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1. 不倫とは|不倫と不貞行為、浮気の違い
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2. 不倫はどこから違法なのか
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2-1. 離婚請求には「不貞行為=肉体関係」が必要
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2-2. 慰謝料請求は、不貞行為に至らずとも認められる余地がある
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3. 不倫や不貞行為を証明する方法|有力な証拠は?
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3-1. 証拠収集の方法① 写真や映像
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3-2. 証拠収集の方法② 領収書やクレジットカードの利用明細
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3-3. 証拠収集の方法③ メールやLINEの履歴
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4. 不倫慰謝料の金額相場
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5. 不倫慰謝料請求に関する注意点
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5-1. 慰謝料請求権には時効がある
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5-2. 不倫相手に対する慰謝料請求も可能
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6. 不倫と離婚、慰謝料に関してよくある質問
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7. まとめ|離婚に詳しい弁護士に相談し計画的な対応を
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1. 不倫とは|不倫と不貞行為、浮気の違い
「不倫」と「浮気」は一般用語であり、「不貞行為」のみ法律用語です。
「不倫」は国語辞典の大辞林によると「男女の関係が人の道にはずれること」と曖昧な定義がされていますが、一般的には、既婚者が配偶者以外と親しい関係にあることを指す場合が多いでしょう。
もっとも、どこからが不倫であるかは人によって考え方がさまざまです。たとえば、2人きりで異性と食事に行くことを不倫ととらえる人もいるように、肉体関係を伴わなくても不倫ととらえる人もいます。
一方、「不貞行為」は判例上「配偶者のある者が配偶者以外の異性と自由な意思にもとづいて性的関係をもつこと」と定義されており、性的関係すなわち肉体関係を伴う場合を指します。
また、「浮気」は、大辞林によると「妻や夫など定まった人がいながら他の異性と情を通ずること」とされていることから、既婚者でも未婚者でも使う言葉であり、必ずしも肉体関係を伴う場合に限られません。
3つの違いを表にまとめると次のようになります。
不貞行為 | 不倫 | 浮気 | |
|---|---|---|---|
当事者 | 一方、または双方が既婚者 | 既婚者か未婚者かは問わない | |
肉体関係 | あるものに限る | あるものとないものの両方を含む | |
2. 不倫はどこから違法なのか
「不倫」が違法な「不貞行為」となるかどうかは、当該不倫を理由に離婚請求する場合と、離婚せずに慰謝料請求にとどめる場合とでやや異なります。
2-1. 離婚請求には「不貞行為=肉体関係」が必要
裁判(訴訟)で離婚を認める判決を得るには、民法が定める離婚事由のいずれかに該当する必要があります。不倫のみを理由に裁判で離婚を認めてもらうためには、原則として当該不倫が「不貞行為=肉体関係あり」に該当している必要があります。
裁判上、不貞行為に該当する行為と該当しない行為の例としては、それぞれ次のようなものが挙げられます。
【不貞行為に該当する行為】
・ラブホテルを利用した
・旅行で同じ部屋に宿泊した
・不貞相手の家に長時間滞在した
【該当しない行為】
・恋愛感情を抱いている
・頻繁に連絡を取り合っている
・マッチングサイトに登録した
・2人きりで食事した
・手をつないだ
不貞行為や不倫と言うと、風俗店の利用に焦点が当てられるケースがありますが、風俗店のうち、ソープランドのような性交渉を前提とする風俗店の利用は「不貞行為」(民法770条1項1号)に該当し、離婚理由となり得ます。他方、性交渉を前提としない風俗店の利用の場合、「不貞行為」には該当しません。
もっとも、性交渉を前提としない風俗店の利用であっても、オーラルセックスや手淫などの肉体関係に類似する行為が予定されているため、頻度があまりに多い、生活費を入れずに風俗店の利用につぎ込む、配偶者の注意を無視して利用を続けるなどの事情があれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当し離婚理由として認められる可能性があります。
2-2. 慰謝料請求は、不貞行為に至らずとも認められる余地がある
慰謝料請求は、肉体関係という不貞行為がなくても、当該不倫によって配偶者に精神的苦痛を与えた場合に認められます。
不倫を理由とする慰謝料請求が、離婚請求に比べて緩やかな条件で認められているのは、離婚請求の場合は精神的苦痛を受けたことに加えて、不倫によって夫婦関係が破綻していることまで要求されるのに対し、慰謝料請求の場合は不倫により精神的苦痛を受けたことさえ立証できれば足りるからです。
一般的に、肉体関係が伴わず、頻度や状況に悪質性が認められない不倫の場合には、夫婦関係が破綻に至っているとまでは断言できないため、離婚請求が認められない可能性が高くなります。
3. 不倫や不貞行為を証明する方法|有力な証拠は?
