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1. 養育費の強制執行とは
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1-1. 養育費の強制執行をするための要件
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1-2. 強制執行の対象となる財産
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1-3. 強制執行の対象とならない財産(差押禁止財産)
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2. 養育費の強制執行のメリット
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3. 養育費の強制執行のデメリット
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3-1. 手続きが難しく自分で対応しにくい
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3-2. 相手の財産を把握しておく必要がある
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3-3. 相手との関係が悪化する
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4. 強制執行のデメリットを回避する方法
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4-1. 債務名義を取得する
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4-2. 弁護士に手続きを依頼する
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4-3. 財産調査を活用する
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5. 養育費の強制執行の流れおよび必要書類と費用
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5-1. 【STEP1】事前準備
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5-2. 【STEP2】強制執行の申立て
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5-3. 【STEP3】差押命令
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5-4. 【STEP4】養育費の回収(取り立て)
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6. 強制執行に関する弁護士費用
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7. 強制執行による回収が難しいケース
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7-1. 相手の住所がわからない
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7-2. 相手の口座や勤務先の会社がわからない
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7-3. 相手に支払い能力がない
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7-4. 相手が再婚して子どもが増えた
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8. 養育費の強制執行に関する注意点
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8-1. 【受け取る側】養育費の請求権にも時効がある
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8-2. 【支払う側】破産しても支払義務は残る
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8-3. 【支払う側】職場に養育費の滞納が知られる
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9. 強制執行以外で養育費を支払ってもらう方法
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9-1. 相手との話し合い
