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国際離婚を弁護士に相談するメリット 選び方から費用まで解説

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国際離婚は手続きが複雑になるため、弁護士への相談がお勧めです(c)Getty Images
国際離婚をする場合は、どちらの国の法に基づいて離婚するのか、離婚調停や離婚訴訟をどちらの国の裁判所で行うかといった問題が表面化し、日本人同士の離婚に比べて解決が困難になりがちです。国際離婚をする際に直面する問題や弁護士に解決を依頼するメリット、国際事案に強い弁護士の選び方などについて、国際法律事務所の弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 国際結婚した夫婦が離婚する際に大変なこと
  • 1-1. 準拠法
  • 1-2. 国際裁判管轄
  • 1-3. 双方の国において離婚手続きが必要
  • 2. 国際離婚を弁護士に相談するメリット
  • 2-1. 準拠法、国際裁判管轄を正確に把握できる
  • 2-2. 複雑な手続きを一任できる
  • 2-3. 離婚条件を適切に取り決められる
  • 3. 国際離婚に詳しい弁護士の選び方と着眼点
  • 3-1. 対応言語
  • 3-2. 現地法弁護士との提携や連携が可能か
  • 3-3. 国際離婚事案の実績が豊富か
  • 4. 国際事案を依頼する弁護士の探し方
  • 5. 国際離婚問題の解決事例
  • 6. 国際離婚事案の弁護士費用の相場
  • 6-1. 相談料|目安は30分につき5000円〜1万円
  • 6-2. 着手金|30万円〜60万円が相場
  • 6-3. 成功報酬|相場は30万円〜60万円
  • 6-4. 日当
  • 6-5. 実費
  • 7. 国際離婚事案を弁護士に依頼したときの費用事例
  • 7-1. 弁護士に離婚調停や調停に代わる審判取得を依頼した場合
  • 7-2. 東京の弁護士に大阪家庭裁判所での離婚調停→訴訟を依頼した場合
  • 8. 国際離婚に関してよくある質問
  • 9. まとめ 国際離婚は、国際家事を専門とする弁護士に相談を

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1. 国際結婚した夫婦が離婚する際に大変なこと

文化や国籍の異なるカップルが国際結婚をする際、弁護士に相談するケースはほとんどありません。

ただし、国際離婚の場合は、国際事案に強い弁護士への相談が不可欠になります。それは婚姻中に積み上げられた数々の事実上、法律上の関係を処理する必要が生じるためです。婚姻に向けては互いの文化や制度の違いをカバーし合う協力関係が当事者同士の間に存在するのに対し、離婚では協力関係が期待できないのみならず、逆に外国人配偶者によっては日本人配偶者に不利な自国の法律や制度を利用して自己に有利な離婚を実現しようとする可能性も あります。

さらに、使われる法律や手続きが日本と異なったり複雑になったりすることがありますし、子どもの監護や夫婦の財産が国をまたぎますので、日本での日本人同士の離婚に比べて問題の深刻さ、解決の困難さが格段に増す のが実情です。実際、国際離婚では以下に挙げるような問題が介在します。

  • 準拠法

  • 国際裁判管轄

  • 双方の国において離婚手続きが必要

1-1. 準拠法

準拠法とは、離婚やそれに伴う親権の決定、養育費や財産分与の問題を処理するのに用いられる法です。国際カップルであっても、日本で生活していれば日本の法律で離婚できる、というわけにはいきません。

準拠法のルールは複雑ですが、離婚については「法の適用に関する通則法(通則法)」27条に準拠法の規定があり、夫婦の一方が日本に住む日本人の場合は、日本の法律に従って離婚ができます。もっとも、これはあくまでも日本で離婚をする場合の話であり、外国人配偶者が自国に戻って自国のルールで離婚を求めてくる場合もあり得ます。そのため、配偶者の国や地域の法律も確認しておく必要 があります。

