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養育費に連帯保証人は付けられる? メリットや注意点、未払い対策を解説

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養育費の支払いが滞るリスクに備え、連帯保証人が付けられます (c)Getty Images
養育費は子どもが独立するまで長期間にわたって支払われるため、途中で支払いが滞るケースを心配する人もいるでしょう。こうしたリスクに備えて、養育費には連帯保証人を付けることができます。養育費に連帯保証人を付けるメリットや注意点、また養育費の未払いが起きた場合の対策について、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 連帯保証人とは?
  • 2. 養育費にも連帯保証人を付けられる
  • 3. 養育費に連帯保証人を付けるメリット
  • 3-1. 養育費を受け取る側のメリット
  • 3-2. 養育費を支払う側のメリット
  • 4. 養育費に連帯保証人を付ける方法
  • 4-1. 【STEP1】連帯保証人の同意を得る
  • 4-2. 【STEP2】契約書を作成する
  • 5. 連帯保証以外の養育費未払いへの対策
  • 6. 未払い養育費の回収方法
  • 6-1. 【STEP1】内容証明郵便による請求書の送付
  • 6-2. 【STEP2】 履行勧告、履行命令の申立て
  • 6-3. 【STEP3】強制執行の申立て
  • 7. 2026年5月までに導入|共同親権制度、法定養育費制度、先取特権が養育費に与える影響は?
  • 8. 養育費の未払い対策について弁護士に相談するメリット
  • 9. 養育費と連帯保証人についてよくある質問
  • 10. まとめ 養育費の連帯保証契約は弁護士に相談を

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1. 連帯保証人とは?

連帯保証人とは、借金などの債務を負っている主債務者と同様の義務を負う人です。

たとえばAさんがB銀行から500万円を借り、Cさんを連帯保証人にしたとします。Aさんからの返済が滞った場合、B銀行は即座にCさんに500万円を返済するように求められます。万が一Cさんが返済できなければ、B銀行はAさんと同じようにCさんの財産も差し押さえられます。このように、連帯債務者は主債務者と同様の責任を負わなければいけません。

2. 養育費にも連帯保証人を付けられる

養育費にも連帯保証人が付けられます。たとえば、養育費の支払いについて、義務者の親が引き受けてくれたならば連帯保証人に任命することができます。

ただし、こうした場合は必ず連帯保証人となる人が了承しなければならず、勝手に名前を借りて連帯保証人にすることはできません

また、裁判所の手続きや公正証書の作成時には、養育費に連帯保証人を付けることに難色を示されるケースが多いです。

3. 養育費に連帯保証人を付けるメリット

養育費に連帯保証人を付けるメリットを、養育費を受け取る側と支払う側に分けて解説します。

3-1. 養育費を受け取る側のメリット

養育費を受け取る側にとってのメリットは、支払いが滞った場合、即座に連帯保証人に請求できる点です。

厚生労働省が発表した「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費の支払いが滞るケースは珍しくないことがわかります。養育費の受給状況で「現在も受給している」のは、母子家庭で28.1%、父子家庭では8.7%にとどまっています(いずれも推計値)。

このような実情をふまえると、リスクに備えて連帯保証人を付けるのは賢明かもしれません。

3-2. 養育費を支払う側のメリット

連帯保証人を付ければ、協議離婚が早期に成立する可能性があります。

養育費を受け取る側には、養育費が長期にわたって確実に支払われるかどうかという不安があります。連帯保証人を付ければそうした不安が払拭され、相手からの信頼が得られます。そのため、養育費を含む離婚条件の交渉においては、連帯保証人がプラスに働く可能性があります。

4. 養育費に連帯保証人を付ける方法

養育費に連帯保証人を付けるためには、以下の順序で進めます。ただし、審判や判決による離婚の場合は、養育費の支払いについての連帯保証人は認められません

4-1. 【STEP1】連帯保証人の同意を得る

まずは連帯保証人を引き受けてくれる人を探して同意を得ます。連帯保証人は単独で法律行為ができる行為能力と、養育費の支払い義務者に代わって支払える弁済能力がなければいけません。

