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1. 離婚時に家の査定が必要な2つのケース
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1-1. 家の売却金額を現金化して財産分与するケース
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1-2. 夫婦のどちらかが住み続け、片方に現金を払うケース
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2. 離婚時に家の査定を行う2つの方法!どちらがおすすめ?
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2-1. 不動産会社に依頼する方法
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2-2. 不動産鑑定士に依頼する方法
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3. 離婚時における家の査定から売却・財産分与までの手順
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3-1. 家の名義人と住宅ローンの状況(残債・名義・連帯保証人)を確認する
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3-2. 複数の不動産会社へ査定を依頼する
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3-3. 売却の最低ラインや財産分与割合を決め、書面に残す
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3-4. 不動産会社と媒介契約を結び、家を売り出す
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3-5. 買主へ引き渡し、売却代金で住宅ローンを完済する
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3-6. 手元に残った現金を夫婦で分配する
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4. 離婚時に家の査定・売却を進める際の注意点
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4-1. 査定額=実際の売却金額ではない
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4-2. 共有名義の場合は売却のために「共有者全員の同意」が必須
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4-3. オーバーローン(売却額より残債が多い)の場合は要注意
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4-4. 財産分与の「対象」は別居時、「価値」は離婚時が基準になる
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4-5. 契約不適合責任を問われないよう、家や設備の不具合は隠さない
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5. 財産分与時の家の査定に関するよくある質問
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6. まとめ|離婚後の金銭トラブルを防ぐために家の査定は早めに!
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1. 離婚時に家の査定が必要な2つのケース
離婚時に家を財産分与する際、「家を現金化して売却金額を財産分与するケース」「夫婦のどちらかが住み続け、片方に現金を払うケース」では、家の査定が不可欠です。
家の価値を正確に把握しておかないと、財産分与すべき金額も正確に算出できません。主観的な予測のみで金額を決めてしまうと、財産分与で一方が多額の損失を被り、後に深刻なトラブルに発展するリスクがあります。
ここからは、離婚時に家の査定が必要な2つのケースについてそれぞれ詳しく解説していきます。
1-1. 家の売却金額を現金化して財産分与するケース
家を売却する場合、売却金額から住宅ローンの残債や売却にかかった諸費用を差し引いた残りの現金を、財産分与として分け合う形になることが一般的です。
この手取り額を把握するためには、まず売却金額の目安を把握する必要があるため、査定の依頼が不可欠です。
査定を依頼せず、「これくらいで売れるだろう」という主観的な予測だけで話し合いを進めてしまうと、相場とかけ離れた高値を付けて家が売れ残ったり、売却金額について意見が対立して売却手続きが停滞したりするリスクがあります。
また、実際の売却金額が予想を大幅に下回った場合、当初の分配計画が根本的に崩れ、その後の夫婦間の合意や生活設計に支障をきたす恐れもあります。
査定を依頼すれば、物件の立地や築年数などに基づいた客観的な家の価値を把握できます。したがって、売り出し価格の設定や財産分与の話し合いがスムーズに進みやすく、意見の対立や不公平が生じるリスクの軽減にもつながります。
1-2. 夫婦のどちらかが住み続け、片方に現金を払うケース
家を売却せず一方が住み続ける場合は、家の評価額や住宅ローン残高、ほかの共有財産とのバランスを踏まえ、代償金を支払って清算することがあります。離婚の財産分与における代償金とは、不動産の所有権を取得する側が、もう一方に対し、原則その価値の半分を現金で相手に支払う清算金です。
その際、家の評価額が分からなければ、家を出ていく方に支払うべき金額を正確に算出できません。
そのため、査定を通じて現時点での客観的な家の評価額を正確に把握しておくことが不可欠です。評価額を夫婦の話し合いで決めようとすると、家に住む側の「代償金を安く抑えたい」、家を出ていく側の「少しでも多く代償金をもらいたい」という利害が対立し、合意形成が難航してしまいがちです。
査定によって客観的な家の評価額を把握しておけば、夫婦双方が納得感を得やすいため、意見の対立を抑えつつ、建設的に話し合いを進めやすくなります。
なお、住宅ローンが残っている場合は、家の評価額から住宅ローンの残債を差し引いた「純資産額」を基準として代償金を計算することがあります。その際、住宅ローンの残債が家の評価額を上回る状態であれば、一般的には家にプラスの資産価値がないものとして扱われることが多く、財産分与の対象にならないケースもあります。
ただし、住宅ローンの負担状況や他の財産との調整が必要になるため、実際の分け方はそれぞれの事情によって異なります。
2. 離婚時に家の査定を行う2つの方法!どちらがおすすめ?
