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1. 養育費の金額の決め方
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2. 養育費の新算定表とは
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2-1. 旧算定表では時代に合わなくなった
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2-2. 2016年に日弁連が算定表の改定を提言
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3. 新算定表の金額が「高すぎる」「おかしい」と思ったら
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3-1. 算定表の見方が間違っていないか
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3-2. 元配偶者の収入や資産状況に間違いはないか
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3-3. 特別な事情を見落としていないか
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4. 養育費が高すぎて払えない場合に減額できるケース
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4-1. 算定表の相場以上に支払っているケース
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4-2. 再婚して再婚相手との間に子どもが生まれた場合等、などで生活状況に変化があったケース
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4-3. 支払う側の収入が減少したケース
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4-4. 受け取る側の収入が増加したケース
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5. 養育費が払えなくなりそうなときに注意したいこと
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5-1. 養育費の支払い義務は消えない
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5-2. 一方的な打ち切りは強制執行を受けることもある
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6. 共同親権制度が養育費の支払い額に与える影響は?
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7. 養育費が高すぎて支払えないときは弁護士に相談
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8. 養育費が高すぎることに対するよくある質問
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9. まとめ 養育費が高すぎる場合は減額交渉をしよう
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1. 養育費の金額の決め方
養育費とは、夫婦が離婚したあと、片方が引き取った子を育てるのにかかる費用です。「子のいない方」から「子のいる方」に対して支払い、子どもが20歳になる、もしくは大学を卒業したタイミングで支払いを終えるのが一般的です。
養育費の金額の決め方は、大きく分けて、「①(元)配偶者との合意によって決める方法」と「②養育費の算定表によって決める方法」の2つがあります。
①の方法ならば、養育費が高すぎて困るといったことは起こりにくいです。しかし、(元)配偶者との間で合意ができない場合は、②の方法によらざるを得なくなります。
2. 養育費の新算定表とは
養育算定表は2019年に一度改定がありました。それを新算定表と呼びます。ここでは、新算定表とは何なのか、新算定表が作られた理由などを説明します。
2-1. 旧算定表では時代に合わなくなった
改定前の旧算定表は2003年(平成15年)に作成されていますが、そこから約16年が経過した2019年(令和元年)に改定された新算定表が発表され、その後はこちらの新算定表が使用されるようになっています。旧算定表が作られてからの約16年の間に、物価の上昇や経済の悪化などで社会は大きく変わりました。そのため、旧算定表では時代に合わなくなってしまったのです。
2-2. 2016年に日弁連が算定表の改定を提言
物価の上昇などの影響を受けて、2016年(平成28年)に日弁連が旧算定表の改定を提言しました。やがて、裁判所側でも直近の経済や生活に関するあらゆる統計資料が用いられ、旧算定表の検証、改定の必要性等の研究が行われます。
そして、2019年(令和元年)、その研究結果として、新算定表が公表されました。このように、新算定表は現代の経済や生活に則して、裁判所が当事者にとって公平な内容として作成した経緯があります。だからこそ、養育費の取り決めの際に一般的に参照されているのです。
3. 新算定表の金額が「高すぎる」「おかしい」と思ったら
新算定表は、現代の経済や生活に則した公平なものであるはずです。にもかかわらず「金額が高すぎる」「おかしい」などと感じるのはなぜでしょうか。金額に疑問を感じる人は、次の点を見直してみるとよいかもしれません。
3-1. 算定表の見方が間違っていないか
算定表の見方には少々コツが必要です。まず、算定表は「養育費」の算定表だけではなく、離婚前に別居しているケースで使用する「婚姻費用」の算定表も存在します。婚姻費用の算定表の方が金額が大きくなりますので、間違えてそちらを見ていないか確認 してみましょう。
次に、養育費の算定表は子どもの年齢や人数によって、いくつかの表に分かれています。子の年齢が高く、人数が多い方が金額は大きくなります ので、間違えた表を見ていないか確認してみましょう。
最後に、表の縦軸と横軸それぞれには、2つの数字が記載されていることが分かります。外側の数字が「給与」、内側の数字が「自営」になっています。自分や(元)配偶者が給与所得者と自営業者のどちらに当たるかによって、見るべき数字が変わります。この点も注意が必要です。
3-2. 元配偶者の収入や資産状況に間違いはないか
算定表は自分と(元)配偶者の年収を表に当てはめて算出するものですが、(元)配偶者の年収を勘違いしているケースもあり得ます 。自分と(元)配偶者の年収差が大きくなるほど金額も大きくなりますので、(元)配偶者の年収を過少に評価していないか確認してみましょう。
