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1. 単身赴任で離婚に至る原因
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1-1. 単身赴任で気持ちが離れてしまうから
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1-2. 一人での生活が快適だから
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1-3. 不倫してもバレにくいから
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1-4. 金銭的な負担が大きく、結婚生活が成り立たない
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2. 単身赴任を理由に離婚はできる?
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2-1. 夫婦の合意があれば離婚は可能
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2-2. 裁判で離婚するには法定離婚事由が必要|単身赴任は該当しうる?
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3. 単身赴任の離婚で慰謝料請求はできる?
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3-1. 不法行為があれば可能
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3-2. 慰謝料を請求する際は証拠が重要
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4. 単身赴任で離婚する前に考えるべきこと
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4-1. 単身赴任で離婚して後悔しないか
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4-2. 転職など他の解決方法はないか
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4-3. 離婚後の生活環境は整っているか
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5. 単身赴任で離婚する際の注意点
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5-1. 不法行為の証拠を集めるのが難しい
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5-2. 離婚調停や裁判は申し立てられた側の住んでいる地域で行われる
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5-3. 単身赴任で子どもと別居していると親権で不利になる
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5-4. 住宅ローンが残る持ち家について話し合っておく
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6. 単身赴任で離婚を検討する人からのよくある質問
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7. まとめ 単身赴任による離婚は弁護士に相談しよう
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1. 単身赴任で離婚に至る原因
単身赴任で配偶者と離れて生活することになると、以下のような理由で離婚に至ることがあります。
単身赴任で気持ちが離れてしまうから
一人での生活が快適だから
不倫してもバレにくいから
金銭的な負担が大きく、結婚生活が成り立たない
1-1. 単身赴任で気持ちが離れてしまうから
単身赴任で物理的な距離が生じると、自然と心の距離も広がってしまうことがあります。生活の時間帯がずれたり、忙しさからコミュニケーション不足になったりすると、愛情が薄れてしまうことも少なくありません。日常生活を共有できなくなることで、気持ちが離れてしまうことがあります。
1-2. 一人での生活が快適だから
単身赴任での一人暮らしが快適だと、家族との生活を煩わしく感じることがあります。趣味に没頭する時間が増えるなど生活が充実すると、家庭に戻ることが億劫になる場合もあるでしょう。特に子どもがいない夫婦の場合、それが理由で離婚に至ることも考えられます。
1-3. 不倫してもバレにくいから
単身赴任で一番懸念材料になるのが不倫です。配偶者と離れて暮らしていると、部屋に異性を連れ込んでもバレる可能性は低くなります。そのため、不倫に走り、最終的に離婚に至るケースも少なくありません。
1-4. 金銭的な負担が大きく、結婚生活が成り立たない
会社によっては単身赴任の家賃が補助されないこともあります。その場合、自分が住んでいる単身赴任の賃貸物件とは別に、家族の住まいの家賃なども発生します。さらに、生活費が別途かかるため、金銭的な負担が大きくなり、離婚を選択せざるを得ないケースもあります。
2. 単身赴任を理由に離婚はできる?
単身赴任を理由に離婚する場合、夫婦の合意があれば理由に関係なく離婚が可能です。ただし、夫婦の話し合いで合意できず裁判となる場合は、民法で定める法定離婚事由が必要となります。
2-1. 夫婦の合意があれば離婚は可能
単身赴任を理由に離婚する場合でも、夫婦の話し合いで合意できれば離婚は可能です。単身赴任による心の距離やコミュニケーション不足が原因であっても、お互いが離婚に納得していれば問題なく離婚を進められます。
ただし、心情的に相手が離婚に納得できないこともあります。場合によっては不倫を疑われるかもしれません。後悔しないよう、夫婦でしっかり話し合って合意を得た方がよいでしょう。また、親権や財産分与などの取り決めを行い、合意内容を書面化しておくと安心です。
話し合いで合意できない場合は、離婚調停において調停委員を介して話し合うことになります。
2-2. 裁判で離婚するには法定離婚事由が必要|単身赴任は該当しうる?