親権については、子どもの国籍が親と同じであれば、子どもの国籍のある国の法律が準拠法になります(通則法32条)。財産分与については離婚の準拠法が使われますが、養育費については別の法律が適用され、子どもが暮らしている国の法律が準拠法となります。

1-2. 国際裁判管轄

国際裁判管轄とは、簡単に言うと、離婚調停や離婚訴訟などを日本の裁判所で行えるか、という問題です。日本の裁判所が国際裁判管轄を有するかどうかは、人事訴訟法3条の2や、家事事件手続法3条の2から15に規定がありますが、その規定はかなり複雑です。

大原則として、配偶者が日本国内に住んでいれば日本の裁判所を使えます 。ただし、これに当てはまらなくても日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる場合があるため、あきらめずに国際離婚の弁護士に相談 しましょう。

なお、日本に国際裁判管轄が認められても、配偶者の国や地域でも同時に国際裁判管轄が認められる可能性があります 。そのため、配偶者の国や地域の法律も確認しておく必要があります。

1-3. 双方の国において離婚手続きが必要

婚姻届を配偶者の国と日本の双方で届け出ている場合は、日本で離婚届を提出して離婚が成立しても、相手方の国にその効果は自動的には及ばず、別途離婚の手続きや届出が必要です。

2. 国際離婚を弁護士に相談するメリット

国際離婚は、法律が複雑で手続きも増えます。国をまたぐため、離婚条件も慎重を要します。そのため、日本人同士の離婚に比して、弁護士を雇うメリットがさらに大きい と言えます。

弁護士を雇うメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

  • 準拠法、国際裁判管轄を正確に把握できる

  • 複雑な手続きを一任できる

  • 離婚条件を適切に取り決められる

2-1. 準拠法、国際裁判管轄を正確に把握できる

準拠法と国際裁判管轄については、日本と外国人配偶者の国、地域の法やルールへの正しい理解がスタート地点となります。日本のルールも複雑ですが、弁護士であればその知識を前提とし、さらに外国人配偶者側の国の法律やルールと比較対照しながら取るべき手段を選択できます。

2-2. 複雑な手続きを一任できる

離婚が成立するまでには外国人配偶者との協議や交渉、訴訟の場合は主張書面の作成や立証活動などがあり、成立後は両国での手続きを要するなど、国際離婚は複雑かつ煩雑な対応が必要 です。そもそも配偶者との関係が悪化した状況にあるだけで相当な精神的ストレスが生じるため、専門家である弁護士に協議や交渉、法律手続を一任できるのは非常に大きなメリット です。

なお、筆者が代表弁護士を務める国際法律事務所の扱った事案では、配偶者との交渉だけでなく、配偶者が外国で雇った弁護士との交渉とやりとりが生じたケースもあり、それらへの対応も行ってきました。

2-3. 離婚条件を適切に取り決められる

離婚にあたっては、財産分与や親権、面会交流、養育費など、さまざまな取り決めが伴います。特に国際離婚の場合、弁護士に相談すれば、取り決めの実現のしやすさや継続のしやすさなど、法律のルールを踏まえつつ、実務経験をもとに、多角的視点からバランスのよい条件になるようアドバイス してもらえます。

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3. 国際離婚に詳しい弁護士の選び方と着眼点

国際離婚を依頼する弁護士を選ぶ際に着眼すべきポイントとしては、以下が挙げられます。

3-1. 対応言語

弁護士を選ぶ際には、対応言語を確認しましょう。日本人が国際結婚する相手の国籍で多いのは、中国、韓国、フィリピン、アメリカなどです。配偶者が中国籍、韓国籍の場合は、日本にも中国語、韓国語を使える弁護士がいますので、そうした弁護士に依頼するのも一つの方法です。

他方で、国際家事を専門にする弁護士の多数が対応しているのは、国際言語である英語です。そして、英語ができる弁護士であれば、ほとんどの外国人配偶者との離婚について支障なく対応できる と考えて問題ありません。

