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不貞行為(不倫)した側は「離婚したい」と思ってもできない? 認められる場合や対処法を解説

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不倫した側からの離婚には配偶者の同意が必要です(c)Getty Images
不貞行為(不倫)をした側からの離婚請求は、なかなか認められにくいです。しかし、配偶者の同意を得られれば離婚できるほか、訴訟でも不貞行為をした側からの離婚請求が認められる余地はあります。不貞行為をした側が離婚したい場合に何をすべきかなどを、弁護士が法的な観点から解説します。
目 次
  • 1. 不貞行為をした側が「離婚したい」と思ったらどうすべき?
  • 1-1. 不貞行為をした側は「有責配偶者」|離婚請求は認められにくい
  • 1-2. 配偶者が同意すれば離婚できる
  • 2. 不貞行為をした側からでも離婚を請求できるケース
  • 2-1. 配偶者も不貞行為などをしている場合
  • 2-2. 長期間にわたって別居している場合
  • 3. 不貞行為をした側の離婚請求の可否を判断する際の考慮要素
  • 3-1. 別居期間の長さ
  • 3-2. 不貞行為の態様
  • 3-3. 未成熟の子の有無
  • 3-4. 配偶者が離婚後に置かれる状況
  • 3-5. 内縁の有無や状況
  • 4. 不貞行為をした側からの離婚請求が認められた裁判例
  • 4-1. 36年間にわたる別居期間が考慮された事例
  • 4-2. 約14年間の別居や経済的支援が考慮された事例
  • 5. 不貞行為をした側が離婚したい場合にすべきこと
  • 5-1. 離婚の切り出し方を慎重に考える
  • 5-2. 離婚条件について譲歩し、協議離婚を目指す
  • 5-3. 配偶者と別居する
  • 6. 不貞行為をした側が離婚したい場合に、弁護士に相談するメリット
  • 7. 不貞行為をした側からの離婚請求に関するQ&A
  • 8. まとめ 不貞行為した側からの離婚はハードルが高いので弁護士に相談

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1. 不貞行為をした側が「離婚したい」と思ったらどうすべき?

不貞行為をした側は「有責配偶者」に当たるため、訴訟での離婚請求は認められにくいです。どうしても離婚したい場合は、配偶者から同意を得ましょう。

1-1. 不貞行為をした側は「有責配偶者」|離婚請求は認められにくい

「有責配偶者」とは、婚姻関係が破綻したことについて、主として責任がある者 をいいます。不貞行為は法定離婚事由に当たるため(民法770条1項1号)、不貞行為をした側は有責配偶者に当たります。

有責配偶者からの離婚請求は、訴訟では認められにくい傾向にあります。自分が婚姻関係を破綻させておきながらその状況を利用することは、信義誠実の原則に反して不当である と考えられるためです。

1-2. 配偶者が同意すれば離婚できる

自分が有責配偶者であっても、配偶者が同意すれば、協議離婚または調停離婚をすることができます。不貞行為をしてしまった後、離婚したいと考えている場合には、離婚を受け入れてもらえるように配偶者と話し合いましょう。

2. 不貞行為をした側からでも離婚を請求できるケース

不貞行為をした側からの離婚請求は認められにくいですが、絶対に認められないわけではありません。たとえば以下のような場合には、不貞行為をした側の離婚請求が認められる可能性があります。

2-1. 配偶者も不貞行為などをしている場合

自分だけでなく配偶者も不貞行為をしている場合は、お互いに離婚の原因を作ったことになるため、どちらか一方が有責配偶者であると判断される可能性は低くなります。この場合、配偶者の不貞行為を理由に離婚を請求できます

不貞行為以外にも、配偶者がDV、モラハラ、無断別居などをしたことが婚姻関係破綻の大きな原因になった場合には、自分が不貞行為をしていても有責配偶者として取り扱われず、離婚請求が認められる可能性 があります。

2-2. 長期間にわたって別居している場合

不貞行為によって有責配偶者として取り扱われる場合でも、夫婦生活の実体を欠く状態になっていて、回復の見込みが全くないと判断されるときは、離婚請求が認められる余地があります。

後で紹介する裁判例のように、別居期間が長期間に及んでいる場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性が高まります 。ただし、「○年以上であれば離婚できる」と一概に言えるわけではなく、具体的な状況に照らして離婚請求を認めてよいかどうかが判断されます。

