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養育費を払わないとどうなる!? 養育費を払わなくてよい場合について解説

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支払義務のある養育費も、事情によっては支払わなくてもよい、または減額されることがあります (c)Getty Images
子どもがいる夫婦の離婚では、多くの場合、子どもの養育費が発生します。養育費は子どもが自立するまで支払う必要があるため、払う期間が10年を超える長期間になるケースも少なくありません。そのため、支払う側としては長期間支払うことができるのか、収入が下がった場合や再婚した場合にはどうなるのか、といった不安を抱える人も多いでしょう。養育費を支払わなくてよいケースのほか、養育費が支払えなくなったときの対処法と手続きについて弁護士がわかりやすく解説します。
目 次
  • 1. 養育費は払わないといけない?
  • 1-1. 養育費は支払う義務がある
  • 1-2. 養育費を払わないとどうなる? 未払いの罰則はある?
  • 2. 養育費が払われない場合の強制執行の手続き
  • 2-1. 公正証書や調停調書がある場合
  • 2-2. 公正証書や調停調書がない場合
  • 2-3. 法定養育費制度と先取特権の導入
  • 3. 離婚後に養育費を払わなくてよい場合はある?
  • 3-1. 父母間で、養育費を払わないと合意した
  • 3-2. 養育費の終期が到来した
  • 3-3. 子どもが経済的に自立した
  • 3-4. 時効が完成した
  • 3-5. 収入がなくなってしまった
  • 4. 養育費が払えなくなったらどうすべき?
  • 4-1. 養育費の減額が認められるケース
  • 4-2. 養育費の減額が認められないケース
  • 4-3. 養育費を減額するための手続き
  • 5. 離婚後の共同親権制度が養育費に与える影響は?
  • 6. 養育費の支払いに悩んだときに弁護士に相談するメリット
  • 7. 養育費を払わない方法に関してよくある質問
  • 8. まとめ 養育費の支払いに不安がある場合は弁護士に相談を

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1. 養育費は払わないといけない?

養育費を支払わなくても法的な罰則はありません。ただし、支払義務はあることに注意が必要です。

1-1. 養育費は支払う義務がある

未成年の子どもや成年していても、社会的にも経済的にも自立していない子どもは、自分で生活費をまかなうことができません。養育費とは、子どもが自立するまでの衣食住や教育、医療にかかるお金など、親が子どもを養育するために要する費用のことを言います。

そして、仮に夫婦が離婚したとしても、その子どもの父母である事実は変わらないため、父母は子どもの養育費を負担する義務があります。

そのため、夫婦が離婚した場合、子どもと離れて暮らす親(以下「非監護親」)は、子どもと一緒に暮らす親(以下「監護親」)に対し、子どもが自立するまでの養育費を支払う義務を負います。

1-2. 養育費を払わないとどうなる? 未払いの罰則はある?

法律上、養育費を支払わなかったとしても、犯罪にはあたらないため、罰則を下されることはありません。

しかし、支払わない場合にももちろんリスクはあります。

支払う義務がある以上、養育費を請求できる監護親は一定の要件を満たした場合、非監護親の預貯金や給料を強制的に差し押さえることができます。給料が差し押えられた場合には、会社に養育費未払いの事実が判明するほか、滞納分には遅延損害金が加算されます。

また、裁判所が滞納者の財産を調査する「財産開示手続」という制度がありますが、その出廷要請に応じなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合には、刑事罰の対象となります。最近では逮捕者が出たという報道もあります。働いているのに働いていないと答えたり、財産はないと嘘をついたりするなど、虚偽の回答は避けなくてはなりません。

2. 養育費が払われない場合の強制執行の手続き

養育費が支払われない場合の強制執行の手続きは、公正証書などの「債務名義」があるかどうかによって変わります。

2-1. 公正証書や調停調書がある場合

離婚時に、「養育費を月いくら支払う」という約束をした強制執行認諾文言付の公正証書を作成している場合や、調停を経て離婚が成立した場合、養育費の支払いが滞るとすぐに強制執行を申し立てることができます。

強制執行に必要な公的な書類を「債務名義」と言います。また、強制執行認諾文言付公正証書とは、債務が支払われない場合に強制執行を受けることを認める旨の記載がある公正証書のことです。

債務名義があれば裁判所に強制執行の申立てができ、裁判所から銀行や勤務先などの第三債務者に差押えの通知が行くことになります。

2-2. 公正証書や調停調書がない場合

口約束だけの場合や、夫婦間で協議離婚書を作成したのみの場合には、滞納があったとしてもすぐに強制執行を申し立てることはできません。裁判所に調停や訴訟を提起し、養育費の支払いを命じる判決や審判などの債務名義を取得する必要があります。

債務名義を得たあとに、強制執行の申立てができます。

2-3. 法定養育費制度と先取特権の導入

2024年5月に法律が改正され、法定養育費と先取特権(さきどりとっけん)が導入されることになりました。いずれも2年以内に施行される予定です。

法定養育費とは、離婚時に「養育費をいくら支払う」といった取り決めをしていなかった場合でも、法務省が定めた必要最低限の金額を離婚日から支払わなければならないという制度です。

先取特権とは、養育費に特別な権限を与えて、債務名義がなくても、ほかの債権に優先して強制執行をすることができるという養育費の権利性を強化するものです。

これまでは公正証書がない場合や調停を経ていない離婚の場合、養育費を強制的に払わせるためには一度裁判所の手続きを経て、債務名義を取得する必要がありました。ただ、そのためには半年以上の時間を要するケースも多く、手間や費用がかかってしまいます。

今回の法改正は、このようなデメリットをなくし、子どものための養育費の権利を強化したものと言えます。

3. 離婚後に養育費を払わなくてよい場合はある?

