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1. 不倫の慰謝料請求に関する基礎知識
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2. 不倫の慰謝料請求書とは
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2-1. 慰謝料請求書を送付する目的
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2-2. 慰謝料請求書の送付は必須なのか?
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3. 不倫慰謝料請求書の書き方|テンプレートに沿って紹介
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3-1. 不倫慰謝料請求書のテンプレート
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3-2. 不倫慰謝料請求書に記載すべき事項
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4. 慰謝料請求書を作成し、送付する際の注意点
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4-1. 事実を正確に記載する|虚偽や誇張は避ける
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4-2. 脅迫にならないように注意する
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4-3. 請求額を慎重に検討する
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4-4. 必要な事項を端的に記載する|余計なことは書かない
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5. 慰謝料請求書の送り方|メリットとデメリットを紹介
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5-1. 【お勧め】内容証明郵便
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5-2. その他の郵便|普通郵便や特定記録郵便など
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5-3. メールやLINEなど
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5-4. 手渡し
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6. 慰謝料請求書の作成は自分でできる?
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6-1. 弁護士に依頼するメリット
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6-2. 慰謝料請求書の作成は、行政書士にも依頼できる?
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7. 慰謝料請求書の書き方と送り方に関してよくある質問
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8. まとめ|不倫慰謝料の請求書を作成する際は、弁護士に相談を
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1. 不倫の慰謝料請求に関する基礎知識
「慰謝料」とは、精神的苦痛に対する賠償金です。配偶者が自分以外の者と性交渉をした場合、不倫された側は不倫を原因とする精神的苦痛を被るため、配偶者または不倫相手に対して不倫慰謝料を請求できます(民法709条)。
不倫慰謝料の金額は、離婚に至らない場合で50万円~200万円程度、離婚する場合で150万円~300万円程度 が標準的です。不倫の回数や頻度、不倫期間、婚姻期間、年齢に関係なく経済的に自立していない未成熟の子の有無などにより、慰謝料の金額が増減 します。
不倫の証拠を確保することや、増額につながる要素をできるだけ多く主張することが、慰謝料請求を成功させるためのポイントです。
2. 不倫の慰謝料請求書とは
不倫をした配偶者との間では、時効が迫っていて慰謝料の請求権が消滅するおそれがある場合などを除き、請求書の送付を省いて慰謝料などの話し合いをするケースが多い傾向にあります。
一方、不倫相手に対して不倫慰謝料を請求する際には、慰謝料請求書を送付するのが一般的です。
2-1. 慰謝料請求書を送付する目的
不倫相手に対して慰謝料請求書を送付する目的は、大きく分けて2つあります。
①不倫相手に対して不倫の重大性を認識させ、慰謝料に関する交渉のテーブルに着かせること
内容証明郵便などで請求書が届けば、本気で慰謝料を回収しようとしていることを不倫相手が認識し、慰謝料に関する交渉に応じるケースがよくあります。
②慰謝料請求権の消滅時効の完成を猶予させること
不倫相手に対する慰謝料請求権は、不倫の事実および不倫相手を知ったときから3年が経過すると、時効により消滅してしまいます(民法724条)。
内容証明郵便などによる慰謝料請求書が不倫相手に到達すれば、慰謝料請求権の消滅時効の完成が6カ月間は猶予 されます(民法150条1項)。猶予期間のうちに示談交渉をしたり、訴訟提起の準備を整えたりすることができます。
2-2. 慰謝料請求書の送付は必須なのか?
