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妊娠中の離婚 生活費や親権、養育費や慰謝料はどうなる?

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妊娠中の離婚はさまざまなリスクが生じますが、それらを回避するための6つの対処法を解説します (c)Getty Images
妊娠中は親になる喜びに満ち溢れる一方で、マタニティブルーといってホルモンバランスの崩れから不安な気持ちになったりイライラしたり、精神的に不安定になったりする人もいます。そのため配偶者のささいな言動や行動が気になって嫌になり、離婚を考える人もいるようです。妊娠中の離婚にはどのような影響があるか、子どもの戸籍のほか生活費や親権、養育費や慰謝料の観点から弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 妊娠中に離婚できる?
  • 2. 妊娠中に離婚したくなるケースとは?
  • 2-1. 妊娠によって夫婦関係に変化が生じた
  • 2-2. 将来への不安が生じた
  • 2-3. 夫の浮気が発覚した
  • 2-4. 夫からの暴力や嫌がらせがひどい
  • 3. 妊娠中に離婚するリスク
  • 3-1. 離婚手続きや交渉で心身にかかる負担
  • 3-2. 子どもの戸籍に与える影響
  • 3-3. 経済的に苦しくなるおそれ
  • 3-4. 出産後、仕事と育児の両立が大変になる
  • 4. 妊娠中の離婚で条件を決める際に注意すべきこと
  • 4-1. 親権
  • 4-2. 養育費
  • 4-3. 面会交流
  • 4-4. 慰謝料
  • 4-5. 財産分与
  • 5. 妊娠中に離婚するリスクを回避するための対処法
  • 5-1. 離婚の条件で安易に妥協しない
  • 5-2. 離婚後の生活費を計算する
  • 5-3. 仕事と子育ての両立について計画を立てる
  • 5-4. 実家を頼る
  • 5-5. 公的支援を利用する
  • 5-6. 弁護士に相談する
  • 6. 妊娠中の離婚についてよくある質問
  • 7. まとめ 妊娠中の離婚を検討する際は、弁護士を頼る選択肢も
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1. 妊娠中に離婚できる?

妊娠中でも、夫婦間で合意できれば離婚できます。夫婦間の話し合いによる協議離婚は、両者の合意と届出によって成立し、特別な理由は必要ないからです。

ただし、女性にとって妊娠中の離婚はリスクが大きいので慎重に判断しなければなりません。生活をどのように維持していくか、生まれたばかりの子どもを育てながら仕事ができるかなど、現実を直視した生活設計が必要です。

2. 妊娠中に離婚したくなるケースとは?

妊娠中に離婚を考える代表的な理由としては、主に以下の4つのケースが考えられます。

2-1. 妊娠によって夫婦関係に変化が生じた

恋人のような関係だった夫婦が、親になるのを機にそれまでとは違う関係性になるケースがあります。そうした場合、一気に現実世界を突きつけられ、戸惑った一方が離婚を検討する展開もあります。

2-2. 将来への不安が生じた

子どもを育てていかなければいけない親としての責任から、将来への不安が生じるケースがあります。収入が低かったり、不安定だったりすると経済的なプレッシャーが大きくなり、「離婚」の二文字がよぎります。

2-3. 夫の浮気が発覚した

自分の妊娠中、セックスレスになったのをきっかけに夫が浮気し、その事実を知って離婚を考える妻は少なくありません。妊娠を機に妻が自分に構ってくれなくなったと疎外感を感じて浮気をする夫もいるようですが、リスクは大きいです。

2-4. 夫からの暴力や嫌がらせがひどい

親としての自覚を持たなければいけないとわかってはいるものの、プレッシャーでストレスを感じてしまう夫は絶えません。その重圧からDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)や、相手の心を傷つける言動であるモラル・ハラスメント(モラハラ)がひどくなると、妻は離婚を考えるようになります。

