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1. 養育費を取り決めるまでの流れ
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1-1. 協議(話し合い)
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1-2. 調停
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1-3. 裁判、審判
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2. 離婚裁判で養育費を決める場合の手続き
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2-1. 離婚裁判の必要書類
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2-2. 離婚裁判の流れ
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2-3. 判決、和解の効力
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3. 離婚後に養育費を取り決める場合の手続き
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3-1. 養育費請求調停
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3-2. 養育費請求審判
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4. 養育費を取り決めるうえでの注意点
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4-1. 事前に相場を把握する
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4-2. 未払いとなった場合を想定する
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5. 裁判や審判で取り決めても養育費が支払われない場合の対処法
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6. 未払い(不払い)の養育費について裁判を起こせるか?
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7. 2026年5月までに導入|共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が養育費の裁判に与える影響は?
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8. 養育費の裁判や調停を弁護士に相談するメリット
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8-1. 申立てに関する手続きをすべて任せられる
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8-2. 適切に主張や立証ができる
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8-3. 相手との直接のやり取りが不要になる
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8-4. 養育費の未払いを防ぐための対策を練ることができる
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9. 養育費の裁判(審判)にかかる弁護士費用
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9-1. 養育費の裁判(離婚裁判)
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9-2. 養育費の調停、審判
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10. 養育費の裁判に関してよくある質問
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11. まとめ 裁判で養育費の取り決めをする場合は弁護士に相談を
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1. 養育費を取り決めるまでの流れ
養育費とは、経済的にも社会的にも自立していない子ども、主に未成年の子どもを育てるための費用のことで、衣食住や教育、医療などに必要となる費用を指します。子どもの父母は離婚したとしても養育費を分担して負担する義務があるため、離婚時に養育費をどのように分担するのか取り決めておく必要があります。
