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1. 不貞裁判とは
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2. 不貞裁判で負けた場合はどうなる?
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2-1. 不貞慰謝料を支払う必要がある
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2-2. 裁判費用や相手の弁護士費用の負担が命じられることがある
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2-3. 慰謝料を払わないと差し押さえを受ける
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2-4. 控訴すれば控訴費用がかかる
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3. 不貞裁判で勝つためのポイント
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3-1. 訴えられた内容をよく確認する
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3-2. 慰謝料の支払い義務がないことを主張する
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3-3. 主張を裏付ける証拠を用意する
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3-4. 弁護士に対応を依頼する
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4. 不貞裁判で負ける可能性が高い場合の対処法
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4-1. 裁判前に交渉で示談をする
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4-2. 和解案を受け入れる
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4-3. 誠意をもって反省と謝罪をする
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5. 不貞裁判で訴え取り下げや減額に成功した事例を紹介
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6. 不貞裁判で負けるのが不安な人からのよくある質問
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7. まとめ 不貞裁判で負けないためには弁護士に依頼するのがおすすめ
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1. 不貞裁判とは
不貞裁判とは、不倫をされた妻(夫)が、夫(妻)の不倫相手に対し、慰謝料を請求する裁判のことをいいます。不倫によって精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償を請求するものです。
裁判は、原告(訴えた側)が訴状を作成し、裁判所に訴状を提出することで手続きが開始されます。訴状は被告(訴えられた側)に送達され、被告は答弁書という反論書を提出します。
裁判では、自分の主張を裏付ける証拠を提出しながら、双方が書面で主張・反論を繰り返します。不貞の事実の存在は、原告側が証明する責任を負っています。ある程度主張が尽き、争点が明らかになると、裁判所で証拠調べ(証人尋問や当事者尋問)が行われます。最終的には、不貞行為の有無、慰謝料の妥当な金額などについて、裁判官が判断します。
実際の裁判では、適宜、裁判所から和解の打診があり、双方で金額の折り合いがつけば、和解で終了することもあります。和解とは、裁判官が判断を下すのではなく、双方で一定の条件で合意をすることです。合意ができなければ、裁判所が判決という形で判断を下します。
2. 不貞裁判で負けた場合はどうなる?
訴えられた側が負けた場合は、次のようなリスクが生じます。
不貞慰謝料を支払う必要がある
裁判費用や相手の弁護士費用の負担が命じられることがある
慰謝料を払わないと差し押さえを受ける
控訴すれば控訴費用がかかる
それぞれ解説します。
2-1. 不貞慰謝料を支払う必要がある
不貞裁判で「負ける」とは、不貞の事実が認められ、請求金額の全額またはそれに近い金額の支払いが命じられることを意味します。「不貞行為はなかった」と訴えたが、原告によって不貞行為が証明された場合や、「相手が既婚者であることを知らなかった」と主張したが、知らなかったことについて過失が認められた場合などが挙げられます。
