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子どもの認知とは? メリットや方法、戸籍への効果について解説

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父親に対して子どもの認知を求めるためには、3つの方法があります (c)Getty Images
婚姻関係にない相手の子どもを妊娠し出産した女性にとって、子どもの認知は重要な問題です。不倫相手など男性側に子どもを認知してもらいたいけれど話し合いがうまくいかない、認知の手続きはどのように行うのか具体的な方法がわからない、認知をしてもらうとどのようなメリットがあるのか、など知りたいことはたくさんあるでしょう。子どもを認知してもらうことの意味やその効果、手続きの方法、認知をしてもらうことのメリットやデメリットなどについて、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 子どもの認知とは?
  • 1-1. 子どもを認知する意味
  • 1-2. 認知が必要となるケース
  • 2. 認知の効果|メリットとデメリット
  • 2-1. 戸籍に父親が記載される
  • 2-2. 扶養義務が発生する
  • 2-3. 相続権が発生する
  • 2-4. 父親を親権者に指定できるようになる
  • 3. 子どもを認知する手続き
  • 3-1. 任意認知
  • 3-2. 強制認知
  • 3-3. 遺言認知
  • 4. 子どもの認知はいつからいつまで可能?
  • 5. 子どもの認知について注意すべきポイント
  • 5-1. 認知を取り消すことはできない
  • 5-2. 父の配偶者から不倫の慰謝料を請求される可能性がある
  • 5-3. 手続きを進める際は弁護士に相談する
  • 6. 子ども認知の事例や判例を紹介
  • 7. 子どもの認知についてよくある質問
  • 8. まとめ 認知の手続きを進める際に不安があれば、弁護士に相談を
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1. 子どもの認知とは?

子どもの認知とは何かに加え、認知が必要となるケースについて解説します。

1-1. 子どもを認知する意味

「認知」とは、父親が婚姻関係にない女性との間に生まれた子どもを自分の子どもであると認めることです。婚姻関係にある男女の間に生まれた子どもは嫡出子(ちゃくしゅつし)、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもは非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と言いますが、認知によって非嫡出子は父親と法律上の親子関係が形成できます。

内閣府による「令和5年度 年次経済財政報告」のコラム「婚外子と外国人住民の国際比較」によると、日本における嫡出でない子どもの出生数の割合は2.4%でした。一方、フランスは62.2%、ノルウェーは58.5%、ポルトガルは57.9%、スウェーデンは55.2%、デンマークは54.2%、英国は49%、スペインは47.6%、アメリカは40.5%という数字で、欧米主要国と比較すると、日本は嫡出でない子どもの割合がかなり低いと言えます。

日本では、非嫡出子で父親が認知していないと、法律上の不都合が生じる場合が多々あります。法律的に親子関係を認めてもらうことで得られるメリットも多く、認知の有無で経済面に差が出る点は否定できません。父親から認知されるのは、それだけ重要な意味があると言えます。

1-2. 認知が必要となるケース

認知が必要となるケースは主に、不倫関係にある男女の間に子どもが生まれた場合と、内縁関係(事実婚)にある男女の間に子どもが生まれた場合の2つのパターンが考えられます。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもや、母親が離婚後に再婚しないまま300日を過ぎて生まれてきた子どもは非嫡出子となります。

非嫡出子は母親の戸籍に入ります。戸籍には父親の名前が記載されないため、父親との親子関係は生じません。父親との親子関係を公なものとしたいと考えるなら、認知をしてもらう必要があります。

2. 認知の効果|メリットとデメリット

父親が子どもを認知した場合どのような効果があるか、また父親が認知をしたことによるメリットとデメリットについて解説します。

2-1. 戸籍に父親が記載される

父親が子どもを認知すると、母子の戸籍に父親の名前と本籍地、認知日が記載されます。さらに父親の戸籍にも認知の事実が記載され、認知日、認知した子どもの名前が明記されます。そのため、公に子どもの父親であると証明できるのはメリットと言えるでしょう。ただし、父親が認知したからといって、子どもが父親の戸籍に入れるわけではありません。

2-2. 扶養義務が発生する

認知されると、父親に扶養義務が生じるため、養育費の請求ができる点はメリットと言えるでしょう。養育費は、母親や子どもが養育費請求の意思を示した時点で支払い義務が生じるとするのが基本的な考え方であるため、原則的には過去にさかのぼっての請求はできません。

