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1. 離婚協議中にやるべきこと
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1-1. 財産分与の方法を決める
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1-2. 年金分割の割合を決める
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1-3. 慰謝料の有無や金額を決める
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1-4. 婚姻費用の精算方法を決める
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1-5. 離婚後の子どもの親権者を決める
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1-6. 養育費の精算方法を決める
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1-7. 子どもとの面会交流の方法を決める
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1-8. 弁護士のアドバイスを受ける
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2. 離婚協議中のNG行為例
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2-1. 離婚成立前に不貞行為をする
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2-2. 正当な理由なく無断で別居する
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2-3. 正当な理由なく子どもを連れ去る
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2-4. DVやモラハラをする
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3. 離婚協議中の恋愛はNGなのか?
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3-1. 性的関係がなければ可、ただし疑われるリスクあり
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3-2. 婚姻関係が破綻していれば、不貞行為には当たらない
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4. 離婚協議中に浮気やDVなどをされたらどうすべき?
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4-1. 弁護士に相談する
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4-2. DVについては警察に相談する
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4-3. 不法行為や法定離婚事由の証拠を確保する
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4-4. 実際に慰謝料や離婚を請求する
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4-5. 裁判手続きによって解決を図る
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5. 離婚協議中の対応に関する質問
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6. まとめ 離婚協議中は冷静に離婚条件を話し合おう
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1. 離婚協議中にやるべきこと
離婚協議中には、配偶者との間でさまざまな離婚条件について話し合って合意する必要があります。
1-1. 財産分与の方法を決める
夫婦が離婚する際には、共有財産を公平に分ける「財産分与」を行います(民法768条、771条)。
婚姻中に取得した財産は、夫婦どちらかの単独名義で取得したものを含めて、原則として財産分与の対象 となります。ただし、相続や贈与によって取得した財産などは、婚姻中に取得したものであっても財産分与の対象外です。
財産分与の割合は2分の1ずつとするのが原則 です。もっとも、夫婦間で合意すれば異なる割合で財産分与を行うこともできます。対象財産を漏れなくリストアップし、双方の希望を出し合った上で話し合い、公平な形で財産分与の方法を決めましょう。
1-2. 年金分割の割合を決める
婚姻中の厚生年金保険の加入記録は、夫婦間で公平に分けること(=年金分割)ができます。
特に専業主婦や自営業の方、パートで収入が少ない方は、配偶者が会社員や公務員である場合、年金分割の請求によって将来の年金を増やせる可能性が高い
です。
年金分割の割合も、財産分与と同様に2分の1ずつとするのが原則です。ただし、夫婦間で合意すれば異なる割合で年金分割を行えます。配偶者との間で、どのような割合で年金分割をするかを話し合いましょう。
なお、国民年金の第3号被保険者だった方(専業主婦など)は、年金分割の合意が得られなくても、自動的に2分の1ずつの年金分割を行う「3号分割」を請求できることを覚えておきましょう。
1-3. 慰謝料の有無や金額を決める
離婚の原因を一方的に作った側は、相手に対して慰謝料を支払うのが一般的です。たとえば不貞行為、DV、モラハラ、無断別居などが慰謝料の対象 となります。これに対して性格の不一致など、お互いに離婚の原因がある場合には、慰謝料は発生しません。
