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1. 不倫裁判とは?
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2. 不倫裁判のメリット・デメリット
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2-1. 不倫裁判のメリット
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2-2. 不倫裁判のデメリット
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3. 不倫相手を訴えられる条件
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3-1. 不貞行為をしている
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3-2. 不倫相手に故意・過失がある
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3-3. 夫婦関係が破綻していない
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3-4. 時効が成立していない
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4. 不倫で裁判にすべきケースと慎重に検討したほうがいいケース
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4-1. 裁判にすべきケース
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4-2. 慎重に検討したほうがいいケース
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5. 不倫裁判の流れ
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5-1. 訴状の提出(訴えの提起)
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5-2. 裁判所による期日指定
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5-3. 相手側が答弁書を提出
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5-4. 第一回口頭弁論
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5-5. 弁論準備手続
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5-6. 裁判官からの和解提案
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5-7. 尋問
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5-8. 判決
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5-9. 控訴
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6. 不倫裁判で認められる慰謝料相場
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7. 不倫裁判を成功させるポイント
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7-1. 不倫(不貞行為)の証拠を集める
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7-2. 弁護士に依頼する
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7-3. 裁判の前にまずは示談交渉での解決を目指す
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8. 不倫裁判にかかる費用
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8-1. 訴訟費用
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8-2. 弁護士費用
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9. 不倫裁判に関してよくある質問
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10. まとめ 不倫裁判を検討する場合は弁護士に相談
