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1. 離婚届の証人とは
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1-1. 離婚届の証人が必要なケースと不要なケース
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1-2. 離婚届の証人と「保証人」の違い
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2. 離婚届の証人は誰に頼むべき?
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2-1. 離婚届の証人になれる人
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2-2. まずは親族や友人に依頼するのが一般的
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2-3. 弁護士や行政書士などにも依頼可能
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2-4. 離婚する本人が証人の署名を自分で書くのはNG
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3. 頼まれて離婚届の証人になることのリスクとデメリット
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4. 離婚届の証人に関してよくある質問
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5. まとめ 証人候補が見つからない場合は弁護士に相談を
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1. 離婚届の証人とは
離婚届の証人とは、離婚する夫婦本人以外に離婚の事実を知る者 を意味します。証人は、夫婦双方の離婚意思を確認したうえで、その証として離婚届に署名を行います。
離婚届には証人2名の署名欄が設けられており、夫婦双方が合意して協議離婚をする際には証人に署名してもらう必要があります。
1-1. 離婚届の証人が必要なケースと不要なケース
離婚届に証人の署名が必要となるのは、夫婦が協議離婚をする場合です。「協議離婚」とは、夫婦間で話し合って合意のもとで離婚することを言います。
協議離婚の離婚届については、民法によって証人2名の署名が必須とされています(民法764条、739条2項)。証人2名の署名が欠けていると、協議離婚の離婚届は受理されません 。
これに対して、協議離婚以外には、主に以下の3つの方法があります。これらの方法によって離婚する場合には、離婚届における証人の署名は不要です。
調停離婚:離婚調停の成立による離婚
審判離婚:離婚調停が不成立となった後、家庭裁判所の審判によって成立する離婚
裁判離婚:離婚訴訟による離婚(判決離婚、認諾離婚、和解離婚に細分化される)
調停離婚、審判離婚、裁判離婚をする際には、離婚届の証人署名欄は空欄で構いません。その代わりに、調停離婚では調停調書の謄本(記載内容の写し)、審判離婚では審判書の謄本および確定証明書、判決離婚では判決謄本と確定証明書、認諾離婚では認諾調書の謄本、和解離婚では和解調書の謄本を役所に提出する必要があります。
1-2. 離婚届の証人と「保証人」の違い
離婚届の証人は、「保証人」とは異なります。
「保証人」とは、主たる債務者が債務を履行しないときに、その債務を履行する責任を負う者を言います(民法446条1項)。債務とは、何らかの契約に基づいて支払いや返済などを行う義務を指します。保証人になると、債務不履行が発生した際に債権者から請求を受け、多額の支払いを強いられるリスクを負うことになります。
これに対して離婚届の証人は、単に「離婚の事実を知る者」であり、離婚する夫婦が負っている債務を保証するわけではありません 。よく「保証人になってはいけない」と言われることがありますが、離婚届の証人を引き受けても、保証人のような重いリスクを負うことはないので安心してよいでしょう。
2. 離婚届の証人は誰に頼むべき?
