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養育費の時効は何年? 時効にかからないようにする方法を解説

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養育費を請求する権利は、時効によって消滅することに注意が必要です(c)Getty Images
養育費が支払われなくなった場合、養育費を受け取る側は支払い義務を負う側に対して未払いの養育費を請求することが可能です。しかし、養育費の請求権は時効を過ぎると消滅するため、相手への請求ができなくなります。養育費の時効期間のほか、養育費請求の注意点、養育費の請求権が時効にかかりそうな場合の対処法について弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 養育費の時効とは~民法改正後の時効期間は何年?
  • 1-1. 時効とは
  • 1-2. 協議で決めた養育費の時効期間
  • 1-3. 調停や審判、訴訟で決まった養育費の時効期間
  • 2. 養育費の取り決めがない場合、時効は適用される?
  • 3. 時効をふまえた養育費請求に関する注意点
  • 3-1. 口約束だけでは請求が難しい
  • 3-2. 時効完成を防ぐための対応は速やかに|時効の完成猶予と時効の更新
  • 4. 養育費が時効にかかりそうな場合の対処法
  • 4-1. 催告
  • 4-2. 調停または審判
  • 4-3. 強制執行など
  • 4-4. 債務の承認
  • 5. 2026年5月までに導入|共同親権制度が養育費の時効に与える影響は?
  • 6. 養育費の時効完成が迫っているときは弁護士に相談を
  • 7. 養育費と時効に関してよくある質問
  • 8. まとめ 養育費が支払われなくなった場合の請求は弁護士に相談を
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1. 養育費の時効とは~民法改正後の時効期間は何年?

養育費が支払われなくなった場合、いつまで請求ができるのかについては、以下のとおりです。

養育費の取り決め方法別の時効期間

取決方法

取決内容

将来の養育費

過去の養育費

(滞納分)

備考

協議

支払日から5年

支払日から5年

口頭での合意や、不適切
あるいは不十分な書面では、
合意の存在が否定される
おそれがある

公正証書

支払日から5年

支払日から5年

調停

支払日から5年

支払日から10年

審判または
判決

支払日から5年

審判または
判決確定から10年

1-1. 時効とは

時効とは、ある状態が一定期間続いた場合に、その事実状態に権利関係を合わせる制度、または事実状態に合った権利が発生したり権利が消滅したりする制度です。

時効には民事上の時効と刑事上の時効があり、民事上の時効には占有者が時効によって物の所有権を取得する「取得時効」と、時効期間が経過することで債権などの権利が消滅する「消滅時効」があります。

民事上の時効の目的は以下の3点です。

①永続した事実状態の尊重
一定期間続いた事実状態に法的権利を合わせる、という価値判断です。

②権利の上に眠る者を保護しない
一定期間、何の措置も取らず放置していた場合は権利を失ってもやむを得ない、という価値判断です。

③証拠散逸による不利益の防止
長期間が経過すると権利の立証のための証拠がなくなってしまう可能性が大きいため、証拠がないことによる不利益を救済する目的があります。

養育費の請求権も、民事上の権利です。そのため、行使しないままに一定期間が経過すると、請求権が時効によって消滅(=消滅時効の成立)し、養育費を請求できなくなります

1-2. 協議で決めた養育費の時効期間

民事上の請求は、原則として、権利を行使できることを知ったときから5年、または権利を行使できるときから10年のうち、いずれか早いほうとなります。ただし、父母双方の協議によって養育費の取り決めをした場合は、通常は、支払期日が到来すれば、権利を行使できることは認識できるため、支払期日から5年の時効期間が適用されるケースが大半です。

1-3. 調停や審判、訴訟で決まった養育費の時効期間

離婚調停や離婚訴訟、養育費請求調停や養育費請求審判で決まった将来分の養育費については、協議の場合と同じです。すなわち、決まった養育費の支払いがなかった場合、支払い期日から5年間で時効消滅します。

一方、公的文書以外で取り決めていた養育費の未払い分について、養育費請求調停や審判、訴訟で支払うことが決まった場合は、過去の未払い分の養育費の時効は、調停で決めた支払期日、もしくは審判または判決確定時から10年となります。

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2. 養育費の取り決めがない場合、時効は適用される?

