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1. 国際離婚をする際の手続きと必要書類
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1-1. 日本での手続き
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1-2. 相手方の国や地域での手続きと必要書類
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2. 外国人と離婚する時の留意点
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2-1. 国際裁判管轄・準拠法を確認する必要がある
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2-2. 海外にある財産については強制執行が難しい
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2-3. 子どもに関する問題で揉めやすい
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3. 国際離婚したら、子どもの親権はどうなる?
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3-1. 親権問題に関する準拠法
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3-2. 親権問題に関する日本のルールと手続き
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3-3. 親権に関する外国のルールと手続き
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4. 国際離婚時の子どもに関するその他の問題
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4-1. 養育費
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4-2. 面会交流
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5. 国際離婚するときにハーグ条約について知っておきたい基礎知識
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5-1. ハーグ条約とは
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5-2. ハーグ条約が問題になるケース
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5-3. ハーグ条約に関する注意点
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5-4. ハーグ条約で子どもの返還を命じられない例外
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6. 国際離婚について情報を集める方法
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7. 国際離婚に関してよくある質問
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8. まとめ 国際離婚の不安は、国際家事を専門とする弁護士に相談を
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1. 国際離婚をする際の手続きと必要書類
夫婦のどちらかの国籍が日本以外の場合、離婚は日本の手続きだけで完了しないことがほとんどです。離婚の際にまず確認すべきことは、婚姻の際、それをどの国に届け出たか、という点です。婚姻届の提出先によって、とるべき離婚手続きに差が出てきます。
1-1. 日本での手続き
夫婦の一方が日本人である国際結婚の場合は、日本で婚姻届を提出しているはずです。そこで、離婚する場合は、離婚届を提出する必要があります。離婚届は、協議離婚、調停離婚、裁判離婚のすべてで必要です。
【協議離婚】
協議離婚は、夫婦の話し合いを経て離婚届に夫婦それぞれが署名したうえ、2人の証人に証人欄の記入をしてもらって役所に提出すれば成立します。未成年の子がいる場合は、夫と妻のどちらが親権者となるかについて決めたうえで記入します。本籍地の役所に提出する場合は、離婚届のみ提出すれば済みますが、本籍地以外の役所に提出する場合は、戸籍謄本を事前に取得して離婚届と一緒に提出する必要があります。
【調停離婚】