なぜなら、英語を母語としない配偶者であっても、英語でコミュニケーションが可能な割合は高く、仮に英語ができなくとも、その配偶者が母国で雇う国際家事の弁護士はほぼ例外なく英語ができるからです。そのため、交渉その他のやりとりは英語で問題なくできます。

3-2. 現地法弁護士との提携や連携が可能か

日本の裁判所を使って離婚手続きをする限りは、外国人配偶者も日本の国際家事を専門とする弁護士を雇うはずであり、必ずしも配偶者の国の弁護士が関わるわけではありません。ただし、国際離婚のケースでは、それまで日本に生活していた外国人配偶者が、婚姻関係の悪化とともに出身国に戻ってしまい、現地で離婚手続きを開始したり、出身国に財産を移したりする事態が起こり得ます。

そのような場合は、どうしてもその国の弁護士に相談したり、その国の弁護士を雇ったりする必要が出てきます。そのときにゼロから現地の弁護士を探すのは大変ですし、そもそも信頼がおける弁護士かもわかりません。

仮に信頼できる弁護士が見つかったとしても、現地の言葉で法律用語を交えたやりとりをするのは、日常会話のレベルをはるかに超え、思いのほか困難を伴います。

そのため、仮に日本での離婚手続きを検討している場合でも、海外での手続きが発生する可能性を視野に入れ、実際に手続きが発生した場合に現地の弁護士を紹介してもらえるか、現地の弁護士との連携や中継をしてもらえるか 、なども弁護士を探すうえでの着眼点となります。

3-3. 国際離婚事案の実績が豊富か

経験が豊富かどうかは、国際離婚に限らず、弁護士を探す際のポイントの一つです。経験や実績については、検索エンジンに「国際離婚」などのワードを入れてインターネットで検索すると、弁護士ポータルサイトや弁護士事務所のサイトが出てきます。手順としてお勧めなのは、いくつかの弁護士ポータルサイトで、「国際離婚」のほか、追加の希望条件で範囲を狭めて検索 し、そこに上がってきた弁護士について、それぞれの事務所のサイトをチェックする方法です。

それぞれのポータルサイトには違いがあり、一つのサイトが国際家事の弁護士を網羅しているわけではありませんので、複数のサイトを確認するとよいでしょう。

また、ポータルサイトでヒットした弁護士がすべて国際家事の専門性が高いとは限りません。そこで次のステップとして、その弁護士の事務所の公式ホームページで実績や専門性を確認 するのがよいでしょう。

4. 国際事案を依頼する弁護士の探し方

国際事案を依頼する弁護士の探し方としては、口コミ、紹介、インターネット検索、ポータルサイト内での検索があります。どれが一番よい、というものではなく、自分に合った探し方で構いません。口コミや紹介は、インターネットでゼロから探すよりも安心感はあるため、参考にするのはお勧めです。とはいえ、参考にする配偶者の出身国が違ったり、夫婦の事情が異なったりすれば当然ながら解決策も異なります。誰かの体験談がそのまま自分にも当てはまるとは限らない ので注意が必要です。

なお、地方在住で、地元には国際家事を専門とする弁護士がいない、という悩みもよく耳にします。

しかし、コロナ禍をきっかけに裁判所の手続きもオンライン化がかなり進み、すべてではありませんが、オンライン調停やオンラインの訴訟期日が実施されるようになりました 。そのため、遠方に事務所を構える弁護士に高額の日当を支払い、毎回依頼者の居住地の裁判所に出廷してもらわなくても手続きが行える道が開けています。

ですから最初からあきらめず、離れた地域に事務所を構える弁護士への問い合わせも選択肢に入れるとよい でしょう。ちなみに筆者の事務所は東京にありますが、北海道から鹿児島まで、全国各地の国際離婚調停の案件を扱っています。