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9-2. 履行勧告
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9-3. 履行命令
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10. 養育費の強制執行についてよくある質問
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11. まとめ 養育費の強制執行手続きは煩雑なため、弁護士に相談を
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1. 養育費の強制執行とは
養育費の強制執行とは、養育費の支払いに関する審判が出された場合や、相手との間で調停や公正証書などで養育費の取り決めをしたにもかかわらず、相手が養育費を支払わない場合に、相手に対し、支払いを強制する制度です。養育費を受け取る側(債権者)の申立てに基づいて、相手(債務者)に対する養育費の請求権を、裁判所が強制的に実現する手続きです。
養育費は、経済的かつ社会的に自立していない子どもが生活するために必要な費用であり、非常に重要なものです。父母間で養育費の取り決めをしているにもかかわらず、相手から任意に養育費を支払ってもらえない場合には、強制執行を検討したほうがよいでしょう。
1-1. 養育費の強制執行をするための要件
養育費の未払いについて強制執行を申し立てるには、執行力のある「債務名義」が必要です。
債務名義とは、判決や支払督促、調停調書、公正証書など、債権者が相手の債務者に請求できる権利があることを認める裁判所や公証役場が作成した書類です。債務名義には、判決正本、和解調書正本、家事調停調書正本、家事審判書正本、強制執行認諾文言付きの公正証書正本などがあります。強制執行認諾文言付きの公正証書とは、養育費を支払う義務を負う相手が、養育費の支払いが滞った場合にはただちに強制執行を受けてもやむを得ない旨の記載がある公正証書です。
債務名義を取得するためには、裁判所や公証役場で手続きを行う必要があります。当事者間で作成した契約書は、債務名義に該当しません。
強制執行の申立てには、債務名義の正本のほかに、債務名義が債務者に送られていることの証明書(送達証明書)、債務名義の種類によっては、強制執行できることを証明する「執行文」の付与が必要です。
また、強制執行を申し立てるには、相手の住所や財産を把握しておく必要があります。相手がどのような財産を持っているかわからない場合には、裁判所に「財産開示手続」や「第三者からの情報開示手続」を申し立てることを検討しましょう。
1-2. 強制執行の対象となる財産
強制執行の対象となる財産としては、主に次の3つが挙げられます。
預貯金や給料などの債権(債権執行)
土地や建物(不動産執行)
宝石や高級時計などの動産(動産執行)
1-3. 強制執行の対象とならない財産(差押禁止財産)
法律上、差し押えにより回収することが禁止されている財産を「差押禁止財産」と言います。差し押えが禁止されている「債権」は以下のとおりです。
国民年金や厚生年金、生活保護、児童手当などの受給権
給与および賞与などの手取り額の4分の3(差し押えの原因が婚姻費用または養育費の未払いの場合、手取り額の2分の1)、または33万円のいずれか少ないほう
退職金の4分の3(差し押えの原因が婚姻費用または養育費の未払いの場合、2分の1)
差し押えが禁止されている主な「動産」は以下のとおりです。
生活に欠くことができない衣服や寝具、家具、台所用品、畳、建具など
1カ月の生活に必要な食料および燃料
66万円までの金銭
農業、漁業を営む者、技術者、職人などのその業務に欠くことのできない器具など(農業従事者にとっての農具、肥料など)
実印その他の印で職業または生活に欠くことができないもの
仏像、位牌(いはい)その他礼拝または祭祀に必要不可欠なもの
債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿およびこれらに類する書類
債務者またはその親族が受けた勲章その他の名誉を表章するもの
債務者などの学校その他の教育施設における学習に必要な書類および器具
発明または著作にかかるもので、まだ公表していないもの
債務者などに必要な義手、義足その他の身体の補足に供するもの
建物その他の工作物について、災害の防止や保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械または器具、避難器具その他の備品
2. 養育費の強制執行のメリット
養育費が未払いとなっている場合、調停調書や強制執行認諾文言付きの公正証書などの債務名義があるときには、強制執行の申立てにより相手の不動産や預金、給与などの財産を差し押さえ、強制的に支払わせることができます。