次の5つのケースでは、離婚後に養育費を支払わなくてもよいことがあります。

  • 父母間で、養育費を払わないと合意した

  • 養育費の終期が到来した

  • 子どもが経済的に自立した

  • 時効が完成した

  • 収入がなくなってしまった

3-1. 父母間で、養育費を払わないと合意した

離婚時に、父母間で「養育費を請求しない」と合意した場合、この合意は原則として法的にも有効と考えられています。

もっとも、養育費の請求権とは別に、子ども自身から親に対して扶養料を請求することは可能です。

養育費は「子どもの養育のために、監護親に払う費用」であり、養育費を請求しないという合意はあくまで父母間の合意です。一方で、子どもの扶養料は「子どもの扶養のために、子どもに払う費用」であるため、養育費の合意とは別個のものになるのです。

そのため、頻繁にあることではありませんが、養育費を請求しないという合意があったとしても、子ども自身から扶養料を支払ってほしいと請求されるケースがあります

3-2. 養育費の終期が到来した

養育費の支払いは、通常、「子どもが成人するまで」「20歳になるまで」「大学を卒業するまで」といった具合に、支払いが終わりとなる期限(=終期)を定めます。

終期については、父母間で合意ができればそれによって決まりますが、合意ができない場合には裁判所が決めます。これまでは成人が20歳だったため、20歳とするケースが一般的でした。しかし、成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、18歳とするケースや、大学進学率が高いなどの背景から、「原則18歳、ただし大学進学している場合には卒業まで」となるケースが増えています。

3-3. 子どもが経済的に自立した

子どもが中学校卒業後に就職し、経済的に自立したような場合には、養育費の支払いが不要になるケースがあります。養育費は、子どもが自立するまでの生活保障という側面があるためです。

3-4. 時効が完成した

養育費を請求する権利は、通常5年で時効により消滅します(=時効の完成)。つまり5年以上前の滞納分については、「時効が成立しているから支払わない」と主張できるのです。

ただし、家庭裁判所の調停や審判、判決によって決められた権利は、時効期間が5年ではなく10年です。

時効は、成立するまでに裁判を提起した場合には、裁判中、時効の完成が猶予されたり、内容証明郵便を送ることで6カ月間時効の成立を先延ばしにできたりするといった例外的なルールがあります。また、時効が成立する前に一部を支払うと、債務を承認したとして時効期間がリセットされて、そのときからまたカウントが始まるというルールもあります。

自身の養育費について時効が成立しているのかどうか判断がつかないときは、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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3-5. 収入がなくなってしまった

病気や事故により、客観的に見ても働けなくなり、収入が途絶えてしまう場合があります。

法も無収入の人から無理やりお金を取ることは想定していないため、支払い義務のある人の収入がなくなってしまった場合、本当に養育費を支払えないというケースもあります。

逆に、働こうと思えば働けるにもかかわらず働きたくないという場合には、実際に収入が0円であっても、稼働能力はあると判断されれば、一定の収入があるのと同等の状況であると見なされることがあります。この場合、養育費を支払わなくてはならないケースもあります。

4. 養育費が払えなくなったらどうすべき?

生活の変化により養育費が支払えなくなった場合、事情によっては減額が認められます。認められるケースと認められないケース、および減額のための手続きは次のとおりです。

4-1. 養育費の減額が認められるケース

養育費は、基本的には離婚時の双方の収入をベースに金額を決めますが、離婚したあとに、さまざまな事情によって収入や家族構成が変化することは往々にしてあります。

たとえば、次のようなケースでは、養育費の減額が認められることがあります。

  • 離婚時には予期していなかった事情により、収入が減ってしまった

  • 再婚して新しく子どもが生まれた

  • 再婚相手の連れ子と養子縁組をした

  • (養育費を受け取る)監護親の収入が増額した

養育費は、離婚時に存在したさまざまな事情を加味して決めるものです。そのため、離婚時にすでに交際相手がいて再婚を予定していたような場合や、離婚時に転職して収入が下がることがすでに予想されていたような場合、法的にはそのような事情は織り込み済みである、と評価されることが多くなっています。再婚したから、転職して収入が下がったからといって必ず養育費の減額が認められるわけではないことには注意しましょう。