慰謝料の支払いが命じられると、不服申し立て(控訴)しない限りはただちに支払う必要が生じます。
2-2. 裁判費用や相手の弁護士費用の負担が命じられることがある
慰謝料の支払い命令が出ると、通常はこれに加え、訴訟費用や弁護士費用の支払いも併せて命じられます。この訴訟費用には、訴状に収入印紙を貼付して支払われる申し立て手数料のほか、書類を送るための郵便料や証人の旅費日当などがあります。
弁護士費用は、実際に原告が弁護士に支払った費用ではなく、通常は支払いが命じられた慰謝料の1割程度が認められます。通常、裁判で負けても相手の弁護士費用まで支払う必要はありません。しかし、不貞や交通事故の裁判においては、原告が被害者としての側面を強調し、弁護士費用を損害に含めて請求することが多く、裁判所もこれを認める傾向があります。
2-3. 慰謝料を払わないと差し押さえを受ける
不貞裁判に負けて慰謝料の支払い命令が出たにもかかわらず、払わないままでいると、財産を差し押さえられるおそれがあります。判決は「債務名義」と呼ばれ、これに基づき原告が裁判所に強制執行の申し立てをすると、被告の財産から強制的に支払いが行われます。具体的には、裁判所から通知が届いた銀行などが財産を差し押さえます。
差し押えの対象として最もメジャーなのは預金債権(預貯金)ですが、そのほかにも給与、動産、不動産などが挙げられます。給与が差し押さえられると、裁判所から勤務先に通知が行くため、職場に知られてしまうことになります。
2-4. 控訴すれば控訴費用がかかる
判決の内容に不服があれば控訴することができますが、追加の弁護士費用や控訴費用がかかります。控訴費用も訴訟費用と同じく、申し立て手数料の印紙代や郵便料などが含まれます。控訴審における弁護士費用の追加着手金は、10万~20万円程度が相場といえます。控訴するかどうかは、原判決(最初の裁判)の不利益の程度、判断が覆る可能性、控訴にかかる費用などを総合的に考慮し、弁護士に相談したうえで慎重に判断しましょう。
3. 不貞裁判で勝つためのポイント
3-1. 訴えられた内容をよく確認する
訴状には、訴えられた内容や証拠が記載されています。原告の主張する事実はそのとおりなのか、また証拠はしっかりそろっているのか、訴状の内容をよく確認しましょう。事実と異なるところがあれば、しっかり反論していきましょう。
被告が事実と認め争わない事実は、その事実があるものとして裁判所は判断します。逆に、被告が否定する事実については、原告にその事実の存在を証明する責任が課されることになります。
3-2. 慰謝料の支払い義務がないことを主張する
慰謝料が発生しない場合として、以下の事情などが挙げられます。
①肉体関係はなかった
②相手が既婚者とは知らなかった
③夫婦関係が破綻していた
④時効が完成している
仮に肉体関係があったとしても、②~④にあてはまる場合には、慰謝料を支払う必要はありません。
もっとも、②相手が既婚者であると知らなかったとしても、知らなかったことに過失があると認められれば、慰謝料の支払い義務は免れません。例えば、交際の過程で、週末だけ連絡が取れないなどの事情があり「既婚者かもしれない」と判断できる場面で、それに気づかなければ、過失があるとして慰謝料の支払いが生じる可能性があります。
3-3. 主張を裏付ける証拠を用意する
裁判では、いかに自身の主張を裏付ける証拠を提出できるかが重要です。上記①~④に該当する場合には、これらを証明する証拠を準備しましょう。
たとえば、肉体関係はあったが、既婚者とは知らなかったと主張する場合、相手が独身であると嘘をついていた証拠(LINEのやりとり、婚活アプリのプロフィール欄など)などを提出するとよいでしょう。
3-4. 弁護士に対応を依頼する
裁判は口頭でのやりとりではなく、原則として主張を書面で提出し、併せて証拠も提出する必要があります。このような裁判手続きは煩雑であり、一般の人が自分で対応するのは負担が大きいといえます。
通常、慰謝料を訴える側は弁護士に依頼していることが多く、法律的・専門的な知識の差を埋めることは相当難しいでしょう。この点、弁護士に依頼すれば、裁判所に提出する書面作成をはじめ、裁判への対応もすべて任せられるため安心です。
法的な観点について、判例に基づき、有効な反論をしてもらえるので、結果として、請求金額を大きく減額できる可能性があります。不倫裁判を起こされたら、弁護士に依頼することを強くおすすめします。

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4. 不貞裁判で負ける可能性が高い場合の対処法
不貞の事実があり、証拠も揃っている場合には、裁判で勝つ見込みはほとんどないといえます。このような場合、ダメージを最小限にするには、次の方法が考えられます。
4-1. 裁判前に交渉で示談をする
裁判が起こされる前であれば、早急に連絡をとって示談交渉するべきでしょう。真摯に謝罪し、誠実に対応することで、減額に応じてもらえる可能性もあります。裁判を起こされずに済めば、職場や家族に知られずに解決できる、早期に紛争から解放され精神的な負担が軽くなるなどのメリットがあります。
