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和解離婚とは? 裁判中に和解するメリットとデメリット 手続きの流れも解説

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離婚裁判で和解した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか(c)Getty Images
自分が離婚を決意しても、配偶者が離婚に応じてくれるとは限りません。当事者間で離婚の合意ができなければ、最終的には離婚訴訟を起こすことになります。離婚訴訟を起こした場合、判決を待つ以外に、訴訟中に和解して離婚を成立させる方法もあります。離婚訴訟での和解離婚について、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 和解離婚とは|離婚訴訟中に和解で成立する離婚
  • 2. 和解離婚の割合は?|離婚訴訟全体の3割超
  • 3. 和解離婚のメリット
  • 3-1. 離婚成立までの時間が短くなる
  • 3-2. 離婚条件を柔軟に決められる
  • 3-3. 財産分与や慰謝料、養育費などが支払われる可能性が高くなる
  • 4. 和解離婚のデメリット
  • 5. 和解離婚の手続きの流れ
  • 5-1. 【STEP1】 離婚調停の不成立~離婚訴訟の提起
  • 5-2. 【STEP2】口頭弁論~裁判所の和解提案
  • 5-3. 【STEP3】和解期日~和解成立
  • 5-4. 【STEP4】離婚届の提出
  • 6. 和解離婚の離婚届の書き方
  • 7. 和解離婚を成立させるためのポイント
  • 7-1. 離婚条件の優先順位を明確化する
  • 7-2. 弁護士のアドバイスを求める
  • 8. 和解離婚に関してよくある質問
  • 9. まとめ 離婚訴訟で和解すべきかの判断は弁護士に相談を

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1. 和解離婚とは|離婚訴訟中に和解で成立する離婚

和解離婚とは、離婚訴訟中に相手と和解して成立する離婚のことを指します。離婚訴訟を起こした場合、当事者である夫婦それぞれが離婚の可否や離婚条件について主張や立証をしますが、その過程で裁判所から和解を勧められるケースは少なくありません。

夫婦双方が「和解の余地がある」と判断した場合、非公開の場で和解の条件について協議を行います。夫婦それぞれが和解の条件を提示し合うこともあれば、裁判所から和解案が提示されることもあります。裁判所から和解案が提示された場合でも、必ずしもそのまま受け入れる必要はなく、養育費や財産分与、慰謝料などの条件について夫婦間で協議することも可能です。

なお、離婚訴訟が提起されるのは、夫婦の一方が強く離婚を求めているものの、相手が応じない場合や、夫婦ともに離婚に同意しているものの、そのほかの条件で折り合いがつかない場合です。離婚を強く求めている当事者がこの段階で考えを変えて婚姻関係を継続する方向で和解することはあまりなく、離婚訴訟で和解が成立するときは、婚姻関係を解消、つまり離婚する方向での和解が多い です。

協議の結果、離婚することやそのほかの条件についてお互いが合意できれば、合意内容を和解調書に記載します。この時点で法律上の離婚は成立し、そのあとの役所への離婚の届け出は報告という位置づけになります。

2. 和解離婚の割合は?|離婚訴訟全体の3割超

裁判所が発表している「人事訴訟事件の概況-令和5年1月~12月-」によると、離婚に関する訴訟のうち、和解離婚で終結した割合は36.3% に上ります。なお、判決で終結した割合は37.6%で、和解離婚とほぼ同じですが、判決で終結したケースには、離婚の請求を認める判決だけではなく、棄却する判決も含むため、これだけで判決離婚が和解離婚より多いと言えるわけではありません。

厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、2020年度に離婚した夫婦のうち、88.3%を占めるのが協議離婚です。調停離婚が8.3%、和解離婚が1.3%である一方、判決離婚は全体の0.9%しかありません つまり、離婚する場合、裁判所が関与するものも含め、夫婦の話し合いで決着をつけているケースが大半である ことになります。

離婚訴訟に至った場合でも、合意による解決をめざし、双方の落としどころを探ることは少なくないのです。

3. 和解離婚のメリット

和解離婚には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 離婚成立までの時間が短くなる

  • 離婚条件を柔軟に決められる

  • 財産分与や慰謝料、養育費などが支払われる可能性が高くなる

以下で詳しく解説します。

3-1. 離婚成立までの時間が短くなる

離婚訴訟を起こすと、判決が出されるまでには1年以上かかる場合も少なくありませんが、判決の前に和解をすることで訴訟を早期に終了 させることができます。

また、和解離婚の場合、上訴される可能性がないのも大きなメリットです。判決で離婚請求が認められたとしても、相手が控訴すれば判決は確定せず、控訴審でも主張や立証が必要になります。仮に控訴が棄却されても、上告受理の申立てなどがされれば、やはり判決は確定せず、より時間がかかってしまいます。

