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1. 自治体による養育費の保証とは?
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1-1. 自治体が養育費の保証や立て替え支援をする理由
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1-2. 自治体による養育費の保証や支援はいつから?
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2. 養育費の保証や支援を行っている自治体
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2-1. 仙台市(宮城県)
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2-2. さいたま市(埼玉県)
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2-3. 品川区(東京都)
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2-4. 大阪市(大阪府)
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2-5. 福岡市(福岡県)
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3. 保証会社による養育費の保証サービスとは?
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4. 保証会社による養育費の保証サービスのメリットとデメリット
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4-1. メリット
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4-2. デメリット
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5. 保証会社による養育費保証サービスの留意点
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5-1. 養育費の権利者にとってデメリットもある
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5-2. 弁護士法に違反している可能性がある
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6. 養育費の不払いについて弁護士に依頼するメリット
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6-1. 相手とのやりとりをすべて代わりに行ってくれる
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6-2. 裁判手続を通じて養育費を取り立ててくれる
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6-3. さまざまなケースに応じて柔軟に対応してくれる
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6-4. 違法である心配がない
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7. 養育費の保証に関してよくある質問
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8. まとめ 養育費の保証サービスを検討する際は、弁護士への相談も選択肢に
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1. 自治体による養育費の保証とは?
自治体による「養育費の保証」とは、養育費の支払いが滞った場合に、養育費を支払うべき人(義務者)に代わって養育費の支払いをしてもらえるサービスのうち、自治体が実施するもののことです。
民間の保証会社を介さずに自治体が直接立て替え払いをするケースと、自治体が保証会社との間で締結した契約に基づき保証会社が保証金を支払い、自治体が保証料を補助するケースがあります。
どちらの仕組みでも、保証サービスを受ける場合、養育費を受け取るべき人(権利者)は、義務者の不払いにかかわらず、一定額の養育費の支払いを受けられます。
1-1. 自治体が養育費の保証や立て替え支援をする理由
自治体が養育費保証サービスを展開するようになった理由としては、養育費の不払いが大きな問題となるなかで、養育費受け取りのための実効的な制度を構築する必要があることが挙げられます。
厚生労働省が行った「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費取り決めを行ったのは母子家庭で46.7%、父子家庭で28.3%でした。また、受給状況をみると「現在も受給している」のは母子家庭で28.1%、父子家庭で8.7%でした(いずれも推計値)。
このように、養育費の取り決めと支払いは低い水準にとどまっています。
1-2. 自治体による養育費の保証や支援はいつから?
自治体による養育費の保証は、2018年に始まった兵庫県明石市の「明石市養育費立替パイロット事業」が最初です。
明石市ではその後、保証会社を利用する仕組みから市が直接立て替え払いを行う仕組みへと変更して制度が続いています。また、ほかの自治体もあとを追って養育費の保証制度を開始しています。