3. 妊娠中に離婚するリスク

妊娠中に離婚するリスクは少なくありません。事前に認識しておくべき要素を4つ紹介します。

3-1. 離婚手続きや交渉で心身にかかる負担

離婚手続きや離婚に関する交渉では、肉体的にも精神的にも負担がかかります。離婚をするにあたっては、生活費、養育費、親権、財産分与など、夫婦間で決めなければならない事項がたくさんあるからです。

スムーズに話し合いが進めばよいですが、配偶者との間で意見の対立があるとかなりのストレスがかかります。妊娠をしていなくても心身ともに消耗をしますし、妊娠中にこのようなタフな交渉を行うと体に悪い影響を及ぼす可能性は否定できません。特に流産しやすいと言われている妊娠初期や出産間近の臨月は、十分に気をつける必要があります。

3-2. 子どもの戸籍に与える影響

妊娠中に離婚をすると、子どもの戸籍に与える影響が大きいです。離婚後300日以内に出生した子どもは、その出生時に母親が再婚していない限り、元夫との嫡出子(ちゃくしゅつし)として夫の戸籍に入ります。それ以外のケースでは子どもは非嫡出子となり、妻の戸籍に入ります。

離婚後300日以内に出生した子どもを、夫の戸籍ではなく妻の戸籍に入れたい場合は、子どもの氏の変更許可審判を家庭裁判所に申し立てなければいけません。

申立てにあたっては、以下の書類を提出します。

  • 子の氏の変更許可申立書

  • 離婚後の妻の戸籍謄本

  • 元夫の戸籍謄本

家庭裁判所の許可が下りたら、離婚後の妻の戸籍謄本と元夫の戸籍謄本とともに市区町村の役場に届け出をします。子どもがいつ生まれたかによって戸籍の手続きに違いが出るため、妊娠中に離婚をすると子どもの戸籍に与える影響は大きいと言えるでしょう。

3-3. 経済的に苦しくなるおそれ

妊娠中に離婚をすると、経済的に苦しくなるおそれがあります。もともとフルタイムで働き、職場への復帰の見込みが立っていればよいですが、そうでなければ新たに仕事を得るのはかなりハードルが高くなります。実際に幼い子どもを育てながら、満足な収入を得るのは簡単ではなく、経済的に困窮する可能性があります。

3-4. 出産後、仕事と育児の両立が大変になる

出産後に仕事と育児を両立させるのは、想像している以上に大変です。特に問題となるのが、仕事をしている間にどこへ子どもを預けるかという点です。

ニュースなどで報じられているように、申し込んだにもかかわらず、定員の問題で保育園に入所できない「待機児童」が少なくありません。現在は自治体の努力で待機児童が減っている地域がありますが、相変わらず預け先が決まらず仕事に復帰できない女性が一定数います。特に0歳児の受け入れ先は少ないため、出産後すぐに働きたいと考えてもスムーズに事が運ばないケースが多々あります

運よく子どもの預け先が決まったとしても、出産後の体の不調で仕事に復帰できない可能性もあります。女性の体はデリケートなので、ホルモンバランスの変動で、出産後に思いもよらない症状に悩まされ、仕事に専念できないケースも考えられます。

4. 妊娠中の離婚で条件を決める際に注意すべきこと

妊娠中の離婚で配偶者と条件を決める際には、以下の5点を明確に取り決めるのが望ましいです。

4-1. 親権

妊娠中に離婚した場合、原則としては母親が親権者となります。ただし、夫婦間の協議や裁判所を介した調停で合意できれば、父親を親権者とすることも可能です。

2024年5月に共同親権に関する改正法が成立し、2026年5月までに施行される予定です。共同親権の導入後は、法施行前に離婚した夫婦も、家庭裁判所に親権者変更の申立てをして認められれば、単独親権から共同親権に変更できます。法改正後は、離婚後に生まれた子どもの親権を父母の協議により共同親権と定めることも可能です。

