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法定養育費制度とは?【2026年5月までに開始】 養育費を決めずに離婚しても請求可能に

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法定養育費は父母の同意がなくても受け取ることができます(c)Getty Images
2026年5月までに、離婚時に取り決めをしていなくても法律に基づいた養育費を請求できる「法定養育費制度」が導入される予定です。これは、養育費を確保するための大きな助けとなる制度です。改正民法によって新たに導入される法定養育費制度について、弁護士が詳しく解説します。
目 次
  • 1. 法定養育費制度とは?
  • 1-1. 法定養育費制度の目的・導入の背景
  • 1-2. 法定養育費制度はいつから施行される?
  • 1-3. 法定養育費制度の導入によって期待される効果
  • 2. 法定養育費と併せて導入される新制度
  • 2-1. 離婚後の共同親権
  • 2-2. 養育費に関する先取特権
  • 3. 法定養育費の計算方法
  • 4. 法定養育費の請求手続き
  • 4-1. 元配偶者と話し合い、任意に支払いを受ける
  • 4-2. 強制執行を申し立てる|調停や審判などは不要
  • 5. 養育費回収のために差し押さえる財産が把握できない場合の対処法
  • 5-1. 財産開示手続
  • 5-2. 第三者からの情報取得手続
  • 6. 法定養育費制度についての注意点
  • 6-1. 法定養育費が導入されても、養育費は合意などで取り決めることが望ましい
  • 6-2. 法定養育費を受け取れるのは、長くても子どもが18歳になるまで
  • 6-3. 相手が経済的に苦しいと、法定養育費を受け取れないことがある
  • 6-4. 法定養育費制度が始まる前に離婚した場合は、法定養育費を請求できない
  • 7. 養育費の請求について弁護士に相談するメリット
  • 8. 法定養育費に関するよくある質問
  • 9. まとめ 法定養育費は養育費の取り決めがなかった場合でも法律で決まった額を請求できる
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1. 法定養育費制度とは?

「法定養育費制度」とは、離婚時に養育費を取り決めていない場合でも、法律の規定に従って計算した額の養育費を離婚日に遡って請求できる制度です。2026年5月までに、改正民法の施行によって法定養育費制度が導入されます。

1-1. 法定養育費制度の目的・導入の背景

従来のルールでは、養育費の額を決めるには、父母の協議や家庭裁判所の手続きを経る必要がありました。しかし、相手が協議に応じなかったりするケースも多く、養育費を受け取れない人が少なくなかったのです。

こうした問題を解決するため、離婚時に取り決めをしていなくても養育費を受け取れるように、改正民法で法定養育費制度が導入されることになりました。

1-2. 法定養育費制度はいつから施行される?

法定養育費制度は、2026年5月までに改正民法の施行によって導入される予定です。具体的な施行時期は未定で、今後決定されます。法定養育費を請求できるのは、改正民法が施行された後に離婚した場合に限られます

1-3. 法定養育費制度の導入によって期待される効果

法定養育費制度が導入されると、相手が協議に応じない場合でも、比較的簡単な手続きによって養育費を請求できるようになります。同時に導入される「先取特権」(後述)も併せて活用すると、よりスムーズに養育費の支払いを受けられます。

また、離婚時に遡って請求することができる点も、法定養育費の大きな特徴です。請求のタイミングが多少遅れたとしても、支払いを受ける側の不利益は小さく済みます。

ただし、法定養育費はあくまで暫定的・補充的な制度に過ぎません。子どもの健全な成長を支えるためにも、父母の協議や家庭裁判所の手続きを通じて、家庭の実情に即した養育費を決めることが求められます。

2. 法定養育費と併せて導入される新制度

2026年5月までに施行される改正民法では、法定養育費以外にも、離婚後の共同親権や養育費に関する先取特権などが新たに導入されます。

2-1. 離婚後の共同親権

従来の民法では、父母が離婚した後の子どもの親権者は、父母のいずれか一方とする必要がありました(=単独親権)。改正民法が施行されると、離婚後の親権者を父母の両方とすることが認められるようになります(=共同親権)。共同親権の導入により、離婚後の親子の関わり方について選択肢の幅が広がります。

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2-2. 養育費に関する先取特権

先取特権とは、他の債権者よりも優先して自分の債権の弁済を受ける権利をいいます。改正民法が施行されると、一定額までの養育費について先取特権が付与されます。

つまり、養育費に先取特権が認められることで、訴訟の確定判決などをもらわなくても、離婚協議書などの合意文書をもとに養育費の強制執行を申し立てることができるようになります。さらに、法定養育費についても、同じように強制執行の申立てが可能になります。

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3. 法定養育費の計算方法

法定養育費として請求できる金額は、子どもの最低限の生活を維持するために必要な標準的な費用を基準に算出されます。具体的な額は、子どもの人数などを考慮し、法務省令で定められた基準に基づいて決められます(改正民法766条の3第1項)。法務省令は現時点でまだ公表されておらず、今後整備される予定です。

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4. 法定養育費の請求手続き

法定養育費の請求方法について解説します。なお、法定養育費を請求できるのは、改正民法の施行日以降に離婚した場合のみです。

4-1. 元配偶者と話し合い、任意に支払いを受ける

養育費の問題は、まず元配偶者との話し合いで解決するのが最も簡単な方法です。合意できれば、余計な手続きや費用をかけずに養育費を受け取れます。

もし離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、法定養育費を根拠に「法律上、この金額は支払う義務がある」と伝えることで、相手が任意に支払いに応じる可能性があります。相手が支払いを認めたら、その流れでさらに話し合いを進め、家庭の状況に合った適正な金額に調整することを目指しましょう。