離婚協議の中では、慰謝料を精算するのかどうか、および精算する場合はその金額を話し合いましょう。
1-4. 婚姻費用の精算方法を決める
夫婦は互いに、結婚生活に必要な費用(=婚姻費用)を分担する義務を負います(民法760条)。同居している間は、日常生活の中で婚姻費用を分担するのが一般的です。
これに対して、婚姻が続いていても別居している間は、日常生活の中で婚姻費用を分担しないので、金銭で婚姻費用を精算します 。どちらが相手に婚姻費用を支払うかは、夫婦の収入バランスや子どもがどちらと同居するかによって決まります。収入が多い方から少ない方へ、または子どもと同居しない方から同居する方へ婚姻費用を支払うのが一般的です。離婚成立前に別居する期間がある場合には、婚姻費用の精算について配偶者と話し合いましょう。
婚姻費用の金額は、夫婦の収入バランス、子どもの有無・人数・年齢、子どもとの同居状況などによって決まります。婚姻費用の計算に当たっては、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」が参考になります。
1-5. 離婚後の子どもの親権者を決める
夫婦間に子どもがいる場合には、離婚後の親権者を決める必要があります。現行民法では、離婚後の子どもの親権者は父母のどちらかとしなければなりません(=単独親権) 。子どもの利益を最優先に考慮して、どちらが親権を得るべきかを慎重に話し合いましょう。なお、2026年5月までに改正民法が施行され、離婚後も共同親権を選択できるようになる予定です。
1-6. 養育費の精算方法を決める
離婚後に子どもと暮らす側(=監護親)は、もう一方の親(=非監護親)に対して養育費を請求できます 。養育費の金額は、父母の収入バランスや子どもの人数・年齢などによって決まります。裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を参考に話し合って、適正額の養育費を定めましょう。
なお、毎月受け取る金額のほか、教育費や医療費などとして臨時的に必要となる費用(=特別費用)も、非監護親に支払いを請求できます。特別費用の取り扱いについても、離婚協議の中で話し合って決めることが望ましいです。
1-7. 子どもとの面会交流の方法を決める
子どもの情操教育の観点から、非監護親と子どもが離婚後も定期的に会って交流することが望ましいと考えられます。離婚協議の中で、非監護親と子どもの面会交流の頻度や場所、連絡方法などを話し合っておきましょう 。
1-8. 弁護士のアドバイスを受ける
上記の各離婚条件は、夫婦間の公平や子どもの利益に配慮するため、法律のルールや過去の裁判例などを踏まえて話し合うべきです。弁護士に相談すれば、離婚条件の適正な内容や、離婚協議の適切な進め方などについてアドバイスを受けられます 。相手と直接話し合うのが難しい場合には、弁護士に依頼すれば離婚協議を代行してもらうことも可能です。離婚協議を早期かつ適切な内容でまとめるため、早い段階から弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
2. 離婚協議中のNG行為例
以下のような行為をすると、配偶者との間でトラブルになり、離婚協議が難航してしまう可能性が高い です。離婚協議をスムーズにまとめるためにも、これらの行為は避けましょう。
離婚成立前に不貞行為をする
正当な理由なく無断で別居する
正当な理由なく子どもを連れ去る
DVやモラハラをする
それぞれの行為のリスクなどを紹介します。
2-1. 離婚成立前に不貞行為をする
「不貞行為」とは、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと をいいます。不貞行為は法定離婚事由の一つです(民法770条1項1号)。不貞行為をした者は「有責配偶者」に当たり、離婚の請求が認められにくくなります。また、不貞行為を理由に配偶者から慰謝料を請求されるおそれ もあります。離婚が成立するまでは、別の異性と性的関係を結ぶことは避けましょう。
2-2. 正当な理由なく無断で別居する
正当な理由がないのに、配偶者の承諾を得ることなく別居することは「悪意の遺棄」に当たります。悪意の遺棄も法定離婚事由の一つです(民法770条1項2号)。無断別居をした者も、不貞行為をした者と同様に「有責配偶者」に当たります。離婚請求が認められにくくなるほか、配偶者から慰謝料を請求されるおそれがあるので注意 が必要です。
離婚成立前に別居する場合は、原則として配偶者の承諾を得るようにしましょう。ただし、DVやモラハラの被害を受けている場合などには、自分の身を守ることを優先すべきなので、配偶者の承諾を得ることなく別居して構いません 。
2-3. 正当な理由なく子どもを連れ去る
子どもの親権を得たいがために、離婚協議中に子どもを連れ去ってしまうケースが見られます。配偶者の承諾を得ることなく子どもを連れ去ると、配偶者が強く反発する可能性が高いです。また、子どもの連れ去りに正当な理由がない場合は、家庭裁判所の審判によって子どもの引渡しを命じられることがあります 。子どもが虐待を受けているなど特段の事情がない限り、離婚協議中に子どもを連れ去ることは避けましょう。
2-4. DVやモラハラをする
配偶者に自分の言うことを聞かせるため、あるいは怒りに任せてDVやモラハラをすることは、どんな理由があっても強く非難されるべき行為です。DVやモラハラをした者は「有責配偶者」に当たり、離婚請求が認められにくくなるほか、配偶者から慰謝料を請求されるおそれ があります。
離婚協議は、あくまでも理性的な話し合いによって進めなければなりません。暴力や暴言などに訴えることなく、配偶者の言い分も傾聴しつつ合意を目指しましょう。当事者同士では冷静な話し合いが難しいときは、弁護士を代理人として話し合うことをおすすめ します。
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3. 離婚協議中の恋愛はNGなのか?
