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1. 有責配偶者とは 離婚の原因をつくった側
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2. 有責配偶者にあたるケース
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3. 有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められない
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4. 有責配偶者からの離婚請求が認められる厳しい条件
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4-1. 長期間の別居
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4-2. 未成熟の子がいないこと
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4-3. 相手が過酷な状況に置かれないこと
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4-4. その他の考慮要素
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5. 有責配偶者からの離婚請求が認められた裁判例
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5-1. 36年間にわたる別居期間を考慮
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5-2. 別居と誠意ある対応を考慮
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6. どうすれば有責配偶者でも離婚できる?
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6-1. 有責性を認定されない
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6-2. 協議離婚や調停離婚で自分に不利な離婚条件を受け入れる
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6-3. 裁判上で和解する
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6-4. 相手に有責性があり、双方有責と言えないかを調べる
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6-5. 別居して様子を見る
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7. 有責配偶者の場合に支払うことになる慰謝料
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7-1. 不貞行為|300万円を超えるケースも
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7-2. DV|数十万円〜150万円程度
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7-3. 悪意の遺棄|一方的な別居で、数十万円の裁判例
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8. 有責配偶者に関してよくある質問
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9. まとめ|有責性が問われている場合は弁護士に相談を
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1. 有責配偶者とは 離婚の原因をつくった側
「有責配偶者」とは夫婦関係を破綻させ、離婚の原因をつくった側の配偶者を指します。
どちらにも離婚の原因がある場合、著しく有責性が大きいほうが有責配偶者とされます。有責性が同程度の場合は「双方有責」となり、有責配偶者がいない場合と同様に取り扱われます。
この「有責性」を考えるうえでは、「法的な意味で離婚原因をつくったのはどちらか」「それを立証することが実際にできるか」 の2点が非常に重要です。
「法的な離婚原因」とはたとえば、不貞行為(≒不倫)や暴力が典型例です。また、「立証」については、たとえば、不貞行為が疑わしくても、それを証拠によって立証できなければ、離婚手続きにおいては有責性がないものと認定されます。
2. 有責配偶者にあたるケース
民法770条では、以下のとおり、裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」が定められており、この法定離婚事由をつくった人が有責配偶者となります。
配偶者に不貞な行為(配偶者以外との性的関係)があったとき
配偶者から悪意で遺棄されたとき
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき(2026年5月までに施行される改正民法により削除される予定)
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
不貞行為とは、配偶者以外と自由意思に基づいて性的関係をもつこと です。風俗店などの利用を含む性交以外の性的な接触も離婚原因にあたる可能性があります。
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務に反すること を指すとされています。条文上は定義されていませんが、ある程度の期間、この義務違反の状態が継続すると悪意の遺棄とみなされます。
正当な理由は個別具体的なケースで判断されます。たとえば「不貞相手と同棲をしたい」「自分の給料を自分だけで使いたい」などの理由で、相手の同意なく一方的に別居する行為は悪意の遺棄にあたる可能性が高いです。