特に、離婚してからあまり時間が経過していない場合には、再婚などの事情があっても減額が認められないケースもあります。

4-2. 養育費の減額が認められないケース

養育費の減額が認められるのは、あくまで自身の収入面に予期せぬ変動があったり、家族構成、つまり扶養家族に変化が生じるようなケースです。そのため、たとえば、離婚後に借金をしてその返済が厳しい、住んでいる家の家賃が高くなったため養育費の支払いが厳しいというようなケースでは、養育費の減額は認められません。

4-3. 養育費を減額するための手続き

養育費を減額できるような事情の変更があったとしても、自動的に減額がされるわけではありません。また、相手の了承を得ることなく勝手に減額できるわけでもありません。養育費を減額するためには、相手の了承を得るか、調停や審判によって減額の決定を得る必要があります。

相手に、養育費を減額したい旨を伝え、相手がそれを了承すれば減額が可能です。ただし、あとでトラブルにならないためにも、了承を得たことを示す書面を作成するのが望ましいです。

相手が減額に応じない場合には、家庭裁判所に養育費減額の調停や審判を申し立てる必要があります。調停や審判のなかで、減額を求める理由と根拠を示し、裁判所が認めれば、減額の決定が下されます。

また、弁護士会が設けている「養育費ADR」という制度があります。これは弁護士会が当事者の間に入り、妥当な養育費の金額について調整する制度です。平日の日中に行われる調停と異なり、17時以降も開催が可能であるなど、裁判所を通した手続きよりも柔軟性が認められる点にメリットがあります。

5. 離婚後の共同親権制度が養育費に与える影響は?

2026年5月までに、離婚後も父母双方が親権を持つ共同親権制度が導入されます。

しかし、共同親権であるからといって、離婚後も父母が一緒に暮らして子どもを養育するわけではなく、どちらかが監護親、非監護親という枠組み自体は残ります。そのため、養育費の実務に大きな影響があるとは考えられていません。

金額も終期も、共同親権だからといって変更されることはないと考えられます。

もっとも、共同親権は、親権を持つことによって父母であることの自覚を強め、養育費の誠実な支払いにつなげるという意図もあると言われています。同時に導入される法定養育費制度や先取特権化の側面からすれば、法が養育費の支払いを重視していることは明らかなため、今後はよりいっそう養育費を誠実に支払うことが求められると予想されます。

6. 養育費の支払いに悩んだときに弁護士に相談するメリット

養育費の減額が認められるのか、認められるとしてどれくらいの金額になりそうか、どういう手続きを経ればリスクなく減額を実現できるのか、という判断は専門的な知識や経験を要します。

インターネット上にはさまざまな情報が掲載されており、一般的な知識や考え方として参考にするのは有益でしょう。しかし、自身のケースではどうなるのか、という判断に関しては弁護士に相談することをお勧めします。

養育費の支払い問題について豊富な知識を持つ弁護士であれば、疑問点や不安点について専門的な見地から具体的な助言が可能です。

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7. 養育費を払わない方法に関してよくある質問

Q. 養育費を払わなくてよくなる方法はある?
養育費の終期が到来した場合や、子どもが就職して自立した場合、時効が成立した場合には養育費の支払いが不要になることがあります。 また、収入が減ったり、扶養家族に変更が生じたりした場合には減額が認められることもありますので、一度弁護士に相談してみてください。
Q. 養育費を払わないと警察に捕まる?
養育費を払わないことは犯罪ではないので、捕まることはありません。 ただし、相手が申し立てた財産開示手続きを拒否したり、虚偽の陳述をしたりした場合には、刑事罰の対象となり、逮捕されるリスクがあるので注意が必要です。
Q. 養育費が支払われないときは泣き寝入りするしかない?
相手に財産がある、あるいは職に就いているなどのケースであれば、強制執行によって滞納分を回収することは可能です。 また、相手の財産や就職先がわからない場合でも、それを調査する方法はありますので、あきらめずに一度弁護士に相談してみてください。
Q. 養育費を払わない元配偶者が子どもに会いたがるときはどうすべき?
養育費の支払いと面会交流は、法的には別の話であり、「養育費を払わないと会わせない」「子どもに会いたかったら養育費を支払え」という主張は認められません。逆に、「子どもに会わせないのであれば養育費は払わない」という主張も認められません。 心情的には理解できる部分もありますが、子どもの福祉の観点から、調停などを通じて話し合うべきだと考えます。

8. まとめ 養育費の支払いに不安がある場合は弁護士に相談を

養育費は支払いが終わるまで長い期間を要します。その間、転職や再婚、出産などさまざまな出来事があり、養育費を支払い続けられるのか、減額できないかとの悩みが生じることもあるでしょう。養育費の支払いが困難になった場合、事情や生活状況によっては養育費を支払わなくてもよい、あるいは減額が認められることがあります

弁護士であれば、個別のケースに対して、養育費の支払いに関する見通しを伝えることが可能です。

初回相談無料で対応している法律事務所も多くあります。一人で悩まず、まずは専門家のサポートを受けてみることをお勧めします。

(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)

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