養育費の取り決めをする際の手続きには、当事者である父母間での協議(話し合い)、調停、裁判(審判)の3つがあります。それぞれの手続きの内容と流れについて解説します。
1-1. 協議(話し合い)
養育費の取り決めをする場合、まずは父親と母親による協議、つまり話し合いでの合意をめざします。親には、子どもに親の生活水準と同等の生活を保証する「生活保持義務」があるため、それをふまえて養育費に関する話し合いを進めます。離婚が成立したあとでも養育費の話し合いは可能です。
養育費に関して、必ず決めなければならない内容は以下のとおりです。
金額
支払い期間
支払い時期
支払い方法
養育費の内容が決まったら、口頭での約束だけではなく離婚協議書や公正証書を作成しておきます。
1-2. 調停
父母間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停または養育費請求調停を申し立てます。調停を経ずにすぐにでも裁判を起こしたいと考える人もいるかもしれませんが、離婚は裁判に先立って調停を行わなければいけない調停前置主義をとっているため、原則としてまずは離婚調停を申し立てます。
調停では家庭裁判所の調停委員の立ち会いのもと、離婚条件や養育費について話し合いを行います。裁判所が公表している養育費算定表を参考に、月々に支払う金額などを決めます。
双方がそれらの条件に合意すると調停が成立し、裁判所により調停調書が作成されます。合意できない場合は調停不成立となり、離婚調停の場合は裁判に、養育費請求調停の場合は審判に移行します。
1-3. 裁判、審判
離婚調停が不成立になった場合は、離婚裁判を提起します。この場合、調停での内容が裁判に自動的に引き継がれることはないため、あらためて書面や証拠で自分の主張をしなければいけません。養育費の額は調停と同様、基本的には養育費算定表に基づいて決められます。
養育費請求調停が不成立になった場合は、自動的に審判に移行するため申立ては不要です。審判になったら調停での話し合いの経緯をふまえ、裁判官が養育費に関して決定をします。審判に納得できない場合は、告知を受けた日の翌日から2週間以内に不服申立て(即時抗告)ができます。
裁判も審判も対立する当事者間の紛争を解決するための裁判所での手続きですが、審判は非公開で行われ、当事者の主張や証拠以外に裁判所独自の調査結果からも結論を出せる点などが裁判と異なります。
2. 離婚裁判で養育費を決める場合の手続き
離婚裁判で養育費を決める場合の手続きについて解説します。
2-1. 離婚裁判の必要書類
離婚裁判を提起する場合、まずは裁判所に提出する書類を作成します。
必要書類は以下のとおりです。
訴状(正本、副本)
当事者の戸籍謄本
証拠書類(正本、副本)
調停不成立証明書
訴訟費用の収入印紙
訴状には以下の内容を記載します。
当事者の本籍、住所、氏名
請求の趣旨(離婚、財産分与、慰謝料、親権者の指定、養育費、年金分割など)
請求の原因(夫婦が結婚した日、未成年の子どもの有無、子どもがいる場合は名前と生年月日、離婚調停の事件番号と結果、離婚原因など)
訴訟費用は、離婚のみを請求する場合は1万3000円、離婚とあわせて養育費についても裁判する附帯処分を求める場合は子ども一人につき1200円を合算し、収入印紙で納めます。このほか、裁判所との連絡用郵便切手代として6000円から7000円程度の費用がかかりますが、金額は裁判所によって異なります。
2-2. 離婚裁判の流れ
訴状などを裁判所が受理すると、裁判は以下のような流れで進みます。
【STEP1】第1回口頭弁論の期日が原告と被告に通知される
裁判所は訴状を受理後、裁判を起こした原告と訴えられた被告に対し、第1回口頭弁論の期日を通知します。口頭弁論とは、原告と被告が裁判官の前で自分の主張や証拠を述べ合うことで、口頭弁論が行われる日を口頭弁論期日と呼びます。第1回口頭弁論は、訴状を提出してから約1カ月後に設定されるケースが一般的です。
【STEP2】被告が答弁書を作成し提出する
被告は訴状を確認したあと、自分の意見や反論を記載した答弁書を作成し、裁判所へ提出します。提出されると原告にも写しが送られます。
【STEP3】第1回口頭弁論が行われる
第1回口頭弁論が行われます。口頭弁論は、原告が提出した訴状と被告が提出した答弁書をもとに、争点を確認しながら進められます。第1回で終わることはほとんどなく、その場で次回期日を決定します。その後、口頭弁論は1カ月から2カ月に1回のペースで開かれ、原告と被告は自分の主張をまとめた準備書面や証拠を交互に提出します。第2回以降の期日では、裁判官から和解を提案されることもあります。
【STEP4】陳述書を提出する
原告と被告が主張を一通り終えると、尋問期日が指定されることが一般的です。尋問期日とは、原告と被告が裁判官や相手の代理人弁護士からの質問に答える手続きです。通常は、原告と被告がそれぞれの主張をまとめた陳述書を事前に裁判所に提出したうえで尋問が行われます。
【STEP5】判決が言い渡される
和解の見込みがない場合は、裁判官が原告の離婚等請求を認めるかどうかの判決を言い渡します。多くの場合、口頭弁論が終結してから判決までは1カ月ほどです。判決が出されると判決書が原告と被告に送られます。
2-3. 判決、和解の効力
