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ADR(裁判外紛争解決手続)とは? 離婚で利用するメリットや事例をわかりやすく解説

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離婚時のトラブル解決のために、裁判所以外の機関が実施しているADR(裁判外紛争解決手続)を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか(c)Getty Images
離婚に向けての話し合いがうまく進まない場合などに、裁判所以外の機関によって解決をめざす手続きをADR(Alternative Dispute Resolution/裁判外紛争解決手続)と言います。ADRは、裁判所による調停とは何が違うのでしょうか。ADRについて、弁護士が詳しく解説します。
目 次
  • 1. 離婚ADRとは?
  • 2. 離婚ADRと裁判所の調停との違い
  • 2-1. ADRは複数の民間の機関が実施している
  • 2-2. ADRは裁判所の調停より進行が早い傾向にある
  • 2-3. ADRでは当事者が同席して話し合いを行う傾向にある
  • 2-4. ADRは裁判所の調停より簡単に申し立てられる傾向にある
  • 2-5. ADRは合意が成立した場合としなかった場合の法律上の取扱いが異なる
  • 3. 離婚ADRを利用するメリット
  • 3-1. 裁判所を利用せずに解決をめざせる
  • 3-2. 土日や夜間でも対応してくれることがある
  • 3-3. 調停人を事前に確認できる
  • 4. 離婚ADRを利用するデメリット
  • 4-1. 手数料が裁判所の調停より高額になる
  • 4-2. 合意が成立しない場合、原則すぐに訴訟を提起できない
  • 4-3. 合意が成立してもすぐに強制執行できない
  • 4-4. 裁判所の調停と比べて相手が真剣に対応してくれない可能性がある
  • 5. 離婚ADRの利用に向いている人、不向きな人とは?
  • 5-1. 離婚ADRの利用に向いている人
  • 5-2. 離婚ADRの利用に不向きな人
  • 6. 離婚ADRを利用する際の注意点
  • 6-1. 合意が成立する見込みが低いときは利用しない
  • 6-2. 話し合いが長引くと手数料が高額になる可能性がある
  • 6-3. 合意が成立したら強制執行ができる公正証書にしておく
  • 6-4. 不利な結果を避けるためにはまず弁護士に相談する
  • 7. 離婚問題を弁護士に相談、依頼するメリットとは?
  • 7-1. あなたの味方として最善の提案をしてくれる
  • 7-2. 代理人となって代わりに交渉してくれる
  • 7-3. 強制執行なども見据えて手続きを進めてくれる
  • 8. 離婚ADRに関してよくある質問
  • 9. まとめ ADRの利用を検討している場合は、まずは弁護士に相談を
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1. 離婚ADRとは?

ADRとは「裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)」のことです。裁判所以外の機関が実施している、話し合いでトラブルの解決をめざす手続きを言います。

離婚ADRは、ADRのなかでも離婚に関するトラブルを扱うものを指し、東京弁護士会紛争解決センターの養育費ADRなどがあります。このほかにも離婚ADRを扱う民間の団体は複数あります。

2. 離婚ADRと裁判所の調停との違い

離婚ADRは、話し合いにより離婚に関するトラブルの解決をめざす点では裁判所の調停と似ていますが、ADRには調停と異なる以下のような特徴があります。

2-1. ADRは複数の民間の機関が実施している

離婚調停や養育費の調停など、離婚トラブルに関する裁判所の調停は、基本的には相手の居住地を管轄する家庭裁判所で実施します。

たとえば、離婚調停の相手の住所が東京にあれば、調停は東京家庭裁判所で行われ、ほかの裁判所を選ぶことはできません。

これに対して、ADRは複数の民間の機関が実施しているので、自分の好きな場所の機関を選んでADRの手続きを申し立てることができます

2-2. ADRは裁判所の調停より進行が早い傾向にある

裁判所の調停は、期日と呼ばれる調停を行う日程が1カ月に1回しか入らないなど、進行が遅い傾向にあります。

これに対してADRは、実施機関や個別の事案によって異なるものの、裁判所よりも進行が早い傾向にあります。夜間や土日でも期日が設定されたり期日の上限回数が決まっていたりして、裁判所よりも早く話し合いを進められる傾向にあります。

2-3. ADRでは当事者が同席して話し合いを行う傾向にある

裁判所の調停は原則として交互方式です。これは、当事者が交互に調停室に入って調停委員と話し、その間もう一方の当事者は別室で待機するという話し合いの進め方です。この方式では、当事者同士が直接顔を合わせることは基本的にありません。

これに対して、ADRでは当事者双方が同席して調停人と話す同席方式がとられることが多くあります。ただし、相手と直接顔を合わせたくないなどの事情があれば、ADRでも交互方式を採用することもあります。

2-4. ADRは裁判所の調停より簡単に申し立てられる傾向にある

裁判所の調停を申し立てるには、戸籍謄本(全部事項証明書)などさまざまな書類が要求されます

これに対してADRでは、申し立て時に裁判所の調停ほど多くの書類をそろえる必要がないケースがほとんどです。また、ADRによっては各機関の公式ホームページ上の申し立てフォームからオンラインで申し立てができる体制を整えています。

