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1. 不倫誓約書(浮気誓約書)とは?
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1-1. 不倫誓約書と示談書の違い
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2. 不倫誓約書を作成するメリット
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2-1. 離婚や慰謝料請求の証拠となる
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2-2. 心理的なプレッシャーを与えられる
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3. 不倫誓約書のテンプレート(例文)
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4. 不倫誓約書の書き方|主な記載事項
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4-1. 不倫の事実の明示
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4-2. 謝罪や再発防止の誓約
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4-3. 慰謝料の支払い
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4-4. 禁止行為
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5. 不倫誓約書を作成する際の流れ
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6. 不倫誓約書を提出させる際の注意点
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6-1. 提出を強制してはならない
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6-2. 提出後の不倫の事実は、別途の立証が必要
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6-3. 提出者本人に署名押印をさせる
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6-4. 公正証書で作成させるとなお安心
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6-5. 当事者同士で話がまとまらない場合は第三者に協力してもらう
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7. 不倫誓約書に相手が違反したらどうする?
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8. 不倫誓約書について弁護士に相談や依頼をするメリット
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8-1. 事案に応じた内容の誓約書を作成してもらえる
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8-2. 交渉の代理をしてもらえる
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8-3. アフターフォローが受けられる
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9. 不倫誓約書に関連してよくある質問
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10. まとめ 不倫誓約書の作成を検討する際には弁護士に相談を
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1. 不倫誓約書(浮気誓約書)とは?
「不倫誓約書」とは、夫婦の一方が不倫をした際に、不倫をした当事者が、不倫をされた被害者に対してさまざまな誓約をする文書を指します。誓約をする当事者は、不倫をした配偶者とその不倫相手のいずれの場合もあり得ます。
不倫誓約書では、不倫関係の解消や慰謝料の支払いなどを誓約させるケースが一般的です。
1-1. 不倫誓約書と示談書の違い