調停離婚は、裁判所の調停手続きを使い、話し合いなどを経て合意に至った場合の離婚です。協議離婚との違いは、離婚と同時に財産分与や養育費など、親権以外の条件についての取り決めも盛り込める点です。そのため、国際離婚の場合は、協議離婚ができる関係でも、調停手続きを使う必要が出てくる場合が少なくありません。夫婦の一方が日本人である場合、訴訟を起こす前提として調停を経ている必要がある点も影響しています。
なお、調停離婚をする場合は、日本人か外国人かを問わず原則として調停の申立人が離婚届を作成し、裁判所が作成する調停調書謄本を添えて、役所に提出します。このときの離婚届には、他方配偶者の署名や証人欄の記載は不要です。
【裁判離婚】
裁判離婚は、離婚やその条件について合意できなかった場合に、夫婦のどちらか一方が離婚訴訟を起こし、裁判所の離婚判決によって強制的に成立する離婚です。離婚判決が出て、それが確定したあとに、日本人か外国人かを問わず原告が離婚届を作成し、裁判所が発行する判決書謄本と判決確定証明を添えて、役所に提出します。調停離婚と同じく、離婚届には他方配偶者の署名や証人欄の記載は不要です。
1-2. 相手方の国や地域での手続きと必要書類
相手方の国や地域でも法律上の婚姻が届けられている場合は、そこでも離婚の手続きが必要です。必要な離婚手続きは国や地域によって異なるうえ、それぞれの大使館や領事館の離婚に関する情報は多くが限定的なため、具体的な手続きについては、国際離婚を扱う弁護士に相談することをお勧めします。
なお、世界の国々の多くでは、日本のような簡単な協議離婚の制度がなく、裁判所や行政機関などの関与を経ないと離婚が認められません。そのため、仮に日本で協議離婚をした場合でも、別途相手方の国で最初から離婚の手続きをする必要が生じてしまうケースがあります。そうした二度手間を避けるため、協議離婚が可能な場合でも、あえて日本の裁判所での調停離婚を利用したほうがよい場合があります。
当事務所では国際離婚における離婚調停のサポートを行っており、国境をまたいでも1回の調停で終わる対応をよく採用しています。弁護士が外国籍の配偶者の代理人として手続きに出席するため、わざわざ海外から手続きのために来日する必要はありません。調停後に作成してもらう日本の裁判所の審判書は、確定判決と同じ効力をもち、通常の場合、海外でもそのまま離婚手続き時に承認されます。
2. 外国人と離婚する時の留意点
外国人と日本人が離婚する場合や夫婦の一方が外国で生活する日本人夫婦の場合、日本に暮らす日本人同士の夫婦が離婚する場合と異なり、特に留意しなければならないポイントが主に3つあります。
2-1. 国際裁判管轄・準拠法を確認する必要がある
国際裁判管轄とは、離婚調停や離婚訴訟など離婚の手続きを裁判所を利用して行う場合に、その国の裁判所が該当する案件を扱うことができるのか、という前提問題です。
離婚調停や訴訟、あるいはそれらに伴う財産分与や養育費、親権などについて日本の裁判所に管轄が認められる典型的な例は、相手方(被告)の住所が日本にある場合ですが、現在は相手方(被告)が外国に住んでいても別居直前は夫婦で日本で暮らしていた場合のほか、管轄が認められる詳しいルールが法定されています。ルールの規定は複雑ですので、自身のケースが典型例にあたらず、日本の裁判所で扱ってもらえるかどうか不明な場合は、ただちにあきらめずに、国際離婚を扱う弁護士に相談してみることをお勧めします。
なお、日本の裁判所に管轄が認められると相手方の国の裁判所には管轄が失われる、というわけではありません。相手方の国はそれぞれ、自国の法律で管轄について定めています。そのため、日本と相手方の国の両方で管轄が認められ、日本と相手方の国の双方で裁判手続きが行われる展開も起こり得ます。
準拠法は法律関係に適用される法を指し、協議離婚のときも、調停や訴訟のときも、どの国の法律に基づいて離婚やそれに伴う親権の決定、養育費や財産分与の問題を処理するか、という点が問題となります。離婚については、「法の適用に関する通則法(通則法)」27条に準拠法の規定があります。注意しなければならないのは、管轄の場合と異なり、離婚、財産分与、養育費、親権など、それぞれ準拠法を個別に検討する必要がある点です。
うち、離婚の準拠法は以下のルールで決めます。
① 夫婦の一方が日本に住む日本人の場合は日本の民法
② 夫婦の国籍が同じ場合はその国の法律
③ ①②以外で、夫婦が同じ場所に生活している場合は、その場所の法律
④ ①②③以外の場合は、夫婦に最も関係の深い場所(国)の法
財産分与については、判例により、離婚の準拠法と同じルールによることとされています。
2-2. 海外にある財産については強制執行が難しい
離婚に伴い財産分与や養育費の支払いなどが合意あるいは決定されたとき、そのとおりに支払いがなされない場合は、強制執行を検討する必要があります。
支払い義務のある配偶者が外国人であっても、強制執行の対象となる財産が日本にあり、調停や裁判で離婚した場合は、その調停調書や判決書などの債務名義と呼ばれる書面に基づいて、その財産を差し押さえることができます。差押えの対象財産が不明な場合は、弁護士会が官公庁や企業などの団体に対して問い合わせなどを行う弁護士会照会のほか、裁判所を通じた財産開示の手続きを利用しましょう。