連帯保証人を付けるにあたっては必ず同意を得なければならず、勝手に任命できません。この場合、養育費を受け取る側と連帯保証人との間に合意があればよく、養育費を支払う側と連帯保証人との間の合意は不要です。

4-2. 【STEP2】契約書を作成する

連帯保証人が決まって同意を得たら、連帯保証契約の内容を記した契約書を作成します。連帯保証契約は口頭での合意(口約束)では成立しません。必ず契約書を作成しましょう。

契約書には、連帯保証契約を結ぶ旨、支払い方法や支払い期日、養育費を支払う主債務者、養育費を受け取る債権者、連帯保証人の住所、氏名を記載し、実印にて押印します。

養育費の支払い期間や金額が明確に決まっていない場合は、連帯保証人が保証する債務の限度額である極度額を必ず記載しましょう。極度額をあまりにも高額に設定すると契約が無効になる可能性がありますので注意が必要です。

契約書は、強制執行認諾文言を入れた公正証書として作成するのが望ましいです。万が一養育費の不払いが起きた場合に、裁判を経ずに財産の差し押さえが可能になるからです。

もっとも、公証人には養育費の支払いについての連帯保証人の付帯は原則避けるべきという考えがあるため、それを認める特別な事情が必要になるケースが多いです。

5. 連帯保証以外の養育費未払いへの対策

養育費に連帯保証人が付けられない場合は、離婚に際しての強制執行受諾文言付き公正証書の作成をお勧めします。

強制執行受諾文言付き公正証書を作成するメリットは、以下の3点が挙げられます。

  • 支払いが滞ったらすぐに強制執行の申立てが可能になる

  • 偽造などのリスクがない

  • 公正証書の原本は公証役場で保管されるため、紛失のリスクが避けられる

6. 未払い養育費の回収方法

養育費が未払いになった場合、どのような流れで未払い分を回収すればよいかを解説します。

6-1. 【STEP1】内容証明郵便による請求書の送付

養育費の支払い義務者に対し、内容証明郵便で支払いが滞っている金額の請求書を送付します。内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に出したのかを差出人が作成した謄本で、日本郵便株式会社が証明する制度です。請求の意思表示をした日や内容を明確にでき、消滅時効の完成を6カ月延長できるメリットもあります。

6-2. 【STEP2】 履行勧告、履行命令の申立て

調停、審判等で養育費の取り決めをした場合、養育費の不払いが起きたら履行勧告や履行命令の申立てが可能です。

履行勧告とは、家庭裁判所が調停や審判で決定した義務を守らない人に対して、義務の履行を勧告する手続きです。決められた手続き方法はないので、電話、郵送で申し出が可能で、費用はかかりません。ただし、履行勧告に強制力はありません。

履行命令とは、義務を守らない人に対して家庭裁判所に義務の履行の命令を出してもらう手続きです。義務者はこれに応じなければ10万円以下の過料が科される場合があります。

6-3. 【STEP3】強制執行の申立て

履行勧告、履行命令をしても相手が養育費の支払いをしない場合は、強制執行の申立てをします。

強制執行とは、調停や審判などでの決定事項を守らない義務者に対して、裁判所が財産を差し押さえるなどして義務を履行させる手続きです。強制執行は強い効力があるため、あらかじめ債務名義を取得しなければいけません。

債務名義は、誰が誰に対してどのような請求権を持っているかを証明する公文書です。養育費の場合は、養育費の請求権の有無や範囲を公的に示している調停証書、審判書、和解調書または判決正本、強制執行認諾付公正証書が該当します。

強制執行を申し立てるには、相手の住所を把握し、対象財産を特定しなければいけません。差し押さえができる財産は、現金、車などの動産、自宅や土地といった不動産、勤務先から支払われる給料などです。相手が財産の開示に応じない場合は、裁判所への財産開示請求の申立てもできます。

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7. 2026年5月までに導入|共同親権制度、法定養育費制度、先取特権が養育費に与える影響は?