弁護士としての実務では不貞行為や悪意の遺棄以外にも、離婚の原因としてはDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)やモラハラ(モラル・ハラスメント)、浪費、酒癖の悪さ などが多いですが、これらは「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたります。
なお、離婚原因で多い価値観や性格の不一致は、基本的にお互いに原因があると判断される場合が多く、一方の有責性というかたちで問題になるケースは少ない です。
3. 有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められない
有責配偶者が「離婚したい」と考えたとき、離婚協議や調停の話し合いの中で、相手から合意を得られれば離婚は成立します。
一方、有責配偶者による裁判での離婚請求は認めない取り扱いが判例においてなされています。落ち度のない側が離婚を拒否しているにもかかわらず、結婚生活を破綻させた側の離婚請求を裁判所が認めることは、法の「信義誠実の原則」に反するため です。つまり、相手が同意しない限り、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。
ただし、どんな場合でも離婚が認められないわけではありません。関係が回復する見込みがない夫婦にも、戸籍だけの形式的な関係を強制するのは不自然だという「実質的破綻主義」の考え方に基づき、有責配偶者からの離婚請求が受け入れられる例外 もあります。
以下では、有責配偶者からの離婚請求が認められる条件について解説します。
4. 有責配偶者からの離婚請求が認められる厳しい条件
最高裁昭和62年9月2日判決は、以下の3点を有責配偶者からの離婚請求を認めるかどうかの考慮要素とすると述べています。
夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
未成熟の子(=扶養が必要な子)がいないこと
相手配偶者が離婚により精神的かつ社会的、あるいは経済的にきわめて苛酷な状態に置かれるなどの事情が認められないこと
それぞれについて説明します。
4-1. 長期間の別居
「長期間の別居」が何年間という法的な決まりはありません。同居期間に照らして別居期間が長いかどうか、あるいは子どもの年齢、有責性の重さなどを加味して長短の判断が下される場合が多いと言えます。一般的な目安としては、少なくとも5年~10年以上の別居を必要 とするケースが多く、まれに20年~30年以上の別居が求められることもあります。
4-2. 未成熟の子がいないこと
未成熟の子とは、年齢に関係なく、親の扶養が必要な子どもを指します。未成熟の子がいるとまったく離婚請求が認められないわけではないものの、有責配偶者からの離婚請求は認められにくくなります。特に子どもが幼く、養育に多くの手がかかる場合、発達などの関係でいろいろな支援が必要な場合などはさらに離婚は認められにくい です。
4-3. 相手が過酷な状況に置かれないこと
離婚によって相手が精神的かつ社会的、さらには経済的にきわめて苛酷な状態に置かれる場合にも、有責配偶者からの離婚請求は認められないとされています。たとえば、配偶者が難病で離婚をしたあと、生活を送っていくめどがまったく立たないケースです。
4-4. その他の考慮要素
そのほかにも、別居後に婚姻費用を負担したか、財産分与や慰謝料、あるいは養育費などに関して誠実な提案をしたか、相手が仕事をしていて生計を立てられるか、夫婦の関係回復に努力したか、たとえば不倫された側にも離婚の原因があったかなど、さまざまな判断要素が考慮されます。
結局、裁判所は「意思に反して離婚をされる落ち度のない配偶者と子どもたちが生活に困らないか」「有責配偶者はどれだけの誠意を尽くしたのか」という視点で、この問題を見ている わけです。

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5. 有責配偶者からの離婚請求が認められた裁判例
実際に有責配偶者からの離婚請求が認められた判例を2つ紹介します
5-1. 36年間にわたる別居期間を考慮
不貞相手との間に子どもをもうけたうえ、生活費を負担せずに悪意の遺棄をしたと認定された有責配偶者の70歳の夫から妻に対してされた離婚請求が認められた事例があります(最高裁昭和62年9月2日判決)。
36年間もの別居期間と、未成熟の子がいないことを理由に、離婚請求を認めなかった原審の東京高等裁判所の判断を覆し、最高裁は離婚請求を認めました。
注意しなければならないのは、この事案はたまたま36年間の別居期間があっただけで、36年間もの別居をしなければ離婚が認められないと最高裁が述べているわけではない点です。事実、最高裁は判旨で、36年間もの別居があるので、同居期間の長さや年齢と比較するまでもなく相当程度長期の別居であると述べています。最高裁は、すでに紹介した3つの要件で離婚請求の可否を判断したと理解できます。
5-2. 別居と誠意ある対応を考慮
次に別居期間は8年と比較的短いですが、その他の要素を加味して離婚が認めれた事例(最高裁平成2年11月8日判決)を紹介します。
このケースは、不貞行為をして別居をした夫から妻への離婚請求です。大学院修了後フランスに留学中の長男と、大学在学中の二男がいました。別居期間は約8年で、夫が別居後においても妻や子どもたちに対する生活費を負担し、別居後間もなく不貞相手との関係を解消しています。さらに、離婚を請求する際に、妻に対して財産関係の清算について具体的で相応の誠意があると認められる提案をしていました。
6. どうすれば有責配偶者でも離婚できる?
離婚を拒絶されている場合に有責配偶者が離婚をするための方法は、主に5つあります。
有責性を認定されない
協議離婚や調停離婚で自分に不利な離婚条件を受け入れる
裁判上で和解する
相手に有責性があり、双方有責と言えないかを調べる
別居して様子を見る
6-1. 有責性を認定されない