離婚時に家の査定を行う方法は、主に「不動産会社に依頼する方法」「不動産鑑定士に依頼する方法」の2つあります。どちらの方法が適しているかは、家の財産分与の方法や夫婦間の合意形成の状況などによって異なります。
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。
2-1. 不動産会社に依頼する方法
家の売却を検討している場合は、不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。不動産会社による査定は市場での売却を前提として行われるため、周辺の類似物件の成約事例や現在の市場動向を踏まえた、実際の売却価格に近い査定額を把握できます。
不動産会社による査定を利用する場合は、複数社に査定を依頼し、査定結果を比較・検討するようにしましょう。複数社に査定を依頼することで、1社の主観や独自の判断基準に左右されない、現実的かつ客観的な相場を把握できます。
とくに離婚時の財産分与においては、夫婦間で利害や感情が対立しやすく、売り出し価格の設定でトラブルに発展するケースも少なくありません。
また、複数社の査定結果に基づいた公平な判断基準を設ければ、夫婦双方が納得のいく形で売却活動を進めやすくなります。
2-2. 不動産鑑定士に依頼する方法
不動産鑑定士は、国家資格を有する不動産鑑定の専門家で、国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に基づき、厳格な手順を経て鑑定評価を行います。
不動産鑑定士が行う鑑定評価は、高い客観性と信用力を備えた公的な証明資料となるため、離婚調停や裁判でも重要な参考資料になり得ます。
不動産会社による査定とは異なり、不動産鑑定士の査定には20万円から50万円程度の費用がかかるので、一般的な査定方法ではありません。
不動産鑑定士による査定は、主に離婚後に夫婦のどちらかが家に住むことを検討している場合や、離婚調停や裁判において夫婦間で意見が激しく対立している場合に利用されるケースが多いです。
3. 離婚時における家の査定から売却・財産分与までの手順
ここからは、離婚時における家の査定から売却・財産分与までの一般的な流れについて解説していきます。
3-1. 家の名義人と住宅ローンの状況(残債・名義・連帯保証人)を確認する
家の査定を依頼する前に、まず家の名義人を正確に把握しておきましょう。家の売却や活用の意思決定が行えるのは、登記上の名義人のみです。家が共有名義の場合は、リフォームや売却などの際に他の共有者の同意が必要になります。
また、家の固定資産税の支払い義務は、登記上の名義人(共有名義の場合は共有者全員)に課せられます。家の名義が曖昧なまま離婚してしまうと、「名義人である相手の同意が得られず、売却や活用ができない」「維持管理費の負担で揉める」といったトラブルを招く恐れがあります。
トラブルを未然に防ぐためにも、まずは法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、家の名義人を正確に把握しておくことが重要です。
家の住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンの状況(残債・名義・連帯保証人)についても正確に把握しておきましょう。住宅ローンの残債は、離婚後も引き続き住宅ローンの名義人が返済していくことになりますが、名義人が滞納した場合は、連帯保証人が残債の返済義務を負うことになります。
ただし、家を売却する場合は、住宅ローンの残債が売却金額を上回るか(オーバーローン)、下回るか(アンダーローン)によって、その後の売却や財産分与時の対応が大きく異なります。
住宅ローンの名義人や連帯保証人はローンの契約書、現時点での残債額は金融機関から送付される残高証明書や返済予定表で確認可能です。あわせて、家が財産分与の対象となっているかも忘れずに確認しましょう。
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた共有財産のみです。結婚前に購入した家や、婚姻期間中であっても親から相続した家や贈与を受けた家、別居後に購入した家は特有財産とみなされ、原則として財産分与の対象になりません。
3-2. 複数の不動産会社へ査定を依頼する
家の権利関係や住宅ローンの状況を確認したら、客観的な家の価値を把握するため、複数の不動産会社へ査定を依頼しましょう。不動産会社の査定額は、各社の査定基準や主観に大きく左右されるため、査定額も不動産会社によって大きく変わります。
1社の査定額だけでは適正価格を正確に判断できないため、相場を大幅に下回る価格で売りに出してしまったり、不公平な財産分与を行ったりするリスクがあります。