不倫や不貞行為の有力な証拠としては、次のようなものが挙げられます。
裸体やベッド上でのツーショット写真
肉体関係が存在していたことを前提とするメールやLINEの履歴、手紙、音声、映像
ラブホテルの明細や領収書
旅館などで同室に宿泊したことがわかる写真や映像
ラブホテルや不貞相手の自宅に滞在していたことがわかる位置情報の記録
3-1. 証拠収集の方法① 写真や映像
写真や映像を有力な証拠とするためには、配偶者と不貞相手の顔が明確に撮影されていること、場所を特定できることが必要となります。その際、ホテルや一方の自宅に宿泊したことを証明するには入った時点と出た時点の2時点を抑える、画像編集を疑われる可能性があるデジタルカメラではなくフィルムカメラを使用するなどが重要です。
配偶者が不倫していることが確実で、不貞相手と会う日時も予測できるような場合には、上記のポイントにしっかり対応してくれる興信所などの利用も検討しましょう。
3-2. 証拠収集の方法② 領収書やクレジットカードの利用明細
ホテルや旅館などの領収書は、2人で宿泊したことを示す有力な証拠になります。また、普段立ち寄ることのないコンビニで避妊具を購入した領収書や、女性向けの宝飾品や下着類の領収書が男性配偶者の持ち物から見つかった場合にも、有力な証拠になります。
もっとも、これらの領収書や利用明細から、ともに宿泊した人物や一緒に購入した人物が誰であるかまでは明らかとならない場合は、さらなる証拠が必要になる可能性もあります。
3-3. 証拠収集の方法③ メールやLINEの履歴
有力な証拠とするには、文面自体から肉体関係の存在を示しているか、文面と一緒に添付されている写真や音声と合わせて肉体関係の存在を示していることが必要になります。
ただし、メールやLINEなどを確認する過程で、セキュリティロックを勝手に解除するなどの行為は、プライバシーの侵害など違法行為にあたる場合があるため、注意が必要です。
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4. 不倫慰謝料の金額相場
不倫を理由とする慰謝料の金額は、裁判例上、離婚した場合は200万円〜300万円、離婚しない場合は50万円〜100万円が相場です。
慰謝料金額の算定にあたって絶対的な基準は存在しませんが、裁判例上は次のような要素が考慮されています。
婚姻期間の長さ→長いほど高額
子どもの有無や年齢→小さい子どもがいるほど高額
不貞行為が発覚するまで夫婦関係が円満であったか→円満であるほど高額
不貞行為の発覚により夫婦関係が破綻したか→破綻した場合は高額
不貞行為の期間や回数→長期間または回数が多いほうが高額
不貞行為発覚後の態度→発覚後も関係を継続したり、交際解消を約束したにもかかわらず約束を破った場合は高額
5. 不倫慰謝料請求に関する注意点
5-1. 慰謝料請求権には時効がある
不倫慰謝料の請求は、不倫の事実を知ったとき(不貞行為を理由に離婚する場合の慰謝料請求は離婚したとき)から3年、または不倫が行われてから20年が経過すると時効となり、それ以降は請求できなくなります。
請求を悩んでいたり、請求した場合の慰謝料金額に不安を感じたりしている場合は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。時効が迫っている状況でも、時効が成立する前に以下の方法をとれば、時効は成立しません。
裁判による慰謝料請求
内容証明郵便による催告
債務承認
仮差押え、仮処分、差押え
【裁判による慰謝料請求】(民法147条1項1号)
正式裁判ではなく、民事調停や家事調停、支払督促の手続きでも時効の成立を防ぐことができます。裁判により判決を得たり、裁判上の和解が成立したりした場合は、そこから新たに10年間の時効が進行します。裁判の判決が下る前に時効を迎えても問題ありません。
判決や裁判上の和解により慰謝料請求が認められたにもかかわらず、相手方が支払わない場合は、判決や和解成立の時点から10年以内に差し押さえなどの手続きをとる必要があります。
【内容証明郵便による催告】(民法150条1項)
郵便局が差出人と受取人、内容、日付を証明してくれます。慰謝料請求権の時効の成立を阻止する最も一般的な方法です。
ただし、この方法で時効の成立を阻止した場合でも、内容証明郵便を送付後6カ月以内に解決するか、裁判を提起しなければ時効が成立してしまいます。また、内容証明郵便の送付によって時効成立を阻止できるのは1回限りですので、あくまで一時的な手段と考えましょう。
【債務承認】(民法152条1項)
慰謝料請求の相手方に慰謝料の支払い義務があることを認めさせれば、時効は成立せず、相手方が認めた時点から新たに3年間の時効が進行します。債務承認の方法は口頭でも問題ありませんが、承認したと言えるかどうかが争いになりやすいため、必ず書面で残しておきましょう。
【仮差押え、仮処分、差押え】