不倫相手が慰謝料に関する交渉に応じるのであれば、慰謝料請求書の送付を省いても構いません。
反対に、不倫相手が交渉自体を拒否する構えを見せている場合は、交渉のテーブルに着かせることを目的として、慰謝料請求書を送付するのがよいでしょう。
また、慰謝料請求権の消滅時効の完成が迫っている場合には、速やかに内容証明郵便で慰謝料請求書を送付する必要があります。時効期間が経過すると慰謝料を請求できなくなるため、それまでに必ず、不倫相手に慰謝料請求書が届くように手配することが大切です。
3. 不倫慰謝料請求書の書き方|テンプレートに沿って紹介
不倫相手に送付する慰謝料請求書のテンプレートと、慰謝料請求書に記載すべき事項を紹介します。
3-1. 不倫慰謝料請求書のテンプレート
不貞行為に関する慰謝料請求書
冠省
請求者は○○の妻であり、○年○月○日に婚姻して以降、平穏な夫婦生活を営んでおりました。
しかしながら、貴殿は○○が請求者の配偶者であることを知りながら、○○との間で不貞行為を行いました。
当該不貞行為が原因で、請求者と○○は離婚せざるを得なくなりました。当該不貞行為が長期間にわたって継続したこと、請求者と○○の婚姻期間は10年以上に及ぶこと、および請求者と○○の間には未成熟の子がいることなどを踏まえると、請求者が被った精神的苦痛はたいへん大きなものであり、その金額は300万円を下りません。
よって、請求者は貴殿に対して、上記慰謝料300万円の支払いを請求します。つきましては、本書面到達後2週間以内に、同金額を下記の銀行口座へお振込みください。
記
○○銀行
○○支店
普通
○○○○○○○
○○ ○○
以上
上記期間内に慰謝料全額をお振込みいただけなかった場合には、訴訟を含む法的手続きを講じる所存でございます。
草々
○年○月○日
請求者
〒○○○-○○○○
(住所)
(氏名)
被請求者
〒○○○-○○○○
(住所)
(氏名)
このテンプレートはあくまで一般的な参考例であり、すべての事案に対応できることを保証するものではありません。個別の事情に応じた不倫慰謝料請求書の作成は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
3-2. 不倫慰謝料請求書に記載すべき事項
不倫相手に対して送付する慰謝料請求書に記載すべき主な事項は、以下のとおりです。
①自分の立場
不倫をした配偶者の妻(または夫)であることを明記します。
(例)「請求者は○○の妻であり、」
②婚姻の時期
不倫が婚姻後になされたことを示すために記載します。
(例)「○年○月○日に婚姻して以降、」
③平穏な夫婦生活を営んでいた旨
不倫の時点で、婚姻関係が破綻していたわけではないことを示すために記載します。婚姻関係破綻後の不倫は、慰謝料請求が認められないためです。
(例)「平穏な夫婦生活を営んでおりました。」
④故意に不貞行為をした旨
不倫慰謝料の支払義務は、故意または過失による不貞行為によって発生することをふまえて記載します。通常は、不倫相手が故意に不貞行為をした旨を指摘します。
(例)「しかしながら、貴殿は○○が請求者の配偶者であることを知りながら 、○○との間で不貞行為を行いました。」
⑤精神的苦痛の要因が不倫にあること
不倫そのもの以外に、自分の精神的苦痛が大きくなる要因があれば、その内容を列挙します。
(例)「当該不貞行為が原因で、請求者と○○は離婚せざるを得なくなりました。当該不貞行為が長期間にわたって継続したこと、請求者と○○の婚姻期間は10年以上に及ぶこと、および請求者と○○の間には未成熟の子がいることなどを踏まえると、請求者が被った精神的苦痛はたいへん大きなものであり、」
⑥慰謝料の金額
精神的苦痛の要因をふまえて、不倫相手に対して請求する慰謝料の金額を明記します。
(例)「その金額は300万円を下りません。よって、請求者は貴殿に対して、上記慰謝料300万円の支払いを請求します。」
⑦慰謝料の支払期限と支払方法
不倫相手に対して求める慰謝料の支払期限と支払方法を記載します。
(例)「つきましては、本書面到達後2週間以内に、同金額を下記の銀行口座へお振込みください。」
⑧慰謝料が支払われなかった場合の対応
請求どおりに慰謝料が支払われなかった場合は、法的措置を講じる旨などを記載します。
(例)「上記期間内に慰謝料全額をお振込みいただけなかった場合には、訴訟を含む法的手続きを講じる所存でございます。」
4. 慰謝料請求書を作成し、送付する際の注意点
不倫相手に対する慰謝料請求書を作成し、送付する際には、特に以下の4点に注意しましょう。
4-1. 事実を正確に記載する|虚偽や誇張は避ける
慰謝料請求書には、正確な事実関係を記載すべきです。虚偽や誇張に当たる記載は避けましょう。記載内容が事実でないことが後に発覚すると、自分にとって不利益に働く可能性があるため注意が必要です。
4-2. 脅迫にならないように注意する
慰謝料請求書の内容が脅迫にあたる場合は、恐喝罪(刑法249条1項)の責任を問われるおそれがあります。
たとえば、以下のような表現は脅迫に当たり得るため、慰謝料請求書に記載してはいけません。
私から夫を奪ったあなたのことを、殺したいほど憎んでいます。
慰謝料を支払わなければ、あなたと夫が性行為をしている最中の写真や動画を、インターネット上にばら撒きます。
慰謝料を支払わなければ、あなたのことをどこまでも追いかけて罰を与えます。
4-3. 請求額を慎重に検討する
不倫相手に対して請求する慰謝料の金額は、法的な相場をふまえて適切に定めることが重要です。
請求額が高すぎると、慰謝料に関する示談交渉はなかなかまとまりません。一方で、請求額が低過ぎると、十分な慰謝料を獲得できない結果となってしまいます。