しかし、支払い義務者の財産が海外にある場合は、そもそも日本の裁判所発行の債務名義を現地で有効な書類として扱ってもらえるかという問題があります。扱ってもらえるとしても、差押え対象の財産を探すことは困難です。海外で強制執行による差押えをするためには現地であらためて弁護士を雇う必要があり、国によっては信頼できる弁護士を探すことが困難であるうえ、言葉の問題も生じます。差押え対象財産がわからない場合、探してもらうのに追加費用もかかり、欧米の場合は弁護士費用も高額になる傾向があります。
当事務所では、国際離婚の相談を受けた場合、財産分与対象財産の所在や金額、養育費の支払いの財源などを詳しく聞き、仮にそれらが海外に集中している場合などは、日本の裁判所の手続きで離婚できるとしても、相手の国での離婚手続きが可能であれば、最初から相手方の国籍国で離婚手続きをすることを勧めるケースもあります。離婚手続きを担当した弁護士に、強制執行まで関わってもらえるからです。
その場合、当事務所では、知り合いの弁護士がいれば紹介をしたり、いない場合は海外の弁護士を探すサポートもします。また、海外の弁護士との直接のやりとりに不安がある場合は、依頼者の希望があれば中間に入ってサポートをしています。
こうした国をまたぐ複雑な手続きが予想される場合、日本で初めに相談する弁護士事務所に相手国の現地法弁護士との提携や協力関係やコネクションがあるかどうかも、選ぶうえでのポイントになります。
2-3. 子どもに関する問題で揉めやすい
未成年の子どもがいる国際カップルが離婚をする場合、親権や面会交流について揉めるケースが少なくありません。その理由は2つあります。
一つは、子どもと暮らす親の居住地と子どもと離れて暮らすことになる親の居住地が国をまたいで長距離になる可能性が高く、子どもと離れて暮らす親が頻繁に子どもと会えなくなることです。
もう一つは、文化や制度の違いです。最近は育児に積極的に関わる「育メン」が増えているとはいえ、文化的に子育ての担当者は母親、という意識が強い日本人妻と、離婚後の親権は共同親権であり子育てを母親に任せず父親も平等に担当、という文化や制度が背景にある夫との間のギャップが大きいと言えます。
ただ、当事務所のこれまでの経験からは、面会交流を充実したりその希望条件が満たされたりすれば、形式的な親権についてのこだわりは強くない父親も多いように感じます。そのため、親権で揉めた場合も、面会交流の条件で譲歩するなど交渉で折り合いをつけることも可能です。国際離婚事件の経験が豊富な弁護士に依頼すれば、手続き面だけではなく、交渉も含めて安心して任せられるでしょう。
3. 国際離婚したら、子どもの親権はどうなる?
国際離婚のケースでは、子どもの親権をどうするかも大きな争点になります。日本と諸外国では親権問題に関するルールと手続きが異なっており、その相違点を認識する必要があります。
3-1. 親権問題に関する準拠法
親権の準拠法については、通則法32条が、子どもの国籍が両親のどちらかの国籍である場合はその国の法律が使われ、どちらの国籍でもない場合は子どもが住んでいる国の法を用いる旨を定めています。子どもが両親の国の二重国籍である場合、父母のいずれかが日本国籍であれば日本法が準拠法となります。
3-2. 親権問題に関する日本のルールと手続き
日本の民法819条に、離婚の際のルールが規定されています。離婚する場合は、親のどちらか一方が単独親権者となります(民法改正により、2026年5月までには離婚後も父母双方に親権を認める共同親権が導入され、選択できるようになる予定)。協議離婚や調停離婚の場合は夫婦の話し合いで親権者を決め、裁判で離婚する場合は裁判所が親権者を決めます。
裁判所が親権者を決める際は、子どもの福祉という観点から、それまでの子どもの世話を誰が主として行ってきたか、子どもとそれぞれの親との関係、子どもの年齢、兄弟姉妹関係、離婚後の生活環境、子どもの希望などを複合的に審理して決定します。収入が低いと親権者になれない、ということはありません。また、これらの決定を下す際には、多くの場合、専門の知識と経験を備えた家庭裁判所調査官が多面的な調査を行い、その調査結果を裁判官に報告し、裁判官はその報告を考慮して判断します。
3-3. 親権に関する外国のルールと手続き
親権に関する諸外国のルールや手続きは、国や地域によって異なります。日本で言う「親権」の中身もそれぞれ異なります。また、親の権利、という概念ではなく、「親責任」という概念で離婚後の親子の関係を規定している国々もあります。
そのため、どの国が単独親権でどの国が共同親権の法制度か、というくくりは困難ですが、法務省が2020年に行った「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について」という調査報告の対象の国からいくつかピックアップして大まかに分類すると、以下のようになります。
【原則として共同親権あるいはそれに近い制度の国】
・カナダ(ケベック州)
・アルゼンチン
・イタリア
・フィリピン
・中国
・イギリス
・ドイツ