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1. 不倫裁判とは?
不倫裁判とは、不倫された側の配偶者が、した側の配偶者やその不倫相手に対し慰謝料を請求する手続きを指します。
なお、「不倫」は一般用語であり、法律上は「不貞行為」と言います。不貞行為は配偶者以外と自由意思で性的関係を持つ行為を指します。民事上の不法行為として位置づけられているため、加害者に対し慰謝料の請求が可能です。一方、刑事罰の対象ではないため、警察への被害届の提出や告訴はできません。
不倫裁判を提起する場合、通常は被告(訴えられる側)の住所地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となります。原告(訴える側)の住所地を管轄する裁判所や、不貞の行われた場所を管轄する裁判所を管轄裁判所とすることも可能です。なお、慰謝料の請求金額が140万円以下の場合は、簡易裁判所が管轄裁判所となります。
また、不倫をした配偶者と離婚する場合には、不倫裁判ではなく、別途離婚の手続きをとることになります。離婚手続きでは、慰謝料のほかに、親権、養育費、面会交流、財産分与など、離婚の条件を決めます。このとき、当事者同士での交渉の折り合いがつかなければ、離婚調停を申し立てます。離婚調停でも条件等の折り合いがつかない場合は、離婚裁判を提起します。
2. 不倫裁判のメリット・デメリット
不倫によるトラブルを解決するための手段として、裁判は有効な選択肢のひとつです。
しかし、裁判するにしても、メリット・デメリットがあるため慎重に検討しなければなりません。
2-1. 不倫裁判のメリット
不倫裁判を起こすメリットは、相手が連絡を無視するなど話し合いに応じない場合や慰謝料の支払いを拒否する場合に、裁判官という公平な第三者の判断によって問題解決を目指せることです。
また、判決によって慰謝料が認められれば、相手が支払いに応じないときにも相手の財産を強制的に差し押さえる手続き(強制執行)を取ることが可能です。
2-2. 不倫裁判のデメリット
不倫裁判を起こすデメリットは、時間や労力、費用がかかることです。
不倫裁判はケースにもよりますが、短くても半年程度、長くなると1年半以上の期間を要します。
また、証拠集めや訴状の作成などの労力もかかり、これらを弁護士に依頼すれば今度は弁護士費用の支払いが必要になります。
裁判中は裁判官や弁護士、傍聴人の前で、プライベートなことについて聞かれたり、話したりしなければならないため、精神的な負担も大きいでしょう。
さらに、たとえ不倫裁判で勝訴しても慰謝料を回収できない可能性があります。判決によって差し押さえなど強制執行をすることはできますが、相手に財産がなかったり、財産として何があるのかを把握しなければ強制執行の手続きができないことはデメリットといえます。
3. 不倫相手を訴えられる条件
不倫裁判によって、不倫相手に慰謝料を請求するには、以下の点を満たしていなければ訴えが認められない可能性があります。
3-1. 不貞行為をしている
不貞行為とは、原則として、配偶者以外の者と自由な意思に基づいて、性交や性交類似行為などの性的行為を行うことをいいます。
そのため、そもそも性的行為がない場合は、不貞行為とはいえないため、慰謝料請求はできません。また、慰謝料請求が認められるには、不貞行為の証拠も必要です。
ただし、性的行為があったとまでは断定できないケースであっても、婚姻生活を乱すような可能性のある行為をしていれば慰謝料請求が認められる可能性はあります。
「逢いたい」「大好きだよ」などの愛情表現を含む内容のメールを送信した事案(東京地判平成24年11月28日判決)や、高価なプレゼントを交換したり、2人きりで日帰り旅行をしたりした事案(東京簡裁平成15年3月25日判決)では、慰謝料の支払いが命じられています。
3-2. 不倫相手に故意・過失がある
不倫裁判で慰謝料請求が認められるには、不倫相手が「相手が既婚者であることを知っていた」または「通常の注意をしていれば知ることができた」といえる必要があります。「交際相手が既婚者かもしれない」という程度の認識でも、故意・過失が認められる可能性があります。
3-3. 夫婦関係が破綻していない
不倫によって慰謝料が発生するのは、夫婦の平穏な婚姻生活が侵害されるためです。不貞行為があった時点で夫婦関係が破綻していると、それが婚姻期間中であっても、そもそも守られるべき利益が存在していないと判断されます。
3-4. 時効が成立していない
民法では、不倫の慰謝料請求ができる期間を、原則として被害者、またはその法定代理人が損害と加害者を知ったときから3年と規定しています。
時効が過ぎると、裁判をしても請求が認められなくなってしまうため、できるだけ早めに行動を起こすことが大事です。
4. 不倫で裁判にすべきケースと慎重に検討したほうがいいケース
不倫が発覚した際に、裁判すべきなのか、それとも慎重になったほうがいいのか判断に迷う かと思います。
