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1. 円満離婚とは
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2. 夫婦円満なのに離婚する理由は?
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3. 円満離婚の手続き
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4. 円満離婚をするメリット
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4-1. 短い期間で離婚しやすい
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4-2. 離婚協議によるストレスが軽減される
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4-3. 手続きに要する費用を抑えられることが多い
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4-4. 適正な条件で離婚しやすい
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4-5. 子どもへの影響を抑えやすい
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5. 円満離婚をするデメリット
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6. 円満離婚に向けた話し合いの重要性
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7. 円満離婚をする際に決めるべき離婚条件
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7-1. 財産分与
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7-2. 慰謝料
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7-3. 年金分割
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7-4. 親権
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7-5. 養育費
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7-6. 面会交流
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8. 円満に離婚する方法は? ポイントを解説
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8-1. 急ぎすぎない
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8-2. 相手の意見も尊重する
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8-3. 離婚したあとの生活も考えておく
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8-4. 離婚公正証書を作成する
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9. 円満離婚でも弁護士に相談するメリット
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10. 円満離婚に関してよくある質問
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11. まとめ 円満離婚でも条件や手続きに不安があれば弁護士に相談を
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1. 円満離婚とは
円満離婚に正式な定義があるわけではありませんが、一般的には夫婦が揉めることなくお互いに納得できるかたちで離婚 することを言います。
厚生労働省の「令和4年度『離婚に関する統計』の概況 人口動態統計特殊報告」では、2020年の離婚総数のうち、88.3%は協議離婚、11.7%は調停離婚を含む裁判離婚で、多数の夫婦が調停離婚や裁判離婚ではなく協議離婚をしていることがわかります。協議離婚のすべてが円満離婚というわけではないでしょうが、円満離婚も一定の割合で存在するものと考えられます。
2. 夫婦円満なのに離婚する理由は?
夫婦円満であるにもかかわらず、離婚する理由は何でしょうか。いろいろな理由があるでしょうが、たとえば、子どもに関する考え方が合わない、お互い結婚にこだわる必要がない、性的に魅力を感じなくなった、などの理由が考えられます。
円満離婚が成立しやすいのは、子どもがいなかったり、夫婦間の収入や資産の偏りが少なかったりなど、離婚条件に関し検討すべき事項が少ない場合です。
3. 円満離婚の手続き
離婚するための手続きには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。夫婦の双方が離婚することや離婚の条件に同意している場合は、協議離婚をすることになります。