複数社の査定額を比較すれば、客観的な適正価格を把握できるため、売り出し価格や財産分与額を決める際の公平な基準として活用できます。また、各社の担当者の対応や販売戦略なども比較・検討できるため、安心して売却を任せられる不動産会社の見極めにも役立ちます。
3-3. 売却の最低ラインや財産分与割合を決め、書面に残す
家の査定が終わったら、売却の最低ラインと財産分与の割合について夫婦で話し合います。家を売却して現金化する場合、「いくら以上なら売却する」という最低ラインを明確にしておかないと、「もっと高値で買ってくれる人がいるはず」という期待から、売却のタイミングを逃してしまうリスクがあります。
売却活動が長期化すると、買い手から敬遠されやすくなるだけでなく、住宅ローンの利息や固定資産税、維持管理費などの費用負担も増大します。売却の最低ラインは、住宅ローンの残債や売却にかかる諸費用、新居への住み替え費用、手元に残しておきたい金額などを考慮して設定しましょう。
次に、住宅ローンの残債や諸費用などを差し引いた残りの現金を夫婦でどのように分けるのか決めます。財産分与の割合は、名義や収入にかかわらず原則として2分の1ずつです。ただし、夫婦双方の合意があれば、基本的なルールにとらわれず自由に割合を決められますし、一方が特殊な能力や努力によって財産を築いた場合なども特別事情により割合が修正される場合があります。
売却の最低ラインや財産分与の割合を決めたら、後の「言った」「言わない」のトラブルを未然に防ぐためにも、合意内容を明確に記載した書面を作成しましょう。可能であれば、強制執行認諾文言付公正証書として残しておくことが望ましいです。
強制執行認諾文言を記載しておけば、家の売却代金や代償金などの不払いがあった際、裁判を経ることなく強制執行による財産の差し押さえが可能になります。
3-4. 不動産会社と媒介契約を結び、家を売り出す
売却の最低ラインや財産分与割合を決めた後は、不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を始めます。媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
|---|---|---|---|
依頼できる社数 | 1社のみ | 1社のみ | 制限なし |
契約期間 | 3カ月以内 | 3カ月以内 | 法律上の上限はないが、 |
業務報告の頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 報告義務なし |
自己発見取引 | 不可 | 可 | 可 |
専属専任媒介契約は制限が厳しい分、不動産会社も積極的に売却活動を行ってくれる傾向にあるため、早期の売却が期待できます。売却スケジュールや希望に応じて、自分に合った媒介契約を選択しましょう。
媒介契約を結んだ後は、不動産会社がポータルサイトやチラシなどに物件情報を掲載し、購入希望者を募集します。そこで購入希望者が見つかれば、実際に物件を見学してもらう「内覧」を実施します。
内覧は購入希望者の購入判断を大きく左右する重要な場であるため、内覧前は清掃や片付けを行い、当日は内覧者への丁寧な対応を心掛けましょう。購入希望者から購入の意思表示があった場合は、売買価格や引き渡し時期などの交渉に移ります。
売買価格や条件について双方が合意すれば、売買契約の締結へ進みます。
3-5. 買主へ引き渡し、売却代金で住宅ローンを完済する
売買契約を締結した後は、契約時に定めた決済・引き渡し日に売却代金の受領や住宅ローンの完済、買主への引き渡しを行います。決済・引き渡し当日は、主に以下の書類が必要になります。
登記識別情報または登記済権利証
固定資産税納付書または評価証明書
抵当権抹消登記申請書(住宅ローンが残っている場合)
実印(認印は不可)
印鑑証明書(発行日から3カ月以内のもの)
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
売却代金の受領を確認できるもの(通帳、キャッシュカードなど)
家の引き渡しに必要なもの(鍵、建築確認済証、図面一式、付帯設備の取扱説明書など)
決済・引き渡し当日は、以下の流れで手続きが進みます。
司法書士による本人確認、書類の確認
買主から売却代金を受領
売却代金で住宅ローンを完済
仲介手数料や固定資産税などの清算
鍵や関連書類の引き渡し
鍵や必要書類の引き渡しが完了したら、法務局で抵当権抹消登記を申請して抵当権を抹消し、最後の所有権移転登記を申請します。これらの登記申請は司法書士が行うのが一般的です。所有権移転登記によって家の名義が買主に変更されれば、これで売却手続きは完了です。
3-6. 手元に残った現金を夫婦で分配する
売却手続きが完了した後は、事前に合意した財産分与の割合に従い、手元に残った現金を夫婦で分け合います。財産分与として売却代金を分配する場合は、税務上のリスクを回避するためにも、離婚が成立した後に分配するのが原則です。