ここでは、よくあるケースを想定して解説します。
4-1. 裁判にすべきケース
不倫相手が、不倫の事実を認める場合は、示談交渉で慰謝料の支払いについて合意ができる可能性がありますが、不貞の証拠があるにもかかわらず不貞行為を認めていない場合は、交渉での解決は難しいため裁判にすべきケースといえます。
また、不倫相手が不貞慰謝料の相場よりも低い金額しか支払わないと主張している場合も裁判すべきケースといえるでしょう。
不倫相手がこちらからの連絡を無視するなど不誠実な態度を続ける場合なども、裁判にしたほうが結果的に早く解決できる可能性があります。
4-2. 慎重に検討したほうがいいケース
不貞行為があったことを証明できない場合、慰謝料の支払いが認められる可能性は低いため、裁判をするか否かは慎重に検討したほうがいいケースといえます。
不倫相手に対して慰謝料を請求するときは、不貞行為をした配偶者に非があるかどうかも重要な点です。配偶者が独身と偽っており、不倫相手がそれを信じて交際していた場合、不倫相手に対して慰謝料を請求できません。

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5. 不倫裁判の流れ
不倫裁判の基本的な流れについて解説します。
5-1. 訴状の提出(訴えの提起)
不倫裁判を行うときは、管轄の地方裁判所(請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所)に訴状を提出します。
訴状には、原告・被告の住所氏名、請求の趣旨(原告が何を求めるのか)、請求の原因など、決められた形式に沿って記載する必要があります。
また、証拠がある場合には、裁判所に証拠書類を併せて提出します。
5-2. 裁判所による期日指定
訴状を提出すると、裁判所から被告へ訴状の送達と期日の指定が行われます。第1回目の期日は、訴状の提出から1カ月半~2カ月ほど先の日程を指定されることが多いです。
5-3. 相手側が答弁書を提出
被告に訴状が送達されると、被告が訴状に記載された原告の主張(請求の趣旨や請求の原因)に対する反論を記載した答弁書を裁判所と原告に提出します。
5-4. 第一回口頭弁論
第一回口頭弁論では、訴状と答弁書の陳述、証拠の取り調べなどが行われます。なお、被告は答弁書を提出していれば、欠席していても答弁書を陳述した扱いにしてもらえます。そのため、第一回口頭弁論は数分で終了することも珍しくありません。
5-5. 弁論準備手続
二回目以降の期日では、準備書面や証拠関係書類などでお互いに主張・証拠を出し合う争点整理手続を行います。
5-6. 裁判官からの和解提案
原告・被告の主張と証拠が出尽くした段階で、裁判官から和解による解決を勧められることがあります。
和解により解決すれば、判決で終えるよりも、時間・労力をかけずに済みます。和解でも相手が慰謝料の支払いを怠った場合は、差押えなどの強制執行を行うことが可能です。
和解の条件に納得ができないときは、和解を断って判決をもらうこともできます。ただし、裁判所が提示する和解案は裁判官の心証を開示する機会でもあるため、和解案の内容は判決内容に近いと考えられます。そのため、和解案よりも有利な判決がでる可能性は低いことに留意して、和解をするか否かを検討しましょう。
5-7. 尋問
尋問は主張や証拠の整理がすべて終わった後に、裁判所が適当と認める場合に行われます。当事者本人や証人が裁判所に呼び出され、主尋問、反対尋問、補充尋問の順で質問されます。
尋問では、不倫相手と顔を合わせることになりますし、相手方からの質問で夫婦関係などプライベートな質問がされる場合もあります。不快感やストレスを覚えることもあるかもしれません。
他方、相手の証言内容の信用性を否定できることもあります。
5-8. 判決
和解が成立しない場合、裁判所が判決で結論を出し、その内容を記載した判決正本と呼ばれる文書を原告・被告双方に送達します。タイミングは口頭弁論終結日から1カ月半~2カ月程度が一般的です。
判決に不服がある場合、判決正本の送達を受けた日から2週間以内に控訴を提起します。当事者双方が控訴をせずに控訴期間が経過したら、判決は確定します。
5-9. 控訴
控訴を提起すると、高等裁判所で再度審理が行われます。審理を経て第一審の判決におかしな点があれば、結論が変わる可能性があります。
他方、解決までにさらに時間や労力、費用がかかるため、控訴して争うかどうかは慎重に判断する必要があります。
6. 不倫裁判で認められる慰謝料相場
不倫の慰謝料の金額についての明確な算定基準はなく、裁判官がさまざまな事情を考慮した上で慰謝料の金額を決定します。
過去の裁判例から、不貞行為の慰謝料は、およそ50万円~300万円が一般的です。
不倫が原因で別居や離婚する場合、被害が重大で精神的苦痛が大きいと考えられているため、慰謝料の金額はおよそ100万円~300万円程度になります(ただし、200万円を超える慰謝料が認められるケースはあまり多くありません)。
離婚しない場合、慰謝料の金額はやや低くなり、およそ50万円~100万円程度が相場です。