4. 円満離婚をするメリット
円満離婚には、主に次のようなメリットがあると考えられます。
短い期間で離婚しやすい
離婚協議によるストレスが軽減される
手続きに要する費用を抑えられることが多い
適正な条件で離婚しやすい
子どもへの影響を抑えやすい
4-1. 短い期間で離婚しやすい
前述のとおり、離婚の手続きには協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがありますが、夫婦の一方が離婚に納得していない場合、調停や裁判などの手続きを踏むことになります。しかしこれらの手続きは、一般的にかなりの時間を要します。一方で、夫婦の双方が離婚に納得している円満離婚の場合には、調停や裁判などの手続きが不要なため、短い期間で離婚することができます。
4-2. 離婚協議によるストレスが軽減される
離婚条件などを話し合う離婚協議には、多くの場合で多大なストレスが伴います。特に夫婦の一方が離婚に納得していない場合には、お互いがいがみ合って冷静な話し合いができず、離婚の合意をめざし条件をすり合わせる過程でのストレスは大きくなります。その点、双方が離婚に納得していて条件面でも合意できている円満離婚では、離婚手続きによるストレスが最小限で済みます。
4-3. 手続きに要する費用を抑えられることが多い
調停や裁判などの手続きをとる場合、弁護士費用などを含めた出費が発生します。一方、円満離婚は基本的に夫婦の話し合いで離婚が成立するため、裁判費用などの出費を抑えられます。
4-4. 適正な条件で離婚しやすい
夫婦仲がよければ冷静な話し合いがしやすく、各種の離婚条件について十分な話し合いをすることができます。そのため、適正な条件で離婚できるケースが多いと言えます。
4-5. 子どもへの影響を抑えやすい
離婚をめぐって両親が不仲となった場合、子どもへの影響が懸念されます。一方で円満離婚の場合、離婚後も良好な関係が続くため面会交流も適切に実施することが可能となり、子どもへの影響を最小限に抑えることができます。
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5. 円満離婚をするデメリット
夫婦のお互いが納得している場合、離婚することに大きな問題はありません。しかし、円満だからといって離婚条件などについて深く考えずに離婚してしまうと、決めるべき離婚条件について決められていなかったり、本来得られるはずの利益が得られなかったりなど、あとになってトラブルになるケースがあるので注意が必要です。
6. 円満離婚に向けた話し合いの重要性
離婚する際には、後々のトラブルを避けるためにも、夫婦が十分に話し合い、互いに条件について納得することが重要です。
また、やみくもに離婚の意思を伝えるのではなく、話し合いを行うタイミングなどにも気をつけるべきです。たとえば、けんかの最中に、売り言葉に買い言葉で離婚を切り出すようなことがないように気をつけましょう。離婚の意思を伝える際も、相手の感情に配慮し、間違っても相手を非難したり、傷つくような発言をしたりしないよう注意してください。
相手の意見や希望も聞いたうえで妥協点を探すなど、お互い納得のいく落としどころを見つける ことも重要です。
7. 円満離婚をする際に決めるべき離婚条件
円満離婚といっても、離婚であることに違いはないため、さまざまな条件のすり合わせが必要となります。代表的な離婚条件としては次の6点があります。
財産分与
慰謝料
年金分割
親権
養育費
面会交流
7-1. 財産分与
財産分与とは、離婚するにあたり、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を清算する制度です。財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に協力して得た財産であり、誰の名義かは問いませんので、夫婦どちらかの名義の財産であっても財産分与の対象となります。
一方で、たとえば夫婦どちらかが婚姻前から所有していた財産や、相続で取得した財産など、夫婦の協力で形成した財産とは言えないいわゆる「特有財産」は財産分与の対象外です。離婚の際は、それぞれがどのような財産を所有しているか整理しておく ことが大切です。
財産分与の際に、特に問題となるのが住宅です。住宅ローンがどの程度残っているか、住宅を売却するのかそれとも一方が住み続けるのかなどによって処理の仕方が変わってきますので、住宅の財産分与に悩んだら弁護士に相談することをお勧めします。
7-2. 慰謝料
一方の配偶者に不貞行為などの離婚の原因となる有責行為があった場合、慰謝料を請求できることがあります。逆に、離婚の原因が価値観の不一致など相手に非がない場合には慰謝料を請求することはできません。円満離婚のケースでは、慰謝料を請求できない、または請求しないケースが多いように見受けられますが、不貞行為などがある場合には、慰謝料について取り決めておくことも検討の対象になります。
7-3. 年金分割
年金分割は、離婚した場合に、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。夫婦のどちらかが厚生年金に加入している場合に可能な制度で、国民年金は分割できません。
年金分割には、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を合意により2分の1を上限として分割する合意分割と、一方が専業主婦などの第3号被保険者である場合に、婚姻期間中の相手の厚生年金の保険料納付記録の2分の1の分割を請求できる3号分割があります。なお、3号分割は相手の同意や裁判手続きが不要ですが、2008年4月1日以降の第3号被保険者期間のみが年金分割の対象です。
