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1. 不妊は珍しい問題ではない
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2. 不妊の原因は?
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2-1. 女性不妊の主な原因
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2-2. 男性不妊の主な原因
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3. 不妊が離婚問題に発展しやすいケース
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3-1. 不妊治療に対する夫婦間の温度差から夫婦関係が悪化する
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3-2. 不妊治療の結果、夫婦関係や性⽣活などにほころびが生じて不倫に⾛ってしまう
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3-3. 不妊であることを告げずに結婚し、結婚後に発覚する
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4. 不妊は離婚理由になる?
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4-1. 夫婦が合意すれば離婚できる
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4-2. 調停で同意、または離婚裁判で認められれば離婚できる
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4-3. 不妊に関連した理由で離婚できるケース
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5. 不妊が原因で離婚する場合の金銭請求
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5-1. 慰謝料は請求できる?
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5-2. 不妊治療にかかった費⽤は請求できる?
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6. 不妊で離婚する前に考えておくべきこと
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6-1. 夫婦仲を改善する方法を検討する
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6-2. ⼦どもを育てるための別の⽅法などを検討する
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6-3. 離婚して後悔しないかどうかよく考える
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7. 不妊を理由に離婚を考えている場合の相談先
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8. 不妊と離婚についてよくある質問
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9. まとめ 不妊やそれに伴う離婚の可能性の悩みは、その分野に強い弁護士に相談を
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1. 不妊は珍しい問題ではない
そもそも不妊とは、⽇本産科婦⼈科学会の定義では「妊娠を望む健康な男⼥が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、⼀定期間妊娠しない」ことを指すとされています。
⼀定期間とは、ひと昔前までは「2年間」とされ、近年では、「1年間」が⼀般的となり、さらに、「半年間」でもよいだろうという臨床現場の意⾒も多いようです。
世界的に不妊に悩む夫婦やカップルは増加傾向にあり、もはや珍しい問題ではありません。
子ども家庭庁の不妊症・不育症についての情報発信によると、⽇本で不妊の検査や治療の経験がある夫婦は約4.4組に1組にあたる22.7%で、不妊について⼼配したことがある夫婦の割合は、夫婦の総数でみると実に3組に1組以上となる39.2%と、いずれも増加しています(データは国⽴社会保障・⼈⼝問題研究所の「2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」に基づく)。2022年4⽉からは⼈⼯授精、体外受精、顕微授精といった不妊治療の保険診療が開始され、不妊治療を受ける患者数が⼀気に増えたことで、社会的にもさまざまな⾓度からの関⼼が⾼まっています。
不妊治療に関連した男女問題を多く扱ってきた弁護士としても、不妊症や不妊治療が原因で家庭内の問題や離婚問題に発展する夫婦が増えている実感がありますし、今後も増えてくるだろうと考えています。
2. 不妊の原因は?
不妊の原因は多岐にわたります。男女別に不妊を引き起こす要因や不妊の原因などを紹介しますので、参考にしてみてください。
2-1. 女性不妊の主な原因
【不妊を引き起こす主な要因】
加齢、極度の痩せまたは肥満、喫煙、飲酒、過度な運動、ストレス、性感染症など
【不妊の主な原因】
加齢、極度の痩せまたは肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、性腺機能異常、卵管閉塞、⼦宮内膜症(チョコレート嚢胞など)、クラミジア卵管炎、染⾊体疾患、遺伝⼦疾患など
【不妊の主な病態】
排卵障害、卵管機能不全、着床不全、不育症など
2-2. 男性不妊の主な原因
【不妊を引き起こす主な要因】
加齢、極度の痩せまたは肥満、喫煙、飲酒、過度な運動、ストレス、性感染症など
【不妊の主な原因】
加齢、勃起不全、射精障害、 極度の痩せまたは肥満(特に男性の場合は肥満)、 無精⼦症、乏精⼦症、奇形精⼦症、性腺機能異常、染⾊体疾患、遺伝⼦疾患など
【不妊の主な病態】
無精⼦症、乏精⼦症、奇形精⼦症、精⼦無⼒症、勃起不全、射精障害など
3. 不妊が離婚問題に発展しやすいケース
不妊に関係して離婚問題に発展しやすいケースは主に以下の3つです。
3-1. 不妊治療に対する夫婦間の温度差から夫婦関係が悪化する
夫側が検査を受けてくれない、または病院に⾏ってくれない、など治療に協力的ではないケースは理想的ではありません。実際に治療を受け始めても、精⼦の数や運動率を⾒る精液検査に抵抗があり、採点をされている気分だという後ろ向きな話をよく聞きます。
また、不妊治療は、⼀般的に妻側の負担が⼤きく、その苦労やつらさに対して夫側の理解が⾜りないと妻側が不満を感じ、⼝論になる場合があります。流産の悲しみを夫に話しても共感が得られず、パートナーに対する愛情が急激に減ったり、なくなったりする事例もあります。
3-2. 不妊治療の結果、夫婦関係や性⽣活などにほころびが生じて不倫に⾛ってしまう
排卵にタイミングを併せて性交渉をすることに義務や作業感を感じてしまうと、夫婦間に距離ができる可能性が高まります。 ⼈⼯授精や体外受精のためにタイミングを合わせて精⼦を⾃ら採取することに、男性側が抵抗感を感じることが多いようです。新鮮なほうがよいという理由から病院内で精⼦を採取することで、余計に抵抗を感じるという声もあります。
こうした状況から夫婦間の性⽣活も含めて関係性の悪化が重なり、どちらかが、あるいはどちらもが第三者との不倫に⾛ってしまうケースがあります。
3-3. 不妊であることを告げずに結婚し、結婚後に発覚する
カルマン症候群などの遺伝⼦異常や、下垂体機能異常、内分泌異常、がんの既往などの不妊症を伴う持病、あるいはターナー症候群、クラインフェルター症候群などの性染⾊体の異常を原因とした不妊症がわかっていても、パートナーに告げないまま結婚し、結婚後に発覚して離婚につながったケースに出会ったこともあります。
特に、⼀部の性染⾊体異常など、不妊治療をしても現代の医学では妊娠や出産を望めないケースで、⼀⽅が強く⼦どもを希望する場合は、離婚の決定的な要因になる可能性が高いです。

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4. 不妊は離婚理由になる?