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5. 国際離婚問題の解決事例

筆者の事務所では、これまでさまざまな国の国際家事事案を解決してきました。外国人配偶者の国籍は米国、カナダ、イギリス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、ロシア、ブルガリア、中国、韓国、台湾、タイ、フィリピン、トルコ、パキスタンなどです。このほとんどが、日本の裁判所を使った離婚案件です。

個別事情により協議離婚の一方配偶者の代理人として離婚合意書をつくるケースもありますが、多くは日本の裁判所の調停や訴訟手続を経由した事案です。争いの有無にかかわらず調停を用いる場合が多いのは、この方法が手間やコスト、法律効果の点で総合的に見て優れているから です。

これまで解決した国際離婚の事案は、外国人配偶者が日本にいるパターン、海外にいるパターン、その外国人配偶者に日本人の弁護士がついているパターンや現地の代理人がついているパターン、海外にいる外国人配偶者の居所が不明なパターンなど、実にさまざまです。

逆に、日本に居住する外国人配偶者と日本人配偶者の離婚手続きで、外国人配偶者側の代理人を務めるケースも多々あります。外国人側が妻の場合で、収入に加え在留資格がハンディになりつつも単独親権はほしい、という難題を乗り越えたこともあります。当事務所ではサポートを必要とする人であれば国籍は問わず、離婚問題のほか、国境を越えた子どもの不法な連れ去り、いわゆるハーグ条約事案にも対応しています。

6. 国際離婚事案の弁護士費用の相場

国際離婚事案でかかる弁護士関連費用は、相談料、着手金、成功報酬、日当、実費などです。事務所にもよりますが、国際離婚事案の弁護士費用は、国内の離婚事案よりも2割程度高額に設定されている場合が多い ように思います。

その主な理由は、専門性の高さに加え、裁判所に提出する資料や証拠が外国語のものを含むため日本語に翻訳する手間がかかる点や、海外在住の依頼者の場合は弁護士費用を海外から送金して弁護士の口座に入金する際に高額の手数料が差し引かれる点などが挙げられます。

おおよその弁護士費用の総額については、弁護士に依頼する前に尋ねるのがお勧め です。なお、経済的な理由で弁護士の依頼を躊躇(ちゅうちょ)されている場合は、無料での法律相談や弁護士費用の立て替え(収入や資産が一定基準以下の人が対象)に対応できる法テラス(日本司法支援センター)の利用を検討してください。

6-1. 相談料|目安は30分につき5000円〜1万円

法律相談料は通常、30分につき5000円から1万円(以下、金額は税抜き)です。国際離婚の場合は、初回相談には1時間程度を要するのが通常 です。

筆者の事務所では、国際事案の初回法律相談では1時間の枠をとり、料金は1万円を頂いています。料金をきちんと頂く代わりに、任意ではありますが事前に資料などをお送りいただき、それらに目を通したうえで相談を受けています。これにより法律相談の時間を有効かつ充実したものにできます。

6-2. 着手金|30万円〜60万円が相場

国際離婚事案の着手金は、30万円から60万円が相場です。これだけ幅があるのは、案件ごとに個性があり、親権、養育費、財産分与、慰謝料などの組み合わせが生じるためです。裁判所を利用する場合は調停から始まり、まとまらない場合は訴訟に移行するため、それぞれで着手金が発生します。訴訟になった場合の追加着手金は、調停の着手金の半額程度です。

国境を越えた子どもの返還問題を扱うハーグ条約事案は、その受任中、弁護士は案件にかかりきりになるため着手金は高額 になり、40万円から50万円が相場となります。

6-3. 成功報酬|相場は30万円〜60万円

成功報酬も着手金と同様、基本報酬の相場は30万円から60万円です。財産分与や慰謝料などの金銭的な支払いがある場合は、最終決定金額と当初、相手方配偶者が請求した金額の差である獲得金額の5%から15%がこれに上乗せされるのが一般的です。獲得金額が大きい場合は5%、小さくなるにつれてパーセンテージが上がって15%、という仕組みです。養育費については、払う側の場合は相手に請求された月額から減額された分の10%をベースとし、その2年分が相場となります。