離婚調停で話し合いを行っても合意に至らない場合は、離婚裁判を提起して離婚を求めることになります。ただし、離婚裁判では、法律で離婚が認められる「法定離婚事由」が必要です(民法770条1項各号)。
法定離婚事由には以下のものが定められています。
配偶者に不貞な行為があったとき
配偶者から悪意で遺棄されたとき
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(民法改正により2025年中に削除予定)
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
具体的には、単身赴任中に以下のような行為があれば、法定離婚事由に該当する可能性があります。
・単身赴任中に不倫があった(不貞行為)
・単身赴任中に夫婦間の交流がまったくない(その他婚姻を継続し難い重大な事由)
一方で、単身赴任そのものは法定離婚事由にはあたりません。例えば、「単身赴任が長く寂しい」「単身赴任で家事や育児の負担が大きい」などの理由では離婚できません。ただし、単身赴任による別居期間やその間の夫婦間の交流、相手の不貞行為などによっては法定離婚事由として離婚が認められることもあります。
法定離婚事由がない場合は、夫婦の話し合いで離婚を目指すか、弁護士に依頼して交渉してもらうことも検討するとよいでしょう。
3. 単身赴任の離婚で慰謝料請求はできる?
離婚すると慰謝料が請求できると考える人も少なくありませんが、離婚の慰謝料を請求するには不法行為と証拠が必要です。
3-1. 不法行為があれば可能
単身赴任で離婚する場合であっても、相手が不法行為(民法709条)を行い、精神的苦痛を受けた場合は、慰謝料請求が可能です。例えば以下のような行為が考えられます。
配偶者の不貞行為
配偶者によるDV(家庭内暴力)やモラハラ
夫婦の扶助義務に反して生活費を支払ってもらえず生活が苦しくなった
これらの行為があれば、離婚だけでなく慰謝料請求も認められます。ただし、性格の不一致や価値観の違い、親族間の不仲など、どちらが悪いと一概に言えないケースでは、慰謝料請求はできません。
3-2. 慰謝料を請求する際は証拠が重要
配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求する際は、不貞行為などの証拠が必要です。話し合いで相手が支払いに応じてくれれば問題ありませんが、相手が支払いを拒否した場合は裁判手続きにより支払いを求めることになります。
裁判では、証拠をもとに不法行為の有無を判断するため、請求前に証拠をそろえておくことが重要です。例えば、配偶者の不貞行為で慰謝料を請求する際は、以下のような証拠が必要です。
不貞相手とホテルに出入りする際の写真
不貞相手との性行為を記録した写真や動画
不貞相手との肉体関係がわかるメールやLINEのやり取り
配偶者や不貞相手が不貞行為を自白した際の録音データ
探偵など調査会社の報告書

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4. 単身赴任で離婚する前に考えるべきこと
配偶者と離れていると、生活のすれ違いなどが原因で離婚を意識するかもしれません。しかし、相手への気持ちや離婚後の生活などを十分に考えずに離婚を切り出すと後悔する可能性があります。離婚を決断する前に以下のことを慎重に考えることが重要です。
4-1. 単身赴任で離婚して後悔しないか
まだ相手に対して愛情が残っているのに、物理的な距離を理由に離婚すると後悔するかもしれません。特に長年連れ添った配偶者と別れる場合は、精神的なダメージも大きなものとなります。コミュニケーション不足が原因であれば、定期的にオンラインツールでのやり取りを増やすなど、工夫することですれ違いを解決できることがあります。
4-2. 転職など他の解決方法はないか
単身赴任による生活のすれ違いに悩んでいるのであれば、離婚以外の解決方法がないか、いま一度考えてみるとよいでしょう。例えば、家族の住んでいる地域の近くの支店への異動を願い出たり、リモートワークへ切り替えてもらったりすることも検討してみましょう。場合によっては、思い切って転職して家族のもとに戻ってきてもらうことも一つの選択肢です。