・フランス
・ロシア
・オーストラリア
【原則として共同親権または単独親権選択制】
・アメリカ(ニューヨーク州)
・韓国
・タイ
・スウェーデン
・ブラジル
・カナダ(ブリティッシュコロンビア州)
【原則として単独親権】
・インド
・サウジアラビア|7歳までは母
・トルコ|母
・日本
親権の制度の規定とこれに伴う養育費の支払い義務などは、上記の国も含め国や地域によって細かく規定されています。自身に関係する国の制度についての詳しい情報は、国際離婚を取り扱う弁護士に相談することをお勧めします。

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4. 国際離婚時の子どもに関するその他の問題
親権の問題と切っても切れないのが、子どもの養育費の支払いと面会交流の問題です。
4-1. 養育費
養育費については、通則法ではなく「扶養義務の準拠法に関する法律」という別の法律が準拠法について規定しています。これによると、養育費は、子どもが生活している国や場所の法律に基づいて決定されます。つまり、離婚時に子どもが日本で生活をしている場合は、その国籍にかかわらず、日本の法律に基づいて養育費を決定します。
日本の裁判所では、両親の収入をベースに標準算定方式という計算式を用いて養育費の金額を提示しています。裁判所はこの計算結果をホームページ上で早見表として公開しています。
国際離婚で養育費を払う側の親が外国にいると、養育費が支払われなくなった場合の強制執行は困難です。一括払いの合意ができるのであればそれに越したことはないものの、将来的に不確定要素が大きい養育費の一括払いに任意に応じる親はほとんどいないのが現実です。裁判所が養育費を決定する際も、月払いとなります。
とはいえ、子どもがある程度の年齢になっている場合は将来の不確定要素は減りますし、支払うほうも毎月の振込みの手間や手数料が発生するため、一括払いのメリットがないわけではなく、交渉の余地はあります。当事務所の扱った事案では、日本人の夫と外国人妻との間に高校生の子ども一人の事案で、22歳までの一括の養育費の合意がなされたケースがあります。
また、日本にはない制度ですが、アメリカの複数の州やオーストラリアに見られるように、離婚時に決められた養育費を給与天引きやその他の方法により回収したり、徴収したりして支払ってくれる制度を有する国や地域もあります。養育費を支払う側がそのような国や地域で生活している場合は、離婚手続きをその国で行う選択肢を検討してもよいかもしれません。
4-2. 面会交流
面会交流は、子どもと離れて暮らす親にとっての権利であると同時に、親と交流して健全な成長をするための子どもの権利でもあります。特に共同親権を採用している国や地域出身の外国親は、その権利の一部として、頻繁かつ長期間の面会交流を当然のものと考えている傾向が強いです。したがって、仮に日本人の親が単独親権者として子どもを日本で監護している場合でも、可能な限り積極的に面会交流を実施することが望まれます。
ただし、実際は、子どもと外国にいる親との言語によるコミュニケーションが困難であるなどの障壁もあります。さらには、子どもが成長するにつれて習い事や塾、部活動など、学校以外の活動が増えたり、外国親を訪問させる際の移動時間の長さに加えてその国に単独で行かせた場合に子どもを帰してもらえない危惧があったりと、国際離婚に伴う面会交流については、外国親の要求に応じたくても応じることが難しい状況が生じるのが現状です。その情報共有がうまくいかず、シリアスな紛争に発展したケースもあります。
このような紛争を予防したり解決するため、当事務所では、すでに面会交流のルールが存在する場合はその見直しを提案し、これから面会交流のルールを決める場合には、子どもの年齢や環境に合わせて定期的なルールの見直し条項を盛り込むアドバイスをしています。また、当事者間のみの話し合いではルール変更は困難なケースが多いため、面会交流のルールの見直しのために裁判所の調停を利用することをお勧めします。
5. 国際離婚するときにハーグ条約について知っておきたい基礎知識
5-1. ハーグ条約とは
ハーグ条約とは、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」です。国際結婚をしている夫婦の一方が、家族で暮らしていた国から子どもを連れて出国して元の国に戻らないときに、残された親が子どもを自国に取り戻せるよう、相手先の国の機関(日本は外務省)や裁判所が関与できることを定めています。日本も2014年から条約の加盟国となっています。
両親はTP(Taking Parent、以下「連れ去った親」)とLBP(Left Behind Parent、以下「残された親」)と呼ばれます。残された親は、子と連れ去った親が現在いる国の裁判所に対し、子どもの返還を命じる申し立てをすることができます。
5-2. ハーグ条約が問題になるケース
