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1. 離婚裁判で負けるとはどういうこと?
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2. 離婚裁判で負ける割合
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3. 離婚裁判で負ける理由
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3-1. 法定離婚事由に該当しない
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3-2. 証拠が不十分
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3-3. 裁判所が離婚を不適当と判断した
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3-4. 有責配偶者からの離婚請求
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4. 離婚裁判で負けた判決事例
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4-1. 夫婦間で意見や価値観の相違があったケース
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4-2. 夫に浪費や風俗の利用があったケース
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5. 離婚裁判で負けないためのポイント
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5-1. 客観的な証拠を用意する
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5-2. 和解による離婚を検討する
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5-3. 弁護士に依頼する
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6. 【ケース別】離婚裁判で勝つ方法
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6-1. 不貞行為やDVで離婚したい
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6-2. 性格の不一致で離婚したい
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6-3. 有責配偶者だけど離婚したい
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6-4. 慰謝料を獲得したい
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6-5. 親権を獲得したい
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7. 離婚裁判で負けたときの対処法
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7-1. 判決に不服な場合は控訴する
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7-2. 別の理由で再度裁判を起こす
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7-3. 協議での離婚成立を目指す
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8. 離婚裁判に関連して、よくある質問
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9. まとめ 裁判での負けたくないのであれば弁護士に相談を
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1. 離婚裁判で負けるとはどういうこと?
離婚裁判で「負ける」というのは、離婚を求めている側の請求が認められず、裁判で離婚が成立しないことを指します。このことを「棄却」といいます。
離婚裁判では、離婚だけでなく慰謝料や財産分与、子どもの親権なども決められます。離婚請求が認められた場合でも、これらの条件が認められない場合には「負けた」と感じることがあります。ただし、これはあくまで主観的な評価です。
2. 離婚裁判で負ける割合
最高裁判所事務総局家庭局の「人事訴訟事件の概況 - 令和4年1月〜12月」によると、2022年に終了した離婚事件で離婚請求が棄却された割合は約4.3%でした。離婚請求が棄却される割合が低い理由として、事前に弁護士に相談するケースが多いためだと考えられます。弁護士に相談すれば、証拠を基に離婚が認められる可能性を判断し、裁判をするかしないかを判断できます。
3. 離婚裁判で負ける理由
離婚裁判を考えている人にとって気になるのは「どうして負けるのか?」ではないでしょうか。離婚裁判で負ける理由について解説します。
3-1. 法定離婚事由に該当しない
離婚請求が法定離婚事由に該当しない場合、裁判所は離婚を認めず、離婚請求が棄却されることになります。法定離婚事由は民法770条1項に定められており、具体的には次の5つです。
配偶者に不貞な行為(不倫)があったとき