4-2. 養育費

離婚をするにあたって、子どもの養育費に関する条件を決めるのはとても重要です。養育費とは、子どもが経済的にも社会的にも自立するまでの間、親権者ではない親が子どもの養育のために支払う金銭です。子どもが生まれる前でも条件は決められるので、離婚時に養育費を毎月いくらにするか、支払い方法や時期などについて明確に決めておきましょう。

ただし、離婚後300日以降に子どもが生まれた場合は嫡出推定が及ばないため、元夫に養育費の請求ができません。この場合、請求にあたっては父親の認知が必要です。

4-3. 面会交流

離婚後に生まれた子どもであっても、嫡出推定により法律上の父子関係が認められる場合には、面会交流に応じなければいけません。面会交流とは、離婚後に子どもと離れて暮らす親が、定期的に子どもと会って話をしたり、一緒に遊んだりして交流することです。面会交流は親のためではなく子どものために行われるものであり、子どもの利益を最優先して決められます。

離婚後は配偶者と関わり合いたくないと考えても、子どもが望むなら拒めません。ただし、配偶者のDVなどを原因に離婚した場合は面会交流の拒否ができる場合があります。

4-4. 慰謝料

夫の浮気が原因で離婚に至った場合、慰謝料請求が可能です。浮気で離婚に至った場合の慰謝料の相場は100万円から300万円程度と幅がありますが、妊娠中の浮気は悪質性が高いとして比較的高額な慰謝料が認められる可能性があります。慰謝料を請求する場合には、夫が浮気をしていたことを裏づける証拠をできるだけ多く確保することが大切です。

4-5. 財産分与

離婚時、財産分与に関する話し合いも忘れずに行いましょう。財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を分けることです。財産分与の割合は、原則2分の1とされています。夫婦の一方が専業主婦や専業主夫の場合、あるいは妊娠中で働いていない場合であっても同様です。ただし、夫婦のいずれかがプロスポーツ選手やアーティストなどで、その抜きん出た才能によって財産が築かれたと判断される場合などは、分与割合を調整するケースもあります。

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5. 妊娠中に離婚するリスクを回避するための対処法

妊娠中の離婚はさまざまなリスクが生じますが、それらを回避するための6つの対処法を解説します。離婚後の生活や子育てを安心して行うためにも参考にしてください。

  • 離婚の条件で安易に妥協しない

  • 離婚後の生活費を計算する

  • 仕事と子育ての両立について計画を立てる

  • 実家を頼る

  • 公的支援を利用する

5-1. 離婚の条件で安易に妥協しない

離婚の条件で安易に妥協してはいけません。とにかく早く離婚したいという気持ちから、よく考えずに相手の条件をのんでしまうと後悔します。養育費、慰謝料、財産分与などもらえる権利があるお金はしっかりと請求をしましょう。

5-2. 離婚後の生活費を計算する

離婚後の生活費は、細かく計算しておきましょう。仕事でどれぐらいの収入が得られるか、実家を頼れないなら家賃の支払いがどのぐらいかかるか、食費や生活費はいくらぐらいかかるか、正確に把握しておく必要があります。さらに、子どもは成長するにつれて出費が多くなるため、それを見越して養育費を算出する意識も大切です。

お金に関することは現実を見つめれば見つめるほど、つらいものとなります。「これぐらいで何とかなるだろう……」と甘く見積もる人も多いですが、厳しく見積もったほうが自分のためになると肝に銘じたほうがよいです。

5-3. 仕事と子育ての両立について計画を立てる

仕事と子育ての両立をどのように行うか、計画を立てることが重要です。正社員として職場への復帰が決まっている場合はいつから復帰ができるのか、専業主婦や専業主夫だった人はいつから仕事をスタートさせるのか、具体的に決めましょう。

仕事をスタートするのであれば、子どもの預け先を決めなければなりませんし、子どもの送り迎えをどのように行うのか、残業になった場合はどう対応するかなど細かい点も計画しておく必要があります。

