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1. 不倫と財産分与の関係
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1-1. 不倫とは
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1-2. 財産分与とは
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1-3. 不倫した配偶者にも財産分与を行わなければならない
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1-4. 財産分与の対象となる「共有財産」とは
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2. 財産分与の割合|不倫は影響するのか?
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2-1. 協議や調停で決める場合|合意によって自由に割合を決められる
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2-2. 審判や訴訟で決める場合|不倫にかかわらず半分ずつとされることが多い
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3. 不倫した配偶者からより多くの財産を受け取る方法
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3-1. 配偶者の財産を漏れなく把握する
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3-2. 協議や調停を通じて財産分与の増額を求める
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3-3. 扶養的財産分与を求める
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3-4. 不倫慰謝料を請求する
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3-5. 婚姻費用や養育費を請求する
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4. 財産分与を受ける離婚手続き
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4-1. 協議離婚
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4-2. 離婚調停
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4-3. 離婚訴訟
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4-4. 財産分与請求調停や審判
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5. 不倫と財産分与に関してよくある質問
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6. まとめ|相手の財産分与の割合を減らしたい場合は弁護士に相談を
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1. 不倫と財産分与の関係
不倫が原因で離婚に至った場合の財産分与はどのように定められているでしょうか。不倫と財産分与に関する基礎知識と双方の関係性を解説します。
1-1. 不倫とは
不倫とは、一般的に既婚者が配偶者以外の人と交際関係にあること、またはあったことを指します。
法律上、不倫は不貞と呼ばれており、不貞行為とは配偶者以外の人と自由な意思に基づいて肉体関係を持つこと を意味します。
この場合の肉体関係には、性交渉のほか、オーラルセックス、手淫、そのほかの性的と考えられる行為など、性交類似行為も含まれます 。
既婚者が配偶者以外の人と肉体関係を持った場合は、回数や恋愛感情の有無にかかわらず、基本的に不貞行為となります 。ただし、性風俗店で性交渉を伴う性的サービスを受けることが離婚原因や慰謝料の発生原因となる不貞行為にあたるかどうかは、利用頻度や回数、態様、費やした金銭などの事情により異なります。
1-2. 財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を、離婚の際に公平に分ける制度です。分与割合については、財産を築くにあたってどれだけ貢献したかが目安となりますが、多くの場合は、2分の1ずつ財産を分けます 。
夫婦の一方の寄与が大きいと認められる特段の事情があれば、その寄与度に応じて修正されるのが一般的です。
財産分与は、主に以下の3つの考え方があります。
【清算的財産分与】
清算的財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた実質的共有財産を清算するもの
です。
その名義が夫婦の共有であっても、いずれかの単独名義であっても、婚姻中に取得したり形成したりした財産は分与対象となります。
財産の種類も問われず、不動産、動産、預貯金、有価証券のほか、生命保険や退職金などに加え、借金などの負債も含まれます。
【扶養的財産分与】
扶養的財産分与とは、離婚によって生活が厳しくなる配偶者に対してなされる財産分与
です。具体的には専業主婦または専業主夫だった人が、離婚後経済的に安定を得られるまで、収入の多いほうが援助する意味合いで支給します。
【慰謝料的財産分与】
慰謝料的財産分与とは、その要素として慰謝料の性質を含む財産分与
です。
夫婦のどちらかの不倫が原因で離婚に至ったなど、一方の有責行為により他方が被った精神的苦痛を賠償すべき義務を負うと認められる場合に、その慰謝料的要素も含めて、財産分与の額及び方法を定めることもできるとされています。
1-3. 不倫した配偶者にも財産分与を行わなければならない
不倫をした側であっても、原則として婚姻時に築いた財産の2分の1を求める権利があります。財産分与の請求は、離婚の理由を問わず行えるものだからです。
ただし、夫婦間で話し合い、不倫をした側が少ない割合で財産分与をすることに合意すれば、問題はありません 。
1-4. 財産分与の対象となる「共有財産」とは
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産すべて です。これを共有財産と言いますが、具体的には不動産、動産、預貯金、有価証券、生命保険、退職金などが該当します。たとえば不動産であれば、夫婦どちらかの単独名義であっても財産分与の対象となります。
財産分与の対象とならないのは、独身時代に築いた財産やそれぞれの親族から相続したり贈与されたりした財産 です。これらを特有財産と言いますが、具体的には独身時代に貯めた預貯金や親から譲り受けた不動産などが該当します。
2. 財産分与の割合|不倫は影響するのか?
