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1. 偽装離婚とは|ペーパー離婚との違いは?
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2. 偽装離婚をする人の主な目的
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2-1. 子どもを認可保育所に入園させやすくする
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2-2. 児童扶養手当(母子手当)や生活保護を不正に受給する
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2-3. 自己破産や差し押さえの前に財産を隠す
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2-4. 財産分与や慰謝料として財産を移動させ、税金を免れる
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3. 偽装離婚が疑われるケースの特徴
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3-1. 元配偶者と同居しながら生活保護を受けている
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3-2. 元配偶者と同居しながら児童扶養手当を受け取っている
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3-3. 離婚後すぐに自己破産をした
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3-4. 離婚に伴い、夫婦間で多額の財産が移動した
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4. 偽装離婚はどうやってバレる?
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4-1. 離婚後も頻繁に一緒にいるところを見られる
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4-2. 家庭内のことを子どもが他人に話してしまう
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4-3. 生活保護のケースワーカーが訪問した際にバレる
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4-4. 破産手続きの中で破産管財人に疑われる
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4-5. 税務調査を受けた際にバレる
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5. 偽装離婚がバレるとどうなる?
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5-1. 子どもが認可保育所から退園させられる
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5-2. 不正受給金の返還を請求される
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5-3. 自己破産による免責が認められない
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5-4. 多額の追徴課税を受ける
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5-5. 逮捕されて刑事罰が科される
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5-6. 社会的信用を失う
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6. 偽装離婚が頭をよぎったら弁護士へ相談を
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7. 偽装離婚に関するよくある質問
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8. まとめ 偽装離婚は犯罪行為となり逮捕のリスクがある
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1. 偽装離婚とは|ペーパー離婚との違いは?
「偽装離婚」とは、実際には婚姻関係を続けているのに、不正な目的のために離婚届を提出することです。
婚姻届を提出する「法律婚」を選択するか、婚姻届を提出しない「事実婚」を選択するかは、当事者の自由です。したがって、夫婦が同居しながらも離婚届を提出すること自体は法律上、禁止されていません。
同居を継続しつつ離婚することは「ペーパー離婚」などと呼ばれていますが、児童扶養手当(母子手当)の不正受給などを目的とした偽装離婚とは異なります。
2. 偽装離婚をする人の主な目的
偽装離婚をする人は、次のような不正な利益を得ることを目的として離婚します。
