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監護権とは? 親権との違いや権利者を分けるメリット・デメリット

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日常生活において子どもを育てる「監護権」は原則として親権者が行使します(c)Getty Images
親権は「身上監護権」と「財産管理権」に分けられ、このうち身上監護権にあたるものを「監護権」と言います。簡単に言うと、監護権とは「日常生活において子どもを育てていく権利」です。親権者や監護者を決める際には一定の判断基準があり、調停や裁判によって親権と監護権の分離や監護者の指定、変更もできます。 親権と監護権を分離させるケースや、監護者の指定をするそのメリットとデメリット、親権者と監護者を変更する手順や注意点、2026年4月に導入された共同親権制度や法定養育費制度などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
目 次
  • 1. 監護権とは
  • 1-1. 身上監護権の内容
  • 1-2. 財産管理権の内容
  • 2. 親権と監護権の違い
  • 2-1. 監護権は親権者が行使するのが原則
  • 2-2. 監護者の指定をするケース
  • 3. 共同親権において、監護者の指定をしておくメリットとデメリット
  • 3-1. メリット
  • 3-2. デメリット
  • 4. 親権者や監護者、監護の分掌を定める手続き
  • 4-1. 親権者を定める手続き
  • 4-2. 監護者を定める手続き
  • 5. 親権者や監護者を定める際の判断基準
  • 6. 親権者や監護者を変更する手続き
  • 6-1. 親権者の変更
  • 6-2. 監護者の変更
  • 7. 親権者や監護者を決定、変更する際の注意点
  • 7-1. 親権者の決定、変更における注意点
  • 7-2. 監護者の決定、変更における注意点
  • 8. 監護者になれなくても子どもには会える?
  • 9. 2026年4月に導入された共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が監護権に与える影響は?
  • 9-1. 共同親権と監護権行使
  • 9-2. 法定養育費制度
  • 9-3. 養育費債権に対する先取特権の付与
  • 10. 監護権について弁護士に相談するメリット
  • 11. 監護権についてよくある質問
  • 12. まとめ 親権と監護権の分離や監護者の指定を考えている人は弁護士への早期相談を
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1. 監護権とは

未成年の子どもを社会人になるまで監護・養育する権利義務である「親権」は、子どもの財産を管理したり、署名押印が必要な契約に対応したりする「財産管理権」と、子どもと一緒に暮らし、養育する「身上監護権」に分けられます。このうち、身上監護権を「監護権」とも言います。

親権の内容を図解。身上監護権、あるいは監護権は「日常生活において子どもを育てていく権利」を指す
親権の内容を図解。身上監護権、あるいは監護権は「日常生活において子どもを育てていく権利」を指す

1-1. 身上監護権の内容

監護権は、簡単に言うと「日常生活において子どもを育てていく権利」です。監護権には、以下の権利が含まれているとされています。

  • 日常的な世話や教育をする権利

  • 居所指定権:子どもの居所を指定する権利

  • 懲戒権:子どもに対して懲戒やしつけをする権利

  • 職業許可権:子どもの就業を許可する権利

このほかに、子どもが婚姻や離婚、養子縁組、相続の承認などの身分行為を行う際に親が同意し、代理する権利である「身分行為の代理権」が監護権に含まれているとする見解もあります。

一方、たとえば相続の承認や放棄などは法的にも重要な行為であり、親権に含まれる財産管理権にも直結します。そのため、身分行為の代理権は監護権には含まれないと考えるほうが自然です。

1-2. 財産管理権の内容

財産管理権は、日常的な生活というよりも、子どもの権利を守ったり、財産管理をしたり、子どもの法的な地位を定めたりといった重要な権利行為を対象としています。主な内容は以下のとおりです。