財産分与の割合はどのように決めるのか、不倫は影響するのかを解説します。
2-1. 協議や調停で決める場合|合意によって自由に割合を決められる
財産分与は、夫婦間の協議または家庭裁判所が仲介する調停で合意すれば、自由に割合が決められます。たとえば不倫をした側が、財産分与の割合が減ることに納得して合意すれば、そのとおりに財産分与をすることが可能です。
2-2. 審判や訴訟で決める場合|不倫にかかわらず半分ずつとされることが多い
財産分与の話し合いが夫婦間の協議または調停でまとまらず、裁判所で行われる審判や訴訟になった場合は、裁判所が財産分与を含めた離婚の条件を決定します。
その場合、不倫の事実があったとしても、財産分与の割合は半分ずつと判断されるケースが多いです。
3. 不倫した配偶者からより多くの財産を受け取る方法
これまでの解説で、配偶者の不倫が原因で離婚になっても、一般的に財産分与で有利にならないことがわかりました。
しかし、それでは納得できない人もいるでしょう。以下では、どうすれば不倫をした配偶者よりも多い財産を受け取れるかを解説します。
3-1. 配偶者の財産を漏れなく把握する
財産分与の対象となる共有財産は、漏れなく調査をして把握しましょう。調査に漏れがあると財産分与で取得できる金額が減ってしまうため、注意が必要です。
夫婦の一方のみが把握している財産が存在する場合もあり、相手が情報をすべて開示してくれるとは限りません。自宅に届く配偶者宛ての郵便や通帳の記録から財産の存在がわかることもある ので、確認してみるとよいでしょう。
調停や裁判を利用する場合は、裁判所を通して相手に開示を促してもらったり、調査嘱託を使って把握したりできることも あります。
財産には借金などの負債も含まれるので、住宅ローンや自動車ローンを組んでいる場合は、残債がどの程度あるのか正確な調査が必要です。
3-2. 協議や調停を通じて財産分与の増額を求める
夫婦間の協議や調停で合意できれば、財産分与の割合は自由に決められます 。
不倫をした配偶者に対して「不倫をして婚姻生活が破綻した責任をとってほしい」と訴え、財産分与の増額を求める方法があります。
3-3. 扶養的財産分与を求める
財産分与には、扶養的な側面で請求できるケースがあるので、両者合意のもと、扶養的財産分与の金額が決められます。
たとえば不倫をされた配偶者が病気のために働けないケースや、子どもが学費の高い学校に通っているため子どもを引き取る側に多く財産分与をするケースが挙げられます。夫婦間の協議や調停であれば双方の合意で可能となりますが、審判や裁判となった場合はこれらの事情を証明する客観的な証拠が必要 です。
3-4. 不倫慰謝料を請求する
財産分与とは別に、不倫をした配偶者に対して不倫慰謝料の請求ができます。不倫をされたことによる精神的苦痛に対して支払われるもので、相場は50万円から300万円 とされています。
ずいぶん金額に幅があると感じるかもしれません。この差は、慰謝料額を算定する際にはさまざまな要素が考慮されるために生じています。
高額な不倫慰謝料が認められる可能性があるのは、以下に該当するケースです。
不倫期間が長い
不倫に積極的だったなど、悪質性が高い
婚姻期間が長い
幼い子どもがいる
配偶者の不倫でうつ病などを患った
不倫発覚後も不倫を継続した
3-5. 婚姻費用や養育費を請求する
離婚前に別居していた場合は婚姻費用を、離婚後に子どもを引き取る場合には養育費の請求ができます。
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用を指します。たとえ別居しても、夫婦である以上は、収入の多いほうが少ないほうに対して、生活に必要な金銭を支払わなければいけません 。婚姻費用には食費、光熱費などの生活費や医療費、子どもの養育費などが含まれます。
養育費とは、子どもが経済的かつ社会的に自立するまで、監護や教育のために必要な費用です。離婚をして親権者でなくなっても親であることに変わりはありません。そのため離婚後に子どもを監護する側は、他方に対して養育費を請求できます 。養育費は離婚の理由に関係なく請求できるものなので、不倫した側が養育費を受けるケースも あります。
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4. 財産分与を受ける離婚手続き
財産分与を受け取るにあたっての離婚手続きには主に以下の4つが挙げられます
協議離婚
離婚調停
離婚訴訟
財産分与請求調停や審判
4-1. 協議離婚
協議離婚とは、夫婦間で話し合いをし、離婚条件などを決めて合意したうえで離婚する方法です。
一般的に協議離婚は、双方が合意していればどのような内容であっても認められます 。離婚条件の一つとして、財産分与をどのように行うか決定します。したがって、夫婦の一方が離婚を拒んでいる場合、そもそも財産分与の協議はできません。
4-2. 離婚調停
夫婦間で話し合っても合意できない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。離婚調停を申し立てると、調停委員が夫婦の間に入って、合意に至るように離婚条件をすり合わせていきます。