子どもを認可保育所に入園させやすくする
児童扶養手当(母子手当)や生活保護を不正に受給する
自己破産や差し押さえの前に財産を隠す
財産分与や慰謝料として財産を移動させ、税金を免れる
2-1. 子どもを認可保育所に入園させやすくする
認可保育所への入園は、ひとり親世帯が優先される傾向にあります。子どもが待機児童となっている夫婦が、ひとり親世帯を装うために偽装離婚をするケースがあるようです。
2-2. 児童扶養手当(母子手当)や生活保護を不正に受給する
ひとり親世帯は、児童扶養手当などの公的支援を受けられることがあります。こうした公的支援を不正受給するために、偽装離婚をするケースがまれに見られます。
また、生活保護を不正に受給する目的で偽装離婚するケースもあります。安定した収入がある配偶者との離婚を偽装して、誰からも援助を受けられない状態だと偽って、不正受給する手口です。
2-3. 自己破産や差し押さえの前に財産を隠す
自己破産や差し押さえによって財産を失うことを免れるために、偽装離婚をするケースもあるようです。自己破産をする前や、差し押さえを受ける前に離婚をすることで、配偶者に対して財産分与などの名目で大半の財産を移します。
自己破産や財産が差し押さえられる頃には、差し押さえられる人の財産は元配偶者に移動されています。形式的には婚姻関係が終了するので、元配偶者に対しては調査が及びにくくなります。その後、一段落したところで、再び婚姻届を提出するケースが多いです。
2-4. 財産分与や慰謝料として財産を移動させ、税金を免れる
夫婦間であっても、生活費以外の目的で財産を移転すると、原則として贈与税が課されます(ただし、年間110万円の基礎控除があります)。
これに対して、離婚時の財産分与や慰謝料は、金額が不相当に多額でない限り、贈与税が非課税とされています。配偶者に無税で贈与をするために、偽装離婚をして、財産分与や慰謝料などの名目で財産を移動させるケースがあるようです。
3. 偽装離婚が疑われるケースの特徴
偽装離婚が疑われる典型的なケースとしては、以下の例が挙げられます。
元配偶者と同居しながら生活保護を受けている
元配偶者と同居しながら児童扶養手当を受け取っている
離婚後すぐに自己破産をした
離婚に伴い、夫婦間で多額の財産が移動した
3-1. 元配偶者と同居しながら生活保護を受けている
生活保護を受給できるかどうかは、世帯単位の家計状況から判断されます。事実婚であっても、生計が同一であれば、原則として一つの世帯として取り扱われます。
安定した収入がある元配偶者と離婚後も同居していたり、元配偶者から援助を受けているのに世帯が別だと称していると偽装離婚を疑われる可能性が高いです。
3-2. 元配偶者と同居しながら児童扶養手当を受け取っている
児童扶養手当は、ひとり親世帯であることが受給要件です。子どもの父母が離婚後も事実婚の状態にある場合は、ひとり親世帯として扱われず、児童扶養手当の支給対象外となります。
児童扶養手当を受給しているのに元配偶者と離婚後も同居していると、偽装離婚を疑われる可能性が高いです。
3-3. 離婚後すぐに自己破産をした
自己破産を申し立てると、破産手続きの中で不正に財産が流出していないかどうかが調査されます。離婚後間もなく自己破産を申し立てた場合は、破産による財産の処分を免れるために偽装離婚したのではないかと疑われるおそれがあります。
3-4. 離婚に伴い、夫婦間で多額の財産が移動した
離婚時に夫婦間で多額の財産が移転すると、配偶者に財産を無税で贈与するために偽装離婚したのではないかと、税務署に脱税を疑われることがあります。特に、不動産や預貯金などの大半を相手に移転した場合は、注意が必要です。
4. 偽装離婚はどうやってバレる?
偽装離婚は一例として、以下のようなきっかけでバレるおそれがあります。
4-1. 離婚後も頻繁に一緒にいるところを見られる
離婚後も配偶者と頻繁に一緒にいるところを見られると、事実婚が続いていると思われるでしょう。事実婚を続けること自体は問題ありません。しかし、近隣住民から役所に伝わると、生活保護などの不正受給が疑われ、調査によって偽装離婚が発覚することがあります。
4-2. 家庭内のことを子どもが他人に話してしまう
子どもが学校や近所で、両親が離婚した後も一緒に暮らしていることを周囲に話すケースがあります。この場合も、近隣住民から役所に情報が伝わり、偽装離婚が発覚する可能性があります。
4-3. 生活保護のケースワーカーが訪問した際にバレる
生活保護を受給すると、生活状況を把握するために、年2回以上ケースワーカーが家庭訪問をします。元配偶者と一緒に暮らしていることを知られると、調査が行われ、偽装離婚が発覚することがあります。
4-4. 破産手続きの中で破産管財人に疑われる
自己破産を申し立てると、手続きによっては、破産管財人(はさんかんざいにん)が選任されます。
破産管財人は、破産者の財産が不正に流出していないかなどを徹底的に調査します。元配偶者に対して多額の財産が移転されていると、破産管財人の調査によって、偽装離婚が発覚する可能性があります。
4-5. 税務調査を受けた際にバレる
元夫婦間で多額の財産が移転されると、数年後に贈与税の税務調査が行われる可能性が高いです。税務調査官による質問や資料の確認などにより、偽装離婚が発覚して、ペナルティを受ける可能性があります。

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5. 偽装離婚がバレるとどうなる?