  • 包括的な財産管理:子どもの財産全般を維持管理する権利

  • 法律行為の代理権:財産の売却や贈与などを代理する権利

  • 同意権:子どもが財産に関する法律行為をする場合に同意を与える権利

2. 親権と監護権の違い

親権は未成年の子どもが成人になるまで監護・養育する権利であり、監護権はそのなかの「日常生活において子どもを育てていく権利」を指します。

監護権は子どもの日常生活に必要な行為をする権利、親権は子どもの法的権利を守ったり、財産の管理をしたりする権利と覚えておくとよいでしょう。

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2-1. 監護権は親権者が行使するのが原則

監護権は親権の一部であるため、親権者、つまり父母が行使するのが原則ですが、父母の協議や家庭裁判所の定めで、監護権を行使するもの(監護者)を定めることができます。

監護者を定めた場合、日常の監護や教育、進学先の決定、居所指定(重要なものを含む身上監護全般)などに関する監護者の決定は親権者に優先し、親権者は監護者のこれらの権利行使を妨げることが出来ません。

2-2. 監護者の指定をするケース

監護者の指定が必要な典型的なケースは離婚前の別居などで、どちらが子どもを育てるか争いが激しい場合です。子の連れ去りなどが生じる恐れがあったり、養育が困難となるケースが多いため、監護者の指定が必要になります。

次に離婚後ですが、離婚後の単独親権については、そもそも親権を希望しなかったか、共同親権とすることが不適当であることが前提となるため、通常は、単独親権者がそのまま監護権を行使します。離婚の交渉を円滑に進めるためなどで、親権と監護権を分離することもありますが、共同親権が導入された現在ではかなり例外的な場合に留まるかもしれません。

一方で、共同親権になった場合、離婚後も父母が双方とも親権を取得するので、例えば2週間交代で子どもの監護をするような場合を除き、基本的にどちらかの親が常に監護をするのであれば、監護者を指定しておくメリットがあります。どちらが離婚後に養育するか揉めているケースでは、この監護者の指定は必須です。

監護者の指定は、夫婦間の協議、家庭裁判所で認められた場合に出来ます。監護者の指定をしなくても、日常的な監護や教育は一方の親権者が単独でできますが、進学先を決めたり、引っ越し(居所指定権の行使)などは他方の親権者の許諾が必要です。

そのため、それらを避けたい場合は、単独親権とするか、共同親権でも監護者の定めや、監護の分掌に関してきちんと主張をする必要があります。

3. 共同親権において、監護者の指定をしておくメリットとデメリット

共同親権について監護権者の指定には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

3-1. メリット

離婚係争を通じて双方の信頼関係が破綻する前に早期解決をすれば、子に関する信頼関係だけは維持できるメリットがあります。

離婚時に単独親権を希望している場合でも、相手方が共同親権とすることを強く争っている場合は、家庭裁判所の裁判で単独親権か共同親権かの判断が必要になり、離婚をするまでに非常に長い時間がかかる恐れがあります。

また、相手のDVなどの必要的単独親権の要件が認められない場合、長らく争った結果、共同親権となることも否定できません。その場合には、共同親権とはするものの、監護者の指定については定めてもらうことで、双方が納得するケースは考えられます。

3-2. デメリット

監護者の指定をしたとしても、親権には財産管理権も含まれるため、子に法的な権利や財産管理に関する行為が発生した場合は、他の親権者の同意が必要になります。

例えば、子が相続人になる遺産分割や、交通事故の被害者になってしまった場合など、こうした状況は、頻度は少ないとはいえ発生する可能性があります。必要なタイミングで同意が得られなければ、その行為自体を円滑に行うことができなくなり、適切な子育てが難しくなります。

そのため、DVがある場合や離婚に至る経緯の中で、およそ意思疎通自体が困難なケースではきちんと単独親権を主張する必要があります。

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4. 親権者や監護者、監護の分掌を定める手続き

民法改正により、協議離婚では、親権者の指定を求める家事審判または家事調停の申立てがされていれば、離婚の届出を受理することが出来ることになりました。とはいえ、裁判離婚等では親権者を定める必要があり、今後も一般的には離婚時に親権者を定めることが多いと考えられます。