離婚が成立する前に分配すると、単なる夫婦間の贈与とみなされ、高額な贈与税が課される可能性があるためです。また、売却代金を一方的に使い込まれたり、離婚後に約束通り支払ってくれなかったりといったトラブルへの備えも欠かせません。
確実に財産分与を受けるためにも、支払金額や期限などを明確に定めたうえで、合意内容は強制執行認諾文言付の公正証書として残しておくことが望ましいです。
強制執行認諾文言があれば、万が一約束通りに支払ってくれなかった場合に、裁判を経ることなく強制執行の手続きへ移行できます。
4. 離婚時に家の査定・売却を進める際の注意点
離婚時に家の査定や売却を進める際には、いくつか事前に把握しておきたい注意点があります。これらを理解しないまま手続きを進めてしまうと、売却手続きが思うように進まなかったり、後からトラブルにつながったりする可能性があります。
離婚に伴う不動産の取り扱いは通常の売却とは異なる点も多いため、重要なポイントをあらかじめ理解しておくことが大切です。離婚後のトラブルを防ぐためにも、以下の注意点をしっかり押さえておきましょう。
4-1. 査定額=実際の売却金額ではない
家を売却する際にまず知っておきたいのは、査定額=実際の売却金額ではないという点です。査定額は、成約の確定を保証する金額ではなく、あくまで「この金額で売れる可能性が高い」という予想金額に過ぎません。
不動産会社による査定方法には、「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。
机上査定:立地や面積、築年数、近隣の類似物件の成約事例などのデータのみで査定額を算出する方法
訪問査定:担当者が物件に訪れ、建物の状態や日当たり、周辺環境なども細かく確認したうえで査定額を算出する方法
訪問査定では、実際に現地を見ないと分からない要素も査定額に反映できるため、机上査定よりも正確な査定額を算出できます。しかし、家は常に価格の変動が生じる財産であり、実際の売却価格は最終的に買主との合意によって確定するものです。
そのため、査定額と実際の売却金額は必ず一致するとは限りません。査定額通りに売れることを前提に売却活動や財産分与の話し合いを進めると、実際の売却金額が査定額を大きく下回った際、計画通りに財産分与ができなくなったり、住宅ローンを完済できなくなったりといった事態を招く恐れがあります。
このようなリスクを避けるためにも、査定額と実際の売却金額が懸け離れる可能性も踏まえたうえで、保守的に計画を立てることが重要です。
4-2. 共有名義の場合は売却のために「共有者全員の同意」が必須
共有名義の家全体の売却では、売買契約や所有権移転登記などの際、共有者全員の印鑑証明書の提出と実印の押印を求められます。
以下のようなケースでは、売却の協力や法的に有効な同意を得られないため、家全体の売却手続きは事実上ストップします。
相手が売却に反対している
音信不通・行方不明などにより、相手の売却の意思を確認できない
相手が意思能力を欠いている(認知症、精神障がいなど)
これらのケースに該当する場合、家全体を売却するには、以下のような状況に適した法的手続きを踏む必要があります。
相手が売却に反対している場合:財産分与調停・審判(離婚前〜離婚後2年以内)、共有物分割訴訟(離婚から2年経過後など)
音信不通・行方不明の場合:不在者財産管理人制度、所在等不明共有者の持分取得制度、失踪宣告(7年以上行方不明の場合)
意思能力を欠いている場合:成年後見制度
4-3. オーバーローン(売却額より残債が多い)の場合は要注意
住宅ローンの残債が家の売却額を上回っている、いわゆるオーバーローンの状態である場合、その後の売却や財産分与時の対応が異なります。一般的な仲介や買取で家を売却するには、住宅ローンを完済し、金融機関に抵当権を抹消してもらうことが不可欠です。
抵当権とは、住宅ローンなどの借り入れをする際に、不動産を担保として設定する権利のことです。住宅ローンを利用して家を購入する場合、金融機関は貸したお金を回収できなくなるリスクに備えるため、その不動産に抵当権を設定します。
万が一、ローンの返済が滞った場合、金融機関は抵当権を行使して不動産を競売にかけ、その売却代金から優先的に返済を受けるのです。
しかし、オーバーローンの状態では売却額のみで住宅ローンを完済できないため、抵当権を抹消してもらうには不足分を自己資金で補填する必要があります。つまり、自己資金で残債を一括返済する必要があるのです。
不足分を補填できなければ、一般的な仲介や買取では売却はかなり困難になります。この場合は、任意売却を検討する必要があります。
任意売却とは、住宅ローンの滞納やオーバーローンの状態において、債権者(金融機関)からの同意を得て家を売却する方法のことです。
