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不倫の慰謝料を払えないと言われたときの対処法 強制回収から減額交渉まで解説

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配偶者の不倫相手に慰謝料を請求したものの、「払えない」と言われたときにはどう対処すればいいのでしょうか(c)Getty Images
配偶者が不倫をしていたことが発覚した場合、不倫相手に慰謝料を支払ってもらおうと考える人は多いでしょう。しかし、不倫相手に対し慰謝料を請求したものの、「お金がない」と言われて慰謝料を支払ってもらえないケースがあります。このような場合、どう対処したらいいのでしょうか。弁護士がわかりやすく解説します。
目 次
  • 1. 本当にお金がないのか調査をする
  • 2. 本当にお金がない場合の対処法
  • 2-1. 分割払いを検討する
  • 2-2. 減額を検討する
  • 2-3. 立て替え払いを提案する
  • 3. 本当はお金があるのに払えないと言っている場合の対処法
  • 3-1. 【STEP1】交渉
  • 3-2. 【STEP2】裁判
  • 3-3. 【STEP3】強制執行で回収を図る
  • 4. 公正証書による取り決めの重要性
  • 5. 不貞慰謝料の相場|50万円~300万円
  • 6. 不倫相手に対する慰謝料請求が認められないケース
  • 6-1. 既婚者であることを不倫相手が知らなかった
  • 6-2. 不倫の時点で夫婦関係が破綻していた
  • 6-3. 不倫の事実を証明できない
  • 6-4. 時効によって消滅した
  • 7. 配偶者の不倫相手が慰謝料を払えないと言ってきたときに、弁護士に相談するメリット
  • 8. まとめ|慰謝料を支払えないと言われたら、あきらめずにまずは弁護士に相談を

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1. 本当にお金がないのか調査をする

配偶者が不倫していた場合、その不倫相手に対して慰謝料を請求できますが、なかには「お金がないから払えない」と支払いを拒否する不倫相手もいます。しかし、拒否されたからといって、すぐにあきらめる必要はありません。

本当はお金があり、単に「支払いたくない」だけの場合もあります。そのため、不倫相手に「お金がないので払えません」と言われたとしても、それをうのみにしてはいけません。

実際に、働き、家を借り、ご飯を食べて……という生活をしている以上、お金がまったくないはずはなく、単に「(生活するお金はあるが)慰謝料として払う分はない」だけで、慰謝料の支払いの優先順位が低いケースもたくさんあるのです。

そのため、慰謝料請求に関して「お金がないから払えない」という不倫相手に対しては、現在の資力状況や勤務先の開示を求め、本当にお金がないのかどうかを客観的に証明 してもらうことが重要です。

こうした交渉事は、弁護士に依頼することもお勧めです。弁護士が代理人として交渉することで、「きちんとした根拠の提示がない場合には、民事訴訟や強制執行まで考えている」という姿勢を示すことができます。

2. 本当にお金がない場合の対処法

前述のような調査の結果、本当に不倫相手がすぐに支払えるお金を持っていない場合には、次のような対処が考えられます。

  • 分割払いを検討する

  • 減額を検討する

  • 立て替え払いを要求する

詳しくは以下で説明します。

2-1. 分割払いを検討する

毎月の収入はあるけれど、まとまった貯金がない人はたくさんいます。こういった人が不倫相手だった場合、慰謝料の総額を決めたうえで、「月々〇万円」などと分割払いの約束を取りつけて、慰謝料を支払わせる方法 があります。

このやり方には、税金や社会保険料などを除いた可処分所得を慰謝料の支払いにあてさせることで、貯金がない相手からも支払いを受けることができるというメリットがあります。一方で、完済まで時間がかかる、途中で支払いが滞ってしまうリスクがある、といったデメリットも認識しておきましょう。