配偶者と不倫相手の間に子ができた場合や、夫婦間に未成年の子どもがいる場合などは、慰謝料が増額される可能性があります。一方、もともと夫婦関係が悪かった場合などは、慰謝料が減額される事情と判断されます。
あくまで個別的な判断がなされるので、一度弁護士に相談することをおすすめします。
7. 不倫裁判を成功させるポイント
不倫裁判を成功させるためにはいくつかポイントがあります。
7-1. 不倫(不貞行為)の証拠を集める
裁判において不貞行為を裁判官に認めてもらうには、有力な証拠を入手するのが重要となります。不貞行為の証拠となる代表的なものは、以下のとおりです。
ラブホテルに出入りしている写真・動画
ラブホテルの領収書・利用明細
メール、メッセージ、手紙でのやり取り
不倫の事実を認めた誓約書、音声データ
自分で手に入れるのが難しいときは、探偵事務所や興信所などに調査を依頼することを検討してみましょう。探偵や興信所が作成した調査報告書も有用な証拠になります。
7-2. 弁護士に依頼する
弁護士に相談して、適正な慰謝料金額がどれくらいかを確認しておくのもいいでしょう。弁護士には相手方との示談交渉を依頼することも可能です。適正な金額の慰謝料で示談を成立できるよう相手方と交渉するのに自信がない場合は弁護士への依頼を検討しましょう。

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7-3. 裁判の前にまずは示談交渉での解決を目指す
裁判の前に、まずは示談交渉での解決を目指しましょう。相手方が不貞行為を認めているなど、争点があまりない事案では、早期解決できる可能性があります。早期解決ができれば、精神的な負担や、裁判にかかる一定の労力、時間、費用も軽減できます。
示談交渉では解決が難しい場合には、裁判の利用を検討しましょう。
8. 不倫裁判にかかる費用
不倫裁判にかかる費用としては、訴訟費用(裁判所へ納付する費用)と、弁護士費用があります。
8-1. 訴訟費用
訴訟費用には、収入印紙代(訴状には収入印紙の購入代金)と予納郵券代(訴状や呼出状などの書類を郵送するときに使用する切手の購入代金)があります。
収入印紙の額は、慰謝料の請求額(訴額)によって異なります。例えば、訴額が200万円の場合は、収入印紙代は1万5,000円です。手数料は、裁判所のホームページから確認することができます。
予納郵券代は各裁判所により予納郵券の額は異なるので、裁判所へ問い合わせましょう。
8-2. 弁護士費用
弁護士費用は、大きく分けて着手金と報酬金からなります。
着手金は、事件の成功・不成功などの結果にかかわらず、弁護士に依頼したときにかかる費用です。各法律事務所によって異なりますが、交渉なら20~30万円程度、調停なら30~40万円程度、訴訟すると40~50万円程度が相場です。
報酬金とは、事件が成功した際に支払う成功報酬です。不倫裁判においては、獲得できた慰謝料の額(経済的利益)に基づいて計算されます。計算方法は各弁護士事務所によって異なりますが、現在でも弁護士会の旧報酬基準に従っている事務所が多くあるため、目安とするといいでしょう。
弁護士会の旧報酬規定は以下の通りです。
300万円以下の場合:16%
300万円を超え3,000万円以下の場合:10%+18万円
3,000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円
3億円を超える場合:4%+738万円
このほか、交通費や日当などの費用が追加でかかる場合もあります。
9. 不倫裁判に関してよくある質問
不倫裁判は、裁判の公正さを確保するために、原則として一般に公開されます。「不倫されたことを知られたくない」という理由で非公開になることはありません。
ただし、知人が偶然自分の裁判を傍聴している可能性は低いでしょう。筆者が多くの事案に携わってきましたが、そういったケースはほとんどありません。
不倫裁判にかかる期間は、半年から1年以上が目安です。
争点が多かったり、対立が激しかったりするとその分期間が長くなります。一方、裁判上の和解が成立した場合には、半年程で裁判が終わることも少なくありません。
不倫裁判にかかる費用の費用うち、訴訟費用については、裁判を提起する段階から主張し、なおかつ勝訴することによって請求することが可能です。
なお、和解においては訴訟費用を請求できることはまずありません。
弁護費用は原則として相手に請求できませんが、不倫裁判のように不法行為に基づくケースのときは、例外的に裁判で認められる損害額の1割程度まで請求が可能となっています。
10. まとめ 不倫裁判を検討する場合は弁護士に相談
不倫(不貞行為)は、民事上の不法行為なので、慰謝料を請求できます。
ただし、裁判は時間や手間もかかるうえ、法律の知識も欠かせません。
まずは弁護士に相談し、慰謝料を請求できる事案なのか、また請求できる場合の慰謝料の相場がいくらなのかを確認することをおすすめします。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)