裁判で判決を言い渡された場合は判決書、裁判の途中で双方が和解した場合は和解調書が裁判所から発行されます。取り決めた養育費が支払われない場合、これらの書類があれば強制執行が可能になります。万が一そのような事態になり、裁判所に強制執行の申立てをする際には、この判決書や和解調書が必ず必要になりますので、大切に保管してください。
3. 離婚後に養育費を取り決める場合の手続き
離婚が成立したあとでも養育費の取り決めは可能です。この場合、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。養育費請求調停を申し立てたら家庭裁判所の調停委員が間に入り、養育費の内容を取り決めます。どのような手続きか解説します。
3-1. 養育費請求調停
養育費請求調停は、原則として相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。ただし、相手と話し合って合意できれば、住所地以外の裁判所への申立ても可能です。申立てに必要な書類は以下のとおりです。
申立書(正本、副本)
子どもの戸籍謄本
申立人の給与明細など収入に関する資料
必要書類をそろえて家庭裁判所に申立てをすると調停期日の調整が行われ、双方に調停期日呼び出し状が送付されます。申立てから呼び出し状が届くまでは約2週間、第1回の調停までは1カ月ほどかかります。
第1回の調停では裁判官と調停委員が双方から意見を聞き、合意ができれば調停が成立し終了します。合意ができなければ1カ月に1回のペースで調停を開催します。
3-2. 養育費請求審判
調停で養育費に関して合意ができなければ、調停不成立となり審判に移行します。審判では、裁判官が当事者双方の主張や提出資料をもとに養育費を決定します。
審理が終結すると審判日が指定され、養育費の支払いを命じるか、もしくは申立てを却下するか、いずれかの審判が下されます。審判の内容に不服があれば、審判の告知があった日から2週間以内に不服申立てをする即時抗告ができます。不服申立てをしない場合は、審判が確定し終了します。
審判が確定すると当事者の一方には法的な支払い義務が発生するため、万が一支払いが滞った場合は、強制執行が可能となります。

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4. 養育費を取り決めるうえでの注意点
養育費の内容を取り決める際は、以下のような注意点があります。
4-1. 事前に相場を把握する
裁判所が公表している養育費算定表を参考にして、事前に養育費の相場を把握しておくことが大切です。養育費の相場を理解していないと、話し合いが並行線になりまとまらない可能性があるからです。
相場を算出する際に必要なのは年収の金額です。会社員の場合は源泉徴収票の支払い総額を、自営業者の場合は前年の確定申告書の「課税される所得金額」に所得控除などの実際に支出していない費用を加算した金額を確認します。
4-2. 未払いとなった場合を想定する
養育費が未払いになった場合を想定した取り決めをしておくことも重要です。養育費は長期にわたって支払いが続くものなので、決められたとおりに支払われなくなるケースも多々あります。未払いになったときに備えて、相手の銀行口座や勤務先の情報、所有している財産などを確認しておくことをお勧めします。
5. 裁判や審判で取り決めても養育費が支払われない場合の対処法
裁判や審判で取り決めたにもかかわらず養育費が支払われない場合は、以下の手順で対処してください。
【STEP1】履行勧告、履行命令を行う
裁判や審判で養育費を取り決めた場合、履行勧告や履行命令という制度が利用できます。
履行勧告は、家庭裁判所が相手に対して、裁判や審判で決まった内容どおりに養育費を支払うように催促する制度です。利用は無料で、担当の家庭裁判所の窓口に相談します。ただし、履行勧告に応じなくても相手には特に罰則などはありません。
履行命令は、履行勧告をしても養育費が支払われない場合に、家庭裁判所が相手に支払いを命じる制度です。履行勧告と異なり利用するには手数料がかかりますが、相手が命令に従わなければ10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
【STEP2】強制執行を行う
裁判や審判で養育費について取り決めをしている場合は、強制執行を実施して相手の給料や財産を差し押さえて養育費にあてることができます。強制執行をするには、裁判所に以下の書類を提出して手続きをする必要があります。
申立書
調停調書、審判調書、確定判決などの債務名義
当事者目録
請求債権目録
差押債権目録など
6. 未払い(不払い)の養育費について裁判を起こせるか?
養育費の未払いが起きた場合、家庭裁判所の調停や審判ではなく、民事訴訟を提起して請求できないか考える人もいるかもしれません。養育費の金額や支払い期間について合意が成立していれば裁判を提起できますが、その際は養育費に関して合意を示す書面などの証拠が必要となります。
なお、離婚時に強制執行認諾文言付きの公正証書を作成している場合や、調停調書や審判書がある場合は、強制執行ができるため裁判を起こす必要はありません。
7. 2026年5月までに導入|共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が養育費の裁判に与える影響は?
