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1. 別居期間の長さが離婚手続きに与える影響
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1-1. 配偶者が離婚に同意しない場合の「判決離婚」|法定離婚事由が必要
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1-2. 別居期間は「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断材料になる
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2. 別居何年で離婚成立? 裁判離婚が認められる別居期間の目安
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2-1. 別居期間が10年以上|判決離婚が認められやすい
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2-2. 別居期間が5年~10年|ケースバイケース
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2-3. 別居期間が5年未満|婚姻関係の破綻を示す別の事情が必要
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2-4. 自分が有責配偶者の場合|必要な別居期間はかなり長くなる
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3. 別居期間が1年~3年程度のケースにおける裁判離婚の可否|裁判例を紹介
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3-1. 別居期間が1年~3年程度で離婚が認められた裁判例
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3-2. 別居期間が1年~3年程度で離婚が認められなかった裁判例
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4. 別居期間の長さを理由に離婚を請求する場合の準備
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4-1. 離婚事件を得意とする弁護士に相談する
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4-2. 婚姻関係の破綻を示す事情や証拠を集める
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4-3. 配偶者の財産や収入を調査する
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4-4. 希望する離婚条件を検討する
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5. 別居中の配偶者と離婚したい場合にやってはいけないこと
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5-1. 配偶者の承諾なく長期間別居する
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5-2. 配偶者以外の異性と性交渉をする
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6. 別居期間と離婚に関してよくある質問
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7. まとめ|別居を理由に離婚したい場合は弁護士に相談を
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1. 別居期間の長さが離婚手続きに与える影響
別居期間が長くなればなるほど、訴訟の判決による離婚(判決離婚)は認められやすくなります。
1-1. 配偶者が離婚に同意しない場合の「判決離婚」|法定離婚事由が必要
離婚しようとしても配偶者が離婚に同意しない場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することを検討しましょう。離婚を認める判決が確定すれば、強制的に離婚が成立 します。
離婚訴訟を通じた離婚は「裁判離婚」と言い、そのうち判決による離婚は「判決離婚」と呼ばれています。
離婚訴訟において離婚を認める判決が言い渡されるのは、「法定離婚事由」のいずれかが認定された場合に限られます(民法770条1項各号)。法定離婚事由とは、法的に離婚を可能にする以下の5つの要件です。
不貞行為
悪意の遺棄
配偶者の生死が3年以上不明であること
配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
その他、婚姻を継続し難い重大な事由