配偶者から悪意で遺棄されたとき(正当な理由なく別居され、生活を共にしない状態)
配偶者の生死が3年以上不明なとき
配偶者が重い精神病にかかり、回復の見込みがないとき(2026年5月までに施行される民法改正に伴い削除)
その他、婚姻を続けることが困難な重大な理由があるとき
例えば、不貞な行為とは配偶者以外との性交渉を指します。悪意で遺棄されたとは、正当な理由なしに一方的に同居を拒否される場合が該当します。
また、婚姻を継続し難い重大な事由は、DVやモラハラ、性交拒否、長期間の別居などが含まれます。しかし、この基準は曖昧であり、どこまでが「婚姻関係が破綻して回復の見込みがない」と認められるかは判断が難しいです。
3-2. 証拠が不十分
裁判で請求が認められるためには証拠が非常に重要です。証拠がなければ請求の前提となる事実が認められない可能性が高いためです。特に、証拠の中でも客観的な証拠が求められます。
例えば、不貞行為を証明するためには、配偶者と不倫相手がホテルに入っていく写真や、二人の間で交わされたLINEのやり取りなどが有効な証拠となります。これに対して、自身の日記やメモなどは主観的な証拠に過ぎないため、証拠としては不十分な場合が多いです。裁判所は客観的な証拠を重視するため、できるだけ第三者が確認できる証拠を集めることが重要です。
3-3. 裁判所が離婚を不適当と判断した
法定離婚事由の一つである「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」については、形式的に該当しても、裁判所が離婚を認めない場合があります。これは、精神病にかかっている配偶者との離婚を認めることで、精神病者を支える人がいなくなり、その生活環境が悪化することが懸念されるからです。
そのため、裁判所は、精神病者の療養や生活について具体的な方策が講じられており、その実施に見込みが立った場合に限り、離婚を認めることがあります。回復の見込みがない精神病にかかっている配偶者との離婚を求める場合には、こうした方策を準備しておくことが重要です。
3-4. 有責配偶者からの離婚請求
有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させた原因を作った配偶者を指します。例えば、夫の不貞行為で婚姻が破綻した場合、夫が有責配偶者となります。有責配偶者が離婚請求をすることは、非有責配偶者にとって不公平なため、信義則(民法1条2項)に基づき離婚が認められないことがあります。とはいえ、以下の条件を満たせば、有責配偶者からの離婚請求も認められます。
長期間別居していること
未成年の子どもがいないこと
非有責配偶者に過酷な状況がないこと
ただし、有責配偶者からの離婚はそう簡単ではないことを覚えておきましょう。
4. 離婚裁判で負けた判決事例
次に、離婚裁判に関する事例を紹介いたします。法定離婚事由が明確に認められる場合は比較的予測が立てやすいですが、それ以外のケースでは判断が難しいことが多いです。離婚裁判を進めるにあたっては、弁護士に相談することを検討しながら以下の事例をご参考にしてください。
4-1. 夫婦間で意見や価値観の相違があったケース
【事案】
結婚式の招待客数や夫婦の家計管理の方法について、妻が夫の意向に従わなかったり、妻の大学院進学を巡って意見が対立したりした結果、夫は妻が「自分の意見に固執し、夫の希望を聞き入れない性格」だと感じました。また妻に関して「婚姻前は家庭中心の生活を希望していたにもかかわらず、婚姻後は仕事中心に変わった」として「思い描いていた理想の結婚相手とは異なる」と考え、離婚を請求しました。
【判決】
妻が「夫の意見を完全に無視して自己主張を押し通そうとしたこと」は認められませんでした。妻は夫との話し合いを通じて関係を改善しようとしており、「大学院を退学してでも自分との関係を修復したい」という意向を示していました。これらの事情から、妻の働きかけにより今後夫婦関係が改善される可能性があると判断し、離婚請求は却下されたのです。
4-2. 夫に浪費や風俗の利用があったケース
【事案】
夫が風俗を利用したり浪費をしたりしていたため、妻が離婚を請求した事例です。
【判決】
夫はデリヘルを利用したり、ゲームの課金で浪費したりしていたほか、家計の現状について妻に十分な説明をしていませんでした。しかし、夫は関係の修復を望み、誠実に対応してきたこと、また、婚姻期間が約7年3カ月、別居期間が約2年と長期間には及んでいないことなどから、離婚請求は認められませんでした。
5. 離婚裁判で負けないためのポイント
次に離婚裁判で勝ち、無事離婚するためのポイントを紹介します。
5-1. 客観的な証拠を用意する
離婚請求が裁判で認められるためには、客観的な証拠が重要です。不貞行為の証拠としては、配偶者と不倫相手がホテルに入る写真や、二人のLINEのやり取りなどがあります。DVの場合、暴行直後の診断書が証拠になり、モラハラの場合は、配偶者との会話の録音やLINEのメッセージのやり取りが証拠となります。
5-2. 和解による離婚を検討する
裁判での審理が進み、双方の主張立証が尽くされてくると、裁判の途中で裁判所から和解をすすめられることが多いです。裁判所から和解を勧められても、これに応じなければならないわけではありませんので、以下のメリット・デメリットを考慮して判断するとよいでしょう。
【和解するメリット】
・和解なら、裁判を早く終わらせて次のステップに進める
・判決と比較して、和解では自分の希望に合わせた条件を決められる
・判決で負けるリスクを避けられる
【和解するデメリット】
・和解には一定の譲歩や妥協が必要
・和解後、内容を変更することができない
自分が妥協できるような条件であれば、和解して先に進んだ方がいいかもしれません。
5-3. 弁護士に依頼する
