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1. 年金分割のための情報通知書とは
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2. 年金分割のための情報通知書が必要なケース、不要なケース
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2-1. 合意分割の場合|年金分割のための情報通知書が必要
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2-2. 3号分割の場合|年金分割のための情報通知書は不要
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3. 年金分割のための情報通知書の見方|記載事項を解説
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3-1. 対象期間標準報酬総額
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3-2. 按分割合の範囲
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3-3. 対象期間
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4. 年金分割のための情報通知書の取得方法
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4-1. 年金分割のための情報通知書はどこでもらうのか?
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4-2. 年金分割のための情報通知書を取得するための必要書類|郵送での提出も可能
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4-3. 年金分割のための情報通知書はいつ届くのか?
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5. 年金分割のための情報提供請求書の記入事項(+記入例)
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5-1. 請求者(甲)
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5-2. 請求者(乙)または配偶者
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5-3. 婚姻期間等
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5-4. 対象期間に含めない期間
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5-5. 再請求理由
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5-6. 請求者(甲)の意思確認
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5-7. 請求者(乙)の意思確認
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5-8. 対象期間
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5-9. 請求者(甲)の婚姻期間等に係る資格記録
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5-10. 請求者(甲)の年金見込額照会
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5-11. 請求者(乙)または配偶者の婚姻期間等に係る資格記録
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5-12. 請求者(乙)の年金見込額照会
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6. 年金分割のための情報通知書の有効期限
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7. 年金分割のための情報通知書に関してよくある質問
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8. まとめ 老後への影響が大きい年金分割は、弁護士のサポートを受けて適正に
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1. 年金分割のための情報通知書とは
年金分割とは、離婚の際に結婚期間中に夫婦が収めた厚生年金の保険料を分け合い、厚生年金の受給額を夫婦で公平化する制度です。
その年金分割の際、必要になることがあるのが「年金分割のための情報通知書」です。年金分割の内容を決めるにあたって必要な情報が記載された書面 で、日本年金機構が発行します。
年金分割の割合を夫婦間の協議、または裁判手続きで決める場合は、事前に「年金分割のための情報通知書」を取得しておく必要があります。
2. 年金分割のための情報通知書が必要なケース、不要なケース