一般的に「誓約書」とは、約束を守るべき当事者がその意思を表明した文書を言います。そのため、不倫誓約書は、不倫をした当事者が単独で作成して不倫をされた被害者に提出するものとなります。
これに対して「示談書」とは、約束をした当事者同士がそれぞれサインをして交わす文書を指します。不倫の場合は、不倫をした当事者と不倫をされた側がそれぞれサインをして書面を作成します。
もっとも、「誓約書」という名目であっても関係者それぞれがサインをするケースもあり、明確な使い分けがなされているわけではありません。
2. 不倫誓約書を作成するメリット
不倫誓約書を作成するメリットは、以下の2点です。
2-1. 離婚や慰謝料請求の証拠となる
不倫誓約書には、一般的に不貞の事実や慰謝料の支払いに関する内容などが記載されます。不貞とは、配偶者のある人間が自由な意思に基づいて配偶者以外と性的関係を結ぶことを指します。
不貞の事実や慰謝料の支払いに関する記載が、当事者の署名や押印のもとでされている場合、のちに離婚や慰謝料の請求をする際に、証拠として利用できる可能性があります。
2-2. 心理的なプレッシャーを与えられる
不倫誓約書には、今後不倫相手と接触した場合や、再度不倫をした場合に、違約金を支払う旨を記載する場合があります。そのような制約の明文化によって、二度目の不倫を抑止する効果が期待できます。一度目の不倫は許すけれども二度目は許さない、と考える場合には、このような記載をお勧めします。
3. 不倫誓約書のテンプレート(例文)
配偶者の不倫相手が誓約書を書く場合の例です。個別の事情に応じてカスタマイズが必要な場合もあるため、作成する際は弁護士への相談をお勧めします。
誓約書
私は、本誓約書において、下記のとおり自己の不貞行為を認め、関係者に対し深く謝罪するとともに、今後、同様の行為を二度と繰り返さないことを誓約いたします。
第1条(不貞行為の事実)
私は、令和〇年〇月頃から令和〇年〇月頃までの間、〇〇 〇〇氏(以下「相手方」と言います)が婚姻関係にある配偶者△△ △△様(以下「配偶者様」と言います)がいることを認識しながら、相手方と〇〇県〇〇市所在の〇〇〇〇ホテル、相手方の自宅、その他複数の場所において、複数回にわたり肉体関係を伴う不貞行為を行ったことを認めます。
第2条(謝罪)
私は、上記不貞行為によって配偶者様およびご家族に多大なご迷惑とご心痛をおかけしたことを真摯に反省し、心より謝罪いたします。
第3条(慰謝料の支払い)
1 私は、配偶者様に対し、上記不貞行為の慰謝料として、金〇〇万円の支払義務があることを認めます。
2 私は、配偶者様に対し、令和〇年〇日限り、前項の金員を、配偶者様名義の〇〇銀行〇〇支店の普通預金口座(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)に振り込む方法によって支払います。
第4条(禁止行為)
1 私は、今後、相手方および配偶者様との間において、直接、間接を問わずいかなる連絡や接触をしないことを誓約します。
2 私は、本件不貞行為の内容や、関係者に関する情報を第三者に漏洩、口外したり、SNSその他の媒体で発信したりしないことを誓約します。
3 万一、前各項に違反した場合には、違約金として金〇〇万円を配偶者様に支払います。
第5条(証拠化および誠実協議)
1 本誓約書は、今後、法的手続を含むいかなる紛争においても証拠として用いられることを予め了承します。
2 本誓約書に関して解釈上の疑義が生じた場合には、誠意をもって配偶者様と協議の上、解決を図ります。
以上のとおり誓約し、本書2通を作成し、自署押印の上、1通を配偶者様へ交付いたします。
令和〇年〇月〇日
【誓約者】
住所:〇〇県〇〇市〇〇〇〇
氏名:〇〇 〇〇 ㊞
4. 不倫誓約書の書き方|主な記載事項
不倫誓約書を書く際、主に記載する事項は次の4つです。
不倫の事実の明示
謝罪や再発防止の誓約
慰謝料の支払い
禁止行為
4-1. 不倫の事実の明示
まずは、不倫の事実を明確に認める記載が必要です。ここで注意したいのは、離婚事由が定められている民法には「不倫」という用語はなく、「不貞な行為」という用語が使われている点です。今後の離婚や慰謝料請求の証拠として用いる可能性を考えると、「不倫」ではなく「不貞行為」と明記したほうがより効果的です。
また、単に「不貞行為があったと認める」との記載だけでは不十分です。いつ、どこで、誰と、どのくらいの期間、どの程度の不貞行為をしたのか、できるだけ具体的に記載しましょう。
4-2. 謝罪や再発防止の誓約
不倫の事実を前提とし、それに対する謝罪を明記します。それとともに、二度と不倫をしないと誓約する一文を付け加えてもよいでしょう。
4-3. 慰謝料の支払い
不倫への償いとして、不倫をした当事者が被害者に支払う慰謝料の金額や支払方法を定めます。一般的には、不貞行為による慰謝料は100万円から200万円ほどに設定されるケースが多いものの、事案によって変わります。