養育費の取り決めがない場合は、そもそも明確な支払い期日のある養育費の請求権が存在しないため、時効は適用されません。また、過去にさかのぼって養育費を請求することもできません。

ただし、2026年5月までに施行される改正民法では、法定養育費制度が導入されます。この制度によって、協議で養育費について取り決められなかった場合、調停や審判などの法的手続きを経ることなく一定の金額の養育費を元配偶者に請求できるようになります

この法定養育費は、離婚日から発生すると規定されているため、離婚時に養育費について取り決めなかった場合、この制度を利用できる余地はあります。

3. 時効をふまえた養育費請求に関する注意点

養育費の取り決めや請求の際には、時効があることをふまえたうえで、次の2点に注意しましょう。

3-1. 口約束だけでは請求が難しい

口頭で合意しただけでは、養育費の金額や弁済期などを証明するのが難しいため、養育費の未払いを請求できなくなる可能性があります。

協議離婚の場合、離婚協議書を強制執行認諾文言付きの公正証書にしておけば、不払いとなった場合に、調停や審判等の法的手続きを経ることなくすぐ強制執行を申し立てることができます。強制執行認諾文言付公正証書とは、相手が養育費などの債務を履行しない場合に強制執行を受けることを認める旨の記載がある公正証書です。養育費が支払われなくなった際に差し押え手続きをスムーズに行うため、ぜひ公正証書を作成しておくことをお勧めします。

ただし、公正証書の作成は夫婦双方の合意が必要なうえ、手間もかかるため、作成ができないケースもあります。その場合でも、最低限、夫婦双方の署名捺印のある離婚協議書を作成しておくとよいでしょう。

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3-2. 時効完成を防ぐための対応は速やかに|時効の完成猶予と時効の更新

①時効の援用
養育費請求権は、時効期間が経過すると当然に請求権が消滅してしまうわけではありません。養育費の請求権について時効期間が経過した際に、権利者が義務者に対して請求した場合、相手が時効の完成を主張する(=時効の援用)ことで、消滅時効の効果が確定し、請求できなくなります

そのため、時効期間が経過しているからといって請求をあきらめるのではなく、一応請求はしてもよいでしょう。

②時効の完成猶予
時効の完成猶予とは、時効期間進行中に特定の事由が生じた場合に、一定期間、時効が完成しない、すなわち時効の完成が先延ばしになることです。

法律で定められた時効の完成猶予の事由には、以下のものがあります。

時効の完成猶予事由

完成猶予事由

内容

具体例

裁判上の請求など

事由終了まで完成猶予

養育費請求調停申立て

支払督促申立てなど

強制執行など

事由終了まで完成猶予

給与差し押えの申立て

仮差し押えなど

事由終了時から6カ月間
完成猶予

協議を行う旨の
書面による合意

①合意から1年
②合意で定めた協議期間の経過
③協議の続行拒絶通知から6カ月
のいずれかまで完成猶予

催告

催告時から6カ月間完成猶予

内容証明郵便で請求

天災等の事変による
裁判上の請求または
強制執行不可

障害の消滅時から3カ月間
完成猶予

③時効の更新
時効は、進行している時効期間中に一定の事由があると、進行していた期間がリセットされてまたゼロからスタートします。これを時効の更新と言います。時効の完成を阻止するには、時効の更新をさせるために速やかな対応が必要です。

法律で定められた時効の更新事由には、以下のものがあります。

時効の更新事由

時効更新事由

内容

具体例

裁判上の請求

確定判決または確定判決と同一の
効力を有するものによって権利が
確定された場合

・養育費請求調停成立

・養育費請求審判確定

承認

債務者が権利者に対し、
権利の存在を認める行為

・一部の支払い

・支払い猶予の要請

強制執行や競売

強制執行などの終了後、残った債権
についてはあらためて時効期間が進行

給与の差し押え

4. 養育費が時効にかかりそうな場合の対処法

上記の表をふまえ、養育費請求の消滅時効を完成させないための方法について、実務的な見地から説明します。

具体的な対処法として、次のものが挙げられます。

  • 催告

  • 調停または審判

  • 強制執行など

  • 債務の承認

4-1. 催告

公正証書ではない離婚協議書で取り決めた養育費の未払い場合がある場合、訴訟で請求することは可能です。しかし、訴訟提起はもちろん、調停や審判も準備に時間がかかります。

そのため、養育費の消滅時効期間の経過が迫っている場合は、まずは内容証明郵便で請求して、6カ月間は時効が完成させないようにすることが現実的です。このように相手に対して債務の履行などを求める行為を「催告」と言い、時効の完成猶予事由の一つです。催告は、法的にはメールや手紙でも構いませんが、確実な証拠を残しておくためには、内容証明郵便で請求するのが望ましいでしょう。