離婚協議中に恋愛をすることが、一切認められないわけではありません。ただし、法律上は問題ないと思って恋愛をしていても、不貞行為を疑われるリスクがあるのでご注意ください。
3-1. 性的関係がなければ可、ただし疑われるリスクあり
性的関係を結んでいなければ不貞行為に当たらないので、恋愛的な関係にあっても原則として法的な責任は生じません。たとえば会って食事をする、手を繋ぐ、キスをするといった程度であれば、離婚成立前であっても法的な責任は認められにくい と思われます。
ただし、恋愛関係にある者同士の間では、性的関係が存在するのではないかと疑うのはごく自然なことです。性的関係はないと主張しても、配偶者に不貞行為を疑われるリスクは常につきまといます。トラブルを避けるためには、離婚が成立するまで恋愛をしないのが無難 でしょう。
3-2. 婚姻関係が破綻していれば、不貞行為には当たらない
すでに婚姻関係が破綻している場合には、配偶者以外の者と性的関係を結んでも不貞行為に当たらない と解されています。
婚姻関係の破綻が認められるケースの典型例は、夫婦が長期間にわたって別居している場合です。5年から10年程度以上別居しており、別居中に夫婦間のやり取りがほとんどないようなケースでは、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いでしょう。
そのほかにも、DVやモラハラの影響で夫婦関係が修復不可能な場合や、夫婦の一方が犯罪によって長期間出所しない見込みである場合などには、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いです。
ただし、婚姻関係が破綻しているかどうかの判断には、法律的な検討を要します。「婚姻関係が破綻しているから恋愛しても大丈夫」と自分だけで判断するのではなく、弁護士にアドバイスを求めましょう 。
4. 離婚協議中に浮気やDVなどをされたらどうすべき?
離婚協議中に配偶者が浮気(不貞行為)をしていることが分かった場合や、配偶者からDVを受けた場合などには、以下の対応を検討しましょう。
弁護士に相談する
DVについては警察に相談する
不法行為や法定離婚事由の証拠を確保する
実際に慰謝料や離婚を請求する
裁判手続きによって解決を図る
離婚協議中の不法行為については、した側からの離婚が認められにくくなったり、慰謝料請求の対象となったりするので、見逃すことなく、適切な行動を取れるようにすべきです。
4-1. 弁護士に相談する
配偶者の責任を追及するため、あるいはDVの被害から逃れるためには、弁護士のアドバイスとサポートが役立ちます。速やかに弁護士へ連絡して、どのような方針で対応すべきかを相談しましょう。
4-2. DVについては警察に相談する
DVの被害を受けている場合には、警察にも相談しましょう。DVが深刻であると警察が判断した場合には、暴行事件などとして捜査を行ってもらえる可能性 があります。またDVシェルターなど、DV被害から逃れる方法も紹介してもらえることがあります。
4-3. 不法行為や法定離婚事由の証拠を確保する
不貞行為やDVなどは不法行為や法定離婚事由に当たり、被害者は加害者に対して慰謝料や離婚を請求できます(民法709条、770条1項各号)。
慰謝料や離婚を請求するに当たっては、配偶者の行為に関する証拠を確保することが大切 です。たとえば、不貞行為であれば密会現場を撮影した動画や写真など、DVであれば医師の診断書などが有力な証拠となります。
4-4. 実際に慰謝料や離婚を請求する
証拠の確保などの準備が整ったら、実際に配偶者に対して慰謝料や離婚を請求しましょう。最初の段階では、話し合いによる解決を目指すのが一般的 です。配偶者と直接話し合うのが難しければ、弁護士に代理人としての交渉を依頼することをおすすめします。
4-5. 裁判手続きによって解決を図る
話し合いによる解決が難しい場合には、調停や訴訟などの裁判手続きを通じて慰謝料や離婚を請求しましょう。裁判手続きに必要な準備やルールは複雑ですが、弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえます。
5. 離婚協議中の対応に関する質問
6. まとめ 離婚協議中は冷静に離婚条件を話し合おう
離婚後のトラブルを防止するためには、離婚協議中にさまざまな離婚条件を漏れなく決めることが大切です。例えば財産分与・親権・養育費・慰謝料など、多岐に渡ります。また、離婚協議中にNG行為をするのもやめましょう。例えば、「もう離婚するから」と開き直って不貞行為をしたり、正当な理由なく子どもを連れ去ったりするなどです。離婚請求が認められなくなったり、慰謝料を請求されたりするおそれがあります。
離婚条件の話し合いに当たっては、弁護士のアドバイスやサポートが役立ちます。配偶者と直接話し合うのが難しければ、弁護士に離婚協議を代行してもらうことも可能です。離婚協議の進め方や離婚協議中の注意点などは、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)