たとえば、不倫相手との間に子どもができた場合には、慰謝料の金額は増える傾向にあります。逆に、不倫はしたものの配偶者との離婚はしないという結論になった事案では、慰謝料の金額は少なくなるケースが多いです。
筆者が弁護士として経験した例で言うと、社会的地位の高い人が不倫をした際に、報道や公表を避けるために1000万円以上の慰謝料が支払われたケースもありました。
また、誓約書を提出させる際には慰謝料を発生させず、禁止行為に違反した場合に違約金を発生させる、という定め方もできます。
慰謝料の支払いを定める場合には、支払い方法を一括にするのか分割にするのか、いつまでに支払うかなども明記するようにしましょう。
4-4. 禁止行為
不倫の再発を防止するために、さまざまな行動を禁止事項に設定できます。たとえば、不倫相手と二度と会わない、電話やSNSで連絡をとらないなどと定める例が多いです。
また、特に配偶者の不倫相手に対しては、不倫の事実についてSNSでの投稿を含む第三者への口外を禁止する場合もあります。
これらの禁止行為に違反した場合に違約金を発生させる、という定めも可能です。近年の芸能ニュースで、第三者に口外しないと定めていたと想定されるにもかかわらず、どこかからその合意の事実が漏れて報道されてしまった事例もあったため、このような事態に対応する条項を入れる場合もあります。

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5. 不倫誓約書を作成する際の流れ
不倫誓約書を作成する際の流れを解説していきます。
まず、不倫の事実が発覚したら、当事者間で話し合います。不倫の事実確認、慰謝料の金額、2回目以降の罰則など、誓約させたい内容を一つずつ決めます。
多くの場合、まずは夫婦間での話し合いをします。このとき、現場写真やLINEのやりとりといった不倫の証拠を入手しておくと、あとで合意できず、訴訟などの手続きに至った場合に有用です。相手が不倫を認めている場合には、話し合いの録音も有用な場合があります。当事者間で話し合うのが難しい場合や、勇気が出ない場合には、弁護士など専門家への相談も選択肢の一つです。
当事者間の話し合いである程度方向性が見えたら、誓約書の文案を作成します。上述したポイントをふまえながら作成しましょう。
内容についてお互いが納得できたら、署名押印をします。
6. 不倫誓約書を提出させる際の注意点
相手に不倫誓約書を提出させる際の注意点は主に次の5つです。
6-1. 提出を強制してはならない
強制的に誓約書を提出させた場合、あとからその効力が取り消される可能性があります。その強制度合いがあまりにもひどい場合には、強要罪によって処罰される場合もあり得ます。感情的になりがちな問題であるものの、無理やり書かせないように注意しましょう。
また、「書かなければ不倫していたことを会社にバラす」などと脅して書かせる事例もよく見られますが、会社にバラす行為自体が名誉毀損となる可能性もあるため、くれぐれも注意しましょう。
6-2. 提出後の不倫の事実は、別途の立証が必要
誓約書を提出させたあとに不倫が発覚した場合、損害賠償請求の裁判などに発展する可能性があります。このとき、誓約書を記載したあとの不倫の証拠は、誓約書だけでは足りません。新たな不倫に関する証拠写真などで、別途、不倫の事実を証明する必要があります。
6-3. 提出者本人に署名押印をさせる
誓約書は、自署と押印をするのが望ましいです。パソコンなどでも署名部分の作成は可能ですが、あとから偽造だと主張される可能性もあります。パソコンで不倫誓約書を作成する場合でも、署名欄は空欄にし、自署にさせることで、のちに偽造などを主張されてトラブルに発展するのを防げます。また、押印については、実印を押させたうえで印鑑証明書を提出させておけばなお安心です。
不倫誓約書は、同じものを人数分作成してすべてに自署押印し、当事者それぞれが1通ずつ持っておくのがよいでしょう。
6-4. 公正証書で作成させるとなお安心
誓約書は当事者間で作成して保管することも可能ですが、公証役場でも作成できます。公証役場で作成した場合、誓約書の原本が公証役場に保存されるため、偽造や紛失のリスクがありません。また、「強制執行認諾文言」と呼ばれる文言を記載すれば、慰謝料などが払われなかった際に裁判を経ることなく強制執行の申立てができます。
6-5. 当事者同士で話がまとまらない場合は第三者に協力してもらう
不倫に関する話し合いは、不倫された側からすればとてもつらい場面ですし、不倫した当人からすれば向き合いたくない場面であるため、話し合いがスムーズに進まない場合がありがちです。自分が感情的になってしまったり、相手が一向に話し合おうとしなかったりして協議がまとまらないときは、第三者に立ち会ってもらうか、弁護士に間に入ってもらうのがよいでしょう。
7. 不倫誓約書に相手が違反したらどうする?
