妻から離婚を切り出された時の対処法　弁護士が解説

1. 妻から離婚を切り出されたら離婚すべき？

妻から離婚を切り出された場合、まずは冷静に対処することが重要です。離婚を申し出られたからといって必ずしも応じる必要はありません。一方が離婚を拒否している場合、離婚を成立させるにはさまざまな手順を踏む必要があり、容易には認められません。

離婚の方法としては離婚届を提出する協議離婚が一般的で、この場合、夫婦間の合意が必要です。夫が離婚に応じない場合、妻は離婚調停や離婚裁判によって離婚を求めることになります。裁判での離婚が認められるためには法定離婚事由が必要です。法定離婚事由とは合意がなくても離婚できる要件のことで、「不貞行為」や「婚姻を継続し難い重大な事由」などがこれにあたります。

このように、一方が離婚を拒否する場合、離婚を求める側は手続きを踏み、法定離婚事由を示さなければ簡単には離婚できません。ただし、離婚を切り出された側が不貞行為などを行った「有責配偶者」に該当する場合は、法定離婚事由があるため、離婚が避けられない可能性があります。

2. 妻から離婚を切り出される原因

妻から離婚を切り出された場合、まずは原因を探り、改善することが重要です。妻から離婚を切り出される原因としては、以下の理由が考えられます。

• DVやモラハラ

• 生活費を渡さないから

• 家事や育児をすべて任せて感謝しないから

• 夫が不倫するから

• 妻が不倫しているから

それぞれについて詳しく解説します。

2-1. DVやモラハラ

妻から離婚を切り出される原因として多いのが、DV（ドメスティック・バイオレンス）やモラハラです。昨今では、夫婦間での道徳や倫理に反する嫌がらせ行為、すなわちモラハラ（モラル・ハラスメント）が離婚の原因となるケースも多いです。具体的には、人格を否定する発言や無視をする行為、妻の家事に対する嫌味や文句を日常的に執拗に行うと、モラハラに該当する可能性があります。

モラハラをする人の中には善意で注意しているつもりの人もいますが、妻にとっては日々人格否定や文句により、精神的に安心できる場がなくなり、大きなストレスになります。2023年の司法統計によると、離婚事件の申立の動機（複数回答）として「精神的に虐待する」と回答した妻は26.1%に達し、離婚理由の中で3番目に多いものとなっています。

2-2. 生活費を渡さないから

夫が妻に生活費を渡さないことも、離婚を切り出される原因となります。ひどい場合、夫がギャンブルにお金を使い、妻が借金をして生活費を捻出することもあります。このような金銭的自由を奪う行為は経済的DVとも呼ばれます。2023年の司法統計では、離婚調停の妻側の申立動機のうち「生活費を渡さない」が28.9%を占め、性格の不一致に次いで多い結果となっています。

2-3. 家事や育児をすべて任せて感謝しないから

夫婦には、婚姻生活において互いに協力し合う義務があります（民法752条）。家事や育児もお互いに協力して行う必要がありますが、仕事を理由に妻に任せっきりで、感謝の気持ちを示さない場合、妻から離婚を切り出されることがあります。特に近年は共働きの夫婦も多く、仕事に加えて家事や育児を一方が全て行うと、大きな負担となります。

2-4. 夫が不倫するから

妻が夫の不倫に気づいて離婚を切り出すケースや、過去の不倫によって気持ちが冷めてしまったことを理由に離婚を切り出すケースも多くあります。不倫は法定離婚事由に該当するため、妻が離婚裁判を提起した場合、離婚が認められる可能性が高いです。

2-5. 妻が不倫しているから

逆に妻が不倫しており、不倫相手と一緒になりたいがために離婚を切り出してくることもあります。妻に不倫の兆候が見られる場合、不倫を問い詰める前に証拠を集めておきましょう。妻の不倫が認められれば法定離婚事由となるだけでなく、妻や不倫相手に対して慰謝料請求が可能です。