親権について、単独親権を選択した場合は親権を取得する者を決め、共同親権を選択した場合は双方が親権者となります。また、共同親権を選択した場合でも監護者の指定をする場合や、監護の分掌を定める場合は、権限の範囲を明確にし、法的に有効な言葉で離婚協議書に明記する必要があります。

特に、名字の変更、進学先の決定や、引っ越しについては、父母で考え方が異なることが多く、離婚後も揉めることが多いので、きちんと定めておくとよいでしょう。

裁判所で離婚条項を作成した場合、法的有効性に疑義が生じる可能性は低いものの、当事者間のみで作成する離婚協議書には法律家の手が入らないため、あとで監護権の範囲などでトラブルが生じる可能性があります。

4-1. 親権者を定める手続き

協議離婚の場合は、基本的に当事者同士の話し合いで単独親権とするか共同親権とするかを定めます。単独親権の場合は、どちらが親権を持つのかも決める必要があります。当事者同士の協議で親権が決められない場合は、調停や裁判を通じて決定します。

なお、協議離婚において家庭裁判所へ親権者指定の審判または調停を申し立てている場合には、一定の条件のもとで、親権が未確定でも離婚届が受理されるケースがあるため注意が必要です。

4-2. 監護者を定める手続き

監護者は、当事者間の協議や家庭裁判所の調停等で定めることが出来ます。

本当は単独親権を希望しているものの、共同親権とする代わりに、進学先や引っ越し等を単独で決められるように、監護者だけは指定して欲しいと希望することはあり得ます。しかし、協議や調停において、双方の合意で定められない場合には、共同親権とすべきか単独親権とすべきか、あるいは監護者を定めるべきか、家庭裁判所の判断に委ねることになります。

また、監護者の指定は離婚が成立するまでの間でも可能です。実際に筆者も、別居時にどちらが子を連れて出るか夫婦間で協議できず、同居中に監護者の指定の審判をして、別居中の監護者を定めるといった経験があります。

今後は離婚後だけでなく、別居に際しての監護者の取り扱いを定めるという、このような利用も増えると考えられます。

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5. 親権者や監護者を定める際の判断基準

裁判所が親権の定めをしたり、監護者を定める場合には子の利益の観点から判断します。具体的には、子どもへの愛情や監護状況といった親子関係、子どもの意思、子どもの年齢、父母の健康状態や精神状態、経済状況などを総合的に考慮して定められます。協議や調停など、双方の話し合いで決める場合は、もう少し柔軟に定められるでしょう。

離婚をするからには男女の信頼関係はすでにないと思われますが、家事や育児をどちらかの配偶者に任せきりにせず、子に対していわば5対5の割合で関わってきたケースなどでは、子の養育に関する信頼は残りやすいと考えられます。

そのため、期間を区切って交代で監護をしたり、重大な医療行為の方針や引っ越しは二人で共同で考えるものの、進学先の決定などは単独で行使できるようにする監護の分掌の定めなどがしやすくなります。

6. 親権者や監護者を変更する手続き

親権者や監護者は、離婚後にも変更できます。それぞれの手続きを解説します。

6-1. 親権者の変更

双方のみの話し合いでは親権者を変更できません。親権の変更は重大な事案となるため、裁判所での手続きが必要です。

特に、単独親権を有する親から他の親の単独親権に変更することは、例外的な事由がない限り認められません。すでに親権者である親と子との生活を裁判所が半ば強制的に変更することになるので、虐待などの事由が客観的に確認できるケースでないと認められる可能性は低いです。

この類型の親権者の変更は子どもの利益にかなうか、変更に正当な理由があるのかが論点となりますが、あくまでそうしなければならないほど強い事由があるかどうかで審理します。筆者の弁護士としての経験上も、親権者変更が認められるのは、児童相談所が介入している場合や、親権者が子どもの不登校を解消できない場合など、例外的なケースです。