4-2. 強制執行を申し立てる|調停や審判などは不要

相手が法定養育費の支払いに応じないときは、先取特権に基づいて裁判所に強制執行を申し立てましょう。調停、審判、訴訟などの裁判手続きを経る必要はありません。

強制執行の申立てに当たっては、差し押さえる相手の財産を特定する必要があります。さまざまな財産が差押えの対象になりますが、金銭をすぐに回収できる預貯金や給与を差し押さえるのが一般的です。

5. 養育費回収のために差し押さえる財産が把握できない場合の対処法

裁判所へ養育費の強制執行を申し立てるに当たって、差し押さえる相手の財産を把握できない場合には、「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」を利用しましょう。

5-1. 財産開示手続

財産開示手続とは、裁判所が債務者(=支払う側)を呼び出し、その財産状況を申告させる手続きです。債務者には期日に出頭し、財産について正確に陳述する義務があります。もし、出頭を拒否したり、虚偽の申告をしたりすると、刑事罰の対象となります

この手続きは、現状では確定判決などの「債務名義」を持っている場合に利用できます。ただし、改正民法の施行により養育費に「先取特権」が付与されると、債務名義がなくても、この特権を根拠に財産開示手続を申し立てることが可能になります

5-2. 第三者からの情報取得手続

第三者からの情報取得手続とは、登記所、市区町村、日本年金機構、銀行などに対し、債務者の財産情報を提供するよう求める手続きです。これにより、養育費の回収に必要な不動産、給与、預貯金などの財産情報を取得し、強制執行の申立てに活用できます

第三者からの情報取得手続も、財産開示手続と同様に、原則として確定判決などの債務名義を有する場合に利用できます。ただし、改正民法が施行され、養育費に先取特権が付与されて以降は、債務名義がなくても第三者からの情報取得手続を申し立てることが可能となります。

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6. 法定養育費制度についての注意点

法定養育費制度は万能ではなく、注意すべきポイントがあります。法定養育費を請求しようとする際には、特に以下の各点にご注意ください。

6-1. 法定養育費が導入されても、養育費は合意などで取り決めることが望ましい

法定養育費は、養育費の正式な取り決めが行われるまでの暫定的かつ補充的な制度です。子どもが最低限の生活を維持するための費用はまかなえますが、より充実した生活や教育を考えると、不十分に感じることもあるでしょう。子どもの幸せや将来を見据え、十分な養育費を確保するためにも、父母の合意や裁判手続きによって適正な額を決めることが重要です。

6-2. 法定養育費を受け取れるのは、長くても子どもが18歳になるまで

法定養育費を請求できるのは、以下のうち最も早い日までとされています(改正民法766条の3第1項)。

  • 父母の協議により、養育費の分担についての定めをした日

  • 養育費の分担についての審判が確定した日

  • 子どもが成年(18歳)に達した日

養育費の取り決めがなされた場合のほか、子どもが18歳になった場合も、法定養育費を請求できなくなる点にご注意ください。

6-3. 相手が経済的に苦しいと、法定養育費を受け取れないことがある

債務者が支払能力を欠いている、または支払いによって生活が著しく困窮することを証明できた場合、法定養育費の全部または一部の支払いを拒否することが認められています(改正民法766条の3第1項)。

そのため、相手の経済状況によっては、法定養育費を受け取れないケースもあるため注意が必要です。

6-4. 法定養育費制度が始まる前に離婚した場合は、法定養育費を請求できない

改正民法の施行前に離婚した場合、法定養育費の制度は適用されません。そのため、養育費を請求するには、父母の話し合いや家庭裁判所の手続きによって取り決める必要があります。なお、改正民法の施行時期は2026年5月までとされていますが、具体的な日程は未定です。

7. 養育費の請求について弁護士に相談するメリット

離婚時や離婚後に養育費を請求する際は、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に依頼すれば、収入状況や子どもの人数・年齢を踏まえ、適正な養育費を相手に請求できます。また、進学費用や医療費などの特別な支出についても、適切に精算する方法を交渉してもらえます。

もし相手が支払いを拒否した場合でも、弁護士がいれば裁判手続きをスムーズに進め、確実に回収することが可能です。適正な養育費をできるだけ早く受け取りたい場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

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8. 法定養育費に関するよくある質問

Q. 法定養育費はいくら?

法定養育費として請求できる額は、子どもの最低限の生活を維持するための標準的な費用を基準に、子どもの数などを考慮して算定されます。具体的な計算方法は法務省令で定められる予定ですが、現時点ではまだ制定されていません。

Q. 法定養育費制度の問題点はある?

法定養育費制度は、あくまで子どもの最低限の生活を維持するための費用を確保する仕組みです。そのため、十分な教育や充実した生活を支えるには、法定養育費だけでは足りない可能性があります

子どもの健全な成長を考えるなら、家庭の状況や教育方針に応じて、父母の話し合いや家庭裁判所の手続きを通じて適切な養育費を取り決めることが望ましいでしょう。

9. まとめ 法定養育費は養育費の取り決めがなかった場合でも法律で決まった額を請求できる

法定養育費制度が導入されると、養育費の取り決めがなくても、法律に基づいた額を請求できるようになります。さらに、養育費の先取特権を活用すれば、相手が支払いを拒んでも回収しやすくなることが期待されます。

改正民法の施行時期は2026年5月までとされていますが、現時点では未定です。制度の詳細も今後法務省令で定められるため、最新の動向を注視する必要があります。

あくまでも法定養育費は暫定的・補充的な制度で、最低限の生活を維持する程度の額にとどまります。個別具体的な家庭の事情に対応するには、引き続き父母間の合意や裁判での取り決めが重要です。子どもの将来のための適正な養育費を確実に受け取るには、弁護士のサポートを受けましょう。弁護士と協力することで、話し合いや裁判手続きをスムーズに進められる可能性が高まります。

(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)

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