不妊は離婚理由になり得ますが、必ず離婚できるわけではありません 。夫婦の同意がない状況でも離婚したい場合は、法律に定められた「法定離婚事由」が必要です。
4-1. 夫婦が合意すれば離婚できる
夫婦間で話し合いをして離婚することを「協議離婚」と呼びます。夫婦双方が合意していればどのような理由であっても離婚は可能であり、不妊を理由としても夫婦双⽅が話し合いで合意すれば、離婚は可能となります。
4-2. 調停で同意、または離婚裁判で認められれば離婚できる
夫婦間の話し合いで相⼿が同意しない場合、協議離婚は成⽴しません。その場合、裁判所で調停委員を介して話し合いを行う「調停」をします。
この調停でも夫婦間で離婚が合意できなければ、離婚を望む夫婦の⼀⽅から離婚裁判(離婚訴訟)を起こす必要があります。 離婚訴訟で裁判所に認められれば強制的に離婚が成⽴します。ただし、裁判所が離婚を認めるのは法律に定められた「法定離婚事由」がある場合に限られます 。
4-3. 不妊に関連した理由で離婚できるケース
法定離婚事由は、たとえば不貞⾏為(不倫)や、3年以上の⽣死不明、婚姻を継続し難い重大な事由などで、不妊は離婚理由として明記されていません。
ただし、裁判所が当該者の不妊を「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断すれば、離婚が認められます 。
不妊に関連して「婚姻を継続し難い重大な事由」だと審判される可能性があるのは、主に以下のようなケースが考えられます。
不妊が原因で夫婦関係が悪化、⻑期間別居している
不妊が原因でDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴⼒)やひどいモラル・ハラスメント(モラハラ)を繰り返されている
不妊を理由に性交渉を⼀⽅的に拒まれて⻑期間セックスレスになる
5. 不妊が原因で離婚する場合の金銭請求
単に相⼿の不妊のみを理由に慰謝料請求をしたとしても、認められる可能性は高くありません。
5-1. 慰謝料は請求できる?
慰謝料の発⽣には、たとえば不妊を理由にDVやひどいモラハラを受けた、あるいは不倫をされたなど、相⼿の⾏為が「不法⾏為」(違法な⾏為)と評価され得る事情が必要です。
実際に、妻が不妊治療を受けて⾝体に負担をかけている⼀⽅で、夫が第三者と不倫していたケースにおいて、妻が不妊治療で⼤変な思いをしているなかでの夫の不倫が慰謝料の増額の理由として考慮された裁判が過去にあります。
5-2. 不妊治療にかかった費⽤は請求できる?