単独親権から共同親権に移行して欲しいという申立ての場合は、上記よりは多少は緩やかな可能性があります。とはいえ、子の養育や生活状況に大きな影響を及ぼす可能性があるため、現在の養育状況の問題や、子の利益に照らした必要性などの理由が認められる必要があると考えられます。

また、一般的な説明としては、父母の子の養育にあたって共同で親権を行使する意思、互いに協力関係にあるかに加え、父母と子との関係や父と母との関係などについて、当初の協議の際に基礎とされた重要な事情に変更が生じ、共同親権への変更が子の利益に適うといえるかどうかが重要とされています。この点については、裁判例の蓄積がなく、今後の裁判所の判断が待たれます。

なお、改正民法では、子が自ら親権者変更を申し立てることも可能となりました。

6-2. 監護者の変更

監護権についても、子の意思や父母の生活状況など、子の利益の観点から判断されます。

しかし、監護者は双方の協議(話し合い)による変更も可能です。実際に筆者も協議離婚をする際に、どちらが子を監護養育するかについて、「子の成長度合いに合わせて定期的に協議する」という条項を定めた事例があります。

また、離婚協議で監護者が決まらないときは裁判所の調停や審判で定めていきます。

7. 親権者や監護者を決定、変更する際の注意点

親権者を決定、変更する際は「子の連れ去り」「親子交流の拒否」「不貞行為」「年収の差」などに注意する必要があります。

7-1. 親権者の決定、変更における注意点

裁判所は、父母と子の関係、父と母の関係、その他一切を考慮して、共同親権とすべきか単独親権とすべきかを判断します。親権者の決定において特に注意すべき点を解説します。

【子の連れ去り】
「子の連れ去り」とは、夫婦が別居する際、一方が他方の同意を得ずに子どもを連れ出す行為を指します。

これまでは主たる監護者が子を連れて別居しても法的に問題とされる可能性はほとんどありませんでした。しかし、共同親権の施行により、警察や検察も体制や考え方を変えてきており、DVなどの事情がない場合は、子の連れ去りについては誘拐として刑事罰を適用される可能性が指摘されています。

また、今後、家庭裁判所でも親権者決定において不利に扱われる可能性があります。これから別居を考えている人は、「子の連れ去り」は避けたほうが無難です。別居に際しどちらが子を育てるか、夫婦で話し合いが出来ない場合は、監護者を家庭裁判所で定める必要があります。

【親子交流の拒否】
正当な理由がないにもかかわらず、親子交流をさせない行為も親権者の決定に影響を与えます。

【不貞行為】
不貞行為自体は、親権者の決定に大きく影響しません。ただし、離婚していないにもかかわらず子どもを交際相手に会わせている、あるいは子どもの養育をせずに遊んでいるといった証拠があれば、子の福祉の観点から、親権の決定に大きく影響する可能性があります。

【年収の差】
現在のところ、家庭裁判所が親権者を決定する際に重視しているポイントは、子の養育実績や養育能力です。経済的なケアは親権や監護権の取得ではなく、養育費で行うべきだと考えています。そのため、年収の差は親権者の決定にはほとんど影響しません。

7-2. 監護者の決定、変更における注意点

監護者は子どもの利益に必要性があるために設定されるものであるため、子の養育環境に著しい変更があれば、監護者が変更される可能性があります。

ただし、たとえば監護者が再婚したとしても、それだけを理由に監護者を変える必要があるとはされません。再婚相手と子どもがうまくいっていないなど、子の利益の観点からすでに指定されたものが監護権を持ち続けることが不適当とみなされれば、他方親に監護者が変更になる可能性があります。

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8. 監護者になれなくても子どもには会える?

離婚をする際に単独親権を選んだ場合や、共同親権で監護者を定めた場合でも親子交流を行うことが出来ます。親子交流は子どもの権利としての側面が強いため、子どもの心身の成長を害する場合や子どもの意思に反する場合は、親子交流が実施できなくなる場合があります。

また、子どもと円滑に会う前提として、親子交流を義務として迫るのではなく、監護者との信頼関係を構築し、損なわないようにしなければなりません。

9. 2026年4月に導入された共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が監護権に与える影響は?

2026年4月に施行された改正民法によって共同親権が認められるようになり、法定養育費制度や先取特権も導入されました。これらの制度が、監護権に与える影響について解説します。

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9-1. 共同親権と監護権行使

共同親権を選択する場合は双方が親権を持つため、監護の分掌をしてお互いが監護権を分担してもよいですし、どちらかが単独の監護者となるケースもあります。

ただし、双方が離婚後も信頼関係を保っているのであれば問題はないものの、コミュニケーションをとるのが難しく、早く離婚するために共同監護計画を定めたような元夫婦の場合、早々に行き詰まる可能性があります。

一度合意で決めた計画は、引っ越しや子どもの生活状況の変更などの事情がない限り、簡単に変更できない可能性があります。そのため、離婚後の子どもとの関わりを父と母でどのように分担していくのか、監護の分掌、あるいは単独での監護権行使について、離婚時にきちんと理解したうえで定める必要があります。

離婚時に離婚後の監護に関する双方での話し合いが難しい場合は、事実上は監護している親権者が日常行為について単独で養育を行い、進学先や引っ越し先の決定、重大な医療行為などは、相手方の同意を得て進めるかたちになります。

名字の変更、進学先や引っ越し先の決定など、他方の親権者の同意を要する行為について、当事者間で合意が出来ない場合は、家庭裁判所の親権行使者の指定調停や審判で、その特定事項についてどちらの親権者が決定をすべきか定めることになります。

9-2. 法定養育費制度

「法定養育費制度」とは、離婚後に養育費に関する取り決めをしていなくても、子を監護する親が監護していない親に対し、一定期間にわたって法律で定められた額の養育費を請求できる制度です。

これまで養育費などは、監護者である親から非監護者である親に具体的な請求がされた場合に請求権が発生する、というのが司法の実務的な理解でした。

法定養育費制度が導入され、具体的な請求がない期間についても、法務省令で定める最低限の養育費については請求が可能となります。金額は子ども一人当たり月額2万円です。婚姻外で生まれた子どもについても父親が認知した日から発生します。

ただし、この法定養育費は、最低限の生活保障を維持するためのものであり、本来の養育費を定めるためのつなぎ的な性格が強いため、本来の養育費に比べて金額が低くなることが多いです。この一人2万円という金額は、養育費算定表では、子を育てる権利者側がパートなどで年収150万円、支払う側の年収を250万円として算定した場合の金額と同額です。そのため、法定養育費制度が始まったからといって、養育費調停などを行わなくてよいわけではありません。

法定養育費と本来の養育費との差額は過去にさかのぼって請求できないため、別居時や離婚時には婚姻費用額や養育費の金額を定める必要があります。

そして、この法定養育費にも後述の先取特権(さきどりとっけん)が付与されているため、その存在を証明すれば調停などを経ることなく強制執行ができます。

9-3. 養育費債権に対する先取特権の付与

「養育費債権に対する先取特権」とは、養育費の支払いが滞った場合、相手方の財産を調停や審判などを経ずに差し押さえられる権利です。民法改正により、家族としての生活に必要な婚姻費用のほか、養育費や扶養料など、子の生活に必要な金銭債権についても先取特権の対象となりました。

これにより、今まで養育費などの強制執行には、執行文付与がされた公正証書や、審判書等の厳格な文書が必要だったのに対し、当事者間で作成された離婚協議書、合意書などでも強制執行できるようになりました。