また、ハーグ条約事案の成功報酬は、80万円から100万円が相場です。

6-4. 日当

日当とは、弁護士が事案のために事務所を離れてどこかに出向いた場合、着手金や成功報酬とは別に、時間単位あるいは半日、1日単位で発生する費用です。典型的なのは、裁判所の期日への出廷です。事務所の地域を管轄する裁判所への出廷は日当が発生しないのが通常ですが、県外の裁判所への出廷や調査で遠方に赴く際に発生します。

6-5. 実費

実費は、郵送料、裁判所の手続のために納める印紙代、交通費、謄本や登記を取得する費用に使われるもので、先に1万円から数万円を預け、残額があれば事案終了時に精算して返還されます。

7. 国際離婚事案を弁護士に依頼したときの費用事例

「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」「日当」の相場を参考に、国際離婚を弁護士に依頼した時の具体的な費用を計算してみます。

7-1. 弁護士に離婚調停や調停に代わる審判取得を依頼した場合

離婚合意があり、金銭の支払いが発生しないシンプルなケースの弁護士費用の総額(いずれも税抜き)は以下になります。

  • 相談料:1万円

  • 着手金:20万円

  • 報酬金:20万円

  • 実費:4000円

これらの合計で41万4000円となります。

7-2. 東京の弁護士に大阪家庭裁判所での離婚調停→訴訟を依頼した場合

財産分与300万円、慰謝料100万円、養育費月額5万円の支払いが発生するケースの弁護士費用の総額は以下のように計算されます。

  • 相談料:1万円

  • 着手金:調停30万円

  • 訴訟移行時:15万円

  • 報酬金:離婚+財産分与+慰謝料=78万円

  • 養育費分:12万円

  • 日当:大阪家庭裁判所への出廷1回=7万円(交通費込み)