2024年5月の法改正で、共同親権制度と法定養育費制度が新設され、養育費に一般先取特権(さきどりとっけん)が付与されました。先取特権は、ほかの債権よりも養育費を優先して請求できる権利のことで、養育費をめぐる問題に少なからず影響がありそうです。
なかでも法定養育費制度は、養育費について何も決めずに離婚した場合に、民法の規定に従って離婚の日にさかのぼって養育費が請求できる制度です。これまで養育費を受け取るには相手と合意したり、調停や審判で支払い義務を確定したりする必要がありましたが、この制度が導入されれば、民法の規定を根拠に、父母間の取り決めがなくても養育費の請求ができるようになります。
2026年5月までに導入される予定ですが、金額や期間についてはまだ定められていないようなので、今後の動向を見守る必要があります。
8. 養育費の裁判や調停を弁護士に相談するメリット
養育費の裁判や調停を弁護士に相談するメリットは、以下のとおりです。
8-1. 申立てに関する手続きをすべて任せられる
申立書の作成をはじめとして、家庭裁判所に提出する書類の作成は複雑で時間がかかります。弁護士は正確に作成できるため、安心して任せられます。
8-2. 適切に主張や立証ができる
弁護士は法律に関する知識や経験が豊富なため、家庭裁判所の裁判官や調停委員に、主張や立証を適切に行えます。
8-3. 相手との直接のやり取りが不要になる
子どものためとはいえ、相手と直接養育費に関する話し合いをするのは抵抗がある人も少なくないでしょう。弁護士が間に入れば直接のやりとりを避けられます。
8-4. 養育費の未払いを防ぐための対策を練ることができる
養育費の取り決めをしたにもかかわらず、きちんと払わない人もなかにはいます。そうした未払いが起きないよう、弁護士はあらかじめ対策を練ることができます。

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9. 養育費の裁判(審判)にかかる弁護士費用
弁護士費用は、弁護士事務所ごとに自由に設定できます。弁護士費用の主な内訳は、法律相談料、着手金、報酬金、日当、実費です。どのような案件を依頼するかによって費用に違いがありますが、相場の金額を紹介します。
9-1. 養育費の裁判(離婚裁判)
離婚裁判に関しては、法律相談料を30分5000円程度(以下、金額は税抜き)かそれ以上で設定している事務所が多いようです。最近は初回相談無料のサービスをしている事務所が増えています。
弁護士に正式に依頼する際に支払う着手金は30万円から60万円が相場で、これは依頼が成功しなかった場合も返金されない費用です。報酬金は依頼した案件が成功した場合に支払う費用で、離婚裁判の場合は経済的利益の10%から16%程度としているケースが多いようです。ここでの経済的利益とは、得られた養育費の金額を指します。
弁護士が裁判所に出向くなどで事務所を離れる場合の日当は、一日につき3万円から5万円ほどが相場です。
9-2. 養育費の調停、審判
養育費の調停や審判では、法律相談料と日当の相場は離婚裁判とおおよそ同じですが、着手金は20万円から50万円、報酬金は経済的利益の10%から20%程度としているケースが多くなっています。
10. 養育費の裁判に関してよくある質問
11. まとめ 裁判で養育費の取り決めをする場合は弁護士に相談を
養育費について相手と話し合いがまとまらない場合には、離婚調停や離婚裁判で取り決めることが可能です。また養育費の取り決めをしないまま離婚した場合でも、養育費請求調停を申し立てれば取り決めることができます。
養育費は長期にわたって支払われるものなので、いずれの場合も未払いになった場合を想定した取り決めをすることが重要です。また、裁判や審判で取り決めたにもかかわらず養育費が支払われない場合には、履行勧告や履行命令により催促できるほか、強制執行によって相手の給与や財産を差し押さえることも可能です。
子どもの父母は離婚したとしても養育費を分担して負担する義務があり、また養育費は子どもの生活や教育に直結する問題です。養育費に関して悩むことがあれば、あきらめずに弁護士に相談してください。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)