分割回数はなるべく少なくなるように交渉し、たとえばボーナスの支払いがある月には多めに支払わせるなどの工夫も必要 です。

2-2. 減額を検討する

「100万円の慰謝料を希望していたが、不倫相手からは30万円が限度でそれ以上は払えないと言われた」というように、減額を求められるケースは少なくありません。

感情的には減額の要求に応じるのは納得がいかない場合でも、冷静に経済的側面から検討し、減額に応じるほうがいい場合があります。

たとえば、交渉の結果、相手が本当に30万円しか払うことができないと思われる場合には、減額に応じる判断をしたほうがいいかもしれません。なぜなら、仮に自分が裁判を起こし、不倫相手に100万円の慰謝料を支払わせる判決が出たとしても、この相手からは結果的に慰謝料を全額は回収できない可能性が高いからです。裁判の手間や費用を考慮すると、減額を受け入れる選択も十分考えられます

また、たとえば「月1万円×100回払い」の100万円の約束と、「20万円×3回払い」の60万円の約束であれば、完済まで何年もかかる前者よりも、後者のほうが、滞納のリスクが低くなります。慰謝料の総額に加えて1回あたりの支払い金額や支払い回数も慎重に検討することが大切です。

2-3. 立て替え払いを提案する

不倫相手本人にはお金がなくても、両親やきょうだいには十分な支払い能力があるケースはよくあります。そういった場合を想定し、お金がないと主張する不倫相手に対し、両親やきょうだいによる立て替え払いをするように提案することも一つの方法 です。

ただし、本来的に不倫相手の責任は不倫相手本人だけが負うものであり、たとえ両親やきょうだいであっても慰謝料を立て替え払いする法的な義務はありません 。また、不倫相手としては、自身の不倫の事実を両親やきょうだいに知られたくないと考える人も多いです。そのため、不倫相手に対して家族による立て替え払いを要求したしても、不倫相手がそれに応じないことも少なくありません。不倫相手が家族に相談したものの、家族が断るというケースも多いです。

3. 本当はお金があるのに払えないと言っている場合の対処法

不倫相手が、実際はお金を持っているにもかかわらず、「払えない」と主張している場合には、以下の手順で対処します。

3-1. 【STEP1】交渉

最初は「お金がないから支払えない」と言っていたものの、調査した結果、それなりに収入や資産があることが判明した場合、その事実をもとに再度慰謝料の支払いを交渉しましょう。

現在の法律では、裁判で勝訴した場合、給与の差し押さえや預貯金の差し押さえといった強制執行が可能です。「支払いに応じない場合には、民事訴訟を起こしたうえで、強制執行をする」という意思を伝え、早めに支払いに応じたほうが相手にもメリットがある点を強調する ことで、早期解決をめざします。

3-2. 【STEP2】裁判

交渉したものの、それでも慰謝料の支払いに応じない場合には、民事訴訟に移ります。裁判所に訴状や証拠を提出し、勝訴をめざします。

民事訴訟は自分自身で行うことも可能ですが、訴状の作成や裁判所対応には専門的な知識や経験が必要になるため、弁護士に依頼することをお勧め します。弁護士に依頼すれば、書類の作成から出廷まですべて代理してもらうことができます。

民事訴訟の多くは、裁判所が法的な見地から結論を出す「判決」か、双方が話し合って妥協点を見つける「和解」のいずれかの方法で終了します。実際の裁判では、審理の途中で「〇万円くらいで和解したらどうか?」と裁判所から勧められることが多く、7割ほどが和解で終了すると言われています。和解した場合には、裁判所の書記官がその和解内容を記した「和解調書」を作成します。

3-3. 【STEP3】強制執行で回収を図る

裁判で「慰謝料を支払うように」という判決が出ても、相手がその支払いに応じない場合には、強制執行という手続きをとることができます。

いくつか種類がありますが、大きく分けると、債権の差し押さえ、不動産の差し押さえ、動産の差し押さえの3つがあります。不貞慰謝料請求の勝訴判決で選択されることが多いのは債権の差し押さえで、具体的には給与債権と預貯金債権の差し押さえです。

相手の勤務先が判明している場合には、その会社を相手に、「不倫相手に毎月払っている給与を差し押さえるから、私に支払うように」という債権差し押さえの申し立て をします。判決や和解調書といった公的な書面(法的には債務名義と言います)があれば、通常はこの申し立てが認められ、給与を差し押さえることができます。