不倫誓約書に記した禁止行為に違反した場合には、慰謝料の請求が可能になる場合があります。不倫誓約書にあらかじめ「違反した場合には〇〇万円支払う」と記載しておくと、より認められやすいでしょう。
ただし、たとえば「次に不倫した場合には〇〇万円支払う」という内容の条項を作成していたとしても、夫婦の関係が破綻したあとに不倫が発覚した場合には、このような条項は無効となり、慰謝料請求ができないとされた裁判例もあるので注意が必要です。
また、違反の事実は必ず証拠を取っておきましょう。たとえば「『不倫相手に会わない』という誓約に違反した」と主張するためには、不倫相手に会っていた現場を収めた写真や、会っていた事実がわかるメールやLINEでのやりとりを写真に収めるなどしておくとよいでしょう。
慰謝料請求の方法は、まず差し出しの記録が残る内容証明郵便を送付するのが一般的です。そのあとに示談交渉を行い、示談を目指します。示談が成立しない場合には、裁判所に訴訟を提起する段階になります。
訴訟だけでなく、内容証明の書き方や示談交渉の方法については、専門的な知識やコツが必要なので、慰謝料請求をしたいと思った場合には、プロである弁護士への相談をお勧めします。
8. 不倫誓約書について弁護士に相談や依頼をするメリット
不倫誓約書は、自力での作成も可能であるものの、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
事案に応じた内容の誓約書を作成してもらえる
交渉の代理をしてもらえる
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8-1. 事案に応じた内容の誓約書を作成してもらえる
一口に「不倫事件」と言っても、その内容は実にさまざまなパターンがあります。そのため、不倫誓約書も事案に応じて作成する必要があります。弁護士に依頼すれば、事案に応じた誓約書の作成が期待できます。自分で作成する場合に比べ、大事な条項やキーワードの抜けが生じにくくなるでしょう。
8-2. 交渉の代理をしてもらえる
不倫誓約書の作成だけでなく、作成に至るまでの交渉からも弁護士に依頼できます。交渉自体にも効果的なやり方がありますし、弁護士の名前で連絡をすると、相手にインパクトを与えられる可能性もあります。
8-3. アフターフォローが受けられる
無事に誓約書を作成できたとしても、あとからその誓約事項が破られる可能性があります。その際の慰謝料請求についても、事情をよくわかっている同じ弁護士に依頼すれば、スムーズに対応してもらえるでしょう。

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9. 不倫誓約書に関連してよくある質問
当事者の単独名義で作成する不倫誓約書と、不倫をした人とされた人の両者の名義で作成する示談書は、どちらか一方を作成すれば十分であるケースがほとんどです。もちろん、両方作っても問題はありません。
ただし、内容に齟齬がないように気をつけましょう。また、慰謝料以外にお互いにこれ以上の請求をしないという条項を入れる場合などには、不倫誓約書ではなく示談書を作成するほうが望ましい場合があります。弁護士の実務上は、不倫誓約書よりも示談書を作成する場合のほうが多いです。
自ら定めなければ、不倫誓約書自体に有効期限はありません。ただし、不倫慰謝料の請求には時効があるため、請求する場合には、不倫の事実や相手方を知ったときから3年以内、または不倫があったときから20年以内に請求しなければならない点には注意しましょう。
不倫誓約書は、自ら作成したり、手書きで作成したりした場合でも、もちろん効力はあります。ただし、内容や形式に不備があると、あとでトラブルになりかねません。あまりにも過度な内容を定めた場合には、公序良俗違反で無効とされる可能性もあります。より精度の高い誓約書を作成したい場合には、弁護士など専門家への相談をお勧めします。
10. まとめ 不倫誓約書の作成を検討する際には弁護士に相談を
不倫誓約書は、不倫をした側がされた側に対してさまざまな誓約をする文書です。不倫をした事実やその詳細、支払う慰謝料の額、再発防止の誓約、破った場合の違約金の額などを明記するもので、のちに離婚をする際や慰謝料を請求する際に証拠として利用できますし、不倫をされた側にとっては、不倫をした側に心理的なプレッシャーをかける意味でも有用です。
ただし、内容や手続きを誤ると、あとでその効力を十分に発揮できなくなる可能性があります。
不倫誓約書は自力での作成もできますが、内容や表現に不安がある場合は、弁護士などの専門家の手を借りれば、より安心できる内容のものを作成できます。一人で抱え込まず、頼れる相手への相談をお勧めします。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)