従来は、仮処分を含め、調停や審判のために数カ月単位の時間が必要だったものの、先取特権が付与されることで監護者は迅速に生活費を確保できる可能性があります。この先取特権は子ども一人当たり月8万円の上限があるため、養育費がそれより高い方は、原則通り、調停調書や判決などの債務名義の取得が必要です。

ただし、強制執行で確実に養育費を得るためには、相手の勤務状況や資産状況の健全性が前提となるのは今までと変わりません。

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10. 監護権について弁護士に相談するメリット

単独親権か共同親権とすべきか、あるいは共同親権において監護権の分掌や監護者の指定をすべきかなどは、離婚した元夫婦の生活を多く見ている人間でないとイメージがつきません。そのため、単独親権や監護権が取得できるかはもちろん、その定め方などについて、離婚問題を多く扱った経験を持つ弁護士に相談するのは非常に重要です。

親権と監護権の問題は、離婚を取り扱う弁護士にとっても非常に専門性の高い分野で、経験が豊富な弁護士にしか適切な取り扱いが出来ません。2026年4月の共同親権制度の導入に伴い、単独親権か共同親権かの問題、監護者の指定、監護の分掌や共同監護計画の策定養育費の請求など、離婚問題はかなり複雑性と専門性が増し、さらに取り扱いが難しくなっています。

人それぞれに回答があったり、法律家としての相場観が重要であるため、数値化やデータ化が難しいです。机上の知識やAIで対応するのではなく、経験に基づく判断が必要となります。親権や監護権についてお悩みの方は、親権問題などに精通している弁護士への相談をお勧めします。

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11. 監護権についてよくある質問

Q. 子どもの監護権はいつまで?

大人に対する親権や監護権はないため、親権と同じく、子どもが成人(18歳)になるまでです。

Q. 監護権は母親が優先されるのはなぜ? 監護権を父親が獲得した判例はある?

監護者の指定をする場合は、実際に子どもの監護養育の実績があるほうが選ばれます。今までの日本社会では、女性が主たる監護者として育児を担うことが多かったため、女性が取得するケースが多いとされてきました。


しかし、最近はフルタイムでの共働き世帯が増え、男性が主たる監護者となるケースも徐々に増えてきています。男性が専業主夫として家事育児を行っていた場合や、フルタイムの共働きで男性が育児休暇を年単位で取得しているケース、保育園への送り迎えや家事を主として分担しているケースなど、監護者にふさわしいと判断されれば、男性も監護者になり得ます。

Q. 監護権と親権を分けた場合、子どもの戸籍はどうなる?

戸籍に記載されるのは親権者のみです。そのため、監護権の証明は、協議書や調停調書、審判書などで行う必要があります。

Q. 監護者は養育費を誰に請求できる?

子の監護を主として行っている者は、他の親権者に養育費の請求が出来ます。監護の分掌を定めた場合で、半々で子どもの面倒を見ており年収が双方で変わらない場合などは、養育費の請求が互いに出来ないケースがあります。

12. まとめ 親権と監護権の分離や監護者の指定を考えている人は弁護士への早期相談を

親権は「身上監護権」と「財産管理権」に分けられます。身上監護権にあたるものを「監護権」と言い、子どもの日常的な世話や教育をしたり、子どもの居所を指定したりといった「日常生活において子どもを育てていく権利」がこれに該当します。

離婚した際、単独親権を選択した場合は、子どもの監護権は親権者が行使するのが原則となっているものの、財産管理能力に問題があるなど、親権を行使できるか疑わしい場合には、親権者と監護者を分けるケースもあります。協議離婚の場合は双方の合意によって分離ができ、裁判所が分離する場合は、子の福祉にかなうと認められるかどうかが判断材料となります。

共同親権でも、どちらが養育するか争いになる場合はきちんと監護者を定めておく必要があります。また、監護者の指定をしない場合は、(15歳未満の子の)名字の変更、進学先の決定や、引っ越しなど子に重大な影響を及ぼす行為について他方の親権者の同意が必要になります。

(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)

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