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1. 離婚時の年金分割を弁護士に相談すべき理由
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2. 年金分割について弁護士に相談した方がいいケース
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3. 年金分割の仕組み
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4. 年金分割を相談する弁護士の選び方
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5. 年金分割などの離婚問題を弁護士へ相談する際の事前準備
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5-1. 離婚に関する事実関係をまとめる
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5-2. 希望する離婚条件の内容や優先順位を決めておく
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5-3. 年金分割のための情報通知書を取得する
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6. 年金分割の弁護士費用
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7. 離婚に関する弁護士費用を安く済ませるためのコツ
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7-1. トラブルがこじれる前に、早めに相談する
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7-2. 見積もりを比較する
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7-3. 信頼できる弁護士に依頼する
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8. 年金分割と弁護士に関する質問
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9. まとめ 年金分割に悩んだら早めに弁護士に相談を
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1. 離婚時の年金分割を弁護士に相談すべき理由
年金分割とは、夫婦のうち婚姻期間中に収入の少なかった方が、将来受け取る年金額を増やすことができる制度です。
将来の生活設計のために重要な制度であるにもかかわらず、仕組みがややわかりにくいといえます。年金分割について調べてみると、「報酬比例」「合意分割」「3号分割」など、次々と聞き慣れない言葉がたくさん出てきて、また年金分割をするといっても具体的に何をすればよいのかわからない人もいます。このように年金分割については、正確に理解されていない当事者が多いのが実情です。そもそも年金分割について知らず、離婚のその他の条件について相談した弁護士から指摘されてはじめて、自分が年金分割ができる立場にあることを知る人も多くいます。
中には配偶者から、年金分割には応じないと言われ困惑して弁護士に相談したところ、弁護士から配偶者に適切な主張がされたことにより、2分の1の割合で年金分割をするとの条項を公正証書に入れることができたケースもありました。
離婚をすると決めたものの年金分割についてよくわからないという方は、他の離婚条件と併せて、弁護士に相談や依頼をするのがよいでしょう。離婚に詳しい弁護士であれば、年金分割の仕組みから手続きまで丁寧にアドバイスしてくれます。
2. 年金分割について弁護士に相談した方がいいケース
配偶者から年金分割について争うような発言が出た場合には、老後の収入を確保するために、弁護士に相談することをおすすめします。
熟年離婚でたまに見られるケースで、専業主婦であった妻が夫に対して年金分割を主張した際、夫から「働いて稼いできたのは自分1人である。保険料は自分の稼ぎから出ているので年金分割に応じる必要はない。」という主張をされることがあります。しかし、このような主張にはまったく根拠がありません。
年金分割は、老後生活の保障のために「離婚時年金分割制度」という正式な制度として導入されたものです。そして、離婚時年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
「合意分割」は、夫婦の合意か、調停または審判で按分割合を決める手続きです。もう1つの「3号分割」は、たとえば夫が厚生年金加入者で、妻が専業主婦として扶養に入っている(第3号被保険者)という夫婦の場合に、妻が第3号被保険者であった期間について、当然に2分の1の割合で保険料納付実績を分割する制度です。ただし分割を受けられるのは、平成20年4月1日以降の婚姻期間分となります。
先ほどの例で言えば、平成20年4月1日以前に結婚してから、離婚まで妻が専業主婦だった場合、妻は3号分割により当然に2分の1の割合で年金分割を受けることができます。
制度の仕組みがこのようになっていることから「自分が稼いだお金で入っている保険を分割する必要はない」という夫の主張は、一見もっとものように見えるかもしれませんが、そうではないのです。
3. 年金分割の仕組み
多くの人が勘違いしているのですが、年金分割は、将来受け取る「年金」の額自体を分割するものではありません。正確には、婚姻期間中の保険料納付実績(標準報酬額)を分割する制度で、夫婦が同額の保険料を納めていることにするのが目的です。
分割を請求する側(多くの場合は妻)は、共働き・自営業・専業主婦のいずれであっても、請求が可能です。年金分割はいわゆる2階部分である厚生年金を分割する制度です。そのため、分割を請求される側(多くの場合は夫)は、2号被保険者である厚生年金保険の被保険者となっている必要があります。分割を請求される側が自営業である場合は2階部分の保険への加入がないため、その配偶者が年金分割を請求することはできません。
年金分割をするためには、分割の割合を決める必要があります。まずは夫婦で話し合いますが、話し合いで決まらなければ、年金分割の割合を定める審判または調停を申し立て、裁判手続で決めることになります。
分割の割合が決まった後は、厚生労働大臣に対し年金分割の請求をする必要があります。具体的には、年金分割を求める側が、必要書類を近くの年金事務所に持参し、請求手続きを行うこととなります。
この請求は、法改正により今後は離婚成立から5年以内までに延長される見込みではあるものの、現状は離婚成立から2年以内に行わなければなりません。年金分割について当事者で合意に至ったことで安心し、年金事務所での手続きを怠ってしまうと、一定の期間経過後は年金分割の請求をすることができなくなるため、注意が必要です。
ここからは、年金分割について正確に理解したい方のために、専門的な話をしていきます。そこまで詳しく知らなくてもよいという人は、ここは読み飛ばし、「4.年金分割を依頼する弁護士の選び方」まで進んでください。
【そもそも「公的年金の仕組み」とは?】
日本の年金制度は、いわば3階建ての構造となっています。1階部分は国民年金です。国民年金は保険料が定額で、20歳以上60歳未満の日本に住所のある人が加入するものと義務付けられています。2階部分は厚生年金保険です。会社で働いている人や公務員などが加入する保険で、保険料は報酬の額により決まります。将来受け取る年金額も、在職期間中に支払った保険料の金額に応じて決まります。なお、3階部分には確定拠出年金などが含まれます。
年金分割で「分割」する保険は、このうちの2階部分、すなわち厚生年金保険のみです。1階の国民年金や3階部分は、分割の対象にはなりません。
【年金分割の「分割」とは?】
将来受け取る厚生年金額は、現役時代に支払った保険料の金額により決まります。また、納める保険料の金額は、現役時代の報酬の金額によって定まります。そして、この保険料の金額を決めるための報酬の金額が「標準報酬額」です。
年金分割は、婚姻期間中の夫婦の保険料納付実績をそろえるために「標準報酬総額」を分割する制度です。たとえば、婚姻期間中の夫の標準報酬総額が1億円、妻の標準報酬総額が2000万円だった場合に、按分割合を2分の1とすると、2人の合計額である1億2000万円を6000万円ずつ同額で割り当てるということになります。このとき、夫から妻に対して4000万円を分割したことになります。これにより、妻の保険料納付実績(標準報酬額)が夫と同じになり、将来受け取る年金額を増やすことができるのです。
4. 年金分割を相談する弁護士の選び方
年金分割は、離婚事件を多く取り扱っている弁護士であれば、必ず気付く事柄です。また、離婚事件を多く取り扱っていない場合でも、年金分割について正確に理解していれば、配偶者が年金分割について拒んだ場合でも、適切に説得してくれるでしょう。
もっとも、離婚をする場合には、年金分割に限らず財産分与や養育費など、複雑かつ整理しなければならない論点が多くあります。そのため、離婚について迷ったときは、離婚事件の経験が豊富な弁護士に依頼することが適切です。

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5. 年金分割などの離婚問題を弁護士へ相談する際の事前準備
年金分割をはじめ離婚について弁護士へ相談する場合は、限られた相談時間を有意義に使うためにも事前情報をまとめておいたり、必要書類を準備したりしておくとよいでしょう。
5-1. 離婚に関する事実関係をまとめる
婚姻期間が長期間にわたる場合、相談の場で記憶を思い起こすだけで時間を取られてしまい、十分な相談ができなくなることも考えられます。そのため、弁護士への相談の前にはある程度、夫婦の経歴を時系列で説明できるように準備をしておいた方がよいといえます。
離婚について相談を受けた弁護士が最初に考えることは、「当事者の合意が成立せず、裁判まで行った場合に、裁判所が離婚を認める事案かどうか」という点です。つまり、不貞などの有責事由があるか、別居期間がどの程度あるかなど、離婚事由として認められる要素があるかどうかを確認します。
次に弁護士が検討することは、「相談者がどのような条件での離婚を望んでいるのか、その希望どおりの条件で離婚することができるのか」という点です。これらを明らかにするためには、夫婦の現在の状況はもちろんのこと、婚姻から現在に至るまでの状況のほか、離婚を考えるきっかけが何かといった、夫婦の経歴を知ることが重要になります。
5-2. 希望する離婚条件の内容や優先順位を決めておく
法律相談に訪れる前に、離婚後の生活をイメージしてみましょう。さらに余裕があれば、そのイメージを実現させるためにどのような離婚条件にしたいのかを、自分なりに考えてみてください。そこまで準備をしておくと、弁護士との相談の中でより具体的な内容を詰めていきやすくなるでしょう。
実は、離婚について弁護士に相談することを決めた時点で、離婚条件についても明確に決めている人は多くありません。「離婚はしたいが、不利な条件での離婚はしたくない」といった漠然とした思いで法律事務所を訪れる人が大半です。
そのような場合でも、経験豊富な弁護士であれば、話を伺う中でその人がもっとも望んでいることや大事にしたいこと、それとは反対に優先順位が低そうなことについて把握できる場合も多くあります。
しかし、希望する離婚条件を明確に定めて相談しても、弁護士から条件をすべて叶えることは難しいと指摘される場合もあります。こういった場合でも、ゴールとなる離婚後の生活がイメージできていれば、最良の条件を一緒に探っていくことができます。