金融機関の同意が得られれば抵当権を抹消してもらえるため、オーバーローンでも売却活動が行えるようになります。ただし、任意売却には以下の注意点もあります。
売却後も住宅ローンの返済義務が残る
信用情報に傷がつき、クレジットカードの発行や借入が難しくなる可能性がある
通常の売却よりも時間がかかる場合がある
オーバーローンの場合、家にプラスの資産価値がないと評価され、財産分与の対象とならないと扱われることが多いです。しかし、住宅ローンの返済義務は引き続き住宅ローンの名義人が負うことになるため、財産分与の際は残債額も考慮したうえで金額を決めることが大切です。
4-4. 財産分与の「対象」は別居時、「価値」は離婚時が基準になる
財産分与では、「どの財産が対象なのか」と「どの程度の価値があるのか」で基準となる時点が異なります。
財産分与の対象となるのは、原則として夫婦の協力関係が事実上終了した「別居時」に存在していた共有財産です。一方で、その家の価値は、原則として「離婚成立時(裁判の場合は口頭弁論終結時)」を基準に算定されるのが一般的です。
4-5. 契約不適合責任を問われないよう、家や設備の不具合は隠さない
家を売却する場合は、後に買主から契約不適合責任を問われないよう、家や設備の不具合は隠さず正直に伝えましょう。契約不適合責任とは、契約に基づいて引き渡した目的物の数量や品質などが契約内容と一致しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
家を売却した後に雨漏りやシロアリ被害などが発覚した場合、買主から損害賠償や修繕、契約解除を請求される可能性があります。家を少しでも高値で売りたいがために、家や設備の不具合を隠して売却してしまうと、かえって多大な損失を招くことになりかねません。
売却後のトラブルを防ぎ、安心して取り引きを終えるためにも、誠実な情報開示を心掛けましょう。特に築年数が経過した家は目に見えない場所に不具合が潜んでいるリスクが高いため、専門家に建物調査を依頼したり、契約不適合責任の免責特約を盛り込むように買主と交渉したりするなど、事前に対策を講じておくことも重要です。
5. 財産分与時の家の査定に関するよくある質問
家の名義が自分の単独名義もしくは夫婦の共有名義であれば、売却を阻止することが可能です。家の売却では、登記上の名義人全員の同意と、全員分の印鑑証明書の提出・実印の押印が不可欠です。
自分が売却に同意しない限り、相手が強引に査定や売却手続きを進めたとしても、勝手に売却が成立することはありません。一方、家の名義が相手の単独名義である場合は、相手が単独で売却手続きを進められるため、売却を阻止するのは困難です。
しかし、単独名義であっても、婚姻中に夫婦が協力して取得した住宅は財産分与の対象となる共有財産と判断されることがあります。そのような不動産を相手が一方的に処分しようとしている場合には、裁判所に申し立てて処分禁止の仮処分などの保全措置をとることで、売却を一時的に制限できる可能性があります。
具体的にどの手続きを取るべきかは状況によって異なるため、早めに弁護士などの専門家へ相談することが重要です。
机上査定であれば、住宅ローンの名義人ではない妻(夫)でも依頼できます。机上査定は市区町村や面積、築年数などの基本的なスペックに基づいたおおよその相場を知るための手段であるため、名義人本人であるかどうかの確認は行われません。
しかし、本格的な売却に向けた訪問査定や媒介契約は名義人本人の同意が必要になります。
離婚前と離婚後のどちらのタイミングで査定・売却すべきかはケース・バイ・ケースですが、基本的には離婚前に査定・売却するのがおすすめです。
離婚後は相手と音信不通になったり、売却の同意・協力が得られなかったりして、売却手続きが滞ってしまうリスクがあるためです。
ただし、売却で得た現金を分け合うタイミングと名義には注意が必要です。 #箇条書きモジュール
・共有名義の場合:それぞれの持分割合に応じて売却代金を分けるため、離婚前に現金を分けても「夫婦間の贈与」にはあたりません。
・単独名義の場合:離婚前に売却代金を夫婦で分け合うと、名義人から配偶者への贈与とみなされ、贈与税が課される恐れがあります。
6. まとめ|離婚後の金銭トラブルを防ぐために家の査定は早めに!
財産分与の対象に家が含まれる場合、売却・居住のどちらを選択するにせよ、査定を通じて家の価値を正確に把握しておくことが不可欠です。
家の価値を曖昧にしたまま協議を進めてしまうと、売却益の配分や代償金の金額で相手ともめたり、一方が不当に多額の損失を被ったりと、後に深刻なトラブルを招くリスクがあります。
トラブルを未然に防ぎつつ、売却や財産分与をスムーズに進めるためにも、家の査定は早めに依頼しましょう。
(記事は2026年5月1日時点の情報に基づいています)