上訴がされると、最終的に判決が確定するまでにさらに1年以上かかる可能性もありますし、原審で離婚が認められても控訴審の判決で離婚請求が棄却される可能性もゼロではありません。こういった危険性を避けられるのは、和解離婚のメリットの一つです。

3-2. 離婚条件を柔軟に決められる

判決離婚の場合、裁判所が離婚の可否やそのほかの条件を決定しますが、和解離婚の場合は夫婦間で協議をして和解の内容を決めるため、財産分与や面会交流の方法、養育費として負担する費目や支払い方法などについて、柔軟に決める ことができます。

また、相手が離婚に応じず、かつ判決で離婚が認められるのは難しいと思われる場合でも、通常より相手に有利な条件を提示することで、離婚に応じるよう求めるといった交渉 もできます。たとえば、解決金として金銭を支払うことを条件にしたり、算定表に基づく金額の養育費に加え、塾の費用や留学費用なども上乗せして支払ったりすることを提示して、離婚に同意するよう求めるケースもあります。

3-3. 財産分与や慰謝料、養育費などが支払われる可能性が高くなる

和解離婚は夫婦が協議を通して合意し、納得したうえで成立するものであるため、裁判所の判断による判決離婚の場合よりも、離婚条件などが守られる(=履行される)可能性が高くなります。

和解成立時に作成される和解調書は、強制執行をする根拠となる権利などを記載した公の文書である「債務名義」になるため、約束が履行されない場合は強制執行を申し立てることが可能です。したがって、財産分与や慰謝料、養育費などが万が一相手から約束どおり支払われなかった場合には、強制執行の申し立てを行い、相手の給与などから強制的に回収することもできます。

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4. 和解離婚のデメリット

和解離婚は判決が出る前に行うため、判決離婚の場合よりも財産分与や慰謝料の金額、そのほかの条件面で不利になる可能性もあります。判決離婚と和解離婚のどちらが自分に有利なのか、和解離婚の条件が自分にとって受け入れられるものなのか、譲歩できる部分とできない部分はどこなのか 、について十分に検討すべきです。

なお、裁判所が和解を勧めてくる場合、裁判官が離婚の可否やその他の条件についてどのように考えているかという心証を開示することもあれば、心証は開示せずに当事者に話し合いを促すこともあります。心証が開示されなくても、証人尋問が終わったあとなど、判決に近いタイミングで裁判所が提示してくる和解案は、その時点での裁判所の心証を反映したものであることが多く、判決と近い内容になる可能性が高いと言えます。

5. 和解離婚の手続きの流れ

和解離婚の手続きは、下図のような流れで進みます。

和解離婚の主な流れ
和解離婚の主な流れを図解。各条件について合意ができれば、和解調書を作成して離婚が成立する

5-1. 【STEP1】 離婚調停の不成立~離婚訴訟の提起

夫婦で離婚について話し合ったものの決着がつかないからといって、すぐに離婚訴訟を起こせるわけではありません。原則として、まずは裁判所に離婚調停の申し立てを行う必要があります。調停で離婚について合意ができず調停不成立となったあとに、離婚訴訟を起こすことになります。

離婚訴訟を起こす際には、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所に訴状を提出しなければなりません。訴状の書式や記載例は、裁判所の公式ホームページからダウンロードできます。

また、離婚訴訟を提起する際には収入印紙、訴状を相手に送るときなどに使う郵便切手が必要です。印紙代は申立て内容により金額が異なるうえ、郵便切手の額も裁判所によって異なる場合があるので、事前に裁判所に確認することをお勧めします。

5-2. 【STEP2】口頭弁論~裁判所の和解提案

離婚訴訟を提起すると、第1回口頭弁論期日が指定され、訴訟を起こされた相手に訴状が送られるとともに、第1回口頭弁論期日の日時、答弁書の提出が必要なこと、答弁書の提出期限などが通知されます。

夫婦の双方が、自分の言い分をまとめた準備書面や、離婚原因の有無などに関する証拠を交互に提出して、審理が進みます。審理の途中で裁判所から和解を勧められ、双方が和解の余地があると判断すれば、和解期日を指定するなど、和解に向けた話し合いを行います。

5-3. 【STEP3】和解期日~和解成立

和解期日では、裁判官が夫婦それぞれと個別に協議するケースが多いようですが、代理人がついている場合には、それぞれの代理人と裁判官が同時に協議することもあります。

協議の結果、離婚やそのほかの条件について合意できれば、和解調書を作成して離婚が成立します。和解期日で合意ができなければ、審理を続け、判決が出されます。

5-4. 【STEP4】離婚届の提出

和解離婚が成立したら10日以内に、離婚届とともに和解調書の謄本を市区町村役場に提出する必要があります。離婚の成立日は和解離婚をした日になりますが、離婚届を提出しないと戸籍に反映されないため、忘れずに提出する必要があります。

6. 和解離婚の離婚届の書き方

離婚届の用紙は市区町村役場で入手できるほか、市区町村役場のウェブサイトでダウンロードが可能です。和解離婚の場合には、離婚届の「離婚の種別」の和解離婚の欄にチェックを入れ、和解調書に記載されている和解成立日を記入します。