4-2. 和解案を受け入れる
裁判の中で、双方が支払い金額、支払い時期などについて合意することを和解といいます。双方が合意すれば、長期の分割払いなど柔軟な解決も可能です。
これに対し判決は、裁判所が一方的に下す支払い命令のことで、一括払いを前提とします。和解は成立時点で終了するのに対し、判決はどちらかに不服があれば控訴される可能性があり、紛争が長期化する可能性があります。
不貞裁判では、ほとんどの場合、裁判所から和解の打診があります。支払う側のメリットとしては、和解であれば分割払いといった柔軟な対応が可能となる点です。支払いを受ける側としても、相手方に資産がなければ判決も紙切れとなるため、多少時間がかかっても確実に回収する可能性は高まるという点で、和解には一定のメリットがあります。そのため、一括払いとなる判決よりも、和解案を受け入れて分割払いで着地するのも一つの方法です。
4-3. 誠意をもって反省と謝罪をする
裁判において、謝罪したことが慰謝料の減額事由として考慮されることがあるので、まずは反省と謝罪の言葉を述べるようにしましょう。反省と謝罪を伝える方法としては、書面で主張する、本人尋問の際、謝罪の言葉を述べる、ということが考えられます。
逆に、逆切れや悪態をつくのは絶対にやめましょう。反省をしていないとして、慰謝料の増額事由と判断される可能性があります。
5. 不貞裁判で訴え取り下げや減額に成功した事例を紹介
【慰謝料300万円から30万円まで大幅に減額できた事例】
既婚男性と不貞行為をしたとして、慰謝料300万円を、男性の妻から請求された事案。SNSなどの証拠を提出し、男性にはほかにも交際女性がいたこと、男性と妻との婚姻関係がいまだ破壊されていないことなどを主張し、慰謝料を大幅に減額できた(30万円で和解)。
【肉体関係がないことを説明して裁判が終了した事例】
既婚女性と二人きりで長時間自宅で過ごしていたとして、女性の夫から、男性と女性に対し300万円を請求された事案。女性との関係、肉体関係はないことを詳細に主張し、最終的に原告が訴えを取り下げて終了した。
【慰謝料500万円から20万円まで大幅に減額できた事例】
不貞行為により夫婦が離婚に至ったとして、妻から500万円を請求された事案。訴訟活動により妻が夫からすでに十分な慰謝料を受け取っていたことが判明し、慰謝料を大幅に減額できた(20万円で和解)。
【慰謝料300万円が80万円まで大幅に減額できた事例】
既婚女性とラブホテルに行った証拠を提出され、慰謝料300万円を請求された事案。女性の夫から女性に対する暴力・暴言を立証したことで、裁判所は夫婦関係は悪化していたと判断。慰謝料は80万円まで減額された。
6. 不貞裁判で負けるのが不安な人からのよくある質問
裁判は一般に公開されるものですが、傍聴する人はほとんどおらず、主張は主に書面で行われます。そのため、不貞裁判に負けたからといって直接的に周囲にバレることはありません。
しかし、裁判で負けたのに支払いをしないでいると、財産を差し押えられるおそれがあります。給与を差し押えられると、裁判所から勤務先に通知が行くため、勤務先に知られる可能性があります。
基本的には嘘をつくことはおすすめできません。嘘をついていたことがバレると、慰謝料の増額事由となる可能性があるからです。
裁判で証言する際には、嘘をつかないという宣誓をします。宣誓をした上で嘘をつくと、過料(罰金)の制裁をうけるおそれもあります。後から新たに証拠が提出されることもあり得ます。ただし、不貞行為を認めた方がよいかどうかはケースバイケースであるため、まずは弁護士に相談しましょう。
一審では不貞行為が認められ敗訴したものの、高裁では証拠不十分として不貞行為が認められず、逆転勝訴となった事例はあります。個々の事案によって異なるため、弁護士と相談しながら進めた方がよいでしょう。
不貞の裁判は民事裁判であり、刑罰を科す手続である刑事裁判とは異なります。不貞裁判で負けたからといって、前科がつくということはありません。
7. まとめ 不貞裁判で負けないためには弁護士に依頼するのがおすすめ
不貞裁判に負けてしまうと、慰謝料の支払い義務が生じるだけでなく、裁判費用や弁護士費用の支払いや差し押さえなどのリスクが生じます。
肉体関係がなかったり、相手が既婚者だと知らなかったりした場合のように慰謝料の支払い義務がないケースにあてはまるならば、それを立証できる証拠を集めることが重要です。
また、不貞の事実があったとしても、慰謝料の減額に成功することでダメージを抑えることができます。
不貞裁判では相手が弁護士をつけていることがほとんどですし、専門知識のある弁護士と対峙するのは負担が大きく困難です。こちらも弁護士に依頼することで、裁判の煩雑な手続きは全て任せられ、有効な反論をしてもらえることで、慰謝料が大幅に減額できる可能性があります。不貞裁判で訴えられたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)