一番大事なのは有責配偶者にならないこと、つまり有責性があると認められないようにすること です。一度有責性があるとされてしまうと非常に不利な立場になります。実際の案件でも有責性が本当にあるのかないのかという点から争われる場合が多く、相手は有責性があると主張していても、主張や立証で失敗し、有責性が認められずに離婚が認められるケースは多々あります。
そのため、自身で勝手に有責性に関する判断を下して、いろいろと決めてしまわず、弁護士に相談することが重要 です。また、有責性が問われたあとの行いや振る舞いも慎重である必要があります。たとえば、婚姻費用の支払いについて言いたいことがあっても、悪意の遺棄と捉えられないようしっかりと弁護士と相談したうえで対応していくことが重要です。
6-2. 協議離婚や調停離婚で自分に不利な離婚条件を受け入れる
言い換えれば、相手に有利な離婚条件を提案することが大切 です。
有責配偶者の離婚請求が認められないということは、裁判での強制的な離婚ができないという意味であり、協議離婚や調停離婚が成立するのであれば問題はありません 。ただし、配偶者からはかなり強い請求が来る可能性があります。財産分与や慰謝料、あるいは親権などの離婚条件について、法律や一般的な相場よりも大幅に譲歩すれば、相手が納得して離婚に同意してくれる可能性があります。これが一番の近道 です。
婚姻関係の破綻が明らかな場合、離婚を拒む側として気になっているのは、自分や子どもたちの今後の生活や被った苦痛に対する慰謝料などであることが多いです。相手には離婚をしたくない理由が必ずあるので、相手の話をよく聞くことが重要です。もし相手が経済的な面を気にしているのであれば、それらをケアすることで離婚に近づけます。
6-3. 裁判上で和解する
有責性を疑われる事案でその有無を離婚裁判で争っているとき、結果的には有責性があると認められてしまった場合、相手に譲歩した条件を受け入れる和解の決断は裁判離婚でも日々行われています。たとえば裁判官から「判決になったら離婚請求が棄却される可能性があるところ、相手からは相場よりかなり高いものの、このような離婚条件が来ているが受け入れる気はあるか」というような提案がなされます。
6-4. 相手に有責性があり、双方有責と言えないかを調べる
不貞行為などの場合、実は相手も不貞行為をしていたとか、どちらかの不貞行為が発覚したあとに配偶者も不貞行為をしてしまうケースが少なくありません。配偶者の不貞行為に限らず、浪費や暴力の相談をしている間に相談相手と不貞をしてしまうケースなどもあります。双方有責の場合は、強制的な裁判離婚が認められる可能性があるため、その有責性に関する証拠はしっかりと取っておく必要があります。
6-5. 別居して様子を見る
いろいろ誠意を尽くしても、相手が離婚に応じてくれない場合は、婚姻費用を支払いながら別居を続けるしかありません。別居によって相手や子どもが生活に困らないように支援しておくことは非常に重要です。別居期間が長引けば、有責配偶者でも離婚請求が認められやすくなり、相手も離婚に同意する可能性が高まっていきます 。
なお、相手に無断で別居をしたり、住所や勤務先を秘匿して別居をしたりすると、あとで有責性の一事情とされることがあります。そのため、DVなどの例外的な事情がない限りは、相手と話し合ったうえで別居をし、別居後の住所もしっかりと伝えたほうがよいでしょう。
相手がどうしても別居に同意をしてくれない場合でも、弁護士などの第三者を挟む工夫をしたり、何度か結婚の解消について丁寧に理由を伝えたりしながら、話し合いを繰り返すことが重要です。離婚する可能性を高めるには、話し合いをした事実について必ず証拠を残す必要があります。
7. 有責配偶者の場合に支払うことになる慰謝料
有責配偶者と認定されてしまうと、仮に離婚を認めてもらえても、相手が慰謝料の支払いを求めている場合には、慰謝料の支払いを命じられる可能性が高いです。以下で紹介する慰謝料額はあくまで一つの参考であり、慰謝料の金額は個別の事案の内容で大きく異なります。
7-1. 不貞行為|300万円を超えるケースも
慰謝料の金額は、離婚の有無や有責性の内容、婚姻期間の長さ、家族構成などさまざまな事情が総合的に考慮されて決まるため、一律の金額の基準はありません。ただし、不貞行為に関する裁判例上の目安としては、婚姻期間が長かったり、不倫相手との間に婚外子をもうけたりしている場合などは、300万円を超えるケースもあります。通常の不貞行為でも反復継続性が明らかになった際などは、100万円〜250万円ほどが認められる場合が多いです。
7-2. DV|数十万円〜150万円程度
暴力行為は、暴力の程度や回数、子どもにも暴力をふるっているかなどが考慮されます。数十万円〜150万円程度が一般的ですが、暴力の期間が何年にも及び、骨折させていたり、後遺障害を与えていたりと悪質な場合は、300万円以上と高額になるケースもあります。
7-3. 悪意の遺棄|一方的な別居で、数十万円の裁判例
悪意の遺棄は、その性質上、状況がさまざまであるため、慰謝料の幅が大きく、金額の目安を示すことが難しいですが、一方的な別居について数十万円の慰謝料とされている裁判例があります。ほかにも、夫が行方不明になった際に100万円の慰謝料が認められた事例があります。また、たとえば就労不能の寝たきりの配偶者を残して別居し、生活費も払わないようなケースだとかなり高額になる可能性があります。
8. 有責配偶者に関してよくある質問
9. まとめ|有責性が問われている場合は弁護士に相談を
有責配偶者は原則的に離婚請求できないものの、そもそも、有責配偶者にあたるかどうかは、探偵の調査報告書がある不貞行為の事例や、警察が逮捕している暴力行為の事例など、明白なケースを除けば、その判断が非常に難しい場合が少なくありません。
また、双方有責の問題もあります。加えて、今は有責性はなくても、今後の別居の進め方によっては有責配偶者とされてしまう可能性もあります。これらの有責性の判断や、離婚の進め方の決め方には、豊富な実務経験がある弁護士による助言が必要です。
離婚協議書を作成してから相談に訪れる方もいますが、一度署名押印をしてしまうと弁護士にできることは限られてしまいます。有責性が問われている場合は自分で判断せずに、しっかりと弁護士に相談することをお勧め します。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)