5-4. 実家を頼る

実家に同居できるのであれば、頼ったほうが多くのメリットがあります。家賃の支払いがありませんし、両親が健康であれば子育ての支援をお願いして助けてもらえる可能性があります。

5-5. 公的支援を利用する

公的支援を可能な限り利用することをお勧めします。児童手当など、ひとり親家庭に向けた公的支援や医療費支援、生活保護制度などがあります。自治体によって支援の内容は異なりますし、収入によっても変わってきます。公的支援の利用を検討している際は、自分の住む自治体の窓口に一度相談してみましょう。

5-6. 弁護士に相談する

配偶者との話し合いがうまくいかない、慰謝料を請求できるかどうかわからないなどの悩みがあれば、弁護士に相談をしましょう。弁護士が間に入れば、遅々として進まなかった交渉がスムーズにいく可能性があります。

弁護士は適切な離婚条件について法的な視点でアドバイスができます。財産分与は難しい、慰謝料の請求はできないと自分で思い込んでいても、実はそうではない場合があります。最近では初回相談を無料で行う法律事務所も数多くあるため、ぜひ活用してみてください。

6. 妊娠中の離婚についてよくある質問

Q. 離婚が成立したあとに、子どもが生まれるまでの生活費や出産費を元夫に請求できる?

離婚が成立したあとの生活費や出産費用の請求はできません。婚姻費用の請求が認められるのはあくまでも結婚期間中のみです。もっとも、元夫が任意で出産費用を支払ってくれる場合は、受け取っても問題ありません。

Q. 妊娠中に離婚を切り出した夫が許せないので、慰謝料を請求できる?

妊娠中に離婚を切り出した夫が許せないという心情的な理由だけで慰謝料請求はできません。浮気を証明する確固たる証拠が必要です。ただし、浮気をしたうえDVやモラハラをしているなど、夫に有責行為があれば慰謝料請求が可能です。

Q. 妊娠中の離婚が原因で、中絶せざるを得なかった場合、慰謝料を請求できる?

中絶を理由に慰謝料請求はできません。中絶を選択するのはあくまでも母親の意思だからです。ただし、離婚に至った経緯によっては慰謝料の請求が可能になるケースがあるため、弁護士に相談をしてみましょう。

Q. 妊娠中に離婚したいと言われたが、拒否できる?

妊娠中に離婚したいと言われた場合、相手の要求を受け入れる必要はなく、拒否できます。たとえ裁判になったとしても、法定離婚事由がなければ離婚は認められません。ただし、配偶者の妊娠中に離婚を切り出す人と一緒に子どもを育てられるか、今後の夫婦生活が続けられるかという点は冷静に考えたほうがよいかもしれません。

7. まとめ 妊娠中の離婚を検討する際は、弁護士を頼る選択肢も

妊娠をきっかけに夫婦の関係が変わったという人は少なくありません。もちろんよい意味で変わる人も多い一方、その変化を受け入れられず不満に感じてしまう人がいるのも事実です。

夫婦はさまざまな変化を一緒に乗り越えていくものですが、どうしても譲れなかったり許せなかったりすることがあれば、離婚を考えてしまうのも無理はありません。しかし、その場合はいったん立ち止まって、本当に離婚をしてよいのかどうか熟慮して、冷静さを取り戻すことが大切です。自分一人で悩みを抱えるのではなく、親族や友人に打ち明けるのもよいかもしれません。

離婚以外に選択肢がないのであれば、決して妥協せずに配偶者と離婚に関する話し合いをしましょう。配偶者との話し合いがうまくいかない場合は、迷うことなく弁護士に依頼するのが望ましいです。特に顔を合わせると冷静な話し合いができなかったり、相手のペースに巻き込まれて自分の意見を言えなかったりする場合は、弁護士を代理人にして交渉をしたほうがよいでしょう。

妊娠中という、さまざまな面で容易ではなくなる状況ならなおさら、納得ができる離婚をするために弁護士を頼る選択肢を考えてみてください。

(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)

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