3. 妻から離婚を切り出された場合の対処法

妻から離婚を切り出された場合、まずは冷静に離婚したい理由を聞き、話し合うことが重要です。以下では妻から離婚を切り出された場合の対処法を解説します。

3-1. 妻に離婚したい理由を聞く

妻から離婚を切り出された場合、まずは妻の気持ちや離婚の理由を具体的に尋ねてみましょう。結婚生活が長いと双方で不満が溜まっていることもありますが、感情的にならず誠実な態度で対応してください。感情的な反論は相手に話し合いの余地がないと感じさせ、離婚の意思をさらに強める原因となります。

3-2. 離婚を受け入れるべきか考える

妻の気持ちや離婚したい理由を理解したら、それを踏まえて離婚を受け入れるべきか慎重に検討しましょう。夫婦関係を振り返り、改善の余地があるか、自分の妻に対する気持ちについても自問自答してみてください。

3-3. 妻に謝罪して改善策を提案し、誓約書を作成する

離婚を避けたい場合、自分に非があるなら誠意を持って謝罪し、具体的な改善策を提示して妻の信頼を回復する努力をしましょう。また、DVやギャンブル、不倫など、妻が夫婦関係の継続にあたって改善が必要な内容については、それらを二度と行わない旨の誓約書を作成することも考えられます。この誓約書には、違反した場合には妻に対して慰謝料を支払う旨を記載して、誠意や本気度を示すこともあります。

3-4. 離婚届不受理申出を提出しておく

離婚届は、夫婦間で離婚の合意がなされた後、夫婦と証人2人の署名を入れて役所に提出します。しかし、片方が離婚に同意していない場合でも、書面に不備がなければ受理される可能性があります。そのため、自分が離婚届に署名しなかった場合でも、配偶者が勝手に離婚届を作成・提出するリスクがあります。

このリスクを回避するために「離婚届の不受理申出制度」があります。これは、夫婦の一方があらかじめ本籍地の役所に対して、離婚届が提出されても受理しないことを届け出ておく制度です。この場合、もう一方が勝手に提出したとしても、役所では離婚届が受理されません。妻から離婚を切り出された場合には、この制度を利用しておくと安心です。

3-5. 夫婦円満調停を申し立てる

夫婦円満調停とは、円満な夫婦関係を回復するために家庭裁判所の調停委員会を介して話し合う手続きです。この調停では、調停委員が当事者双方から事情を聞き、夫婦関係が円満でなくなった原因や、各当事者がどのような努力をすれば関係が改善するかを考え、解決案を提示するなどの必要な助言が行われます。

夫婦円満調停のメリットは、第三者を介することで冷静に話し合える点です。調停では、当事者同士が直接対面することは基本的にありません。感情的になりやすい状況でも、顔を合わせずに進められるため、冷静に話し合いができます。また、調停委員が公正・中立な立場で判断するため、当事者同士での単なる主張のぶつけ合いに比べて、納得のいく解決に至りやすい点もメリットです。

一方で、夫婦円満調停を申し立てても、必ずしも円満な関係を回復できるわけではありません。相手が調停に出席しないことや、話し合いの結果として離婚や別居に至ることもあります。ただし、当事者間のみで話し合った場合でも同様のことが言えるため、夫婦円満調停におけるデメリットとまではいえないでしょう。

4. 不倫やDVなど離婚事由がある場合に離婚を回避する方法

妻に対するDVや不倫の事実がある場合、妻から離婚裁判を提起されると強制的に離婚が認められる可能性が高いです。特に妻がDVや不倫の証拠を持っている場合、離婚は避けられないと考えておきましょう。

離婚を回避するためには、裁判外での協議や離婚調停で妻を説得し、考えを改めてもらう必要があります。離婚のきっかけとなった行為をしない旨の誓約書を作成するなどして、妻に対する誠意を示すことが重要です。場合によっては、これまでのDVや不倫を理由に妻に慰謝料を支払うことも検討しましょう。