離婚を求める側は、上記のうちいずれかの法定離婚事由を立証しなければなりません。なお、「配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと」については、2024年5月24日に公布された改正法によって削除される ことが決まっています。改正法は、公布日から2年以内に施行される見込みです。
1-2. 別居期間は「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断材料になる
配偶者以外と性的関係を持つ不貞行為など、法定離婚事由に該当する具体的な行為がない場合でも、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められれば判決離婚ができます。
婚姻を継続し難い重大な事由にあたる理由の代表例が、別居による婚姻関係の破綻です。
別居期間が非常に長引いており、もはや夫婦の実態が存在しなくなっている場合は、婚姻関係の破綻(=婚姻を継続し難い重大な事由)が認定される可能性 があります。
別居期間が長ければ長いほど、婚姻を継続し難い重大な事由が認定されやすくなる傾向にあります。
2. 別居何年で離婚成立? 裁判離婚が認められる別居期間の目安
判決離婚が認められる(=婚姻関係の破綻が認定される)ために、どの程度の別居期間が必要となるかは、具体的な事情によって異なるため一概には言えません。
過去の裁判例および弁護士としての実務経験に照らすと、大まかには以下のような傾向があると考えられます。ただし、離婚を求める側が有責配偶者(離婚の原因を作った側)である場合は、判決離婚に必要な別居期間はかなり長くなるので注意が必要です。
別居期間が10年以上→判決離婚が認められやすい
別居期間が5年~10年→ケースバイケース
別居期間が5年未満→婚姻関係の破綻を示す別の事情が必要
2-1. 別居期間が10年以上|判決離婚が認められやすい
別居期間が10年以上に及んでいるケースでは、離婚を求める側が有責配偶者でない限り、判決離婚が認められやすい傾向にあります。
10年以上一緒に住んでおらず、夫婦間の行き来もほとんどない場合には、もはや客観的に見て夫婦であるとは言えない(=婚姻関係が破綻している)と考えられるためです。
2-2. 別居期間が5年~10年|ケースバイケース
別居期間が5年から10年程度のケースでは、具体的な事情によって判決離婚が認められるかどうかが分かれます。
別居前の婚姻期間が比較的短く、夫婦間に未成熟の子どもがいない場合には、5年程度の別居期間であっても判決離婚が認められる可能性が高い でしょう。
これに対して、別居前の婚姻期間が数十年に及ぶ場合には、10年前後の別居期間が求められる傾向にあります。また、夫婦間に未成熟の子どもがいる場合は、5年以上別居していても判決離婚が認められないケースが多いと考えられます。子どもの養育に関して夫婦間のやり取りがあれば、婚姻関係の破綻は認められにくいためです。
2-3. 別居期間が5年未満|婚姻関係の破綻を示す別の事情が必要
別居期間が5年未満の場合、判決離婚が認められるケースは存在するものの、比較的少数です。
別居期間中に夫婦間の交流がまったくないなど、婚姻関係の破綻を示す別の事情が存在しなければ、5年未満の別居期間だけを理由に判決離婚が認められる可能性は低いでしょう。
2-4. 自分が有責配偶者の場合|必要な別居期間はかなり長くなる
婚姻関係の破綻など、法定離婚事由にあたる事情の原因となるべき行為をした者を「有責配偶者」と言います。
有責配偶者からの離婚請求は、単に法定離婚事由が存在するだけでなく、その請求が信義誠実の原則に照らして許される場合に限って認められると解釈されています(最高裁昭和62年9月2日判決)。
同最高裁判決は、以下の3つの要件が満たされる場合には、有責配偶者からの離婚請求が許容され得る旨を判示しました。
①夫婦の別居が、両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
②夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に極めて苛酷な状態に置かれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情が認められないこと
必ずしも、上記の要件をすべて満たさなければ有責配偶者の離婚請求が認められないわけではありません。しかし、別居期間が「相当の長期間」に及び、かつそれ以外にも離婚を認めるべき事情がない限りは、有責配偶者の離婚請求は認められない可能性が高いと言えます。
同最高裁判例は、離婚請求を棄却した原判決を破棄し、審理を原審に差し戻しましたが、夫婦の別居期間は原審の口頭弁論の終結時までで約36年に及んでいました。
事案によって結論は異なり得るので一概に言えないものの、有責配偶者からの離婚請求にあたっては、少なくとも15年から20年程度の別居期間が必要になる可能性が高い と考えられます。
3. 別居期間が1年~3年程度のケースにおける裁判離婚の可否|裁判例を紹介
別居期間が1年から3年程度のケースでは、別居の事実だけを理由に判決離婚が認められる可能性は低いものの、実際に離婚が認められた例もあります。
別居期間が1年から3年程度で、離婚が認められた裁判例と認められなかった裁判例をそれぞれ紹介します。
3-1. 別居期間が1年~3年程度で離婚が認められた裁判例
大阪高裁平成21年5月26日判決の事案では、婚姻期間が約18年間に及ぶ一方で、約1年半の間別居している夫婦において、夫が妻との離婚を請求しました。
