付日、手紙の内容などを郵便局が証明する郵便サービスで、養育費の増額請求をする場合にも活用できます。

協議に応じてもらえない場合には、裁判所を介した調停などの法的手続きも辞さない、という覚悟を相手に伝えることで、相手が重い腰を上げてくれる可能性が高まります

5-3. 養育費増額調停

当事者間の協議による合意が難しい場合や、調停調書の作成により支払いに関して強制力をもつ債務名義を得たい場合には、家庭裁判所の養育費調停を利用できます。調停は、相手の住所地の家庭裁判所または当事者の合意で定める家庭裁判所に申し立てます。

調停手続きでは調停委員が当事者双方の事情や意見を個別に聴き、合意をめざします。養育費の増額について双方が合意できれば、裁判所で調停調書が作成されることになります。

5-4. 養育費増額審判

調停が不成立となれば審判に移行します。これまでの経緯から調停での合意が見込めないことが明らかであり、養育費の増額を求める緊急性が高いときなどには、最初から審判を申し立てることもあります。

審判では、当事者双方の主張や提出された収入資料や各証拠から、一度取り決めた養育費の金額を変更することが相当と言える事情の変更が存在するかどうかを、裁判官が審理して審判を出します。

関連
養育費は増額できる? 条件や請求のポイント、養育費増額調停について解説

6. 2026年5月までに導入|共同親権制度が養育費増額請求に与える影響は?

2024年5月、民法等の一部を改正する法律が成立しました。2026年5月までに施行される予定です。

今回の改正では共同親権や養育費、面会交流など、離婚後の親の責務と子どもの権利がより明確になりました。

改正民法が施行されると、離婚の際、父母は協議により共同親権もしくは単独親権のいずれかを選択できるようになります。協議がまとまらないときには、裁判所が、子どもの利益を考慮して、双方または一方を親権者と定めることとなります。父母双方を親権者とすることで子どもの利益を害する場合には、家庭裁判所が単独親権の定めをする流れとされています。

養育費については、支払いの確保に向けた見直しがなされました。

これまでは、父母間で養育費の取り決めをしていても、支払いが滞ったときに強制執行を申し立てるためには、公正証書や調停調書、審判書などの債務名義が必要でした。今回の改正により、養育費債権に先取特権と呼ばれる優先権が付与されるため、債務名義がなくても、父母間で作成した文書に基づいて、強制執行の申立てができるようになります。

さらに、離婚時に父母間で養育費の取り決めをしていなくても、子どもと暮らす親が他方の親に対して一定額の養育費を請求できる、法定養育費制度が新設されました。

法定養育費は、離婚の日から発生し、次のいずれか早い日まで支払い義務が生じます。

  • 父母が養育費の取決めをしたとき

  • 家庭裁判所における養育費の審判が確定したとき

  • 子どもが18歳に達したとき

このほか、2020年には改正民事執行法が施行され、養育費などを滞納している相手に対して差し押さえを容易にするための制度が拡充されました。具体的には、養育費を回収するための民事執行の手続きにおいて、地方裁判所に対する一度の申立てで、次の3つの手続きをワンストップで行えるようになります。

【財産開示手続】
養育費の支払義務者に保有する財産を開示させる手続き

【情報提供命令】
市区町村や金融機関などに対し、養育費の支払義務者の給与や預貯金等の情報の提供を命じる手続き

【債権差押命令】
判明した給与や預貯金債権を差し押さえる手続き

これらの改正により、離婚時に養育費の取り決めができない場合でも、最低限の養育費を確保し、従来は泣き寝入りしていたケースでも養育費の回収が容易になることが期待されています。

7. 養育費の増額に関してよくある質問

Q. 養育費増額調停を申し立てられるのは15歳まで?

子どもが15歳に達したあとでも、養育費増額調停の申立ては可能です。


子どもがすでに成人していても、病気や障害等により独立して生活するに足る能力を持っていないと認められる個別具体的な事情が存在する場合には、支払い期間を延長できるケースもあります。

Q. 習い事を理由として養育費の増額は認められる?

当事者間の話し合いで相手の合意が得られれば、習い事を理由とした養育費の増額は可能です。


話し合いがまとまらない場合には、調停や審判で解決することになります。習い事は、通常の学校教育とは異なり、親権者がその責任と負担において子どもに習わせるものであるため、原則として相手に負担を求めることはできません。


ただし、以下のような場合には、相手に習い事の費用を負担させる余地があります。


・婚姻中から子どもが習い事を続けている
・相手が子どもの習い事に同意していた
・収入や資産状況からみて子どもの習い事の費用を相手に負担させることが相当である

Q. 「子どもの年齢が上がったから」と養育費増額を求められた場合、応じないとだめ?

養育費の増額を求められても、必ずしも応じなければならないわけではありません。


ただし、相手の事情を一切聞き入れず請求を拒否してしまうと、調停や審判を申し立てられる可能性があります。そのため、養育費の増額を求められた場合には、双方の事情を考慮して誠実に対応することをお勧めします。

Q. 養育費は15歳から上がると聞いたが、これ以上養育費を増やさない方法は?

子どもが15歳になったからといって、自動的に養育費が増額されるわけではありません。


相手から増額請求を受けた場合には、まずは請求の根拠とされている事実やそれを裏づける証拠などを確認し、弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば、相手の増額請求が認められる可能性があるのか、自分に反論の余地があるのかなどを含め、今後の対応について適切なアドバイスを受けられます。

8. まとめ 養育費の増額に関する総合的な判断は弁護士の力を借りて

子どもが成長するにつれて、養育費の増額が必要になることがあります。特に子どもが15歳になった場合、その年齢に伴う生活費や教育費の増加を理由に養育費の増額を検討するケースも少なくありません。

しかし、年齢だけで自動的に増額が認められるわけではなく、事情変更があったかどうかが重要です。養育費を受け取る側の収入が減少したなど、養育費を決めた際と状況が変わったことを示す証拠をしっかりと集める必要もあります。

養育費を増額できるかどうかは、支払う側と受け取る側の収入の変化や、子どもの進学や健康状態などを総合的に判断して決まります。当事者間で話し合いがつかない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)

今すぐ電話できる!
無料相談OK 事務所も!
朝日新聞社運営「離婚のカタチ」で
離婚問題に強い弁護士を探す

この記事に関連するタグ

離婚と子ども 養育費

弁護士を探す

離婚問題に強い弁護士を探す
※「離婚のカタチ弁護士検索サービス」への掲載を希望される場合は > こちら をご確認下さい
弁護士を探す 弁護士を探す
朝日新聞社が運営する「離婚のカタチ」は、離婚の悩みに寄り添うポータルサイトです。
「踏み出す一歩 未来の選択」をコンセプトに、 離婚で悩む人を一人でも減らしたい。
そんな思いで弁護士やカウンセラーら離婚問題に取り組む専門家が集まりました。
離婚の手続きについての正確な情報と、離婚の悩みの解決に取り組む弁護士を検索できるサービスであなたをサポートします。
新しい未来に向けて一歩踏み出してみませんか。