ただし、認知の効力は出生時にさかのぼって生じるため、養育費の支払い義務もこの出生時に及ぶと判断した判例もあります(大阪高裁平成16年5月19日決定)。この事例では、認知届の提出直後に養育費請求調停が申し立てられていて、当初から請求の意思が明確だった点が評価されていると考えられます。

同時に、父親に扶養義務が生じるのと同じように、将来子どもが父親に対して扶養義務を負う可能性がある点を忘れてはいけません。何年も疎遠だった父親が年老いて介護が必要になった場合、父親の世話をする義務が突然課せられる点は子どもの側としてもデメリットと考えたほうがよいかもしれません。

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2-3. 相続権が発生する

父親に認知されると相続権が発生し、非嫡出子であっても嫡出子と同じ割合で父親の財産を相続できます。ただし、借金などのマイナス財産も相続の対象となるため、相続によって借金の支払い義務を負う可能性がある点はデメリットと言えるでしょう。

2-4. 父親を親権者に指定できるようになる

認知されると父親を親権者に指定できるようになります。認知された子の親権は原則として母親が持ちますが、父母間の協議によっては親権者を父親に変更できます。ただし、現行法では、嫡出子のように共同親権ではなく、父親または母親のどちらか一方の単独親権となります。

なお、民法改正により2026年5月までに離婚後も共同親権の選択ができるようになります。認知された子についても、父母の協議により、父母の双方または父のみを親権者と定められるようになります。

3. 子どもを認知する手続き

父親に対して子どもの認知を求めるためには、任意認知、強制認知、遺言認知という3つの方法があります。

3-1. 任意認知

任意認知とは、父親が自分の意思で子どもを認知する方法です。父母が話し合いをして、市区町村役場に認知届を提出すれば、父と子どもの間に法律上の親子関係が成立します。

3-2. 強制認知

強制認知とは、父親が自らの意思で子どもを認知しない場合、裁判所に申立てをして強制的に認知してもらう方法です。まずは家庭裁判所に認知調停を申立て、調停での話し合いで認知に関して合意できれば終了します。合意できなかった場合は、裁判所に認知の訴えを提起します。父親が亡くなった場合でも、死亡から3年以内であれば認知の訴えを起こせます。

3-3. 遺言認知

生前認知ができない事情がある人は、遺言で認知する方法があります。この場合、認知の効力は遺言者(=父親)の死亡時から生じます。遺言で子どもを認知する場合は遺言執行者を選任し、父親が亡くなったあとに遺言執行者が遺言者または子どもの本籍地、遺言執行者の住所地の市町村役場に認知届を提出します。遺言認知によって、子どもは父親の相続人になれます

4. 子どもの認知はいつからいつまで可能?

子どもの認知に関して、いつからいつまでに行わなければならないという期限は原則ありません。ただし、子どもが成人している場合は、子どもの同意が必要となります。子どもが出生する前の胎児認知も可能ですが、その場合は母親の承諾が必要となります。

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5. 子どもの認知について注意すべきポイント

子どもの認知については、以下の3点に注意する必要があります。

5-1. 認知を取り消すことはできない

一度行った認知は、原則取り消せません。認知の取り消しが簡単に認められたら、子どもの身分関係が不安定となり好ましくないからです。そのため、認知は慎重に行うことが重要です。

もっとも、認知が無効になるケースはあります。成人した子どもの承諾なく認知したり、認知した子どもが実の子どもではなかったと判明したりした場合は、家庭裁判所に対して認知の無効の申立てをし、裁判所が認めたら認知が取り消されます。

5-2. 父の配偶者から不倫の慰謝料を請求される可能性がある

不倫関係にあった男性との間に子どもをもうけて認知してもらった場合、父親の配偶者から不倫の慰謝料を請求される可能性があります。認知をすると父親の戸籍にその旨が記載されるため、秘密にしておくのは難しいです。そのため、慰謝料請求される可能性は決して低くありません。

5-3. 手続きを進める際は弁護士に相談する

子どもの人生に大きな影響がある認知の手続きを進める場合は、慎重に進めなければなりません。一度行った認知は原則取り消せませんし、手続きも複雑になるケースがあります。当事者同士で行うのではなく、弁護士に相談をしながら進めていったほうがよいでしょう。