3. 不貞行為をした側の離婚請求の可否を判断する際の考慮要素

不貞行為をした側の離婚請求を認めるかどうかを裁判所が判断する際には、以下の要素などを考慮します。

  • 別居期間の長さ

  • 不貞行為の態様

  • 未成熟の子の有無

  • 配偶者が離婚後に置かれる状況

  • 内縁の有無や状況

上記で挙げたそれぞれの要素について説明します。

3-1. 別居期間の長さ

別居期間が長ければ長いほど、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性が高まります。5年から10年程度の別居では、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性はそれほど高くありません。これに対して、10年を大幅に超えて別居が続いている場合は、離婚請求が認められる可能性が高い と考えられます。

3-2. 不貞行為の態様

有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは、「信義誠実の原則に照らして許されるか 」どうかという観点から判断されます。

「信義誠実の原則」とは、お互いに相手方の信頼を裏切らないように、誠実に行動すべきという考えの法原則のことです。

そのため、不貞行為がどのような形で行われたかについても、離婚請求の可否を判断するに当たって重要な考慮要素です。回数、頻度、期間などを含めて、不貞行為が配偶者に対する裏切りとしてどの程度悪質かが総合的に考慮 されます。

3-3. 未成熟の子の有無

夫婦間に未成熟の子がいる場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性はかなり低くなります。自ら婚姻関係を破綻させておきながら、子どもを放り出して離婚しようとすることは、信義誠実の原則に反すると判断されることが多いためです。

反対に、夫婦間に未成熟の子がいない場合は、離婚に向けた障害が少ないため、有責配偶者からの離婚請求でも認められる可能性が高くなります

3-4. 配偶者が離婚後に置かれる状況

離婚によって配偶者が経済的に厳しい状態に置かれる場合は、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性は低いでしょう。扶養を必要とする配偶者を、婚姻関係を破綻させた側の一存で放り出すことは、信義誠実の原則に反すると考えられる ためです。

また、配偶者が介護を必要としている場合などにも、同様の理由で有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性は低いと思われます。これに対して、配偶者が経済的に十分自立しており、離婚しても問題なく一人で生きていける状態にある場合は、有責配偶者からの離婚請求が認められる余地があります。

3-5. 内縁の有無や状況

夫婦のいずれかが、別居中に配偶者以外の者と内縁関係を形成し、内縁の家庭が安定している場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性が高くなります 。内縁関係の定着により、法律上の婚姻関係を回復できる可能性がきわめて低くなったと考えられるためです。

内縁関係とは「男女が結婚の意思を持ち、共同生活をしている状態」のことです。内縁が長期間に及んでいる場合や、内縁パートナーとの間で子どもを設けている場合などには、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる可能性が高いと考えられます。

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4. 不貞行為をした側からの離婚請求が認められた裁判例

不貞行為をした側からの離婚請求が認められた裁判例を2つ紹介します。

4-1. 36年間にわたる別居期間が考慮された事例

最高裁昭和62年9月2日判決では、不貞行為をした夫が妻に対して離婚を請求した事案が問題となりました。

夫婦は36年間にわたって別居しており、両者の年齢はすでに70歳に達していました。また、夫婦間に未成熟の子はいませんでした。最高裁は、上記の各状況を指摘して、このような状況では原則として離婚請求を認めるべきであると判示しました。

その上で、妻が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反する特段の事情が存在するか否かについて審理を尽くさせるため、原判決を破棄して事件を原審に差し戻しました。

4-2. 約14年間の別居や経済的支援が考慮された事例

最高裁平成6年2月8日判決でも、不貞行為をした夫が妻に対して離婚を請求した事案が問題となりました。

夫婦の別居は約14年間続いており、夫婦の年齢はいずれも50代後半に達していました。別居以前の同居期間は約15年間でした。最高裁は、双方の年齢や同居期間を考慮すると、別居が相当の長期間に及んでいることを指摘しました。

さらに、最高裁は以下のような事情を指摘して、離婚請求を認めた原審判決を支持しました。

・夫は内縁パートナーとの間で新たな家庭を形成していること
・夫婦間の子ども4人のうち3人が成人して独立していること
・もう1人の子どももまもなく高校卒業であり、夫もその養育に無関心だったものではないこと
・離婚に伴う夫の妻に対する経済的給付も、実現を期待できること

このように別居期間が長く、離婚による不貞行為をされた側の生活への影響が少ない場合には、離婚が認められやすくなります

5. 不貞行為をした側が離婚したい場合にすべきこと

不貞行為をした側が離婚したい場合には、慎重な対応が求められます。以下の各点を念頭に置きつつ、配偶者の反応を見ながら離婚成立に向けた対応方針を検討しましょう。

5-1. 離婚の切り出し方を慎重に考える

不貞行為の事実を知った配偶者は、強い怒りや悲しみを感じていることでしょう。その状況で離婚を切り出しても、配偶者の感情を逆なでする結果となり、離婚の話し合いが難航してしまうおそれがあります。