原則として、差し押さえできるのは月の手取り給与の4分の1までです。給与のすべてを差し押さえることはできないものの、判決や和解調書で認められた慰謝料全額が回収できるまでの間、差し押さえの効力は継続します。

次に、相手の預貯金口座が判明している場合には、銀行に対して「ここに貯金されているお金を差し押さえるから、私に支払うように」という債権差し押さえの申し立て ができます。口座の中にあるお金は、原則慰謝料にあてられるので、判決や和解調書で認められた慰謝料以上のお金が貯金されていれば全額の回収が可能です。

口座があるかわからない場合は、情報取得手続きという方法があります。これは、債務名義がある場合にできる方法で、各銀行に対して「この名義の口座はあるか? ある場合いくら預貯金があるか?」を問い合わせることができます。銀行には回答義務があるので、もし口座がある場合には、その情報を取得することが可能です。

4. 公正証書による取り決めの重要性

不倫の慰謝料について本人たちの話し合いで合意した場合、その内容を記した「公正証書」を作成することがあります。

公正証書とは、国家資格を持つ公証人(元裁判官や元検察官が多い)が、公証役場で作成する文書であり、「公に証明された書面」を指します。つまり、当事者間で合意した契約書について、公証人が間に入り、「これは本人たちが内容を理解したうえで合意した書面である」と公的にお墨付きを与えるものです。

公正証書の作成には当事者間の了承が必要で、不貞慰謝料の合意内容を公正証書にする場合には、ほぼ100%「執行認諾文言」という条項が入ります。

これは、「もし約束どおりに慰謝料を支払わなかった場合には、すぐに強制執行の手続きをとることを受け入れます」という意味を持つ条項です。もし約束どおりの支払いがない場合には、裁判を起こすことなく給与や預貯金の差し押さえが可能 です。

特に、慰謝料を分割払いで支払わせる場合には、途中で支払いが滞る可能性があるので、当事者間の合意内容を公正証書にするメリットが大きいと言えます。

5. 不貞慰謝料の相場|50万円~300万円

不貞慰謝料額の相場は、50万円~300万円とされています。なぜこれだけ幅があるのかというと、不貞行為の内容によって慰謝料の額もケースバイケースだからです。

主に以下の事情を総合的に考慮して、慰謝料が決まります。

  • 不貞が原因で離婚するか

  • 婚姻期間がどれくらいか

  • 不貞期間や不貞頻度はどれくらいか

  • 不貞相手が妊娠したか

  • 不貞発覚後の態度

慰謝料とは、「精神的苦痛を慰謝する(和らげる)ための金銭的補償」ですので、精神的苦痛が大きいほど金額は増えます。

具体的には、不貞が原因で離婚するかどうかという点が最も慰謝料額に影響 を与えます。離婚するに至ったということは、それだけ配偶者が負う精神的苦痛が大きいと言えるからです。また、婚姻期間や不貞期間が長ければ長いほど、慰謝料額は増えます。

裁判では、不貞が原因で離婚することになった場合、150万円を基準に、婚姻期間の長短や不貞期間の長短などを加味して、20万円~30万円単位で増減することが多い です。

離婚をしない場合は50万円~100万円程度を基準とし、さまざまな事情を考慮したうえで具体的な慰謝料額が決まります。

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6. 不倫相手に対する慰謝料請求が認められないケース

不倫行為があったとしても、法律上の要件を満たしていなければ慰謝料請求は認められません。慰謝料請求が認められない4つのケースを紹介します。

6-1. 既婚者であることを不倫相手が知らなかった

不貞慰謝料請求が法的に認められるのは、不倫行為が民法上の不法行為(民法709条)に該当するからです。そして、この不法行為の要件の一つとして「不法行為を行う故意、又は過失」が必要とされており、不貞行為に置き換えると、「既婚者であることを知っていた」「知ることができた」と言えることが最低限必要 になります。

そのため、たとえば配偶者が、自分は独身であると嘘をついていた場合には、不倫相手から「確かにその人と肉体関係はあったが、既婚であるとは知らなかった」と反論される場合があります。特に最近では、マッチングアプリで出会った相手に対し、独身であると嘘をついて交際していたというケースが多くなっています。