離婚裁判を始める際は、できるだけ早く弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に頼むことで、有利な証拠を集めたり、法律に基づいた適切な主張をしたりすることができます。弁護士なしでも裁判は可能ですが、法律に詳しい専門家の助けを借りることで、より有利に解決できる可能性が高くなります。

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6. 【ケース別】離婚裁判で勝つ方法
離婚したい理由や状況に応じて、離婚裁判で勝つ方法を紹介します。自分で知識をつけるのはもちろんのこと、弁護士に相談することも検討しましょう。
6-1. 不貞行為やDVで離婚したい
不貞行為やDVは法定離婚事由にあてはまります。この場合、離婚を有利に進めるためには証拠をしっかり集めることが大切です。
6-2. 性格の不一致で離婚したい
性格の不一致だけでは離婚の理由にはなりません。話し合いや調停で解決できなければ、離婚は難しいでしょう。しかし、別居が長期化して修復が不可能であれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」として、離婚が認められることもあります。別居の原因が自分にある場合は、離婚請求が認められにくいので、相手に原因があることを示すことが大切です。一般的に、別居が3年を超えると、離婚が認められる可能性が高くなります。
6-3. 有責配偶者だけど離婚したい
有責配偶者(離婚の原因を作った側)が離婚を請求する場合、いくつかの条件を満たさなければ認められません。具体的には、①別居期間が長いこと、②未成熟子の子どもがいないこと、③相手が離婚により非常に過酷な状態に追い込まれることがないことが必要です。性格の不一致と同じように、話し合いや調停で解決できない場合、基本的には離婚は難しいでしょう。
6-4. 慰謝料を獲得したい
慰謝料請求は離婚の原因が相手にあるだけでなく、不貞行為やDV、重大な精神的虐待などの深刻な有責行為があった場合に認められます。そのため、これらの重大な行為があったことを証明できる証拠を集めることが重要です。
6-5. 親権を獲得したい
親権は従前および現在の監護状況、父母の監護能力、子どもの発育状況や意思など、さまざまな要素を総合的に考慮して決定されます。特に子どもが幼い場合は、これまでの監護状況が重要視されます。育休取得や日々の世話、保育園・幼稚園の対応などが評価されます。子どもが10歳以上の場合は、子ども自身の意思も考慮されることが多く、意思表示が重視されます。
7. 離婚裁判で負けたときの対処法
離婚裁判で負け、離婚が認められなかったとしても、すぐにあきらめる必要はありません。離婚裁判で負けたときの対処法を紹介します。
7-1. 判決に不服な場合は控訴する
離婚裁判で不利な判決が出た場合、判決書を受け取ってから2週間以内であれば控訴できます。控訴すれば別の裁判所で再度判断してもらうことが可能です。ただし、控訴で判決が覆るかどうかは事案によります。
例えば、別居が理由の場合、控訴によって別居期間が長くなるので離婚が認められる可能性があります。しかし、不貞行為やDVが理由の場合、新しい証拠がなければ判決を覆すのは難しいです。また、控訴後も裁判所から和解を勧められることが多いため、和解で解決することも考えられます。
7-2. 別の理由で再度裁判を起こす
判決が確定した後でも、新しい事情があれば、再び離婚裁判を起こすことが可能です。例えば、探偵の調査で相手の不貞行為を示す証拠が見つかった場合や、判決後に別居期間がさらに長くなった場合などが挙げられます。このような新たな理由があれば、改めて裁判を検討できます。
7-3. 協議での離婚成立を目指す
離婚請求が棄却された後でも、話し合いによる協議離婚を目指すことは可能です。ただし、裁判で離婚が認められなかった場合、相手に有利な条件を提示しなければ合意を得るのは難しいでしょう。相手の意向を尊重しながら、離婚条件で大幅に譲歩するなど柔軟に調整することが重要です。

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8. 離婚裁判に関連して、よくある質問
自身が有責配偶者と認定されて離婚請求が認められなくなってしまう可能性や、不貞行為を理由として慰謝料を請求されてしまう可能性があるので、離婚裁判中の交際は避けるべきです。
弁護士に依頼しても、相手がこちらの主張を覆すような証拠を提出する場合など、離婚裁判で敗訴する可能性はあります。しかし、専門知識を持つ弁護士に依頼すれば、法律の解釈や手続きについて的確なサポートを受けることができるので、可能な限り有利な解決が期待できるでしょう。
離婚裁判を起こす際には裁判所に印紙代や切手代を支払います。裁判で負けた場合、原則としてこれらの費用は裁判を起こした原告が負担します。
9. まとめ 裁判での負けたくないのであれば弁護士に相談を
離婚裁判とは、配偶者との離婚や慰謝料、財産分与、親権などの争いを法的に解決する場です。裁判での「勝ち」とは、離婚請求が認められ、希望する条件が実現されることを指します。勝つためには、民法770条に基づく法定離婚事由(不貞行為、悪意の遺棄、長期別居など)を立証する必要があります。そのため、客観的な証拠を集めることが重要です。
逆に、いくら離婚したいと思っても、証拠が不十分であれば裁判で負けます。裁判は非常に専門的な手続きです。弁護士に依頼したほうが、十分な証拠を集めやすくなり、法律に基づいた適切な主張ができるでしょう。
また、事前の和解や適切な交渉を行うことで、裁判を避けつつ有利に進める方法もあります。離婚問題は専門的で複雑なため、早めに弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)