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自営業の夫婦の離婚の注意点とポイント 財産分与はどうなる?

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自営業者との離婚では、財産分与や借金の扱いで注意すべき点が多い(c)Getty Images
自営業の配偶者との離婚を考えたとき、財産分与や養育費、事業の借金など、気になる点は多いかもしれません。とくに、事業と家庭の財産が混ざりやすいケースでは、どこまでが対象になるのか判断が難しくなります。こうした複雑な問題も、弁護士に相談すれば整理しやすくなります。 自営業者との離婚で注意すべきポイントや対処法について、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 自営業の夫婦の離婚の特徴
  • 1-1. 手続きや流れは給与所得者と同じ
  • 1-2. 財産分与、婚姻費用・養育費、年金分割には注意が必要
  • 2. 自営業者との離婚における財産分与のポイント
  • 2-1. 財産分与の割合は貢献度で決まる
  • 2-2. 夫婦の共有財産と事業の財産を区別する
  • 2-3. 法人の財産は財産分与の対象にならない
  • 2-4. 別居後も自営業を手伝っていた場合は注意
  • 3. 自営業者との離婚で、事業の借金がある場合はどうなる?
  • 3-1. 事業用の借金は財産分与の対象にならない
  • 3-2. 事業用の借金の連帯保証人になっていたら、返済義務を負う
  • 4. 自営業者との離婚における婚姻費用・養育費の算定方法
  • 5. 自営業者が離婚する際の注意点
  • 5-1. 年収が正確なものであるか確認する
  • 5-2. 従業員としての扱いについても話し合う
  • 6. 自営業者との離婚で弁護士に相談するメリット
  • 7. 自営業の離婚に関するよくある質問
  • 8. まとめ 自営業者との離婚は専門家のサポートを受けながら進めよう
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1. 自営業の夫婦の離婚の特徴

自営業の夫婦でも、基本的な離婚手続きは給与所得者と変わりません。ただし、財産分与や養育費の計算、年金分割の可否など、一部の条件では特有の注意点があります。とくに経済的な側面では、収入の算出方法や財産の分け方が複雑になるため、慎重な確認が必要です。

1-1. 手続きや流れは給与所得者と同じ

離婚の基本的な流れや法的手続きは、職業にかかわらず共通です。協議離婚が成立しない場合は、調停や訴訟に進むことになります。また、離婚には夫婦双方の合意か、民法770条に定められた離婚原因のいずれかが必要です。たとえば「事業がうまくいかない」「仕事を手伝わない」といった事情だけでは、法律上の離婚原因には該当しません。

親権や慰謝料についても、自営業かどうかによって判断基準が変わることはなく、給与所得者と同様に扱われます

1-2. 財産分与、婚姻費用・養育費、年金分割には注意が必要

自営業者との離婚では、財産の把握や収入の算出が複雑になる傾向があります。たとえば、給与所得者のような退職金がない代わりに、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)、個人年金などが財産分与の対象となることがあります。これらは将来受け取る金額が未確定なことも多いため、分割対象とするかはケースによって判断されます。

婚姻費用・養育費の算出には裁判所の算定表を使いますが、自営業者の場合は給与所得者とは異なる計算方法を使うため、算出結果に差が出ることもあります

さらに、年金分割については注意が必要です。年金分割とは、離婚時に婚姻期間中の厚生年金保険料の記録を夫婦で分け合える制度で、厚生年金に限り適用されます。自営業者は厚生年金に加入していないことが多く、年金分割制度の対象外となるケースがほとんどです。一方、国民年金やiDeCoは年金分割の対象外ですが、こちらは財産分与の対象となる可能性があります。

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2. 自営業者との離婚における財産分与のポイント

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合う制度です。不動産登記の所有者名などその財産の名義にかかわらず「実質的に夫婦の共有財産」といえるものが対象となり、基本的には2分の1ずつ分け合うのが原則です。ただし、自営業者との離婚では、事業資産との関係などにより、判断が複雑になることがあります。

2-1. 財産分与の割合は貢献度で決まる

財産分与では、夫婦それぞれの「財産形成への貢献度」が基準となります。一般的には、片方が家事や育児を担っていた場合でも、収入を得るための間接的な貢献が認められ、原則として「2分の1ずつ」の分与が妥当とされます。

ただし、特別な資格や技能によって高い収入を得ていた場合には、貢献度の評価が変わることもあります。たとえば、開業医や弁護士が一人で運営する法律事務所など、夫婦いずれかの属人的な専門性により収入を得ていた場合には、その者の貢献度がより高いため、分与割合が修正される可能性があります。それでも、一般的な自営業者であれば、基本的には夫婦が等しく貢献したと評価されるのが通例です。