大阪高裁は以下の事情などを指摘し、別居期間が1年あまりであることなどを考慮しても、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚を認めました。
夫が病気がちになった時期から、妻が日常生活のうえで、夫をさまざまな形で軽んじるようになったこと
長年仏壇に祀っていた夫の前妻の位牌を、妻が夫に無断で親戚に送りつけたこと
夫の青春時代からのかけがえのない思い出の品々を、妻が勝手に焼却処分したこと
3-2. 別居期間が1年~3年程度で離婚が認められなかった裁判例
東京高裁平成25年4月25日判決の事案では、婚姻期間が約14年間、別居期間が約2年間の夫婦において、妻が夫との離婚を請求しました。
東京高裁は、女性問題や暴行など夫側の問題点を指摘しつつも、別居については性格や価値観の相違が大きな要因であるとしました。
さらに、およそ婚姻関係の修復が期待できないような重大な問題や衝突があったとも言えないとして、妻側の離婚請求を棄却しています。
4. 別居期間の長さを理由に離婚を請求する場合の準備
別居期間が長引いていることを理由に離婚を求める場合は、事前に以下の準備を行いましょう。
4-1. 離婚事件を得意とする弁護士に相談する
配偶者に対して離婚を切り出す前に、まずは離婚事件を豊富に取り扱う弁護士への相談を検討してください。経験豊富な弁護士に相談すれば、離婚成立までの見通しや手続きの流れ、必要な準備や注意点などについてアドバイス を受けられます。
正式に弁護士へ依頼すれば、離婚手続き全般を代行してもらえます。労力やストレスが軽減されるほか、適正な条件でスムーズに離婚が成立する可能性が高まるでしょう。
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4-2. 婚姻関係の破綻を示す事情や証拠を集める
別居期間が長引いていること以外にも、以下のような婚姻関係の破綻を示す具体的な事情や、それに関する証拠を集めておけば、離婚が認められる可能性が高くなります。
配偶者からDVやモラハラを受けている
配偶者が自分のことを軽んじている
配偶者が別の異性のところに入り浸っている
弁護士のアドバイスを受けながら、上記のような事情があるかどうかを検討し、可能な限り関連する証拠を確保するようにしてください。
4-3. 配偶者の財産や収入を調査する
財産分与や婚姻費用、養育費などの金銭的な離婚条件を取り決める際には、配偶者の財産や収入をもれなく把握しておくことが大切です。
まだ別居を始めていない場合は、できる限り同居中に、配偶者の財産や収入に関する証拠を確保しましょう。
すでに別居していて、配偶者の財産や収入を調査するのが難しい場合は、弁護士に相談してください。
4-4. 希望する離婚条件を検討する
離婚にあたっては、財産分与や年金分割、慰謝料や婚姻費用のほか、養育費、親権や面会交流など、さまざまな離婚条件を決める必要があります。
弁護士のアドバイスを受けながら、これらの離婚条件についてどのような内容を希望するかを検討しておくことをお勧めします。
5. 別居中の配偶者と離婚したい場合にやってはいけないこと
別居中の配偶者と一刻も早く離婚したいと考えている場合、以下のような行為は離婚手続きで不利に働くおそれがあるのでやめましょう。
5-1. 配偶者の承諾なく長期間別居する
夫婦は原則として互いに同居義務を負う(民法752条)ため、配偶者の承諾を得ずに別居すると、夫婦間の義務を正当な理由なく放棄する「悪意の遺棄」にあたる可能性があります。
悪意の遺棄は法定離婚事由の一つです(民法770条1項2号)。無断別居による悪意の遺棄が認定されると、有責配偶者による離婚請求とみなされ、判決離婚が認められにくくなる おそれがあります。
一時的な別居であれば大きな問題にはなりにくいですが、長期間別居する場合には、できる限り配偶者の承諾を得るようにしてください。ただし、DVやモラハラの被害を受けている場合を除きます。
5-2. 配偶者以外の異性と性交渉をする
配偶者以外の異性と性交渉をすることは、原則として法定離婚事由の一つである「不貞行為」にあたります(民法770条1項1号)。
不貞行為をすると、有責配偶者による離婚請求とみなされ、判決離婚が認められにくくなる ので注意が必要です。離婚が成立するまで、配偶者以外の異性との性交渉は控えましょう。
6. 別居期間と離婚に関してよくある質問
7. まとめ|別居を理由に離婚したい場合は弁護士に相談を
別居期間が長くなればなるほど、離婚訴訟で判決離婚が認められる可能性は高くなります。
ただし、別居のみを理由とする離婚請求が認められるためには、少なくとも5年程度以上の別居期間が必要とされるケースが多いです。判決離婚の可能性を高めるためには、不貞行為などの別の法定離婚事由や、婚姻関係の破綻を示す別の事情を併せて主張しましょう。
弁護士に相談すれば、スムーズに離婚を成立させるためのポイントなどをアドバイスしてもらえます。実際の離婚手続きも、弁護士に依頼して一任すれば安心です。
どのくらいの期間別居すれば離婚が可能になるかは、ケースバイケースです。配偶者と別居したうえで離婚したいと考えている場合は、一度弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)