6. 子ども認知の事例や判例を紹介

子どもの認知に関して重要な事例を、過去の判例をもとに紹介します。

父親の意思に基づかない認知届は無効となる
最高裁昭和52年2月14日判決のとおり、父親と子どもの間に親子関係があったとしても、あくまでも父親の意思で認知届を出したのでないならば、認知届は無効となります。

出生届は認知届としての効力がある
最高裁昭和53年2月24日判決では、父親が自らの意思で非嫡出子を妻との間の嫡出子として出生届を出した場合、その出生届に認知の効力が認められるとしています。自分の子どもであると認めて出生届を出している以上、認知届と何ら変わらないと判断されるからです。

子どもが未成年の場合は法定代理人が認知の訴えができる
最高裁昭和43年8月27日判決のとおり、子どもが未成年である場合、法定代理人は認知の訴えができます。身分上の行為は原則と本人が単独で行わなければならず、法定代理人が行えないとされていますが、認知の訴えに関しては、子どもに意思能力がない場合だけでなく意思能力がある場合でも法定代理人が行えるとされています。

認知をした父親自らが認知無効の訴えができる
最高裁平成26年3月28日判決では、親子関係がないと知りつつも母親の求めに応じて子どもを認知した場合、後に父親が、自分が行った認知は無効だったと主張して認知無効の訴えができるとしています。認知は、血縁上の父子関係を前提に、自分の子どもだと認め法律上の父子関係を創設する制度だからです。

この判決は、父子関係がないにもかかわらずなされた認知は、認知制度の本来の趣旨に反するので無効になるとする考え方に基づきます。

認知無効確認請求は相続の対象とならない
最高裁昭和57年12月17日判決のとおり、認知無効確認請求を訴えた父親が裁判の継続中に死亡した場合は、その時点で訴訟は終了します。認知無効確認請求は、特定の人間のみに帰属する権利である一身専属権なので相続の対象となりません。

7. 子どもの認知についてよくある質問

Q. 一度した認知を取り消すことはできる?

一度した認知は、原則取り消せません。ただし、認知をした子どもとの間に生物学上の親子関係がないと判明した場合は、認知無効の訴えを起こし、裁判所が認めれば認知を取り消せます。

Q. 不倫相手との子どもを認知したら戸籍でバレる?

子どもを認知した場合、その旨が自身の戸籍に記載されます。つまり不倫相手との子どもを認知した場合、配偶者が戸籍を確認する機会があれば、認知した事実がわかります。

Q. 認知を拒否することはできる?

強制認知の訴えを起こされ、子どもとの親子関係を示す証拠があれば、認知は拒否できません。母親が父親との間に肉体関係があった事実を証明する証拠を持っていれば、たとえ父親が否定したとしても親子関係が認められる可能性があります。

 「DNA鑑定を拒否すればいいのでは」という考えもあるかもしれませんが、DNA鑑定を拒否すると「思い当たるふしがあるからでは?」と逆に裁判所の心証が悪くなる可能性が高くなります。

Q. 生まれた子どもの母親に認知請求権を放棄してもらうことはできる?

生まれた子どもの母親に認知請求権の放棄を迫ることはできません。子どもの人生に大きく関わる認知請求権を勝手に放棄することは認められないからです。

 「認知はしない」「認知を求めない」「認知請求権を放棄する」といった文言を入れた合意書や誓約書を交わして示談金を受け取るケースがありますが、これらは法律上無効となります。そのため、たとえこのような約束を交わしていたとしても、子どもは父親に対して認知請求が可能です。

8. まとめ 認知の手続きを進める際に不安があれば、弁護士に相談を

不倫相手との間に子どもが生まれた場合など、父親に迷惑をかけずに一人で育てると決意する女性もいます。しかし、父親に認知されない場合、子どもの人生に与える影響は大きいものがあります。たとえ父親との間で、認知は求めないと約束を交わしたとしても、それは法律上無効です。子どものためにも父親の認知を得ることを考えてみましょう。

認知の手続きを進める際に不安があれば、迷わず弁護士に相談することをお勧めします。特に父親が認知を拒否している場合、弁護士であれば代理人として交渉が可能です。当事者同士の話し合いでは、なかなか話が進まなくても弁護士が間に入れば解決できる可能性があるのです。

(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)

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