2-2. 夫婦の共有財産と事業の財産を区別する

財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。形式的な名義ではなく、実際にどちらのために使われていたかが重視されます。自営業の場合、事業用の資産と夫婦の生活費・貯蓄が混在していることがあり、整理が難しくなる傾向があります。

たとえば、事業資金と生活資金が同じ口座で管理されていたり、店舗の備品を私的にも使用していたりすると、線引きが曖昧になります。こうした場合、名義が事業主側にあっても、実質的に夫婦の共有財産と判断されることがあります。日ごろから明確に分けて管理することが重要です。

2-3. 法人の財産は財産分与の対象にならない

事業を法人化している場合、法人の名義で保有する財産(売り上げ、設備、備品など)は、原則として財産分与の対象にはなりません。法人と個人は法律上別人格とされるためです。

ただし、たとえば一人会社で、実質的に個人資産として自由に使っていたようなケースでは、「形式は法人名義でも実態は個人財産」として評価され、分与の対象となる可能性があります。

また、法人株式は個人が保有する資産であるため、離婚時には財産分与の対象に含まれます。会社の評価額や配当などを加味したうえで、分与内容が決められることになります。

2-4. 別居後も自営業を手伝っていた場合は注意

原則として、財産分与の対象となるのは「別居時点での共有財産」とされています。別居によって経済的な協力関係が終了したとみなされるからです。

しかし、別居後も一方の配偶者が相手の事業を手伝っていた場合は、経済的な協力関係が続いていたと評価されることがあります。このような場合、別居後に増えた財産についても、分与の対象に含まれる可能性があります。

とくに家族経営で、引き続き経理や接客などの仕事を続けていたような場合には、別居後であってもその貢献が認められやすくなります。こうしたケースでは、いつ協力関係が終わったかの時期が争点になることもあるため、証拠や経過を整理しておくことが大切です。

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3. 自営業者との離婚で、事業の借金がある場合はどうなる?

自営業者との離婚では、事業に関連する借金の扱いにも注意が必要です。借金は原則として、借りた本人が返済すべきものであり、すべてが財産分与の対象になるわけではありません。ただし、状況によっては共有財産の一部とみなされ、影響を受ける可能性もあります。

3-1. 事業用の借金は財産分与の対象にならない

一般的に、事業のために借りた資金は、その人個人の債務とされ、財産分与の対象には含まれません。夫婦の共有財産と事業用資産がきちんと分けて管理されている場合は、マイナスの財産として扱う必要はないと判断されるのが通常です。

しかし、生活費と事業費が同じ口座から支出されているケースや、経費と私的支出の区別が曖昧なケースでは、事業の利益や設備などのプラスの財産だけでなく、借金についても、同様に共有の負担として財産分与の対象となる可能性があります。

たとえば、店舗の改装資金が居住部分の改装資金にも使われていたようなケースでは、その資金に充てた借入金も財産分与の検討対象に含まれることがあります。つまり、財産と負債が一体で評価される場合もあるため、事業用の借金であっても注意が必要です。

3-2. 事業用の借金の連帯保証人になっていたら、返済義務を負う

もう一つ注意すべきなのが、事業用借金の「連帯保証人」になっていた場合です。連帯保証とは、借金をした本人とほぼ同じ責任を負う立場を意味します。仮に配偶者の名義で借りたものであっても、自分が連帯保証人であれば、法的には借主と同様に返済義務があります。

この責任は、保証人と借金を借りた本人との間の婚姻関係の有無とは無関係なため、離婚しても自動的に消えるわけではありません。そのため、たとえ離婚後であっても配偶者が返済を怠ったときには保証人である自分が請求を受けるリスクがあります。連帯保証契約は、当事者間の合意や家庭内の事情ではなく、債権者との契約に基づいて成立しているためです。

そのため、自営業者の配偶者として連帯保証をしている場合は、離婚時にしっかりと保証債務の有無を確認し、可能であれば保証から外れる手続きを検討する必要があります。保証契約の解除には、債権者(金融機関など)の同意が必要となるため、早めに対応することが重要です。

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4. 自営業者との離婚における婚姻費用・養育費の算定方法

婚姻費用や養育費は、離婚後も生活を支える大切な資金です。金額の目安は、家庭裁判所が公表している「算定表」をもとに決めるのが一般的です。自営業者であっても、算定方法の基本は給与所得者と変わりません。

ただし、算定表の中では、給与所得者と自営業者で使用する計算方法が異なります。たとえば、同じ年収でも、税金や社会保険料などの控除額に違いがあるため、手元に残る金額(可処分所得)に差が生じるからです。結果として、自営業者のほうが可処分所得が多いとみなされ、養育費の金額が高めに算出されることがあります

また、算定表で対応できる年収には上限があります。現在の算定表では、年収1,567万円までが基準とされており、それを超える場合は個別に事情を考慮して算出する必要があります。たとえば、家庭裁判所が提示する「算定表を用いない計算法(旧方式)」を参考に、収入・生活水準・子どもの年齢や進学予定などを踏まえた具体的な計算が行われます。