2024年5月に改正民法が公布され、2026年5月までに共同親権制度が導入される予定です。

共同親権制度の導入が養育費にどのような影響を与えるのか気になるところですが、共同親権になったとしても養育費に影響はなく、子どもを育てていない親は養育費を支払わなければなりません。養育費の支払いには親権者かどうかは関係なく、子どもに対する親の扶養義務に基づいているからです。共同親権の導入により、子どもと離れて暮らす親の負担がなくなるわけではありません。

今回の改正では、法定養育費制度も新設され、養育費に先取特権(さきどりとっけん)が認められるようになりました。これにより、調停、審判、裁判を行わなくても一定の金額を元配偶者に請求できるようになります。請求できるのは、法務省令で定める最低限度の生活を維持するのに必要な金額となります。

また、養育費に先取特権が認められると、養育費の支払い義務者が支払いを滞らせた場合、調停や裁判を経ずに財産の差し押さえが可能となります。法定養育費制度にも先取特権が認められるので、元配偶者との間で養育費について取り決めをしていなかったとしても、元配偶者の財産の差し押さえが可能となります

8. 養育費の未払い対策について弁護士に相談するメリット

養育費の未払い対策について弁護士に相談するメリットは、それぞれの状況に応じたアドバイスが受けられる点です。

たとえば連帯保証人を付ける場合、連帯保証契約書の作成が必須となります。盛り込むべき事項をすべて含めた正確な契約書を作成するには、弁護士の助言を受けたほうがよいでしょう。

また、連帯保証人が付けられない場合、弁護士であれば養育費の未払い対策についてのアドバイスができます。そして、養育費の未払いが起きた場合には、弁護士は養育費の支払いをするよう、代理人として元配偶者と交渉ができます。

9. 養育費と連帯保証人についてよくある質問

Q. 養育費の連帯保証人が死亡したらどうなる?
養育費の連帯保証人が死亡した場合、死亡時点で未払いとなっている連帯保証債務は相続人に承継されるものの、相続放棄をした相続人に対しては請求できません。 ただし、連帯保証は連帯保証人が死亡した時点で終了しますので、連帯保証人が死亡したあとに生じた未払いの養育費については、相続人には請求できません。
Q. 養育費が未払いになったら、元配偶者の親(子どもの祖父母)の財産は差し押さえられる?
元配偶者の親が連帯保証人になっていないかぎり、元配偶者の養育費未払いを理由に、元配偶者の親の財産を差し押さえたり、養育費を請求したりはできません。元配偶者の親が連帯保証人になっており、債務名義を得ていれば、強制執行を申立てて財産の差し押さえが可能です。
Q. 連帯保証人が未払いの養育費の支払いを拒否している場合、どうすべき?
債務名義を得たうえで、強制執行を申立てて養育費の回収を図りましょう。強制執行申立ての手続きは複雑であるため、弁護士に相談しながら進めるのをお勧めします。
Q. 公正証書に連帯保証人の付帯が拒否されるケースがあるのはなぜ?
養育費は親子関係から生じる扶養義務に基づくもので、その義務を第三者に課すのは適切ではなく、連帯保証契約になじまないという考え方があるからです。

10. まとめ 養育費の連帯保証契約は弁護士に相談を

養育費の支払いは、原則として子どもが経済的にも社会的にも自立するまで長期間にわたります。その間滞りなく支払いをしてもらえるかどうか、養育費を受け取る側は不安になるでしょう。実際に厚生労働省が発表したデータにおいても、「養育費を現在も受給している」のは母子家庭で28.1%、父子家庭で8.7%にとどまっており、継続した養育費の支払いがいかに困難かがわかります。

こうしたリスクを考えると、連帯保証人の付帯は対策の一つになるかもしれません。それにあたっては連帯保証契約書の作成が必須となり、手続きが煩雑になるため、弁護士に相談をしながら進めたほうがよいでしょう。

また、連帯保証人が付けられない場合や、養育費の支払いが滞った際も、さまざまな対策を講じるのであれば、弁護士と相談しながら進めたほうがスムーズです。

養育費の未払い対策や実際に未払いに困っている場合は、早い段階で弁護士に相談してください。

(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)

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