和解離婚の場合には、相手の署名押印や証人欄への記入は必要ありませんので、空欄のまま提出してかまいません。離婚届を提出してから戸籍に離婚したことが記載されるまでの時間は市区町村によって異なりますが、1~2週間程度の場合が多いようです。

離婚届の提出先は、届出人の本籍地がある役所、または届出人の所在地の役所です。届出人の所在地の役所に提出する場合、これまでは戸籍謄本の提出が必要でしたが、2024年3月からは原則として戸籍謄本の提出は不要になりました。

7. 和解離婚を成立させるためのポイント

和解離婚を成立させるためには、次のような点に気をつける必要があります。

7-1. 離婚条件の優先順位を明確化する

和解離婚を成立させるためには、離婚の条件のなかで自分が譲歩できる部分と、譲歩できない部分を明確にすることが重要です。

和解離婚は夫婦双方の合意により成立するものであり、自身の主張をすべて通せるわけではありません。したがって、たとえば「離婚後の生活確保のため自宅に継続して居住できることを最優先とし、離婚慰謝料の請求に関しては優先順位を下げる 」といった判断が必要になってきます。

7-2. 弁護士のアドバイスを求める

離婚条件のなかで譲歩できるポイントを検討することが大切ですが、その際、自分にとっての優先事項が離婚訴訟で認められる可能性があるか、という点も重要になってきます。

たとえば、相手の行動が原因で離婚に至ったと主張しているものの、その立証が難しい場合には、高額の慰謝料を請求しても判決で認められる可能性は低く、和解離婚になったとしても、離婚条件に相手からの慰謝料の支払いを盛り込むことは難しいでしょう。このような場合には、慰謝料の請求はあきらめ、認められる可能性が高い財産分与に関して自分の欲しい財産を得られるように交渉する、といった方針をとるケースもあります。

しかし、自分の優先事項が判決で認められる可能性がどの程度あるかなど、訴訟の見通しについて自分で判断することは容易ではありません 。和解離婚をめざすのであれば、どのような方針で交渉に臨むかなど、弁護士にアドバイスを求めることが大切です。

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8. 和解離婚に関してよくある質問

Q. 認諾離婚とはどんなもの?
認諾離婚とは、離婚訴訟を起こされた被告が、訴訟を起こした原告の主張する内容をすべて認め、離婚が成立することを指します。ただし、離婚訴訟が起こされるのは、離婚調停で双方の主張に折り合いがつけられなかった場合なので、被告が原告の主張を全面的に認めて認諾離婚が成立することはほとんどありません。
Q. 和解離婚と協議離婚の違いは?
和解離婚は離婚訴訟手続きのなかで夫婦双方の話し合いにより行うのに対し、協議離婚は裁判所の関与はなく、あくまで夫婦の話し合いのみによって行うものという違いがあります。 また、和解離婚の場合には和解調書が作成されます。この和解調書は債務名義になるため、和解調書のなかで養育費や財産分与など金銭の支払いについて明確に定められていれば、強制執行を申し立てて相手の給与などから強制的に回収できます。 一方、協議離婚の場合に財産分与や養育費の支払いについて夫婦間で合意書を作成しても法的な強制力はないため、それだけでは強制執行をすることはできません。金銭の支払いを確保するためには、執行受諾文言つきの公正証書を作成する必要があります。
Q. 裁判所が提示した和解案を拒否したらどうなる?
裁判所から和解案の提示があっても受け入れなかった場合や、和解期日を設けて和解案について協議をしたが合意できなかった場合には、そのまま審理が進み、判決が出されます。 裁判所の和解案を受け入れなかった場合でも、不利な判断をされるわけではありません。しかし、口頭弁論の後半で裁判所から提示された和解案は、ある程度裁判所の心証を反映した、判決に近い内容であることが多いため、その点をふまえて受け入れるかどうかを判断するべきです。
Q. 和解離婚の成立後、離婚届を提出せずに10日過ぎたらどうなる?
和解離婚が成立すると、その後10日以内に離婚届を提出しなければならないと定められています。和解成立から10日経過後に離婚届を提出しても、役所で受理はされますが、正当な理由なく離婚届の提出が遅れた場合は5万円以下の過料となる場合があります。

9. まとめ 離婚訴訟で和解すべきかの判断は弁護士に相談を

離婚訴訟中に相手と和解して成立する和解離婚には、離婚成立までの時間が短くなったり、離婚条件を柔軟に決められたりするメリットがある一方、判決離婚と比べて財産分与や慰謝料の額などが不利になる可能性もあります。

和解離婚をするか否かの判断や、和解離婚をする際の交渉を自分だけで行うのは難しいため、自分が離婚訴訟を提起する場合や、相手から離婚訴訟を提起された場合には、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

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