4-3. 離婚後の生活環境は整っているか
夫婦関係の修復や転職なども検討しても離婚が避けられないのであれば、離婚を切り出す前に離婚後の生活の準備を整えておくことが重要です。配偶者と離婚すると、生活費は自分で負担する必要があります。離婚後の収入源の確保や、子どもを育てる環境を整えてから離婚を進めると安心です。
5. 単身赴任で離婚する際の注意点
単身赴任による離婚では、不法行為の証拠集めや親権、家の財産分与など、注意すべき点がいくつかあります。
5-1. 不法行為の証拠を集めるのが難しい
慰謝料請求では証拠が必要ですが、単身赴任中で配偶者と離れているため、不法行為の証拠を集めるのが難しい場合があります。単身赴任先の部屋を訪ねて証拠を集める方法もありますが、遠方の場合には探偵を活用して証拠を収集することも検討するとよいでしょう。
5-2. 離婚調停や裁判は申し立てられた側の住んでいる地域で行われる
離婚調停や裁判で離婚する場合は、相手の住まいを管轄とする家庭裁判所に申し立てる必要があります。ただし、当事者間の合意で裁判所を決めることも可能です。さらに、弁護士に依頼をすれば、電話会議やWEB会議を利用して調停に参加できるため、スムーズに進められます。
5-3. 単身赴任で子どもと別居していると親権で不利になる
調停や裁判に発展した場合、裁判所は子どもの福祉を最優先に親権を判断するため、主に子どもと生活し世話をしている親が有利になる傾向があります。子どもと離れて生活している親が親権を望む場合は、弁護士に相談するか、単身赴任を終えた時期に離婚を検討した方がよいでしょう。
5-4. 住宅ローンが残る持ち家について話し合っておく
住宅ローンのある不動産を保有している場合、離婚後の持ち家の扱いやローンの支払い、離婚後に住むか売却するかについて、財産分与の際にしっかりと合意を形成することが重要です。
私が過去に担当したケースでは、名義人ではない人が家に住み続けるために「毎月住宅ローンに相当する金額を名義人に支払う」という内容で合意したことがありました。
ただし、名義人と住む人が違う場合、名義人が住宅ローンを滞納し家を失うリスクや、連帯保証人である住んでいる人に請求が来る危険性があります。住宅ローンが残る家の財産分与にはさまざまなリスクが伴うため、弁護士に相談して慎重に対応すると安心です。
6. 単身赴任で離婚を検討する人からのよくある質問
単身赴任中の離婚率の統計や明確なデータはありません。単身赴任が離婚率を上げるとされることもありますが、それ以前に夫婦関係が悪化していることもあります。
単身赴任を命じた会社に対して慰謝料の請求はできません。会社としては夫婦関係を壊すために単身赴任を命じるわけではないためです。したがって、会社に慰謝料を請求することはほぼ不可能でしょう。
海外に単身赴任していても離婚は可能です。どちらも日本国籍を持っている日本人であれば、双方の合意で管轄裁判所を選び、離婚調停を申し立てることになります。
単身赴任中に配偶者の気持ちが離れないようにするには、以下のような工夫が重要です。
・細かく連絡をする
・テレビ電話などで日常の出来事を共有する
・お互いに愛情や感謝を伝える
・行ける距離なら週末に会いに行く
・できる限りコミュニケーションをとる
・誕生日や記念日にはプレゼントを贈る
夫婦双方が協力し合えるのであれば、夫婦関係を維持することができるでしょう。
7. まとめ 単身赴任による離婚は弁護士に相談しよう
単身赴任で離婚を考える人は少なくありません。しかし問題の本質は単身赴任そのものではなく、お互いのコミュニケーション不足に起因していることも多いです。まずは冷静に離婚をしても後悔しないか、離婚以外の解決方法がないかどうか考えることが重要です。
もし離婚する場合は、不法行為の証拠収集や親権、財産分与などに注意が必要です。また、法定離婚事由がなければ離婚できないため、協議が難しい場合は弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)