離婚届の証人は、親族や友人に依頼するのが一般的です。頼める人が身近にいない場合は、弁護士や行政書士などに証人を依頼することもできます。
2-1. 離婚届の証人になれる人
離婚届の証人になるためには、特別な資格は一切必要ありません。「成年」(=18歳以上)であれば、誰でも離婚届の証人になることができます(民法764条、739条2項)。
日本人だけでなく、外国人も離婚届の証人になれます。
また、離婚する夫婦との関係性についても特に制限されていないので、親族や赤の他人も離婚届の証人になることが可能です。
2-2. まずは親族や友人に依頼するのが一般的
18歳以上であれば誰でも離婚届の証人になれるため、基本的には頼みやすい人に頼んで構いません。
ただし、離婚はプライバシー性が高い事柄なので、証人は信頼できる人に頼むのがよいでしょう 。親族や友人で信頼できる人がいれば、その人に証人を依頼することをお勧めします。
2-3. 弁護士や行政書士などにも依頼可能
18歳以上であれば誰でも証人になれるとはいえ、身近に信頼できる親族や友人がおらず、離婚届の証人を頼める人が見つからないケースもあるでしょう。
身近に証人候補がいない場合は、弁護士や行政書士に証人を依頼する選択肢 が考えられます。弁護士や行政書士は職務上の秘密保持義務を負っているので、離婚に関する事情を他人に口外することはありません。
ただし、弁護士や行政書士に離婚届の証人を依頼する際には、費用がかかるのが一般的です。対応してもらえるかどうかと併せて、必要となる費用についても依頼前に確認するようにしてください。
2-4. 離婚する本人が証人の署名を自分で書くのはNG
離婚届の証人欄には、必ず証人自身が署名しなければなりません 。証人を頼める人がいないからといって、勝手に知人などの名前を書いてはいけません。
証人の署名を偽造したことが発覚すれば、私文書偽造罪(刑法159条1項)や偽造私文書行使罪(刑法161条1項)の責任を問われるおそれがあります。
また、配偶者が「やっぱり離婚したくない」と考えるようになった場合は、証人の署名が偽造であることを理由に、離婚届の無効を主張してくることもあり得ます。
このようなトラブルを防ぐため、離婚する本人が証人の署名を自分で書くことは避け、きちんと証人2名を確保しましょう。
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3. 頼まれて離婚届の証人になることのリスクとデメリット
前述のとおり、離婚届の証人は「保証人」と異なり、何らかの債務を保証するわけではありません。
その一方で、離婚届に証人として署名する者は、離婚が夫婦双方による話し合いを経て合意に至ったものであることを確認する義務を負うと考えられます。確認義務を怠った場合は、何らかの法的責任を負う可能性があるので注意が必要 です。
東京地裁平成21年1月14日判決では、夫婦のうち一方からだけ話を聞き、相手方の話を聞かないまま離婚届に証人として署名した事案が問題となりました。実際のところ、相手方は離婚に同意していなかったため、相手方は証人に対して損害賠償を請求する訴訟を提起しました。東京地裁は、証人の離婚意思確認義務違反を認定し、証人に対して6万円の損害賠償を命じました。
このように、証人は夫婦双方の離婚意思をきちんと確認しないと、万が一夫婦の一方が離婚に同意していなかった場合に、損害賠償責任を負うリスクがあると考えられます。
しかし、上記東京地裁判決のようなケースは例外的で、離婚届の証人が法的な責任を問われる例はほとんど聞いたことがありません。離婚届の証人になるリスクは限りなく低いと考えられます。
ただし、念のため夫婦双方の離婚の意思を確認し、録音や文書などによって記録に残しておくと安心です。
4. 離婚届の証人に関してよくある質問
5. まとめ 証人候補が見つからない場合は弁護士に相談を
離婚届の証人は、離婚する夫婦双方の意思を確認する役割を担っています。
証人には、18歳以上であれば誰でもなることができます。親族や友人などに頼むのが一般的ですが、頼める人が身近にいなければ、弁護士や行政書士などに依頼して証人になってもらうことを検討してください。
証人の署名を他人が代筆してはいけません。私文書偽造や偽造私文書行使の刑事責任を問われる可能性があるほか、離婚届が無効となるリスクもあるので注意が必要です。証人を頼める人が見つからないとしても、他人の名前を証人欄へ勝手に書くのはやめましょう 。
離婚届の提出を含む離婚手続き全般については、弁護士に相談すればアドバイスを受けることが可能です。手続きの流れや注意点などを教えてもらえるので、安心感につながるはずです。
協議離婚における離婚届の記載方法や提出方法がわからない場合、離婚について配偶者との間でトラブルを抱えてしまった場合は、一度弁護士にご相談ください。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)