慰謝料請求の場面で時効の成立を阻止する手段として使われることは稀ですが、これらの手続きを行った場合は、手続き終了後から6カ月間、時効の成立を阻止することができます。
5-2. 不倫相手に対する慰謝料請求も可能
不倫した配偶者とその不倫相手は、不倫された配偶者に対して共同して慰謝料を支払わなければなりません。
たとえば、不倫慰謝料の総額を200万円とした場合、不倫された配偶者は不倫をした配偶者と不倫相手のそれぞれに対して「200万円払ってください」と言うことができます。これに対して、実際に200万円を払うのは不倫をした配偶者でも不倫相手でもどちらでもよく、またどちらがいくらずつ負担するかも問いません。
したがって、不倫をした配偶者が100万円を支払った場合、不倫をされた配偶者は、不倫をした配偶者に対して残り100万円を請求するか不倫相手に請求するかを自由に選択することができます。
もっとも、慰謝料の総額200万円を超えて受け取ることはできないため、上記の例で言えば、不倫をした配偶者が200万円を支払った時点で、不倫相手には1円も請求することはできなくなります。
また、不倫相手に対する慰謝料請求を考えるうえでは、求償権を無視することはできません。求償権とは、不貞行為の慰謝料の金額を、不倫をした配偶者とその不貞相手のどちらか一方が支払った場合に、支払っていないほうに対して、自らの負担割合を超えて払った部分について支払いを求める権利です。
不倫をした配偶者とその不貞相手の負担割合は5対5となることもありますが、不倫が始まった経緯においてどちらが積極的であったかや双方の立場(たとえば上司と部下)などによっては、一方の負担割合が大きいとされる場合もあります。
不倫慰謝料の総額を200万円、負担割合を「不倫をした配偶者6:不倫相手4」とした場合を例にすると、不倫をした配偶者が慰謝料200万円全額を支払った場合、不倫をした配偶者は不倫相手に対して、自身の負担割合である120万円を超える部分である80万円を請求できます。
6. 不倫と離婚、慰謝料に関してよくある質問
不倫した配偶者とその不倫相手に対して共同して慰謝料を求める不貞慰謝料請求は、離婚しなくても可能です。
ただし、離婚しない場合は、以下の3点に注意が必要です。
・不倫した配偶者に慰謝料を支払わせても家計のなかで金銭が移動するだけとなるため、家計上プラス収支とするには不倫相手に慰謝料請求する必要がある
・不倫相手にのみ請求すると求償権を行使されるおそれがある
・離婚した場合と比べて金額が低くなる傾向がある
不倫が行われた時点ですでに夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料請求は認められません。
ただし、不倫が行われた時点で別居していたかどうかは、夫婦関係が破綻していた可能性を考えるうえで重要な要素になるものの、別居していたからといって直ちに慰謝料請求ができなくなることはありません。夫婦関係が破綻していたかどうかを判断する要素としては、次のようなものが挙げられます。
・別居期間の長短
・不倫が行われるまでに離婚に向けた具体的な行動があったか、少なくとも離婚に向けた話が出ていたか
・別居後に生活費を渡していたか
・別居後に性交渉があったか
・別居後の旅行や家族行事への参加の有無
実際、不倫が行われた時点ですでに別居しており、裁判で夫婦関係が破綻していたかどうかが争われた事案において、多くの場合で夫婦関係が破綻していたとまでは認められず、慰謝料請求が認められています。
配偶者の一方の不倫が原因で離婚する場合、不倫した側は離婚原因について責任を負う配偶者(有責配偶者)となります。有責配偶者からの離婚請求も認められる可能性がありますが、厳しい条件を満たす必要があります。
判例は、有責配偶者からの離婚請求が認められるための条件として次の3つを挙げています。
・長期間(目安5~10年)の別居をしていること
・未成熟子(経済的に自立していない子)がいないこと
・不倫された配偶者が離婚によって過酷な状態に置かれないこと
もっとも、最近は未成熟子がいたり、不倫された配偶者の再就職が難しかったりといった場合でも直ちに離婚請求が認められないわけではなく、十分な養育費の支払いや財産分与を約束することで、離婚請求が認められる場合もあります。
7. まとめ|離婚に詳しい弁護士に相談し計画的な対応を
不倫や浮気と不貞行為の違い、離婚請求や慰謝料請求のポイントを解説しました。
配偶者の不貞行為を理由に離婚請求や慰謝料請求をする場合、焦って相手を問い詰めても、かえって証拠を隠されるなどして思うような結果が得られないことがあります。配偶者の不倫が疑われる場合には、証拠の集め方やいつどのように別居すればよいかなど、早い段階で男女問題や離婚に詳しい弁護士に相談して計画的に進めることが重要です。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)