「年金分割のための情報通知書」が必要となるのは、「合意分割」という方法で年金分割を行う場合です。これに対して「3号分割」を請求する場合は必要ありません。
2-1. 合意分割の場合|年金分割のための情報通知書が必要
「合意分割」とは、夫婦間の協議、または調停、審判、訴訟といった裁判手続きにより決められた割合で厚生年金保険料を分け合う年金分割です。
協議や裁判手続きでは、厚生年金保険料の納付記録を把握したうえで、どれだけの割合で分け合うかを具体的に検討します。そのため、合意分割を請求する際には、「年金分割のための情報通知書」の取得が必要です。
なお、合意分割の按分割合は、納めた保険料が多い側が50%以上、加えて、もともと納付額が少ない側が減らない範囲で、夫婦で自由に決められます。ただし、裁判所の審判や訴訟で決める際には2分の1ずつが原則とされています。
2-2. 3号分割の場合|年金分割のための情報通知書は不要
「3号分割」とは、結婚中に配偶者の扶養に入っていたほうが、単独で請求する年金分割です。2008年4月1日以降の結婚期間中に、国民年金の第3号被保険者だった期間がある場合は、3号分割を請求できます。
3号分割の場合、年金分割の割合は自動的に2分の1ずつとなるので、分割の割合を個別に検討する必要がありません。厚生年金保険料の納付記録を把握する必要はないため、3号分割を請求する際には、「年金分割のための情報通知書」の取得は不要 です。
3. 年金分割のための情報通知書の見方|記載事項を解説
「年金分割のための情報通知書」には、年金分割に必要な情報が記載されています。年金分割によって自分が納めた額よりも年金が減る側は「第1号改定者」、増える側は「第2号改定者」と表記されています。
「年金分割のための情報通知書」の記載事項のなかで、特に重要な情報は以下の3点です。
対象期間標準報酬総額
按分割合の範囲
対象期間
それぞれの記載事項について、以下で詳しく説明します。
3-1. 対象期間標準報酬総額
「対象期間標準報酬総額」とは、年金分割の対象となる期間に納付した厚生年金保険料に対応する、標準報酬の総額です。第1号改定者と第2号改定者のそれぞれについて、対象期間標準報酬総額が記載されます。
「標準報酬」とは、厚生年金保険料の額を計算する際の基準となる報酬額 です。実際の報酬月額によって、32段階の標準報酬月額が定められています。たとえば、日本年金機構の「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)」によると、給与が月額31万円の場合、標準報酬月額は19等級で30万円です。
対象期間標準報酬総額は、年金分割の対象期間中の標準報酬月額の合計額となります。
3-2. 按分割合の範囲
「按分割合の範囲」とは、第2号改定者に割り当てることができる年金分割の割合の範囲です。
按分割合は、第2号改定者のもともとの持ち分から減らないようにし、かつ第2号改定者の持ち分が第1号改定者の持ち分を超えないように決めなければなりません。
したがって、按分割合の下限は分割前の第2号改定者の持ち分の割合となり、上限は50%となります。
3-3. 対象期間
「対象期間」とは、年金分割の対象となる期間です。対象期間は、夫婦の状況に応じて以下のとおりです。
①事実婚関係の期間はなく婚姻し、離婚した場合
原則として、離婚によって解消される婚姻の期間です。
ただし、配偶者以外の人の扶養に入って第3号被保険者であった期間や、配偶者以外の相手を扶養していた期間は、対象期間から除外されます。
②事実婚関係を解消した場合
いずれかが相手の被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間です。
③事実婚関係にあったあと、婚姻し、離婚した場合
①と②を通算した期間です。
4. 年金分割のための情報通知書の取得方法
「年金分割のための情報通知書」を取得する際の方法について解説します。
4-1. 年金分割のための情報通知書はどこでもらうのか?
「年金分割のための情報通知書」は、住所地の年金事務所または日本年金機構の委託を受けて全国社会保険労務士会連合会が運営する「街角の年金相談センター」に情報提供請求をして交付を受けます。
4-2. 年金分割のための情報通知書を取得するための必要書類|郵送での提出も可能
「年金分割のための情報通知書」の交付を請求する際には、以下の書類を提出する必要があります。窓口での提出のほか、郵送による提出も可能です。
【常に必要な書類】
・年金分割のための情報提供請求書
・戸籍謄本またはそれぞれの戸籍抄本。ただし、請求日前6カ月以内に交付され、婚姻日と離婚日が確認できるものに限る(離婚前に請求する場合は、離婚日の記載は不要)
【事実婚関係にある期間を含む場合に必要な書類】
・住民票など、事実婚関係にある期間を明らかにできる書類
【請求書に個人番号を記入する場合に必要な書類】
・マイナンバーカードなど、個人番号を明らかにできる書類
【請求書に基礎年金番号を記入する場合に必要な書類】
・基礎年金番号通知書や年金手帳など、基礎年金番号を明らかにできる書類
4-3. 年金分割のための情報通知書はいつ届くのか?
「年金分割のための情報通知書」は、年金事務所または街角の年金相談センターに情報提供請求をしてから、1週間~1カ月程度 で届きます。
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5. 年金分割のための情報提供請求書の記入事項(+記入例)
年金分割のための情報通知書を入手する際に必要な「年金分割のための情報提供請求書」の記入事項は、次のとおりです。なお、日本年金機構による「年金分割のための情報提供請求書」はこちらからダウンロードできます。
5-1. 請求者(甲)
「請求者(甲)」欄には、相手と共同で請求する場合はいずれか一方、単独で請求する場合は自分に関する以下の事項を記入します。
個人番号(または基礎年金番号)
生年月日
氏名(フリガナはカタカナで記入する)
郵便番号と住所
過去に加入していた年金制度の年金手帳の記号番号で基礎年金番号と異なる記号番号があるときは、その番号
5-2. 請求者(乙)または配偶者
「請求者(乙)または配偶者」欄には、共同で請求する場合は「請求者(甲)」欄に記入しなかった側、単独で請求する場合は配偶者に関する情報を記入します。記入すべき項目は、「請求者(甲)」欄と同じです。
5-3. 婚姻期間等
「婚姻期間等」欄には、婚姻や事実婚の期間などに関する情報を記入します。記入すべき欄は以下のとおりです。
法律婚期間のみについて情報提供を請求する場合→1、2欄
事実婚期間のみについて情報提供を請求する場合→1、3、5欄
事実婚期間と法律婚期間の両方について情報提供を請求する場合→1、4、5欄
5欄には、事実婚期間の間に、いずれか一方が相手の被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間を記入します。わからない場合は、年金事務所の窓口で記録の確認を依頼しましょう。
5-4. 対象期間に含めない期間
「対象期間に含めない期間」欄には、年金分割の対象期間から除外される期間に関する情報を記入します。
内縁関係などにより、配偶者以外の相手と扶養関係にあった時期がある場合は、その事実と相手の情報を記入する必要があります。
5-5. 再請求理由
「再請求理由」欄は、過去に年金分割のための情報提供を請求したことがある場合のみ記入します。情報提供を受けた日の翌日から3カ月以内の再請求である場合は、再請求の理由を明記しなければなりません。
年金分割のための情報提供請求が初めてであれば、「再請求理由」欄の記入は不要です。
5-6. 請求者(甲)の意思確認
「請求者(甲)の意思確認」欄には、「請求者(甲)」欄に記入した人が、「年金分割のための情報通知書」をどのように受け取りたいかを記入します。
年金事務所窓口での交付か、郵送による交付のいずれかを選択可能です。郵送を希望する場合は、郵送先の郵便番号と住所も記入してください。「請求者(甲)」欄に記入した住所と同じ場合は、「㋒住所と同じ」と記入します。
5-7. 請求者(乙)の意思確認
「請求者(乙)の意思確認」欄には、「請求者(乙)」欄に記入した人が、「年金分割のための情報通知書」をどのように受け取りたいかを記入します。記入の仕方は、「請求者(甲)の意思確認」欄と同じです。
5-8. 対象期間
「対象期間」欄は年金事務所などの職員が記入するため、請求者は記入不要です。
5-9. 請求者(甲)の婚姻期間等に係る資格記録
「請求者(甲)の婚姻期間等に係る資格記録」欄には、「請求者(甲)」欄に記入した人の、過去の年金加入記録に関する情報(勤務先の名称、所在地、勤務期間、年金制度の種類など)を記入します。
記入する際の注意事項は、以下のとおりです。
国民年金に加入していた場合は、「事業所の名称」欄に「国民年金」と記入
「事業所の名称」欄には、社名だけでなく支店や工場などの名称も記入
事業所の所在地などが詳しくわからないときでも、都市区名までは記入
勤務期間や国民年金の加入期間がわからないときでも、年月まで、または「1998年の夏まで」などとできる限り具体的に記入
現在も厚生年金保険の被保険者である場合は、「勤務期間」欄の「まで」は二重線で消し、「~から継続中」と記載
5-10. 請求者(甲)の年金見込額照会
「請求者(甲)の年金見込額照会」欄は、「請求者(甲)」欄に記入した人が50歳以上か、または障害厚生年金を受けている場合のみ記入します。
対象者が年金見込額照会を希望した場合、按分割合を50%として年金分割をした場合の年金見込額と、年金分割をしなかった場合の年金見込額がそれぞれ試算され、通知されます。
5-11. 請求者(乙)または配偶者の婚姻期間等に係る資格記録
「請求者(乙)の婚姻期間等に係る資格記録」欄には、「請求者(乙)」欄に記入した人の、過去の年金加入記録に関する情報を記入します。記入の仕方は、「請求者(甲)の婚姻期間等に係る資格記録」欄と同じです。
5-12. 請求者(乙)の年金見込額照会
「請求者(乙)の年金見込額照会」欄は、「請求者(乙)」欄に記入した人が50歳以上か、または障害厚生年金を受けている場合のみ記入します。記入の仕方は、「請求者(甲)の年金見込額照会」欄と同じです。
6. 年金分割のための情報通知書の有効期限
離婚前に「年金分割のための情報通知書」を受け取った場合、有効期限は原則として、情報の提供を受けた日から1年間です。ただし、離婚調停または離婚訴訟が継続している場合には、その手続きが終了するまで有効期限が延長されます。
離婚後に「年金分割のための情報通知書」を受け取った場合には、有効期限はありません。
7. 年金分割のための情報通知書に関してよくある質問
8. まとめ 老後への影響が大きい年金分割は、弁護士のサポートを受けて適正に
「年金分割のための情報通知書」は、協議や裁判手続きによって離婚時の年金分割の割合を決める際に必要となる書類です。年金事務所または街角の年金相談センターに必要な書類を提出して情報提供を請求することで交付を受けられます。
年金分割は、老後の生活に大きな影響を与える可能性のある重要な手続きです。適正な内容で年金分割の割合を取り決めるため、弁護士のサポートを受けながら手続きを進めることをお勧めします。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)