偽装離婚がバレると、次のようなリスクが生じます。
子どもが認可保育所から退園させられる
不正受給金の返還を請求される
自己破産による免責が認められない
多額の追徴課税を受ける
逮捕されて刑事罰が科される
社会的信用を失う
5-1. 子どもが認可保育所から退園させられる
市区町村に偽装離婚が発覚すると、入園資格に関して改めて審査が行われます。再審査において本来の優先順位が適用された結果、子どもが認可保育所から退園させられる可能性があります。
5-2. 不正受給金の返還を請求される
偽装離婚によって児童扶養手当や生活保護を不正に受給した場合は、不正受給金を返還する義務を負います。返還が遅れると延滞金が発生するほか、財産を差し押さえられるおそれがあります。
5-3. 自己破産による免責が認められない
偽装離婚により財産の隠匿などを行うと、原則として自己破産による免責が認められません(破産法252条1項1号)。その結果、借金などの債務が残ったままになります。
5-4. 多額の追徴課税を受ける
税務調査によって偽装離婚が発覚し、財産が不正に夫婦間で移動していたことが見つかると、贈与税について修正申告を求められます。正規の贈与税のほか、延滞税や重加算税が課されます。不正に移転した財産が多額であればあるほど、追徴課税も高額となるため要注意です。また、税金は自己破産をしても免責されないため、追徴課税額を納めなければなりません。
5-5. 逮捕されて刑事罰が科される
児童扶養手当や生活保護の不正受給は詐欺罪、贈与税の脱税は相続税法違反に該当します。これらの犯罪行為が発覚すると、逮捕されて刑事罰を科されるおそれがあります。
5-6. 社会的信用を失う
偽装離婚による不正受給などが近隣住民に発覚すると、近隣住民からひんしゅくを買うかもしれません。SNSなどで拡散されると、見ず知らずの人からバッシングを浴びる可能性もあります。偽装離婚によって社会的信用を失うと、生活のあらゆる場面で支障が生じることになります。
6. 偽装離婚が頭をよぎったら弁護士へ相談を
目先の利益を求めて偽装離婚をすると、後にさまざまなリスクを負うことになります。偽装離婚を考えるほどお金に困っている場合は、弁護士に債務整理の相談をしてもよいでしょう。
債務整理とは、債権者との交渉や裁判所の手続きを通じて、借金の減額や免除を図る手続きです。生活を立て直すための手段として、多くの人が利用しています。自己判断で偽装離婚というリスクが非常に高い選択をする前に、まずは一度弁護士に相談することをおすすめします。
7. 偽装離婚に関するよくある質問
離婚届を提出して法律婚を解消した時点で、配偶者の遺産を相続する権利を失います。仮に事実婚を続けても、事実婚のパートナーには相手の遺産の相続権が認められていません。
離婚後も元配偶者と同居すること自体は、法的に禁止されていません。法律婚と事実婚のどちらを選択するかは、当事者の自由だからです。 偽装離婚に当たるのは、不正受給や脱税などの不正な目的がある場合に限られます。このような不正な目的がなければ、離婚した元配偶者と同居を続けても問題ありません。
偽装離婚に関する通報は可能です。通報先としては、主に市区町村役場や税務署が挙げられます。調査が行われ、偽装離婚が判明すると、不正受給金の返還請求や追徴課税がなされる可能性があります。
8. まとめ 偽装離婚は犯罪行為となり逮捕のリスクがある
偽装離婚は、不正な目的をもって離婚届を提出し、離婚を装う行為です。偽装離婚をすると、不正受給金の返還請求や追徴課税を受けたり、悪質な場合は刑事罰を科されたりするリスクがあります。偽装離婚は絶対にやめましょう。
偽装離婚を考えるほどお金に困っているなら、弁護士に相談することをおすすめします。債務整理などの合法的な解決策を提案してもらえます。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)