給与については、手取り額の2分の1まで差し押さえられます。また、まだ支払い期日が来ていない分の養育費についても強制執行を申し立てられるため、毎月定期的に支払いを受ける給与債権を差し押さえることが可能です。
なお、相手が自営業の場合には、給与ではなく、取引先からの報酬請求権の差し押えを、会社の役員の場合には役員報酬の差し押えを検討することになります。
3. 養育費の強制執行のデメリット
一方、養育費の強制執行については、以下のようなデメリットもあります。
3-1. 手続きが難しく自分で対応しにくい
そもそも債務名義がないと強制執行の申立てができません。また、債務名義がある場合でも、裁判所を利用する手続きとなることから、必要書類や申立書の記載内容などが細かく決まっています。手続きが煩雑なため、自分自身で対応するにはハードルが高いと感じる人が多いでしょう。
3-2. 相手の財産を把握しておく必要がある
強制執行を申し立てるには、相手の財産や勤務先などを把握しておく必要があります。相手がどのような財産を持っているかわからないと強制執行の申立てができません。
3-3. 相手との関係が悪化する
強制執行は、相手に強制的に債権を支払わせる制度であり、相手の預金口座がある銀行や相手の勤務先に差押命令が届くことになります。そのため、相手との関係が悪化する可能性があります。
4. 強制執行のデメリットを回避する方法
強制執行には上記のようなデメリットがありますが、それに対して主に3つの方法で回避することが考えられます。
債務名義を取得する
弁護士に手続きを依頼する
財産調査を活用する
4-1. 債務名義を取得する
まずは、相手が任意に養育費を支払わない場合に備えて債務名義を取得しておく必要があります。
協議離婚の場合には、離婚時に強制執行認諾文言付きの公正証書を作成します。公正証書は自分で公証役場に行って公証人に作成してもらうことも可能ですが、弁護士に依頼すれば公証人とのやりとりを弁護士に任せられるため、公正証書をスムーズに作成できます。
また、相手が養育費の支払いに応じない場合には、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
養育費請求調停で双方が養育費の額や支払い方法について合意した場合には、家庭裁判所で調停調書が作成されます。調停で解決できないときは、裁判所が審判で判断します。
4-2. 弁護士に手続きを依頼する
強制執行申立ての手続きは煩雑で、時間と手間がかかるため、弁護士への依頼を検討しましょう。弁護士に依頼すれば、煩雑な手続きなどを任せられ、自身で手続きを行うのに比べて負担が大きく軽減されます。養育費の未払いで困っている場合には、一度弁護士に相談することをお勧めします。
4-3. 財産調査を活用する
相手の勤務先や相手がどのような財産を持っているかわからない場合には、裁判所に「財産開示手続」や「第三者からの情報開示手続」を申し立てることを検討するとよいでしょう。
財産開示手続を行った場合に、裁判所の呼び出しを受けた債務者が財産開示期日に正当な理由なく出頭しないときや、財産開示期日に裁判所に出頭し宣誓した債務者が、自分の財産状況について虚偽を述べたときには、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という刑事罰に処せられることがあります(民事執行法第213条第1項第5号、第6号)。

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5. 養育費の強制執行の流れおよび必要書類と費用
養育費の強制執行の流れは以下のとおりです。
【STEP1】事前準備
【STEP2】強制執行の申立て
【STEP3】差押命令
【STEP4】養育費の回収(取り立て)
5-1. 【STEP1】事前準備
まずは、強制執行の申立てをするには、相手がどのような財産を持っているかに加え、相手の勤務先や住所など、必要な情報を確認しましょう。どのような財産を持っているかわからない場合には、財産開示手続や第三者からの情報開示手続を利用し、調査することを検討しましょう。
5-2. 【STEP2】強制執行の申立て
強制執行の申立てに必要な書類などは以下のとおりです。
申立書
債務名義の正本
債務名義の種類によっては、強制執行できることを証明する執行文(判決正本、和解調書正本、公正証書正本には執行文が必要。家事審判書正本の場合は執行文は不要ですが、確定証明書が必要)
送達証明書
資格証明書
申立手数料(債権者1名、債務者1名、債務名義1通の場合は4000円)
郵便切手(申し立てる裁判所によって金額が異なる)
住民票や戸籍謄本、戸籍の附票など(当事者の住所または氏名などに変更がある場合)
なお、「資格証明書」については、相手の給与を差し押さえる場合は勤務先の会社の商業登記事項証明書、預金口座を差し押さえる場合には銀行などの商業登記事項証明書が必要です。
強制執行の申立てをする場合の申立て先は、次のとおりです。
債権執行:相手(債務者)の住所地を管轄する地方裁判所(支部)
不動産執行:不動産のある場所を管轄する地方裁判所(支部)
動産執行:動産のある場所を扱う地方裁判所(支部)の執行官室