特に見間違いやすいのは確定申告書です。また、わざと実態よりも少なく収入を報告、申告していることもあり得なくはないので、少しでも気になる点があったら、遠慮なく相手に確認 しましょう。
3-3. 特別な事情を見落としていないか
子どもについて特別な事情がある場合、それらは算定表で取り決める金額とは区別して話し合うことが法律実務の一般的なやり方です。子どもについての特別な事情の例を以下に挙げます。
通常想定される金額よりも高い医療費を自分が負担している
私立の学校に通っていて、その学費を自分が負担している
習い事や塾の費用がかかっており、その費用を自分が負担している
算定表で決まる養育費というのは、子どもの毎日の基本的な生活費をターゲットにしています。つまり、自分が上記のような特別な費用を負担していて、負担が重すぎる場合、「それはどうしても支出しなければならない費用なのか」「誰がどの程度その費用を負担すべきか」などを改めて見直す ことはできます。
自分で判断するのが難しい場合には弁護士に相談してみましょう。また、調停を行っている場合は、担当の調停委員に尋ねてみるのも有効です。
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4. 養育費が高すぎて払えない場合に減額できるケース
養育費が高すぎて払えない場合、減額できる可能性があります。ここでは、養育費を減額できるケースについて説明します。
4-1. 算定表の相場以上に支払っているケース
養育費として支払う金額は算定表に必ずしも従う必要はありません。当事者同士で合意していれば、その合意内容に沿って支払いをすることも可能です。そのため、中には自分の子どものためなら、と相場以上の高額な養育費を支払っているケースもあるでしょう。そうした場合は、算定表で算出される水準よりも高水準の負担をしているかもしれません 。
もし算定表で算出される水準を上回る負担をしている場合で、経済状況の変化などで今後もその負担を続けることが難しくなったときは、算定表の金額まで減額できる可能性があります 。
4-2. 再婚して再婚相手との間に子どもが生まれた場合等、などで生活状況に変化があったケース
養育費を取り決めた後に生活状況に大きな変化があった場合は、養育費を調整できる可能性があります。例えば、自分が再婚して再婚相手との間に子どもが生まれた場合 や、逆に元配偶者が再婚して再婚相手と子どもが養子縁組をした場合 などです。
4-3. 支払う側の収入が減少したケース
養育費を支払う側の収入が減少したことを理由に、養育費の減額が認められる可能性があります。例えば、以下のようなケースです。
病気や怪我で健康な時と同じように働くことができなくなった
勤務先が倒産した
勤務先の都合で解雇された
あくまで「自分ではどうしようもない」場合ということがポイントとなりますので、自分の意思で収入を減らした・なくした場合は減額が認められる理由にはなりません 。例えば、年齢や健康状態、能力的に働くことはできるのに働いていない場合や、収入が下がることがわかっていて転職をした場合などが該当します。
4-4. 受け取る側の収入が増加したケース
養育費を受け取る側の収入が増加した場合も、養育費の減額が認められる可能性はあります。例えば、専業主婦だった妻が離婚後に正社員となった、というケースも珍しくないでしょう。
ただし、現実的には離婚後は元配偶者の就業状況や経済状況を把握することが困難 になる場合が多いです。養育費の減額を求めるための理由としては実践的ではないかもしれません。
5. 養育費が払えなくなりそうなときに注意したいこと
養育費を払えない、または払えなくなりそうな状況で、急に支払いをやめると、結果として自分が損をする 形になる可能性があります。ここでは、養育費が払えなくなりそうなときに注意すべきことを説明します。
5-1. 養育費の支払い義務は消えない
未成熟の子どもがいる限り、養育費の支払い義務は完全には消えません。養育費の支払い義務は、究極的には元配偶者に対する義務ではなく、子どもに対する扶養義務であると理解されるためです。
5-2. 一方的な打ち切りは強制執行を受けることもある
元配偶者や子どもに連絡や相談をせず、養育費の支払いを一方的に打ち切るのは絶対にやめましょう。特に、養育費の取り決めを調停や公正証書で行っている場合、相手側が強制執行に踏み切る可能性があります 。強制執行が申立てられると、突然、給与や預金が差し押さえられ、将来の分まで給与から養育費が引かれ続ける恐れ があります。
また、養育費の不払いに対する法整備も進み、強制執行の前段階である財産開示制度に協力しない場合、刑事罰が課される可能性もあります。養育費の不払いは、法律的にも社会的にも厳しい目を向けられるようになってきています。
正当な理由があれば養育費の減額が認められることもあり、そのための話し合いが難しい場合は「養育費減額調停」という手続きも用意されています。こうした制度をうまく活用して、不要な制裁を受けることのないようにしましょう。
6. 共同親権制度が養育費の支払い額に与える影響は?
2026年5月までに改正民法が施行され、離婚後の共同親権制度が始まる予定です。ただし、離婚後に共同親権を選択しても、子どもはどちらか一方と暮らすことになります(子どもが元夫婦それぞれの住居を行き来するのは、現実的ではない場合が多いでしょう)。そのため、子どもと一緒に暮らしている側に対して、別居している側が金銭を支払うという構図は変わりません。
また、共同親権制度の開始に伴い、養育費を取り決めずに離婚した場合の補充的な措置として法定養育費制度のほか、養育費の履行確保のための先取特権も導入されますが、通常の養育費の支払額の相場が大きく変わることはすぐにはないと思われます。
7. 養育費が高すぎて支払えないときは弁護士に相談
養育費が高すぎるのではないか、支払い額を変更できるかといった悩みは、ひとりで解決するのが難しいものです。弁護士に相談すると、自分の状況に合った養育費の金額についてアドバイスを受けられます 。また、弁護士に依頼すれば、(元)配偶者への減額交渉や、裁判所への養育費減額調停の申立てを代理で行ってもらうこともできます。
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8. 養育費が高すぎることに対するよくある質問
9. まとめ 養育費が高すぎる場合は減額交渉をしよう
養育費とは、夫婦が離婚したあと、片方が引き取った子を育てるのにかかる費用です。金額に関しては、夫婦間の合意で決めるか、「養育費算定表」を用いて決めるのが一般的です。養育費算定表は2003年に作られましたが、景気や時代の変化に合わせて、2019年に改定されました。それが「新算定表」です。
新算定表では、養育費の金額がアップしています。養育にかかる費用を公平に決めるためにあるのが養育費算定表ですが、様々な理由で支払いが厳しい人もいるでしょう。
養育費の支払いが難しい場合には、勝手に支払いをやめたりせず、(元)配偶者や弁護士に相談 しましょう。相場以上に支払っていたり、お互いの生活状況に変化があったりした場合には、減額が認められる可能性があります。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)