  • 実費:5万円

これらの合計で148万円となります。

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8. 国際離婚に関してよくある質問

Q. 国際離婚をすると、子どもはどうなる?
子どもの親権は、準拠法に従い決定されます。親権の準拠法については、通則法32条が、子どもの国籍が両親のどちらかの国籍である場合はその国の法律が使われ、どちらの国籍でもない場合は子どもが住んでいる国の法を用いる旨を定めています。子どもが両親の国の二重国籍である場合、父母のいずれかが日本国籍であれば日本法が準拠法となります。 養育費については、扶養義務の準拠法に関する法律が準拠法について規定しており、子どもが生活している国や場所の法律に基づいて決定されます。したがって、離婚時に子どもが日本で生活をしている場合は、その国籍にかかわらず、日本の法律に基づいて養育費の額が決定されます。
Q. 国際離婚で親権を得られなかった側が、子どもを自国に連れ去ったらどうなる?
両親の国がハーグ条約の加盟国であった場合、親権を得たほうの親は、連れ去り先の国の裁判所に対して子どもの返還の申立てができ、申立てがなされた場合は、親権者が子どもに虐待をしていたなどの例外的な場合を除き、子どもを元の国に戻すよう決定が出されます。 ハーグ条約とは、国境を越えて子どもが連れ去られた際、迅速な返還の実現をめざすために定められた条約で、双方の国の機関が関与し、子どもをもともと生活していた環境に戻すための制度です。日本は2014年4月から条約の加盟国となっています。 ただし、親権を得られなかった側が子どもを日本に連れ帰り、親権を持つ側が日本の裁判所に子どもの返還申立てをした場合、日本の裁判所は多くの場合、調停も追加し、返還決定を避けて両親の話い合いによる解決を促します。子どもがどのような環境で生活すべきかは、本来は当事者同士が話し合い、双方合意のうえで決めるのが望ましいと考えられるためです。
Q. パートナーが外国にいても離婚はできる?
配偶者が外国にいても離婚はできます。その方法はいろいろあり、事情に応じてベストな方法を選ぶのがよいでしょう。 当事務所が扱った事案の例としては、外国にいる配偶者に交渉して日本の裁判所での調停を用いて離婚の審判を出してもらい、両国で離婚が成立した事案があります。また、韓国に帰国して音信不通の外国人夫に対する公示送達により、離婚の効力が日本のみとなる離婚判決を得た事案、フィリピンに戻って離婚交渉に応じない妻に対して離婚訴訟を提起した事案、米国に戻ってしまった夫と協議のうえ、米国で出廷不要の簡易な裁判所の離婚手続きで離婚した事案なども扱いました。
Q. 外国での離婚判決は、日本でも効力がある?
外国で発せられた離婚判決は、民事訴訟法118条に記載された以下の4つの条件を満たしている場合、日本でも有効なものとして扱われます。 ・法令または条約により外国裁判所の裁判権が認められること ・敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼び出し、もしくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く)を受けたこと、またはこれを受けなかったが応訴したこと ・判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序または善良の風俗に反しないこと ・相互の保証があること 外国判決にかかわる事件で当事務所が扱った事例を紹介しましょう。 日本人妻が日本で離婚訴訟を提起したのとほぼ同時に、外国人夫が外国で離婚訴訟を提起した事案です。その国では共同親権制度が採用されており、かつ、子どもとともに日本で生活している現状からすると、日本人妻にとって親権と監護権で不利になる判決が予想されました。そこで、日本の訴訟では和解に持ち込む方針に変えると同時に、その国の弁護士と連携し、外国で提起された訴訟の取り下げに持ち込みました。 外国判決は、後日訴訟で内容や効力を争う方法もありますが、いったん出されると最終決着までに時間を要し、支障が大きくなるケースも多々あります。そのため、外国で提起された訴訟に対しては、応訴するかどうか、その場合はどのような方針を取るかなど、非常に高度な判断が迫られます。
Q. 国際離婚をしたパートナーと再婚できる?
離婚した相手と再婚ができるかどうかについては、夫婦それぞれの本国法が準拠法になります(通則法24条1項)。日本には同じ相手との再婚を禁じる法律はありませんので、日本人であれば、離婚した相手である外国人と再婚できます。相手の外国人については、その国の法律がこれを禁じているかどうかによります。

9. まとめ 国際離婚は、国際家事を専門とする弁護士に相談を

国際離婚をする場合、相手からの協力が期待できないなかで、婚姻中に積み上げられたさまざまな事実上、法律上の関係を処理する必要があります。また、日本以外の国の法律や手続きが介在し、子どもの監護や国をまたいでの財産分与、養育費などの問題も解決しなければならないため、日本での日本人同士の離婚に比べて複雑で、多くの困難が伴う のが実情です。

さらに、外国での訴訟が日本の裁判手続きと競合したり矛盾したりする危険があり、どのような方法で離婚を実現するかを決するにあたっては日本人同士の離婚よりも専門的な知識を要する ため、国際家事を専門とする弁護士に相談すべき分野と言えるでしょう。

国際家事専門の弁護士であれば準拠法や国際裁判管轄を正確に把握できますし、外国語でのやりとりを伴う複雑な手続きを一任することができます。他方で、国際離婚事件であるからといって弁護士費用が格段に高額になるわけでもありません。近年はインターネットやポータルサイトで国際事件に強い弁護士を探すことができますし、裁判所の手続きもオンライン化が進んでいるため、以前に比べて相談や依頼がしやすい環境が整っていると言えます。

国際離婚は、費用対効果の視点からみても、国際家事を専門とする弁護士への相談をお勧め します。

(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)

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