交際相手が既婚者だとは知らずに交際していた場合では、不倫相手に故意がないとして、慰謝料請求が認められないことがあります。

6-2. 不倫の時点で夫婦関係が破綻していた

不倫が不法行為にあたる理由は、その行為が平穏な婚姻生活を害するものだからです。そのため、不倫した時点ですでに平穏な婚姻生活はなく、夫婦関係が破綻していたと言える場合には、不貞慰謝料請求が認められません。

不貞慰謝料をめぐっては、このように「夫婦関係はすでに破綻していた」として支払いを拒否しようとするケースが非常に多いのですが、よほどの事情がない限り夫婦関係の破綻は認められません

夫婦関係の破綻が認められるには、単に仲が悪くてけんかが絶えなかったというような事情だけでは足りず、最低でも別居の事実は必要です。家庭内別居で夫婦関係の破綻が認められるのは相当なレアケースです。別居したうえで、双方が離婚に向けた協議を進めているような状況でないと、なかなか夫婦関係が破綻していたとは認定されません

6-3. 不倫の事実を証明できない

不貞慰謝料が認められるためには、不倫相手が不倫の事実を認めている場合を除き、不倫の証拠が必要です。不倫していたのは100%間違いない、と思っていたとしても、それを証明する資料がない場合には、不貞慰謝料は認められません。

不倫の証拠としては、以下のようなものがあります。

  • 性行為の存在がわかるメールやLINEなどのやりとり

  • ラブホテルに出入りしている写真や動画

  • 性行為の写真や動画

  • 不倫を認める内容の録音データ

  • 探偵の調査報告書

上記のような証拠があれば、不倫の証明としては十分と言えます。ただし、証拠の評価は非常に専門的な知識が必要で、探偵業者や自称法律に詳しい知人のアドバイスをうのみにすることは危険です。この証拠で足りるか、この証拠は役に立つのかについては、弁護士に相談して判断したほうがよい でしょう。

6-4. 時効によって消滅した

不貞慰謝料を請求する権利は、時効期間を過ぎると消滅します。具体的には、不貞の事実と不貞相手のことを知ったときから3年間、または不倫の行為があったときから20年間です。

そのため、不貞の事実を知り、かつその不貞相手の名前などの情報を知ってから3年以上経過している場合には、慰謝料請求しても「時効によって消滅している」と反論されてしまい、慰謝料請求が認められない場合があります。

7. 配偶者の不倫相手が慰謝料を払えないと言ってきたときに、弁護士に相談するメリット

弁護士は法的トラブルを解決に導く専門家です。不倫相手に対する慰謝料請求についても、弁護士に相談することで、裁判になった場合を想定しつつ、状況に応じて効果的な交渉や選択をすることができます。

また、不倫相手に自ら接触して慰謝料を請求するのは、非常に時間や労力がかかるうえ、精神的にも負担が大きいものです。不倫相手への対応をすべて弁護士に代行してもらえば、精神的な負担を軽くできるメリットもあります。

8. まとめ|慰謝料を支払えないと言われたら、あきらめずにまずは弁護士に相談を

不倫相手に「お金がないから慰謝料は払えない」と言われた場合でも、相手の経済状況に応じて減額や分割払いの可能性も含めて交渉したり、裁判を起こしたりすることで、支払わせることができる場合があります。こうした交渉や裁判では専門の知識が必要になるので、まずは弁護士に相談するのがお勧めです。

また、不倫の証拠が不十分だったり、時効期間が過ぎてしまったりした場合には慰謝料を請求できないこともあるため、そうした事態を避けるためにも、弁護士のアドバイスは有効です。

配偶者の不倫の事実を知ったうえで冷静に適切に対応するのは、なかなか難しいものです。弁護士は客観的な立場から適切なアドバイスしたり、不倫相手との交渉を代行したりできるので、慰謝料請求に関する不安があったら一人で悩まず、専門家のサポートを受けてみてください。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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