2-5. ADRは合意が成立した場合としなかった場合の法律上の取扱いが異なる

ADRと裁判所の調停とでは、「合意が成立した場合にすぐ強制執行できるか」「合意が成立しなかった場合にすぐ訴訟提起できるか」という点で法律上の取り扱いが異なります。

これらの点では、基本的にADRのほうが不利です。詳しくは、ADRのデメリットの項目で説明します。

3. 離婚ADRを利用するメリット

離婚ADRの利用には、メリットとデメリットがあります。まずは、メリットから説明します。

3-1. 裁判所を利用せずに解決をめざせる

調停は裁判所が実施するのに対し、ADRは民間の機関が実施するものです。

「裁判所」と聞くと大ごとになるようなイメージがあったり、裁判所を利用するほど激しく対立しているわけではないと感じたりと、裁判所の利用は避けたいと考える人にはADRがなじみやすいと言えます。

3-2. 土日や夜間でも対応してくれることがある

裁判所は公的機関なので、平日の日中しか調停を実施しません。そのため、調停のために仕事を休まなければいけないなど、不便に感じる人も少なくありません。

これに対して、ADRは民間の機関であるため、土日や夜間にも柔軟に話し合いを実施してくれることがあります。

平日の日中に何度も裁判所に足を運ぶことが難しい人には、ADRのほうが都合がよいと言えます。また、話し合いの日程を組みやすいため、結果的に調停より早く解決に至るケースもあります。

3-3. 調停人を事前に確認できる

裁判所の調停では、間に入る調停委員がどんな人なのかを事前に知ることはできません。

これに対して、ADRの実施機関は在籍する調停人を公式ホームページで公開していることがあるため、事前に調べて確認できます。自分で気に入った調停人のいるADR機関を選ぶこともできます。

4. 離婚ADRを利用するデメリット

離婚ADRにはさまざまなメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。離婚ADRを利用するかどうか決める際は、デメリットもふまえて検討することが大切です。

4-1. 手数料が裁判所の調停より高額になる

裁判所の調停は、基本的には申立手数料などとして最初に数千円がかかるだけです。これは期日の回数がいくら増えても変わりません。

これに対し、ADRでは申し立ての際の手数料だけでなく、期日の回数に応じた手数料や合意が成立した場合の手数料がかかることがあります。合計で数万円から数十万円となることもあり、ADRにかかる費用は裁判所の調停よりも高額です。

なお、調停でもADRでも、弁護士に依頼すれば弁護士費用が別途かかります。

4-2. 合意が成立しない場合、原則すぐに訴訟を提起できない

離婚訴訟を起こすには、先に離婚調停をしなければなりません。これを「調停前置主義」と言います。

裁判所での調停が不成立ならすぐに訴訟を起こせますが、民間の機関で実施したADRは原則として調停前置主義を満たすための「調停」としては認められておらず、ADRでの話し合いが不成立だからといってすぐに訴訟を起こすことは基本的にできません。その場合はあらためて裁判所の調停を申し立てる必要があるため、ADRを利用することで二度手間になる可能性があります。

ただし例外的に、法務省の認証を受けたADR機関で和解が成立する見込みがないことを理由とした終了の場合には、調停前置主義の「調停」と認められてすぐに訴訟を起こせることになっています。ADRで話し合いが不成立となった場合には、この例外的な場合に該当するか確認することが必要です。

4-3. 合意が成立してもすぐに強制執行できない

裁判所の調停が成立すると、調停調書という公的文書が作成されます。調停調書に相手がお金を支払うべきことなどが記載されていれば、支払いが滞った場合などに調停調書に基づいて強制執行を行い、相手の財産を強制的に回収することなどができます。

調停調書のように、それに基づいて強制執行ができる公的文書を「債務名義」と言います。

一方、ADRで合意が成立したときに作成される文書は債務名義ではないため、それだけで強制執行はできません

ADRでの合意結果に基づいて強制執行できるようにしておきたければ、あらためて公証役場で手続きを行い、強制執行を可能にするための要件を満たした公正証書(執行証書)を作成しておく必要があります。

4-4. 裁判所の調停と比べて相手が真剣に対応してくれない可能性がある

調停の場合、公的機関である裁判所から呼び出しがあるため、「行かなければいけない」という意識が働き、相手がきちんと調停の場に出てくる傾向にあります。

これに対して、ADRは民間の機関が実施するため、相手が裁判所からの呼び出しほど深刻に受け止めない場合があり、真剣に対応されにくいおそれがあります。

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5. 離婚ADRの利用に向いている人、不向きな人とは?