事情によっては、離婚時に不妊治療にかかった治療費を実質的に返還してもらえる可能性があります。
たとえば、結婚前からあった⾃分の預貯⾦から不妊治療の費⽤を全額負担したが、離婚時にそれについて相手から清算するという了承をとれたケースが該当します。 ただし、この場合、メールやLINEなどの記録、録⾳など相⼿が了承した証拠が必要になります。
また、不妊治療の費⽤を夫婦の⼀⽅の預貯⾦のみから全額捻出したため、その分もう⼀⽅の預貯⾦が増えていた場合も、離婚時に治療費を返還してもらえる見込みが高いです。離婚時の財産分与は、結婚期間中に増えた夫婦双⽅の預貯⾦を2分の1ずつ分けるのが原則だからです。相手が治療費を負担しなかった分、相⼿の預貯⾦が増加していれば、その増額分の2分の1を離婚時に清算できる と考えられます。
6. 不妊で離婚する前に考えておくべきこと
不妊を理由とした離婚は必ずしも最善の選択とは言えません。離婚を決める前に、以下の3つの選択肢を検討してみましょう。
夫婦仲を改善する方法を検討する
⼦どもを育てるための別の⽅法などを検討する
離婚して後悔しないかどうかよく考える
6-1. 夫婦仲を改善する方法を検討する
離婚を考える理由が不妊や不妊治療にあったとして、もし修復可能な余地があれば、人生設計を含めもう⼀度夫婦で話し合ってみてもよいかもしれません。
たとえば、不妊治療で結果が出ず、お互いがお互いの立場でつらさがあり、ともに自分の心の痛みを相手がわかってくれないように感じてしまう状況は、感情のある人間として起こりがちです。
不妊治療は100%結果が出るわけではないものの、結果を期待して治療をするものです。しかし、なかなかゴールが見えずつらいなかで、仕事などで忙しくコミュニケーションが不足すると、互いの苦しみや目標を分かち合う機会も減っていきます。
このような悪循環で、結果的に不妊治療を始める前と比べて夫婦喧嘩が絶えなくなり、お互いつらい思いをしているというケースは少なくありません。
こうした場合に、一つの選択肢として、不妊治療の終わりを考え、不妊治療から卒業をする選択肢もあります。実際にそのような選択をとった夫婦も多くいます。
6-2. ⼦どもを育てるための別の⽅法などを検討する
不妊治療から卒業して、特別養子縁組制度や⾥親制度を利⽤して⼦どもを迎える選択をする夫婦もいます。また、じっくり話し合い、最終的に2⼈での⼈⽣を考えていく、あとは自然に任せる、という選択をした夫婦もいます。
6-3. 離婚して後悔しないかどうかよく考える
最も重要なのは、離婚が⾃分にとって後悔のない選択なのか、⼗分に考えることです。筆者も離婚の相談者には、 離婚を決断する前に「自分にとってより前向きな選択は何か」という視点で考えていただくようにしています。
離婚は人生のなかでも非常に難しい選択や決断の一つです。しかし、最終的に⼗分に考えたうえで悔いなく離婚を決意したならば、その後の離婚成⽴時には新たな⼈⽣のスタートとして、 気持ちが⾮常に前向きで楽になったという話を多く聞きます。

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7. 不妊を理由に離婚を考えている場合の相談先
たとえば、不妊治療の進め方について、医学的な観点や夫婦間の希望の違いでトラブルが多いならば、夫婦一緒に、もしくはそれぞれで担当医から説明を受ける機会を設けてもよいでしょう。
夫婦間での不妊治療や子どもを望むことへの温度差の悩みならば、気を許せる周りの家族や友⼈に相談する方法も考えられます。周りの人にはこうした悩みを話せない、話しにくいということであれば、昨今ではSNSを通じて、同じ不妊治療を受けている仲間同⼠で交流するのも一つの選択肢です。
もっとも、離婚を考えた場合は、やはり弁護⼠に⼀度、相談することをお勧めします。
個々の事情を踏まえて離婚を進める場合の具体的な流れや、 離婚にかかる期間、財産の分配、慰謝料、⽣活費など、離婚時に考える必要のあるさまざまな要素の知識を得るためには、弁護士への相談がよいでしょう 。
また、相手に拒否された場合に備え、⾃分のケースではそもそも離婚が可能なのかを相談することで、具体的にイメージして整理できるようになるはずです。
それから、筆者の経験では、弁護⼠に相談することで自分のやるべきことが整理できた、気持ちが楽になった、という声をいただくケースも多くあります。⼀⼈で抱え込んで悩んでいる場合はぜひ⼀度弁護士に相談してみてください。離婚分野と不妊治療分野について理解のある弁護⼠だとよりよいでしょう。
8. 不妊と離婚についてよくある質問
9. まとめ 不妊やそれに伴う離婚の可能性の悩みは、その分野に強い弁護士に相談を
不妊や不妊症は夫婦間にみられる課題として珍しいことではありません。不妊治療に対する夫婦間の温度差から夫婦関係が悪化したり、不妊治療の結果、夫婦関係や、性⽣活などにほころびが生じて不倫に⾛ってしまったりといった理由で、離婚に発展するケースもあります。
不妊や不妊治療のことなど夫婦生活の問題はとてもデリケートな問題で、周りの⼈には話せないという悩みも多いでしょう。ただし、一人で抱えるのは、⾃⾝の⼼の健康にとってよくないですし、⾮常に負担でつらいことです。
筆者の経験上、悩みを相談して話すことだけでも、気持ちが楽になったという声は⾮常に多い です。現在、不妊やそれに伴う離婚の可能性で悩んでいる場合は、一人で苦しむのではなく、ぜひ⼀度、離婚分野と不妊治療分野に強い弁護⼠に相談 してみてください。弁護⼠には守秘義務があり、相談は当然、秘密厳守で⾏いますので、プライバシーの観点からもぜひ安心していただければと思っています。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)