4-2. 調停または審判

催告をしたうえで、すぐに訴訟提起もしくは調停や審判の申立てをします。

訴訟提起は準備に時間がかかり、印紙代もかかるため、実際には調停を申し立てるほうが対応しやすいと思います。調停が不成立となったら審判に移行します。

ただし、調停はあくまでも任意の手続きで、相手が応じなければ不成立となってしまいます。相手が拒否することが明確であれば、調停ではなくはじめから、強制力のある審判を申し立てる方法も考えられます。

4-3. 強制執行など

訴訟提起の前の仮差し押さえや調停、審判申立て前の仮処分によって時効の完成が猶予されます。また、公正証書や裁判所の手続きで決められた養育費が未払いの場合は、すぐに強制執行ができます。

4-4. 債務の承認

「催告」「調停または審判」「強制執行など」とは異なり、債務の承認は義務者からの言動による事由となります。

上記の表にある例は、あくまでも義務者の意思によるものですが、たとえば、支払いの一部でも約束させる誓約書や念書といった書面の作成などが考えられます。メールやSNSなどで請求した際に、義務者が「お金がないので払わない」と拒否してきた記録があれば、養育費を支払う義務があること自体は認めている証拠になるので、それも有益です。

催告と異なり、何らかの目で見える証拠で構いません。ただし、口頭では立証が難しいため、書面やメールなどで残しておくことが重要です。

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5. 2026年5月までに導入|共同親権制度が養育費の時効に与える影響は?

ここでは、2026年5月までに導入される共同親権制度により、離婚後に共同親権となった場合の養育費の取り扱いや、併せて新設される制度や規定について解説します。

まず、親は、親権の有無にかかわらず子に対する扶養義務があるため、共同親権そのものが現在の養育費の取り扱いに影響を与えることはないと思われます。養育費の時効にも影響はありません。

もっとも、共同親権制度とともに新設される制度の影響はあります。

まず、現在では、養育費請求には取り決めや調停、審判が必要です。しかし、今回新設される「法定養育費制度」によって、取り決めがなくても、子どもを養育する親が元配偶者に最低限の養育費を請求できるようになります。請求は離婚日から可能です。

また、養育費不払いが問題になっている現状を改善するため、義務者から養育費が支払われない場合に、ほかの債権よりも優先して財産の差し押さえを可能とする「先取特権」が養育費につけられるようになります。加えて、養育費を取り決める当事者の負担軽減のため、調停で養育費を決める段階でも、裁判所が当事者の資産状況や収入の情報開示命令を出せるようになります。

6. 養育費の時効完成が迫っているときは弁護士に相談を

時効の完成を阻止するための対処法には高い専門性が求められるうえ、手間もかかります。

そのため、養育費の消滅時効の完成が迫っているときには、すぐに弁護士に相談してください。

弁護士である筆者の経験を挙げると、依頼者の相談を受けた時点で時効完成が間近に迫っていたことから、急いで内容証明郵便を送ったケースがありました。

対処に迷っている間にも時効期間は進行するため、できる限り早めに相談することをお勧めします。

7. 養育費と時効に関してよくある質問

Q. 時効が完成しても、養育費は請求できる?

相手が時効を援用せず、自身の意思で支払うと言ってきたら受け取れます。しかし、相手が時効を援用すれば、法的に支払い義務が消滅してしまいます。

Q. 養育費を公正証書で取り決めた場合、時効はどうなる?

協議で決めた場合と同じです。公正証書は、時効においては、公正証書は確定判決と同一の効力を持つわけではありません。

Q. 養育費は何年前までさかのぼって請求できる?

養育費の取り決めがあれば、未払い分を時効期間の範囲で過去にさかのぼって請求できます。


一方、養育費の取り決めがない場合は、過去にさかのぼって養育費を請求することはできないとされているため、早めに請求するのがよいでしょう。


なお、改正民法の施行後は、法定養育費制度を利用する余地があることは、上記で説明したとおりです。

Q. 養育費の未払いは法律違反?

養育費の取り決めがあれば、未払いは契約を守らなかったという「債務不履行」となりますが、取り決めがなければ法律違反とはなりません。

8. まとめ 養育費が支払われなくなった場合の請求は弁護士に相談を

時効については、法律で決められている事柄が多く、専門性が高いため、当事者自身の判断による行動は不利益につながるおそれがあります。また、一刻を争う状態になってしまったり、少しの不注意で請求できなくなってしまったりする場合もあります。

養育費が時効によって請求できなくなる事態を防ぐためには、専門的な知識を持つ弁護士のサポートを受けながら具体的に対処することが必要です。

時効を意識した時点で、すぐに養育費の問題に精通している弁護士に相談することをお勧めします

(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)

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