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1. 遺族年金とは
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2. 2種類の遺族年金|遺族基礎年金と遺族厚生年金
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2-1. 遺族基礎年金とは
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2-2. 遺族厚生年金とは
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3. 遺族年金の受給要件
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3-1. 遺族基礎年金の受給要件
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3-2. 遺族厚生年金の受給要件
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4. 遺族年金の受給権者の優先順位
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4-1. 遺族基礎年金の受給権者の優先順位
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4-2. 遺族厚生年金の受給権者の優先順位
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5. 離婚後、母と暮らしている子どもは父の遺族年金を受給できる可能性
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6. ケース別解説|離婚後、子は遺族年金を受給できるか?
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6-1. ケース①父親が再婚していない場合|基本はもらえる
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6-2. ケース②父親と再婚相手の間に子どもがいない場合|もらえる
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6-3. ケース③父親と再婚相手の間に子どもがいる場合|もらえない
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6-4. ケース④父親が連れ子のいる相手と再婚した場合|養子縁組の有無による
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7. 離婚した元妻は、元夫の遺族年金を受け取れるか?
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8. 離婚と遺族年金に関する質問
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9. まとめ 離婚しても遺族年金はもらえる可能性がある
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1. 遺族年金とは
「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなったときに、被保険者によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。経済的な大黒柱を失った遺族の生活を保障する目的で、一定の要件を満たす場合に遺族年金が支給されます。
2. 2種類の遺族年金|遺族基礎年金と遺族厚生年金
遺族年金には、国民年金に対応する「遺族基礎年金」と、厚生年金保険に対応する「遺族厚生年金」の2種類があります。
2-1. 遺族基礎年金とは
「遺族基礎年金」は、国民年金の被保険者が亡くなったときに、被保険者によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。遺族年金の「1階部分」に相当します。
遺族基礎年金の支給額は、以下のとおりです(2024年4月分~)。
【子のいる配偶者が受け取るとき】
(a)昭和31年4月2日以後生まれの場合
81万6,000円+子の加算額
(b)昭和31年4月1日以前生まれの場合
81万3,700円+子の加算額
【子が受け取るとき】
1人当たり、次の金額を子の数で割った額
81万6,000円+2人目以降の子の加算額
※子の加算額は、1人目および2人目の子につき各23万4,800円、3人目以降の子につき各7万8,300円
2-2. 遺族厚生年金とは
「遺族厚生年金」とは、厚生年金保険の被保険者が亡くなったときに、被保険者によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。遺族年金の「2階部分」に相当します。遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給資格を両方満たす場合は、両方を受給できます。
遺族厚生年金の支給額は原則として、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する額です。
3. 遺族年金の受給要件
遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件を解説します。
3-1. 遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金の受給権は、以下の①~④のいずれかに該当する場合に発生します。
①国民年金の被保険者である間に死亡したとき
②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
③老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
④老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
①②については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、2026年3月末日までに65歳未満で死亡したときは、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ足ります。
③④については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある場合に限ります。
3-2. 遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の受給権は、以下の①~⑤のいずれかに該当する場合に発生します。
①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
②厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
①②については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、2026年3月末日までに65歳未満で死亡したときは、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ足ります。
④⑤については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある場合に限ります。

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4. 遺族年金の受給権者の優先順位
遺族年金を受給できるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位が高い人です。
4-1. 遺族基礎年金の受給権者の優先順位
遺族基礎年金の受給権者の優先順位は、以下のとおりです。
①子のいる配偶者
②子
子とは、18歳になった年度の3月31日を迎えていない人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をいいます。
4-2. 遺族厚生年金の受給権者の優先順位
遺族厚生年金の受給権者の優先順位は、以下のとおりです。
①子のいる配偶者
②子
③子のいない配偶者
④父母
⑤孫
⑥祖父母
子および孫とは、18歳になった年度の3月31日を迎えていない人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をいいます。
子のいない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。また、子のいない夫は、被保険者の死亡時点において55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます)。
父母または祖父母の場合、年金の被保険者、かつ55歳以上の人に限り受給できます。なお、受給開始は60歳になってからです。
5. 離婚後、母と暮らしている子どもは父の遺族年金を受給できる可能性
両親が離婚した後、母と一緒に暮らしている子どもは、父が亡くなった際に遺族年金を受給できるのでしょうか。
基本的に、離婚した母(故人の元配偶者)は受給できない可能性が高いですが、子どもは受給できる可能性があります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金はいずれも、被保険者(父)によって生計を維持されていたことが受給要件とされています。「生計を維持されていた」とは、被保険者と同居していたか、または別居していても仕送りを受けている、健康保険の被扶養者であるなどの事情があり、かつ原則として年収850万円未満であることを意味します。
亡くなった父と一緒に暮らしていなくても、養育費が支払われていた場合などには、生計維持要件を満たすことがあります。母の預貯金口座に振り込まれた養育費の記録などを準備して、年金事務所で受給要件を満たしているかどうか確認しましょう。
6. ケース別解説|離婚後、子は遺族年金を受給できるか?