ADRにはこのようにメリットとデメリットがあるため、すべての人が離婚ADRに向いているわけではありません。離婚ADRの利用に向いている人と不向きな人とについて説明します。

5-1. 離婚ADRの利用に向いている人

次のような人は、離婚ADRの利用に向いています。

  • 紛争が激しくなるのを避けて、なるべく穏やかに解決したい人

  • 平日の日中が仕事などで忙しい人

  • 話し合いを少しでも早く進めたい人

特に、仕事の都合などで話し合いの実施日時を柔軟に設定してもらいたいのであれば、ADRのほうが都合がよいと言えます。

5-2. 離婚ADRの利用に不向きな人

次のような人は、離婚ADRの利用には不向きです。

  • 自分で話し合いや主張をするのが苦手な人

  • 相手のDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)、ハラスメントが原因で離婚トラブルになっている人

  • 高額な手数料をADR機関に支払う余裕がない人

ADRでは原則として当事者が同席して進められることが多いため、相手のDVなどが原因である場合にはあまり向いていません。また、ADRは手数料が高額になる傾向があるため、高額な手数料を支払う余裕がない人には特に不向きだと言えます。

6. 離婚ADRを利用する際の注意点

離婚ADRを利用する際には、以下のような点に注意して、効果的に活用してください。

6-1. 合意が成立する見込みが低いときは利用しない

ADRで合意が成立する見込みが低いときには、ADRはお勧めできません。

ADRは原則として調停前置主義を満たす「調停」とは認められていないため、合意が不成立だと裁判所の調停からやり直す必要があり、二度手間になることが多いからです。

6-2. 話し合いが長引くと手数料が高額になる可能性がある

ADRの料金は、期日の回数が増えるごとに手数料がかかる設定になっていることがほとんどです。

この場合、話し合いが長引くほど手数料が高額になってしまうので、話し合いが長引きそうであれば、あらかじめそのことを覚悟しておく必要があります。

6-3. 合意が成立したら強制執行ができる公正証書にしておく

ADRで作成された合意書では、たとえ養育費などの支払いが滞った場合であっても、それだけでは強制執行ができません。

このため、合意が成立したらすぐに公証役場で手続きを行い、強制執行が可能となる公正証書(執行証書)を作成しておくことが重要です。

6-4. 不利な結果を避けるためにはまず弁護士に相談する

ADRで間に立って話し合いを進めてくれる調停人は、あくまでも中立的な存在です。自分の利益になるアドバイスをしてくれるとは限りません。

不利な結果を避けてなるべく有利な結果を得るためには、最初に自分の味方となってくれる弁護士に相談し、アドバイスを受けるのが望ましいでしょう。

7. 離婚問題を弁護士に相談、依頼するメリットとは?

離婚問題は、弁護士に相談や依頼することがお勧めです。離婚問題を弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。

7-1. あなたの味方として最善の提案をしてくれる

調停やADRでは、間に立つ調停委員や調停人は中立的な第三者であり、あなたの味方ではありません。そのため、あなたに有利なアドバイスはしてくれません。

弁護士に依頼すれば、あなたの味方となり、最善の結果を得るための提案や弁護活動をしてくれます。

7-2. 代理人となって代わりに交渉してくれる

弁護士に依頼すれば、必要書類の取り寄せや作成、裁判所対応など、代理人としてさまざまな手続きを代わりに行ってくれます。

また、弁護士は相手との交渉も代わりに行います。離婚トラブルで相手との交渉を代わりに行う法的な権限がある専門家は弁護士だけです。

離婚トラブルでは、相手と直接やりとりをしなければならないことがストレスになる人は少なくありません。弁護士が代わりに相手と交渉することで、自分の精神的負担を大きく減らすことができます

7-3. 強制執行なども見据えて手続きを進めてくれる

たとえ相手と養育費などの支払いについて合意できても、実際に支払われなければ意味がありません。特に、養育費などを約束どおりに支払ってもらえないというケースはよくあります。

どうすれば強制執行ができるか、弁護士なら要件や手続きをわかっているため、強制執行も見据えて手続きを行うことができます。

たとえば、ケースによっては裁判所の調停を提案したり、公正証書(執行証書)作成の手続きを行ったりすることもあります。これにより、合意したとおりに養育費などのお金を手に入れられる可能性が高まります

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8. 離婚ADRに関してよくある質問

Q. 離婚ADRにかかる費用は?

一般的には総額で数万円から数十万円程度ですが、利用するADR機関によって異なるため一概には言えません。ADRの利用前に料金設定を十分に確認することが重要です。

Q. ADRと調停との最大の違いは?

最大の違いは法律上の扱いです。

裁判所の調停と異なり、ADRでは調停前置主義を原則として満たさないことと、ADRでの合意成立時の書類では強制執行ができないことの2点が大きな違いです。

Q. ADRに応じないとどうなる?

ADRに応じないからといって、何らかの不利益が生じるということはありません。応じるか応じないかは個人の自由です。

9. まとめ ADRの利用を検討している場合は、まずは弁護士に相談を

離婚ADRには裁判所の調停にはないメリットがある一方、デメリットもあります。また、自分のケースではADRを利用したほうがよいのか、それとも裁判所の調停を利用したほうがよいのかは、自分だけでは判断できないことも少なくありません。

ADRの利用を考えている場合、まずは離婚問題を積極的に取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。離婚問題に詳しい弁護士から適切なアドバイスを受けることで、よりよい結果を得られる可能性が高まります。

(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)

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