2. 養育費の保証や支援を行っている自治体
兵庫県明石市の例をきっかけに、養育費の保証や支援を行う自治体が増えています。
ただし、自治体が直接立て替え払いを行うケースを除けば、多くの自治体では民間の保証会社を介して養育費の保証支援を実施しています。
自治体の支援サービスであっても、実際に養育費の保証を行うのは民間の保証会社であって、自治体は保証料を補助するという形で支援を行っているケースが多い点に注意が必要です。
また、利用にあたっては各自治体が定める要件を満たす必要があります。
ここでは、養育費の保証や支援を行っている自治体やその概要を紹介します。
2-1. 仙台市(宮城県)
仙台市は、「養育費保証契約保証料補助」として養育費の保証料を補助する事業を実施しています。
この事業では、債務名義が作成されている養育費について、養育費権利者が保証会社と1年以上の養育費保証契約を結ぶために保証料を支払った場合には、保証料のうち5万円を限度に補助します。
これは、市が直接立て替え払いを行うのではなく、あくまでも保証会社を利用する際の保証料を補助する仕組みです。同様の仕組みを採用する自治体はほかにも多くあります。
「債務名義」とは、強制執行の手続きをする際に必要となるもので、強制執行の対象となる債務が存在することを証明する公的な文書のことです。
養育費の債務名義には、債務者が養育費を支払わない場合には強制執行を受けることを認める旨を記載した公正証書(強制執行認諾文言付公正証書)や、裁判所での調停の結果としてつくられる調停調書などがあります。
2-2. さいたま市(埼玉県)
埼玉県さいたま市は、「養育費立替支援事業」を実施しています。
この事業では、養育費が支払われない場合に義務者に対して養育費を支払うよう市が働きかけ、それでも支払いがなければ、市が権利者に対し立て替え払いをします。立て替え払いは最大3カ月分までで、上限月額は5万円です。立て替え後は、市が義務者に対して督促をします。
さいたま市の事業の仕組みは保証会社を介さないものであり、明石市の現行の「こどもの養育費立替支援事業」と同じ枠組みです。
2-3. 品川区(東京都)
東京都品川区は、「養育費立替保証契約の初回保証料の補助」を実施しています。
この事業では、養育費権利者が保証会社と養育費立て替え保証契約を締結する際に支払った初回保証料を、上限5万円までの範囲内で補助してくれます。
2-4. 大阪市(大阪府)
大阪府大阪市は「養育費の保証促進補助金」の事業を実施しています。
この事業では、養育費権利者が保証会社と養育費保証契約を締結する際に支払う保証料が上限5万円までの範囲で補助されます。補助金は、月額養育費と5万円を比較して少ないほうの額を選定して支給されます。
2-5. 福岡市(福岡県)
福岡県福岡市は、「養育費保証支援事業」を実施しています。
この事業では、養育費権利者が養育費保証契約を保証会社と締結する際に支払う保証料が補助されます。
補助の上限は5万円で、保証料と5万円を比較して少ないほうの金額が支給されます。補助の回数は、一人につき1回までです。
3. 保証会社による養育費の保証サービスとは?
民間の保証会社による養育費の保証サービスとは、義務者による養育費の不払いがあった場合に、保証会社が養育費の権利者に対して養育費を立て替えて支払うサービスです。
このサービスに共通する枠組みは、養育費の義務者を債務者本人とする養育費債務について保証会社が保証人となり、養育費の不払いが発生した場合には保証会社が保証人としての立場で養育費の権利者に対し養育費を支払うというものです。
また、保証会社が保証人となる対価として、権利者が保証会社に支払う保証料を負担するとともに、養育費の立て替え後には保証会社が立て替えた養育費などを返還するよう義務者に求めます。
ただし、義務者からの保証委託があるかどうか、サービス利用のために債務名義が必ず要求されるかなど、具体的な枠組みは会社によって異なります。
4. 保証会社による養育費の保証サービスのメリットとデメリット
民間の保証会社による養育費の保証サービスには、メリットとデメリットの両方があります。それぞれを正確に把握したうえで利用することが大切です。
4-1. メリット
保証会社による養育費保証サービスを利用する最大のメリットは、養育費不払いの際も途切れずに養育費の立て替えを受けられることです。
すべての義務者が最初から最後まで不払いを起こさずに養育費を支払ってくれるとは限りません。また、養育費は子どもの月々の生活を支えるお金であり、1カ月でも支払いが遅れると生活が苦しくなりかねないものです。
養育費の不払いがあっても、保証会社との契約の範囲内であれば途切れずに養育費を立て替えてもらえるため、安心して生活できます。
4-2. デメリット
保証会社の養育費保証サービスにはメリットがあるだけではなく、デメリットもあります。
主なデメリットには、次のようなものがあります。
保証料がかかる
不払いが発生してからでは新規に保証会社と契約できない
保証会社の倒産やサービス変更のリスクがある
事前に養育費に関する合意が成立している必要がある
養育費につき債務名義を取得しておかなければサービスが利用できないことがある
そもそも養育費保証サービス自体が法律上許されないとの議論がある
これらのデメリットをふまえて保証会社の養育費保証サービスを利用するかどうかを判断することが大切です。
5. 保証会社による養育費保証サービスの留意点
保証会社が提供する養育費保証サービスの利用を検討するにあたっては、特に留意しておきたい点があります。
5-1. 養育費の権利者にとってデメリットもある