配偶者に対しては、まず不貞行為をしたことについて謝罪を尽くし、今後の夫婦関係について話し合う機会を設けましょう 。離婚ありきで話を進めるのではなく、配偶者の意見に対して丁寧に耳を傾けた上で、離婚を切り出すタイミングを伺いましょう。

5-2. 離婚条件について譲歩し、協議離婚を目指す

不貞行為をした側からの離婚請求は、長期間の別居などの事情がない限り、基本的には認められないと考えるべきです。どうしても離婚したい場合には、配偶者との合意に基づく離婚を目指しましょう。

配偶者から合意を得るには、離婚条件について大幅に譲歩することも検討 しなければなりません。財産分与や慰謝料を多めに支払う、子どもの親権を諦めるなど、配偶者が何を重視しているかも踏まえた上で条件面での譲歩を検討しましょう。

5-3. 配偶者と別居する

配偶者が離婚について頑なに同意しない場合は、ひとまず別居をして距離を置くことが考えられます。別居している間に、配偶者の気持ちに変化が生じ、離婚に同意してもらえるかもしれません。また、別居が長期間に及べば、不貞行為をした側からの離婚請求でも認められやすくなります

配偶者と別居する際には、DVを受けているなど特段の事情がない限り、あらかじめ配偶者の承諾を得るようにしましょう。無断で別居すると「悪意の遺棄」に該当し、離婚請求がさらに認められにくくなるほか、多額の慰謝料を請求されるおそれがあるので注意が必要です。

6. 不貞行為をした側が離婚したい場合に、弁護士に相談するメリット

不貞行為をした側からの離婚請求は認められにくいので、離婚を実現するためにはさまざまな工夫が必要です。弁護士に相談して、離婚手続きの進め方についてアドバイスを受けましょう。

弁護士に相談すれば、離婚できる見込みはどの程度あるのか、離婚するためには何をすればよいのかなどについて、状況に応じたアドバイスを受けられます 。また、離婚協議や調停・訴訟の対応を弁護士に一任すれば、精神的な負担も大幅に軽減されます。

不貞行為をしてしまった後に、どうしても離婚したいと考えている方は、お早めに弁護士へご相談ください。

7. 不貞行為をした側からの離婚請求に関するQ&A

Q. 不貞行為をした側は、親権争いで不利になりますか?
裁判所が子どもの親権者を決定する際には、子どもを過ごしてきた時間の長さなど、養育の実績を最も重視する傾向にあります。そのため、不貞行為をしたからといって、必ずしも親権を得られないわけではありません。ただし、不貞行為をしたことに対して子どもが不信感を持っている場合には、子どもの意思が考慮された結果、親権争いにおいて不利に働く可能性があります。
Q. 不貞行為をした側は、養育費を多めに支払う必要がありますか?
裁判所が養育費の金額を定める際には、不貞行為の事実を考慮することは基本的にありません。 ただし、配偶者に離婚への同意を求める際に、養育費の増額を求められることがあります。増額に応じる義務はないものの、離婚を早期に成立させたい場合は、養育費の増額に応じることも検討すべきでしょう。
Q. 不貞行為をした側は、子どもとの面会交流を制限されますか?
配偶者との協議によって面会交流の方法を決める際には、不貞行為に対する嫌悪感などが影響して、面会交流の制限を求められるかもしれません。 また、裁判所が面会交流の方法を決定する際にも、不貞行為をしたことに対して子どもが不信感を持っている場合には、子どもの意思が考慮された結果、面会交流を制限されることがあります。
Q. 不貞行為をした側が支払うべき慰謝料の額はどのくらいですか?
不貞行為の慰謝料は、離婚しない場合で50万円から200万円程度、離婚する場合で150万円から300万円程度が標準的です。不貞行為の態様が悪質である場合、婚姻期間が長い場合、未成熟の子がいる場合などには、慰謝料が高額となる傾向にあります。
Q. 不貞行為をした配偶者への復讐のため、ずっと離婚せずにいても問題ないですか?
離婚に同意するかどうかは自由なので、動機の如何にかかわらず、ずっと離婚せずにいても問題ありません。ただし、婚姻関係が破綻して回復の見込みがない状態になった場合は、離婚訴訟を通じて強制的に離婚が成立することもあります。

8. まとめ 不貞行為した側からの離婚はハードルが高いので弁護士に相談

不貞行為をした側が離婚したい場合には、配偶者の同意を得て協議離婚や調停離婚を目指しましょう 。別居が長期間に及んでいる場合などには裁判離婚が認められることもありますが、かなりハードルが高いといわざるを得ません。どうしても離婚したい場合には、離婚手続きの進め方などについて弁護士のアドバイスを求めましょう。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

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