とくに自営業者は、収入の把握が難しいケースもあります。確定申告書や帳簿類の確認が必要になることもあるため、相手の収入が不透明な場合や話し合いが難航する場合は、弁護士に相談して専門的な支援を受けるのが望ましいでしょう。

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5. 自営業者が離婚する際の注意点

自営業者の場合、給与所得者とは異なる事情があるため、離婚時には収入の確認や就労関係の整理について、より丁寧な対応が求められます。ここでは、とくに注意すべき2つのポイントを紹介します。

5-1. 年収が正確なものであるか確認する

自営業者の所得は、確定申告書に基づいて判断されることが多いですが、その金額が実質的な年収(手取り)を正確に反映しているとは限りません。たとえば、節税対策として経費を最大限計上することで、会計上の課税所得を抑えているケースも見られます

婚姻費用や養育費の話し合いにおいては、申告書だけでなく帳簿や請求書などの会計資料を確認し、収入の実態を把握することが重要です。不自然な経費の扱いがないかを確かめ、調停や裁判の場では、客観的な証拠をもとに話し合いを進めるようにしましょう。

5-2. 従業員としての扱いについても話し合う

配偶者が自営業の事業に従業員として関わっていた場合は、離婚後の雇用継続や給与の取り扱いについても話し合いが必要です。

離婚はあくまで私的な問題であり、法律上はこれを理由に一方的に解雇することはできません。在職を希望する場合は勤務条件や役職の見直しを含めて調整を図るべきであり、退職する場合は、給与の精算や未払分の確認も必要です。事業継続に支障が出ないよう、早い段階で方針をすり合わせておきましょう。

6. 自営業者との離婚で弁護士に相談するメリット

自営業者との離婚では、財産分与や婚姻費用・養育費の算定で、給与所得者とは異なる複雑な事情が生じやすくなります。たとえば、事業用と個人の財産の区別が曖昧だったり、確定申告書に記載された収入額が実態と異なっていたりするケースも少なくありません。

こうした場面では、法的な視点と経験をもとに、資料の読み解きや適正な分配の判断を行える弁護士のサポートが有効です。自分だけで交渉や調停を進めようとすると、重要な点を見落としたり、不利な条件で合意してしまうおそれもあります。

少しでも不安がある場合は、早めに弁護士に相談し、自分にとって妥当な条件で手続きを進められるよう備えておくことが大切です。

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7. 自営業の離婚に関するよくある質問

Q. 自営業の妻(夫)は給与の支払いを請求できますか?

配偶者の事業に従業員として雇用され、給与が支払われる契約になっていた場合は、未払い分を請求できる可能性があります。一方、契約がないまま実質的に手伝っていただけの場合には、財産分与の際にその貢献を考慮してもらうという形になることが多く、給与としての支払いを求めるのは難しいでしょう。

Q. 養育費の不払いなどで自営業者の給料は差し押さえられますか?

自営業者でも、法人から「給与」として支払いを受けている場合には差し押さえが可能です。ただし、個人事業主などで「給与」という形ではなく収入を得ている場合は、売掛金などの債権を差し押さえる対応が必要になります。相手の収入の実態に応じた手続きが必要です。

Q. 家族経営で義理の両親と仕事でも一緒なのがしんどいのですが、離婚できますか?

義理の両親との関係が苦痛であるとしても、それだけでは法定の離婚原因(民法770条)にはなりません。離婚を成立させるには、配偶者との合意があるか、法的に認められる離婚理由が必要です。

Q. 同じ収入の給与所得者と比べて自営業者の養育費が高いのはなぜですか?

自営業者は経費を差し引いた後に手元に残る金額が多くなりやすいため、同じ「収入金額」でも可処分所得が高いとみなされます。その分、養育費の支払能力も高いと判断されることがあるためです。

Q. 自営業なのに家業をろくに手伝わない妻(夫)と離婚できますか?

家業への協力が足りないという理由だけでは、離婚の法的根拠にはなりません。あくまで配偶者と協議し、合意を得る必要があります。合意が得られない場合は、法定の離婚原因に該当するかどうかを検討することになります。

8. まとめ 自営業者との離婚は専門家のサポートを受けながら進めよう

自営業者との離婚では、財産分与や養育費の算定、事業に関連する借金や資産の取り扱いなど、給与所得者のケースと比べて複雑な要素が絡むことがあります。事業収入の把握が難しかったり、法人財産との線引きが曖昧だったりすることで、話し合いが難航するケースも少なくありません。

特に財産の分け方や養育費の金額については、正確な資料や知識がないまま交渉を進めると、不利な条件で合意してしまうおそれがあります。自身や子どもの生活を守るためにも、早い段階で弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることが大切です。

(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)

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