保証会社の養育費保証サービスには、さまざまなデメリットがあります。なかでも「保証料がかかる」という点には留意しなければなりません。
子どもを育てるうえでお金に余裕がある人は決して多くありません。そんななか、養育費の保証を受けるために保証料を支払わなければならない負担は、十分に考慮したほうがよいでしょう。
そもそも、すでに養育費の支払いに関する債務名義があるなら、不払いがあったときに強制執行などを弁護士に依頼したほうが割安になる可能性もあります。
5-2. 弁護士法に違反している可能性がある
実は、民間の保証会社による養育費保証サービスは、場合によっては弁護士法72条および73条に反して違法である可能性が指摘されています。
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を反復継続して取り扱うことを禁止しています。また、弁護士法73条は、反復継続して他人の権利を譲り受けて実行することを禁止しています。
養育費保証の契約と養育費不払いの発生タイミングや養育費保証の枠組み、保証会社の提供するサービス内容などによっては、これらの規制に違反してしまう可能性が否定できないという議論があります。
もちろん、すべての養育費保証サービスが明らかに違法だというわけではありません。
しかし、現状、弁護士でない民間の保証会社が提供する養育費保証サービスはグレーゾーンにある可能性が否定できないと言えるでしょう。
なお、日本弁護士連合会が2020年11月に発表した「養育費の不払い解消の方策に関する意見書」では、民間の保証会社の養育費保証サービスの利用は「現時点では推奨できない」とされています。

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6. 養育費の不払いについて弁護士に依頼するメリット
養育費が支払われなくなったら弁護士に相談または依頼するという選択肢もあります。
弁護士に依頼すると、依頼を受けた弁護士は養育費権利者の代理人として、義務者に対して養育費を支払うように請求します。また、義務者が自身の意思で支払わない場合には、訴訟や強制執行などの裁判手続を通じて義務者から養育費を直接取り立てます。
弁護士に依頼する際にはまず着手金を支払い、実際に養育費が獲得できた場合には報酬金を支払います。これらの具体的な額は、弁護士に依頼する際の契約のなかで定められます。
養育費の不払いがある場合に弁護士に依頼するメリットにはさまざまなものがあり、保証会社の養育費保証では得られないメリットもあります。
養育費の不払いについて弁護士に依頼するメリットとして、次の4点が挙げられます。
相手とのやり取りをすべて代わりに行ってくれる
裁判手続を通じて養育費を取り立ててくれる
さまざまなケースに応じて柔軟に対応してくれる
違法である心配がない
6-1. 相手とのやりとりをすべて代わりに行ってくれる
離婚をした相手とは直接やりとりをしたくないと思う人も多いでしょう。
弁護士に依頼した場合、弁護士が代理人として相手とのすべての交渉を代わりに行ってくれるので、自分で相手とやりとりをしなくて済みます。
保証会社の場合は、相手に養育費を支払うよう促すことも含めてすべてのやりとりを代行してくれるわけではありません。自分自身で相手と交渉しなければならない場面が残る可能性があります。
6-2. 裁判手続を通じて養育費を取り立ててくれる
弁護士に依頼した場合、強制執行などの裁判手続きを通じて養育費の取り立てを行ってくれます。
強制執行をすれば、義務者が財産を持っている限りは、養育費の権利分すべてを回収できます。裁判手続を代理できるのは弁護士だけであり、保証会社に依頼しても強制執行などの手続きを代行してくれることはありません。
また、保証会社の養育費保証は保証される額に限度があるのが一般的であり、権利のすべてを保証してくれるとは限りません。
6-3. さまざまなケースに応じて柔軟に対応してくれる
弁護士であれば、養育費の合意が成立していないケースや債務名義が取得できていないケースなども含めて、権利者側の事情に合わせて柔軟に必要な対応をとってくれます。
保証会社は一定の利用条件が決められているため、条件を満たさなければ利用できないなど、弁護士ほど柔軟な対応が期待できないのが一般的です。
6-4. 違法である心配がない
養育費のように他人の債権を代わりに取り立てる権限を持っているのは、基本的に弁護士だけです。保証会社は養育費を直接取り立ててくれるわけではないうえ、前述したとおり、保証会社による養育費保証の法的な扱いは明白とは言えない点は否定しきれません。
弁護士なら違法性を心配せずに任せられます。
7. 養育費の保証に関してよくある質問
8. まとめ 養育費の保証サービスを検討する際は、弁護士への相談も選択肢に
養育費の保証サービスは、養育費の不払いに備えるという意味でとても心強いものです。
一部の自治体では、直接立て替え払いをしたり、民間の保証会社へ支払う保証料を補助したりする制度が公的に用意されるなど、養育費の権利者が確実に養育費を受け取れるようサポートする動きが広がっています。
しかし、自治体が関与するかどうかにかかわらず、民間の保証会社による養育費保証サービスを利用する場合にはメリットもデメリットもあります。慎重に判断したうえで利用するかどうかを決めるのが望ましいでしょう。
また、養育費保証サービスではなく、弁護士に直接養育費の取り立てを依頼する方法もあります。
弁護士なら強制執行などの手続きを代理してくれたり、さまざまなケースに柔軟に対応してくれたりするため、安心して任せられます。自分の状況や必要性に応じて、どのような方法で養育費の確保を図るべきなのかを見極めるようにしましょう。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)