5-3. 年金分割のための情報通知書を取得する
年金分割をする場合、年金分割のための情報通知書が必要となります。これは、年金事務所に請求をして取り寄せることになりますが、請求してから手元に届くまで1カ月以上かかる可能性もあります。
情報通知書は、離婚が成立するときには必要ですが、弁護士に相談する時点で準備しておく必要はありません。また、離婚協議などが進んだ段階で、弁護士から情報通知書を取得するように依頼があるはずなので、自分で忘れないように注意しておかなければいけないということでもありません。
もっとも、取得に時間がかかるということは念頭に置き、離婚が成立しそうになった段階で余裕を持って取得ができるように、日本年金機構のサイトなど年金分割に関する情報に目を通しておくといった準備は進めておいてもよいでしょう。
6. 年金分割の弁護士費用
年金分割については、弁護士がその他の離婚条件と併せて対応する場合には、着手金や報酬金は別途発生しない費用体系を採用している法律事務所が多数あります。ただし、調停などにより年金分割の割合が定められた場合、あるいは相手方が請求した割合から下げることができた場合には、報酬が発生するという費用体系を採用している法律事務所もあります。
なお、その際の報酬については、5000円ほどに設定している事務所もあれば、5万~10万円と設定している事務所もあるため、相談の時点で確認しておくことをおすすめします。
7. 離婚に関する弁護士費用を安く済ませるためのコツ
離婚事件を弁護士に依頼した場合の費用は、必ずしも安いとはいえません。もっとも、適切かつ納得のいく条件で離婚するためには、離婚に関する知識や経験が豊富な弁護士に依頼することが不可欠といえ、費用面だけで依頼先を決めることは、おすすめできません。
とはいえ、弁護士費用を不必要に高く支払うことにならないよう、自分で注意できることもあります。
7-1. トラブルがこじれる前に、早めに相談する
弁護士費用は、弁護士側が自由に設定するものとされていますが、多くの場合は、協議や調停、訴訟など段階が進むごとに着手金が発生したり、親権や養育費、慰謝料など争点が増えるごとに報酬が発生したりする内容となっています。また、協議や調停などの時間や回数が増えるごとに費用が発生する費用体系を採用している法律事務所もあります。
そのため、争点を少なくすることができれば、弁護士費用を抑えやすくなる可能性があります。当事者同士で話し合ったことでもめてしまい、争点が増えた段階よりも、もめる前に弁護士に相談する方がスムーズに解決でき、結果として弁護士費用を低く抑えることができる場合もあります。
7-2. 見積もりを比較する
離婚には解決すべき問題が複数あるため、どの問題にどのくらいの着手金や報酬金が発生するかは、法律事務所によってさまざまです。もちろん、相手方との話し合いの中で新たな争点が判明し、その解決について弁護士費用が追加発生する場合も多々あるため、事前に費用総額を明確にすることまではできません。
それでも、「自分の場合は弁護士費用がどのくらいかかるのか」と知りたい場合は、依頼前に複数の法律事務所から見積もりを取って比較することが有効です。相場観をつかむことは、弁護士費用を抑えることにもつながるでしょう。
7-3. 信頼できる弁護士に依頼する
「すでに弁護士を依頼しているが、セカンドオピニオンを求めたい」と言って相談に来る人も少なくありません。そのような人の中には、最初の弁護士を知人から紹介されたとか、無料法律相談で対応してもらったという理由だけで決めてしまい、自分との相性などを考えなかった人もいるようです。
ところが、離婚事件は解決に時間がかかるケースが多いことや、解決方法に正解はなく、当事者の価値観によっても納得できる離婚条件が異なるケースも多々あります。そのため、最初に依頼した弁護士の進め方に違和感を感じて、セカンドオピニオンを求める場合があります。その結果、最初の弁護士を解任して、セカンドオピニオンを求めた弁護士と新たに契約する人もいます。
このように、最初から信頼できる弁護士に依頼できなかった場合、弁護士を変更することで着手金などが別途かかってしまうことが考えられます。そのため、時間をかけてでも最初から信頼できる弁護士を探して依頼することが大切です。

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8. 年金分割と弁護士に関する質問
弁護士なしでも請求することができます。もっとも、相手方が分割自体や割合について争うような場合には、弁護士に依頼した方がスムーズな解決に結びつきやすいといえます。
年金分割だけを依頼することができるかどうかは、法律事務所によります。もっとも、離婚前に年金分割だけが争いになるというケースはあまり見られず、その他の離婚条件も併せて依頼した方が、より納得のいく離婚を目指せるでしょう。
ただし、離婚後であって、年金分割のみが争いになっている場合には、弁護士に依頼して年金分割の割合を定める審判などを申し立てることは考えられます。
法律事務所によっては、弁護士費用の分割払いに対応していることがあります。また、相談者が一定の要件を満たす場合は、費用面でのサポートを受けられる「法テラス」を利用できるなど、弁護士費用を抑えた依頼も可能です。
ただし法律事務所によっては、法テラスを利用した依頼を受けていないところもあります。相談したい弁護士や事務所が決まっている場合には、法テラスを利用できるかどうかも事前に確認しておくとよいでしょう。
9. まとめ 年金分割に悩んだら早めに弁護士に相談を
年金分割で悩む場合、他の離婚条件についても悩んでいることが多くあります。弁護士に相談することによって、自分が何について悩んでいるのかや、それについてどのような解決方法があるのかが明確に見えてくることも多くあります。
年金分割などに悩んだら、離婚に詳しい弁護士に早めに相談することをおすすめします。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)