5-3. 【STEP3】差押命令
強制執行の申立てを受けた裁判所が申立書や必要書類を審査し、差押命令を発令します。預金口座や給与債権の差押えの場合には、債権差押命令が相手と口座のある銀行、相手の勤務先などに送達されます。
相手と銀行や勤務先などに差押命令が送達されたあと、裁判所から送達された日が記載された送達通知書が届きます。
5-4. 【STEP4】養育費の回収(取り立て)
債権執行の場合、相手(債務者)に債権差押命令が送達された日から1週間経過したときは、取立権が発生し、債権者は、その差押債権を取り立てることができます。取り立ては、裁判所から送達通知書を受領し、取立権の発生を確認してから行うことになります。
取り立てにあたっては、債権者が第三債務者(給与債権の差し押さえの場合には勤務先、預金債権の差し押さえの場合には銀行など)と直接連絡をとります。給与を取り立てられるのは、以下のとおり差押債権の範囲に限られます。
【給料差し押えの範囲】
・給料(基本給と諸手当、ただし、通勤手当を除く)から所得税、住民税および社会保険料を控除した残額の2分の1。ただし、上記残額が月額66万円を超えるときは、その残額から33万円を控除した金額。
たとえば、手取り額が30万円の場合、「30万円÷2=15万円」を差し押さえられます。手取り額が70万円の場合には、「70万円-33万円=37万円」を差し押さえることが可能です。
給与については、まだ支払い期日が来ていない分の養育費についても、強制執行を申し立てられるため、毎月定期的に支払いを受ける給与債権を差し押さえることが可能です。
第三債務者から債権を取り立てたら、その都度「取立届」を裁判所に提出します。
6. 強制執行に関する弁護士費用
強制執行に関する弁護士費用は、弁護士ごとに異なります。
請求金額の合計が300万円以下の場合には、着手金は「請求額の4%から8%+消費税」、報酬金が「回収額の8%から16%+消費税」が一つの目安になります。
債権差し押えの場合には、差押債権ごと、動産執行、不動産執行の場合には執行場所ごとに固定の着手金を設定している場合もあります。また、調停などから依頼している場合には比較的割安になる場合があります。
法律事務所や弁護士によって弁護士費用はさまざまです。依頼前には費用について詳しく説明を受け、不明点があれば遠慮なく確認するようにしましょう。
7. 強制執行による回収が難しいケース
債務名義があっても強制執行が難しい場合もあります。たとえば、以下のケースです。
7-1. 相手の住所がわからない
相手の住所がわからない場合には、強制執行を申し立てることができません。相手の住所がわからないという事態にならないように、離婚時に公正証書を作成する際には、住所や勤務先、連絡先を変更した場合にはお互いに通知するという条項を入れておくことも一案です。
7-2. 相手の口座や勤務先の会社がわからない
相手がどこの金融機関のどの支店に預金口座を持っているか、相手の勤務先の会社などがわからないと差し押さえる対象がわからないので、強制執行を申し立てることができません。離婚後しばらく経つと、転職などにより勤務先が変わることもあり得ます。
相手がどのような財産を持っているかわからない場合には、財産開示手続や第三者からの情報開示手続を利用することを検討しましょう。
7-3. 相手に支払い能力がない
そもそも相手に支払い能力がない場合には、強制執行を申し立てても、養育費を回収することは困難です。また、給料を差し押さえると、相手が勤務先を辞めてしまうケースもあります。
7-4. 相手が再婚して子どもが増えた
相手の生活状況の変化を理由に離婚時に取り決めた養育費の金額から減額を求められる場合もあります。相手が再婚し、扶養する子どもが増えた場合には、養育費の減額を求められる可能性が高いです。
8. 養育費の強制執行に関する注意点
養育費の強制執行については以下3つの注意点があります。
8-1. 【受け取る側】養育費の請求権にも時効がある
養育費の請求権には時効があるため、未払いの養育費を請求せず放置していると、債務者から「時効により請求権が消滅しているため支払い義務はない」と主張されるリスクがあります。
養育費の支払いについて当事者間の話し合いで取り決めた場合や、強制執行認諾文言付きの公正証書で養育費を取り決めた場合であっても、養育費の請求権の消滅時効期間は原則として5年です。
調停や審判、和解、判決などの裁判所の手続きで養育費の取り決めをした場合には、裁判所の手続きで取り決めたときにすでに支払い期日が到来している分の養育費の請求権の消滅時効期間は10年となりますが、将来発生する養育費の消滅時効期間は5年です。
8-2. 【支払う側】破産しても支払義務は残る
破産手続終了後、裁判所の免責許可の決定が確定した場合であっても、養育費は免責されません。養育費請求権は非免責債権(破産法第253条1項4号)に該当するためです。未払いの養育費は、免責許可の決定が確定したあとでも支払う必要があります。
8-3. 【支払う側】職場に養育費の滞納が知られる