ハーグ条約が用いられる典型的な事例は、国際結婚をした夫婦の仲が悪くなり、離婚問題などが生じている状況で、一方の親が出身国に子どもを連れて帰って別居を開始する、というケースです。特に国際結婚をした日本人の母親が、夫と不仲な状況に陥ったときに子どもを連れて日本に帰ってしまう、ということが国際的な問題として取り上げられたことをご存じの人も多いでしょう。
文化的に日本の母親は、子どもと自分を一体のように感じて愛情を注ぐ傾向があることから、離婚前提で自国に帰るときは子どもも当然一緒に、と考えます。しかし、親権も夫婦で対等平等と考え、また子どもの人格や権利を尊重することに重きを置く特に欧米の国々からは、他方の親の親権を侵害する行為、子どもを人質に取るような行為としてみられます。国によっては、他方の親に無断で国外に連れ去る行為は誘拐などの犯罪行為としてみなされる場合もあります。
5-3. ハーグ条約に関する注意点
ハーグ条約の子どもの返還制度は、夫婦の紛争に子どもを巻き込んで子どもの生活環境を大きくかつ急に変えます。残された親やその親族、その他の友人などとの交流が断絶されることによる子どもの不利益を重く見て、夫婦の離婚問題や親権の問題とは切り離して、迅速に子どもを元々住んでいた国に戻すことを目的とする制度だからです。
子どもを元の環境に戻したうえで、夫婦の離婚問題は別途行うことになります。したがって、ハーグ条約の返還申立てが裁判所になされると、例外的な事情が認められない限り、数カ月のうちに、子どもを元いた国に戻す決定が下されます。決定が出て、連れ去った親がその意思において返還をしない場合は、執行官という国の官吏が子どもを連れ去った親から強制的に引き取って、残された親に受け渡すことも認められています。
ハーグ条約の返還援助申請が残された親からなされた場合、日本の場合は外務省を経由して国の機関が関与するため、居場所も特定されます。つまり、逃げ隠れはできない仕組みになっています。
結果として、子どもは再び元いた国への移動を余儀なくされてしまいます。このように、子を連れて自国に戻ることで一番被害を受けるのは子ども、という皮肉な結果を招いてしまうのが現状です。
5-4. ハーグ条約で子どもの返還を命じられない例外
ただし、ハーグ条約の返還申立がなされても、例外的に返還が命じられないいくつかの条件があります。その一つの例は、子ども本人あるいは連れ去った親への暴力です。
当事務所でもハーグ事件を扱っていますが、夫婦の不仲で子どもを連れ帰ったような状況でこの例外にあたると判断された場合、残された親に対する子どもの返還は認められません。
当事務所には、国際結婚をして海外で生活する日本人女性から、配偶者のDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)のほか、限界に近い精神的な苦痛を受けているとの相談や、子どもが別居中の父親との頻繁な面会を強制されストレスで心身症を生じている、などの相談を受けることもあり、いたたまれず子を連れて帰国する人もいるようです。
しかし、結果としてハーグの返還命令に服さなければならくなることが多いため、出国の前にぜひともハーグ事件を扱う弁護士へ、返還を拒否できる事情の有無などについて相談をしてみてください。多くの国際家事事件を扱う弁護士は、オンラインでも相談を行っています。

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6. 国際離婚について情報を集める方法
インターネットが発達した現代では、経験者のブログや、国際離婚経験者ネットワークのサイトなど、いろいろな情報を集めることができます。これらの情報の有用性は否定しませんが、法制度は刻々と変わり、経験談が今も通用するかはわかりません。
また、家事事件は個別性が高いにもかかわらず、ネットで語られた個別事案が、あたかも裁判所のルールであるかのように誤解をしてしまい、結論を見誤るおそれもあります。もし国際離婚について悩んでいる場合は、やはり一度は国際家事事件を専門とする弁護士の意見を聞くことが有益です。
7. 国際離婚に関してよくある質問
8. まとめ 国際離婚の不安は、国際家事を専門とする弁護士に相談を
国際離婚は、法制度が非常に複雑で、理解すること自体、困難を伴います。弁護士であっても、国際家事を専門としていない場合はほとんど扱えない分野です。世界で統一されたルールがないため、同じ夫婦の離婚について、海外の裁判所が別の管轄制度や準拠法を用いて別の判断を出す事態も起こり得ます。
したがって、自分に適した離婚手続きを探して能動的に動く必要があると同時に、ハーグの返還申立や海外での裁判手続きを開始された場合など、配偶者の行動に対する防衛も視野に入れなければならないケースも少なくありません。また、特に紛争のない夫婦が手軽に日本で協議離婚をしたことで、あとになって他方の国での手続きのやり直しや複雑化を招くおそれもあります。
国際離婚は、通常の日本人同士の離婚にはない特殊で複雑な問題を多く含みます。夫婦間の離婚話に紛争があってもなくても、早めに国際家事を専門とする弁護士に相談することが大事です。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)