遺族年金の支給要件を踏まえて、母親と一緒に暮らす子どもが、母が離婚した父の遺族年金をもらえるか、ケース別に解説します。
ケース①父親が再婚していない場合
ケース②父親と再婚相手の間に子どもがいない場合
ケース③父親と再婚相手の間に子どもがいる場合
ケース④父親が連れ子のいる相手と再婚した場合
6-1. ケース①父親が再婚していない場合|基本はもらえる
亡くなった父が再婚していなければ、原則として「子のいる配偶者」がいないので、「子」が最上位の受給権者です。
したがって、亡くなった父に生計を維持されており、かつ18歳になった年度の3月31日を迎えていない(または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある)子どもは、遺族年金を受給できます。
ただし、父親が法律婚(=婚姻届を提出して結婚すること)をしていなくても、事実婚の妻がいてその人との間に子どもを設けている場合は、事実婚の妻が最上位の受給権者となります。この場合、離婚した母側の子どもは父親の遺族年金を受給できません。
6-2. ケース②父親と再婚相手の間に子どもがいない場合|もらえる
亡くなった父が再婚していたものの、再婚相手との間に子どもがいなければ、「子のある配偶者」がいないので、「子」が最上位の受給権者です。したがって、子どもは遺族年金を受給できます。
6-3. ケース③父親と再婚相手の間に子どもがいる場合|もらえない
亡くなった父が再婚しており、かつ再婚相手との間に子どもがいる場合は、「子のいる配偶者」である再婚相手が最上位の受給権者となります。
この場合、離婚した母側の子どもは遺族年金を受給することができません。
6-4. ケース④父親が連れ子のいる相手と再婚した場合|養子縁組の有無による
亡くなった父が連れ子のいる相手と再婚した場合は、父が連れ子と養子縁組をしていたかどうかによって、遺族年金の最上位の受給権者が異なります。
父が連れ子と養子縁組をしていた場合は、再婚相手が「子のある配偶者」として、最上位の受給権者となります。この場合、離婚した母側の子どもは遺族年金を受給できません。
これに対して、父が連れ子と養子縁組をしていなかった場合は、再婚相手が「子のいる配偶者」として扱われないので、「子」が最上位の受給権者となります。したがって、離婚した母側の子どもは遺族年金を受給できます。
7. 離婚した元妻は、元夫の遺族年金を受け取れるか?
離婚した元妻は、元夫が亡くなったとしても、原則として遺族年金を受け取ることはできません。配偶者でなくなった時点で、遺族年金の受給権者ではなくなるからです。
ただし例外的に、元夫との離婚後も事実婚関係を続けており、かつ元夫に生計を維持されていた場合には、遺族年金を受給できることがあります。「事実婚」とは、婚姻届を提出していないものの、実質的に夫婦としての生活を営んでいる状態です。「内縁」とも呼ばれます。
以下の要件をすべて満たす場合には、事実婚の状態にあることが認められます。
互いに実質的な意味で婚姻の意思を有している
法律婚の夫婦と同等の共同生活を営んでいる
社会的に夫婦と認められている
事実婚の配偶者として遺族年金を受給するためには、年金事務所に事実婚を証明する書類を提出しなければなりません。たとえば、一緒に暮らしていることを示す住民票、健康保険の扶養を証明する書類、民生委員が作成する内縁証明書などが挙げられます。年金事務所の指示に従い、証明書類を提出しましょう。

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8. 離婚と遺族年金に関する質問
9. まとめ 離婚しても遺族年金はもらえる可能性がある
離婚した元配偶者が亡くなった場合には、子どもが遺族年金を受給できることがあります。また、離婚後も元配偶者と事実婚状態にあった場合は、自分が遺族年金を受給できる可能性があります。
遺族年金は、特にシングルマザー(シングルファザー)として子どもを育てていく上で、生活費などの大きな助けとなります。年金事務所に問い合わせて受給資格の有無を確認し、受給できるようであれば漏れなく手続きを行いましょう。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)