夫婦2人だけで話し合うと感情的になってしまいますが、調停委員が仲介し、顔を合わせないことで冷静な話し合いが期待できます 。調停でめざすのは双方の合意なので、長期化する可能性はあるものの、合意できれば不倫をした側よりも多く財産分与の割合が得られるケースもあります。
離婚調停で合意ができない場合などには調停不成立となり、調停手続は終了します。調停に代わる審判で離婚(審判離婚)が命じられない限り、残された手段は以下のいずれかです。
離婚訴訟を提起して、そのなかで財産分与の解決をめざす
離婚のみ調停を成立させ、あらためて財産分与の調停または審判を申し立てる
なお、審判離婚の際、家庭裁判所は附随して申し立てられた財産分与についても給付を命じることができます。
4-3. 離婚訴訟
離婚審判で決定した内容に納得ができない場合、離婚訴訟を夫婦どちらかの住所地を管轄する裁判所に提起します。口頭弁論や尋問などを経て、合意できれば和解により離婚が成立し、合意できなければ裁判所が判決を下します 。
離婚訴訟で離婚を認めてもらうには、以下の法定離婚事由が必要です。
不貞行為
悪意の遺棄
3年以上の生死不明
回復の見込みがない強度の精神病
その他婚姻を継続し難い重大な事由
【不貞行為】
夫婦のどちらかが、配偶者以外の人と自由な意思に基づいて肉体関係を持った場合、不貞行為として法定離婚事由になります。裁判で不貞行為と認めてもらうには、肉体関係を持っていたことがわかる証拠が必要
です。具体的には配偶者が相手とホテルに入っていく写真や動画、ホテルの領収書、肉体関係があったことが明らかなLINEを含むやりとりなどです。
【悪意の遺棄】
夫婦のどちらかが一方的に家を出たり、強制的に家から追い出されたり、生活費を渡さなかったりする場合、悪意の遺棄として法定離婚事由になります
。具体的には、不倫相手の家に入り浸り帰宅しない、自宅から強制的に追い出し帰れない状況をつくる、生活費を一切渡さないといった行動が挙げられます。
【3年以上の生死不明】
夫婦のどちらかが突然家を出て、3年以上生死不明の状態が続けば、法定離婚事由になります
。警察に捜索願を出しても見つからないなど、あらゆる手段を尽くして捜索しても見つからなかったことが条件です。
【回復の見込みがない強度の精神病】
夫婦のどちらかが回復の見込みがない強度の精神病だと診断された場合、法定離婚事由になります。
過去の裁判例で挙がった具体的な病名は、以下のとおりです。
統合失調症
躁うつ病
認知症
ただし、単にこれらの診断がなされただけでは、法定離婚事由になりません。夫婦として共同生活が営めないほど症状が重いと判断され、回復の見込みがないとされる点がポイント です。
【その他婚姻を継続し難い重大な事由】
その他婚姻を継続し難い重大な事由は、これまで述べた4つの法定離婚事由に該当しないケースを想定して定められた項目です。具体的にどのような事情をもって破綻を認定するかは裁判官の自由裁量に委ねられており、抽象的離婚原因とも呼ばれています。
抽象的離婚原因としては価値観の相違、家庭内暴力であるDVやモラハラ、アルコール依存や過度な宗教活動、犯罪行為などが挙げられますが、これらの事情があるからといって即座に離婚請求が認められるものではありません。婚姻を継続し難い重大な事由の有無は、個別具体的な事情を考慮して総合的に判断されます 。
4-4. 財産分与請求調停や審判
離婚が成立したあとも財産分与の請求が可能です。夫婦間で話し合って合意できれば、合意した内容で行えます。話し合いで合意できなければ、調停や審判で財産分与の請求ができます。
ただし、財産分与請求調停は、離婚成立から2年以内に申し立てなければいけません。調停で合意できなければ、自動的に審判に移ります 。審判になった場合、調停で話し合った内容をもとに裁判所が判断をします。
財産分与請求調停は、原則、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。その際には裁判所が指定する申立書、離婚時の戸籍謄本、財産に関する資料などが必要です。
申立てから1カ月ほどで最初の調停期日が設けられ、その後は1カ月に1度のペースで数回にわたって話し合いが進められ、合意をめざします 。
5. 不倫と財産分与に関してよくある質問
6. まとめ|相手の財産分与の割合を減らしたい場合は弁護士に相談を
以上で解説したとおり、夫婦どちらかの不倫が原因で離婚する場合でも、財産分与は原則2分の1ずつであり、離婚原因をつくった側に財産分与の放棄を強制できません。不倫された側にとっては納得できないことでしょう。また、離婚後の生活を考えるとできるだけ多くの財産を得たいと思うのも自然なことです。
配偶者の不倫が発覚し、離婚を考えている場合は、ぜひ弁護士に相談することをお勧めします。相手の財産分与の割合をなんとか減らしたい場合や、離婚慰謝料をできるだけ多く請求したい場合、弁護士に相談すれば適切なアドバイスが得られるはずです。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)