年金分割の期限は原則として離婚が成立したときから2年とされています。合意または判決などにより分割割合が決定したら、離婚後2年以内に年金事務所に年金分割の請求を行わなければならない ため、注意が必要です。
7-4. 親権
現在の法律では、離婚後の子どもの親権者は、父母のうちどちらか一方に定める必要があります。どちらを親権者にするかは、進学や医療など子どもの監護や教育に関する事項や、財産に関する事項について、父母のどちらが決定するのが子どもの利益になるのかという観点から、子どもの利益を最優先に十分に話し合って決定します。
なお、2024年5月24日、共同親権の導入を含む改正民法が公布され、2年後の2026年5月までに施行される予定です。改正民法の施行後は、離婚後も父母の双方に親権を認める共同親権が選択できるようになります。
また、婚姻に伴い氏(名字)を変更した場合は、離婚すると原則として婚姻する前の氏(旧姓)に戻ります。
一方、子どもの氏は両親の離婚に伴って自動的に変更されることはありません。したがって、子どもの親権者になる親が離婚に伴い婚姻前の氏に戻る場合、親と子どもで氏が異なってしまいます。このような場合は子どもの生活に支障が出てしまう可能性があるため、家庭裁判所に「子の氏の変更許可審判」の申し立てをする必要があります。
なお、役所で手続きをすれば婚姻中に使用していた氏を離婚後も継続して使用することは可能です。
7-5. 養育費
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことです。一般的には、子どもが経済的、社会的に自立するまでに要する費用を指し、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などがこれにあたります。
養育費を取り決める際は、養育費の支払いがスムーズに行われるように、書面で養育費の金額、支払い期間、支払い時期などについて具体的に定めておく ことが大切です。養育費の金額は、裁判所が作成した養育費算定表などを参照しながら、夫婦双方の年収などを考慮して夫婦が話し合って決めます。
7-6. 面会交流
面会交流とは、子どもの健康な成長のために、離婚後に子どもを養育、監護していないほうの親が子どもと面会などを行うことです。面会交流を実施する際に揉めないよう、子どもの年齢や健康状態、生活状況などをふまえ、書面で面会交流の頻度や内容、あるいは場所などについてあらかじめ具体的に決めておく ようにしてください。
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8. 円満に離婚する方法は? ポイントを解説
円満に離婚するためには、主に次の4つのポイントが大切です。
急ぎすぎない
相手の意見も尊重する
離婚したあとの生活も考えておく
離婚公正証書を作成する
8-1. 急ぎすぎない
円満離婚であっても、離婚成立を急ぎすぎると、揉めごとや離婚後のトラブルが発生するリスク が高くなります。したがって、前述した離婚条件を一つずつ着実に決めていくことが大切です。
8-2. 相手の意見も尊重する
話し合いに際しては、自らの意見ばかりを押しつけるのではなく、相手の意見もよく聞き尊重することが重要です。お互いが納得できるように十分な話し合いを行うことが、結果的にスムーズな離婚成立につながります。
8-3. 離婚したあとの生活も考えておく
離婚後の住まいや収入など経済面についても、離婚前によく考えておくべきです。離婚後の生活について深く考えずに離婚してしまうと、思いがけず離婚後の生活に困窮してしまう可能性もあります。もし離婚後の生活に不安があるなら、無理に円満離婚をめざさずに、弁護士に相談するなどして財産分与の条件などについて交渉 することも重要です。
8-4. 離婚公正証書を作成する
話し合いの結果、離婚条件がまとまったら、離婚条件をまとめた公正証書を作成することをお勧め します。
公正証書は公証役場に申し込んで作成する公的な文書で、法律の専門家である公証人が内容に法的な問題がないか確認して作成するため、離婚後のトラブルを防ぐことができます。また、公正証書に強制執行認諾文言を入れておけば、財産分与や養育費などが不払いになった場合、相手の財産に対する強制執行をすぐに申し立てることができます。
9. 円満離婚でも弁護士に相談するメリット
これまで説明したとおり、離婚の際は決めるべき条件が多く、気をつけるべき点も数多くあります。そのため、弁護士に相談せずに自身で対応すると、不利な条件で離婚してしまう可能性や、関係がこじれてしまい離婚できなくなる可能性 も否定できません。離婚に向けた条件や離婚協議の進め方、離婚協議書の作成などについて弁護士に相談することで、スムーズに離婚を成立させることができます。
また、円満離婚の場合は弁護士が代理人というかたちで交渉の前面に立つ必要はないため、離婚の進め方についてのアドバイスのみを求めるという依頼の仕方もあります 。
10. 円満離婚に関してよくある質問
11. まとめ 円満離婚でも条件や手続きに不安があれば弁護士に相談を
円満離婚の場合、夫婦双方が納得のうえ離婚するため、弁護士に相談することなく夫婦間の話し合いのみで離婚するケースが多いようです。
しかし、円満離婚であっても、離婚条件などの取り決めておくべき点や手続きの進め方の注意点は数多く存在 します。円満離婚にあたって心配があれば、一人で悩まず、ぜひ一度弁護士などの専門家へご相談ください。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)