強制執行の手続きにより給与債権が差し押さえられると、裁判所から債権差押命令が勤務先に届きますので、養育費の未払いが職場に知られることになります。

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9. 強制執行以外で養育費を支払ってもらう方法
強制執行以外で養育費を支払ってもらう方法としては、以下の方法があります。
相手との話し合い
履行勧告
履行命令
9-1. 相手との話し合い
相手が単に払い忘れている場合や、請求されるまで養育費を支払わなくてよいと思っている場合もあります。まずは、相手と直接話し合い、養育費を支払うよう説得するとよいでしょう。相手との話し合いで解決ができれば、強制執行を行う必要もなく、早期に養育費の支払いを受けられます。
説得だけでは相手が養育費の支払いに応じない場合、内容証明郵便で養育費の支払いを求める方法も効果的です。
しかし、説得や内容証明郵便には法的な強制力があるわけではないため、相手が任意の支払いに応じない場合には、養育費の支払いを受けられません。
9-2. 履行勧告
調停や審判などで養育費の取り決めをしても、相手から取り決めどおりに養育費が支払われないケースでは、家庭裁判所にその状況を伝え、裁判所から相手に養育費の支払い義務を履行するよう勧告してもらえます。この手続きを「履行勧告」と言います。
しかし、履行勧告は家庭裁判所から連絡をしてもらえるだけで法的な強制力はないため、相手が支払いに応じない場合に強制的に回収することはできません。
9-3. 履行命令
裁判所から履行勧告をしても養育費が支払われない場合には、家庭裁判所は相当の期間を定めて履行命令を出すことができます。相手が正当な理由なく履行命令に従わない場合には、裁判所は10万円以下の過料に処することが可能です。そのため、履行勧告よりも相手に心理的なプレッシャーを与えられます。
しかし、履行命令も法的な強制力はないため、相手が支払いに応じない場合には、強制的に回収することはできません。
10. 養育費の強制執行についてよくある質問
強制執行で給与債権の差押命令が発令されたにもかかわらず、第三債務者である相手の勤務先の会社が取り立てに応じず、支払いを拒否する場合があります。
拒否する理由としては、差し押えにかかる債権の存否や額について、争いがある場合などが考えられます。その場合には、「取立訴訟」という裁判手続で解決しなければなりません。
債務者は、債務名義にかかる請求権の存在または内容について異議がある場合には、その債務名義による強制執行の手続きをすべきではないとして、「請求異議の訴え」を提起できます(民事執行法第35条第1項)。
主な理由としては、債務名義上は債権が存在するとされているものの、その後弁済した場合など、強制執行の原因となる債権自体が存在しないケースが考えられます。
一般的には、未払いの養育費について請求異議の訴えが認められることは考えにくいものの、請求異議の訴えを提起された場合には、裁判手続に対応しなければなりません。
預金口座について差押命令が発令されても、銀行などが差押命令の送達を受けた時点で預金口座の残高がなければ、養育費を回収できません。
給与などの振込口座の場合には、給与や賞与の支給日後は、比較的残高が多く残っていることがあるため、一度取り下げたうえで、タイミングを変えて再度強制執行を申し立てることも一案です。
養育費の強制執行のタイミングは、申立てを行う債権者が自由に決められます。
すでに債務名義を取得している場合には、事前の通知などをせず、いきなり債権差押命令申立てなどの強制執行の申立てができます。逆に言えば、債務者としては、いきなり預金や給与を差し押さえられる可能性があるということです。
養育費の減額調停中でも、調停が成立するまでは、従前取り決めた養育費を支払わなければなりません。債務名義がある場合には、養育費の減額調停中でも強制執行の申立ては可能です。
相手が債務名義を持っているときは、未払いの養育費の強制執行を回避することは基本的に難しいです。また、強制執行の申立てには手間も時間も費用もかかるため、いったん強制執行をされると、話し合いで取り下げてもらうことは基本的には難しいと考えられます。
そのため、養育費の減額を求める場合には、勝手に減額するのではなく、相手と話し合いをして減額について合意をするか、合意ができない場合には早期に養育費の減額調停を申し立てるのがよいでしょう。
11. まとめ 養育費の強制執行手続きは煩雑なため、弁護士に相談を
養育費が支払われない場合、強制執行によって相手の財産を差し押さえることで養育費を回収できます。
しかし、養育費の取り決めについて記載した債務名義がなければ、強制執行の申し立てはできません。強制執行によって養育費を回収するためには事前準備を整え、デメリットを回避しながら手続きを進めることが重要です。
また、申立て手続きは煩雑なため、自分一人で対応するのは困難と感じる人も多いと考えられます。未払いの養育費がある場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)