不倫慰謝料の適正額は、離婚するかどうか、不倫の回数や頻度、不倫期間、婚姻期間、未成熟の子の有無など、具体的な事情に応じて決まります。どの程度の金額を請求するのがよいかわからない場合は、弁護士にアドバイスを求めましょう。
4-4. 必要な事項を端的に記載する|余計なことは書かない
慰謝料請求書には、あくまでも慰謝料請求に必要な事項を端的に記載すべきであって、余計なことを書くべきではありません。
不倫相手を恨む気持ちや、自分が置かれているつらい状況をぶつけたくなる気持ちもわかりますが、慰謝料請求に関してはマイナスに働くケースが多く見受けられます。怒りや悲しみをぐっと抑えて、冷静な状態で慰謝料請求書を作成することが大切です。

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5. 慰謝料請求書の送り方|メリットとデメリットを紹介
不倫相手に対する慰謝料請求書は、内容証明郵便で送付するのがお勧めですが、そのほかの方法で送付するケースもあり得ます。各方法のメリットとデメリットをふまえて、適切な送付方法を選択しましょう。
5-1. 【お勧め】内容証明郵便
内容証明郵便は、郵便局が差出人や宛先、差出日時、および内容を証明する郵便です。慰謝料請求の事実と内容が証明できる形で残るため、特に慰謝料請求権の消滅時効の完成を阻止したい場合に有効です 。
また、内容証明郵便は「正式な文書」として認識される傾向にあるため、不倫相手に対して慰謝料請求の「真剣度」を伝える こともできます。
内容証明郵便のデメリットは、一般の郵便に比べて費用が高い点です。配達証明オプションを付ける場合は、内容文書が1枚でも千数百円の費用がかかります。
しかし、多少費用がかかっても内容証明郵便のメリットは大きいため、基本的には内容証明郵便で慰謝料請求書を送付するのがお勧めです。
5-2. その他の郵便|普通郵便や特定記録郵便など
不倫慰謝料の請求書は、内容証明郵便以外の郵便で送付されるケースもあります。
普通郵便は、最も安い費用で送付可能です。請求書が相手に届いたかどうかを確認したい場合は、特定記録郵便を利用できます。
ただし、普通郵便や特定記録郵便は、請求内容などについて郵便局の証明を受けることができません。特に、時効による請求権の消滅を阻止する必要がある場合は、普通郵便や特定記録郵便ではなく、内容証明郵便を利用するのがよいでしょう。
5-3. メールやLINEなど
不倫相手の連絡先がわかる場合は、メールやLINEなどで慰謝料を請求する方法もあります。メールやLINEはほとんどコストがかからず、手軽に送付できる点がメリットです。
ただし、日常の連絡に使われるツールであるため、慰謝料請求をしても真剣に向き合ってもらえず、無視されてしまうケースが考えられます 。不倫相手に対して正式に慰謝料を請求する際には、メールやLINEではなく、郵便などで請求書を送付する方が適切です。
5-4. 手渡し
不倫相手に手渡しで慰謝料請求書を送付することは、よほどの事情がない限り避けたほうがよいでしょう。顔を合わせた際にトラブルが生じるリスクが高いうえに、請求書を渡すために不倫相手を追いかけまわすと、不審者として通報されてしまうおそれがあります。
慰謝料請求書は、基本的に郵便で送ることをお勧めします。
6. 慰謝料請求書の作成は自分でできる?
不倫相手に送付する慰謝料請求書は、本記事のテンプレートを参考にするなどして、自分で作成することもできます。しかし、慰謝料請求書の作成には法律的な判断が求められる場面が多いため、個別の事情に応じた適切な請求書を作成するためには、弁護士への依頼をお勧めします。
6-1. 弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すれば、必要な事項を過不足なく記載した適切な内容の慰謝料請求書を作成してもらえます。また、弁護士名義で慰謝料請求書を送付すれば、不倫相手が慰謝料の交渉に応じる可能性が高まります 。
示談交渉や、示談交渉が決裂したあとの訴訟の対応についても、弁護士に一任できます。不倫相手に対する慰謝料請求には大きな労力と精神的負担がかかりますが、弁護士に依頼することでこれらの負担を大幅に軽減できます。
6-2. 慰謝料請求書の作成は、行政書士にも依頼できる?
不倫慰謝料の請求書の作成は、行政書士にも依頼できます。
ただし、行政書士は、慰謝料請求書の作成に関して高度な法的アドバイスをすることが認められていません。また、行政書士は被害者の代理人として、示談交渉や訴訟などの対応を代行することもできません。
不倫相手に対する慰謝料請求は、請求書を送付して終わりではなく、その後の対応が重要です。慰謝料請求全般の対応を一貫して専門家に任せたい場合は、行政書士ではなく弁護士への依頼を検討してください。

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7. 慰謝料請求書の書き方と送り方に関してよくある質問
8. まとめ|不倫慰謝料の請求書を作成する際は、弁護士に相談を
配偶者の不倫相手に精神的苦痛の慰謝料を請求する際には、内容証明郵便などによって請求書を送付しましょう。
慰謝料請求書は、個別の事情に応じて必要な事項を過不足なく記載することが大切です。弁護士に相談すれば、慰謝料請求書に記載すべき事項について具体的なアドバイスを受けられます。また、示談交渉や訴訟などの対応も、弁護士に一任すれば安心です。
不倫慰謝料の請求は、離婚問題や男女問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)