妻と同居している場合、日常生活においても誠意を示すことが重要です。例えば、家事や育児を積極的に行い、離婚の主な原因以外の部分でも妻の不満を改善していく努力が求められます。

5. 妻から離婚を切り出された時の相談先

妻から離婚を切り出された場合、自分だけでは解決できないことも少なくありません。そのような場合は、夫婦関係改善について夫婦カウンセラーに、離婚については弁護士に相談することをおすすめします。

5-1. 夫婦カウンセラー

妻から離婚を切り出されたときの相談先として、夫婦カウンセラーが考えられます。夫婦カウンセラーは、専門的な知識を持ち夫婦間の問題を円満に解決に導く専門家です。相談することで、問題解決やコミュニケーション改善に向けた具体的なアドバイスが得られます。夫婦関係の改善に向けて妻への接し方や気持ちの伝え方に悩む場合も、夫婦カウンセラーに相談することが有効です。

5-2. 弁護士

離婚を回避する方法や今後の見通しについては、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。法定離婚事由に該当するかどうかの判断や、離婚を避けるための話し合いの進め方についてアドバイスが受けられます。

弁護士に依頼すると、妻が提示した法定離婚事由に対して有効な反論をしてもらえる可能性があります。また、離婚が避けられない場合でも、有利な条件を引き出すことが期待できます。慰謝料や財産分与、養育費など、離婚時に決めなくてはいけない事項について漏れなく対応してもらえるでしょう。

妻が不倫をしている場合には、弁護士を通じて妻や不倫相手に対して慰謝料を請求することも考えられます。

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6. 妻から離婚を切り出された際に避けるべきこと

妻から離婚を切り出されて話し合いを行う際は、対応によっては夫婦関係が悪化したり離婚条件が不利になったりする恐れがあります。以下の点に注意して対応してください。

6-1. 感情的になり妻を責める

妻から離婚を切り出された場合、感情的になって責め立てることは避けるべきです。感情的な態度は関係をさらに悪化させ、建設的な話し合いができなくなります。真剣な話し合いを望む妻の気持ちが諦めに変わると、今後の話し合いや関係の修復が一層困難になる可能性もあるでしょう。

6-2. 別居をする

離婚を回避したいのであれば、別居は避けるべきです。別居によってお互いが冷静になり夫婦関係が回復することもありますが、逆に心が離れてしまうことが多いです。また離婚後の生活が想像しやすくなるため、離婚に傾く原因となります。

法的には、長期間の別居が認められると夫婦関係が破綻したと判断され、裁判離婚が認められる可能性があります。加えて、夫の収入が妻よりも多い場合には、別居中の生活費である婚姻費用の負担も生じます。

6-3. 子どもを巻き込む

妻を説得する材料として子どもを使ったり、悪口を吹き込んだりすることは避けるべきです。夫婦の争いに子どもを巻き込むことは、子ども自身を傷つけるだけでなく妻からの信頼も失います。このような行為があると、離婚が避けられない場合に親権や面会交流にも影響する可能性があります。

7. 妻から離婚を切り出された場合によくある質問

8. まとめ 妻から離婚を切り出されて離婚を回避したい場合は弁護士に相談を

妻から離婚を切り出されたら、まずは冷静になって妻の気持ちを確認しましょう。離婚に応じる気がない場合には、離婚届不受理申出を提出するなど、離婚を回避する手段を講じておくと安心です。

妻から離婚を切り出される原因はさまざまですが、共通しているのは妻が長らく不満を抱えていたことです。夫婦関係を修復するには、信頼回復に向けて地道に改善を進める必要があります。離婚を回避するには法的な知識が必要となるため、一人で悩まずに法律の専門家である弁護士の力を借りることをおすすめします。

（記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています）