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子どもへの虐待を理由に離婚できる? 逃げる方法や慰謝料について解説

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虐待する配偶者から逃げる方法の図解
虐待する配偶者から逃げるには専門機関の力を借りる・離婚するなどの方法を検討しましょう
あってはならないことですが、本来庇護(ひご)されるべき子どもを虐待してしまう親が世の中には存在します。配偶者が子どもを虐待しているとわかったときに、それを理由に離婚ができるか、離婚に伴いどのような問題が生じ、どう対処していくべきかを弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 虐待とは?
  • 1-1. 子どもへの虐待は増加傾向にある
  • 1-2. 虐待としつけの違いはどこから?
  • 2. 虐待に該当する具体的な種類
  • 2-1. 身体的虐待
  • 2-2. 性的虐待
  • 2-3. ネグレクト
  • 2-4. 心理的虐待
  • 3. 虐待する配偶者から逃げる方法
  • 3-1. 専門機関に相談する
  • 3-2. 別居をする
  • 3-3. 離婚する
  • 4. 子どもへの虐待を理由に離婚はできる?
  • 5. 虐待がからむ離婚で弁護士に相談するメリット
  • 6. 虐待で離婚する場合に慰謝料請求はできる?
  • 7. 虐待を理由に離婚する際、親権はどうなる?
  • 7-1. 虐待の立証ができなければ、虐待はないものとして扱われる
  • 7-2. 虐待の有無は親権者決定の判断要素の一つに過ぎない
  • 7-3. 虐待する親が親権者になった場合は親権変更が起き得る
  • 7-4. 共同親権の導入で考えられる可能性
  • 8. 虐待をする親から面会交流を求められたら拒否できる?
  • 9. 虐待に関するよくある質問
  • 10. まとめ 虐待に気づいたら離婚も選択肢に入れて

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1. 虐待とは?

虐待の定義については、児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)が定めています。まず、虐待の主体は「親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する」保護者であるとしています。ざっくり言うと、親やそれに準ずる形で子どもの世話をしている人と理解しておけばよいでしょう。そして、虐待の客体は、保護者に監護される未成年者です。

1-1. 子どもへの虐待は増加傾向にある

児童相談所における児童虐待相談対応件数の図解
子ども家庭庁「令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」より抜粋

児童相談所における児童虐待相談対応件数は、ここ数年でも増加傾向にあります。虐待自体の数が増えたのか、社会の意識の変化などによってかつては見過ごされていた事案でも虐待として対応されるようになったのか、その両方なのかは断定できません。しかし、現在年間20万件以上の児童虐待相談対応が生じているという事実は、厳粛に受け止めなければならないでしょう。

1-2. 虐待としつけの違いはどこから?

虐待としつけの違いは、社会常識に基づく総合判断にならざるを得ません。社会常識は時代によって変わってくるため、過去にはしつけとして許されていた言動も、今では虐待として許されなくなることがあります

性的虐待とネグレクトがしつけになることはおよそ考え難いです。しかし、身体的虐待および心理的虐待としつけの違いがどこからなのかは難しい問題で、明確な線引きをすることはなかなかできません。

民法第821条は「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」と定めています。もっとも、ほんのわずかでも有形力の行使があったら子どもの成長に有害な影響を与える体罰である、と見なすのは無理があります。間違ったことをした子どもを叱責することがすべて心理的虐待になる、というわけでもないでしょう。また、仮に虐待としつけに明確な境界線を引けるとすると、その境界線のギリギリを突き続ける言動をしつけと評価することが果たして妥当なのでしょうか。

子ども家庭庁はしつけと体罰について、下記のように定めています。

  • しつけ……子どもの人格や才能などを伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにすることなどの目的から、子どもをサポートして社会性を育む行為

  • 体罰……子どもの身体に何らかの苦痛を引き起こし、または不快感を意図的にもたらす行為(罰)

しかし、この定義だと、親が主観的にはしつけのつもりで子どもの身体に何らかの苦痛を引き起こした場合に、しつけと体罰どちらに該当するのかが不明瞭です。加えて、子ども自身が「当時は苦痛に感じていたけれども、後で振り返ってみたら人格や才能を伸ばしたり、社会的に自律した生活を送れるようになったりすることにつながった」と感じることもあるでしょう。

子ども家庭庁によるしつけと体罰の定義は、典型事例の説明には使えても、これらの境界を判断するうえではあまり役に立たないといわざるを得ません。体罰を心理的虐待と入れ替えても同様です。

2. 虐待に該当する具体的な種類

児童虐待防止法では、虐待には「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」の4種類があると定義づけられています。

2-1. 身体的虐待

身体的虐待は、児童の身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行行為だと定義しています。

具体的には、殴る・蹴る・叩く・投げ落とす・火傷を負わせる・溺れさせる・首を絞めるといった行為が該当します。結果的に外傷が生じなくとも、外傷が生じるおそれがある暴行であれば、身体的虐待に該当します。

2-2. 性的虐待

性的虐待は、児童にわいせつな行為をすることや、わいせつな行為をさせることだと定義づけています。子ども自身への性的行為、子どもに性的行為を見せること、子どもをポルノグラフィーの被写体にするといった行為が該当します。

2-3. ネグレクト

ネグレクトは、児童虐待防止法で下記のように定義づけられています。

  • 子どもの心身の正常な発達を妨げるほどの減食または長時間の放置

  • 保護者以外の同居人による虐待行為を放置すること

  • その他、保護者としての監護の義務を著しく怠ること

特に、保護者以外の同居人による虐待行為を放置したり、監護を著しく怠ったりすることというのは、たとえばシングルの親と同居している恋人が、子どもに暴力を振るったり性的行為を行ったりするなどしており、親はそのことに気づいているにもかかわらず止めたり逃げたりせず見て見ぬふりをしている状況をイメージするとわかりやすいでしょう。

2-4. 心理的虐待

  • 心理的虐待とは、子どもに対して心理的外傷を与える行為を指します。

  • 子どもに対してひどい暴言を吐くこと

  • 子どもに著しく拒絶的な対応をすること

  • 子どもがいる家庭で配偶者やパートナーに家庭内暴力(DV)を振るうこと(身体や生命だけでなく、心理的・精神的に有害な影響を与える言動も含む)

  • その他、子どもへのトラウマ(心的外傷)となるような言動をすること

子ども本人に向けた暴力だけではなく、子どもの面前で配偶者(パートナー)に対して暴力を振るうといった行為も心理的虐待となります。

3. 虐待する配偶者から逃げる方法

虐待する配偶者から子どもを守るには、逃げるという選択肢があります。状況に応じて複数の方法を検討しておくとよいでしょう。

3-1. 専門機関に相談する

虐待する配偶者から逃げるにあたっては、児童相談所や警察、弁護士などの専門機関に事前に相談をするのが望ましいです。

児童虐待防止法では児童虐待を通告する義務があり、児童相談所は通告先の一つです。児童相談所は一時保護などの法的権限があるほか、家庭への立ち入り調査や臨検・捜索(虐待の疑いがあって出頭要請などに応じない保護者がいるときに裁判所の許可を得て実施する立ち入り調査)、接近禁止命令などの権限を行使できます。

虐待する配偶者から子どもを連れて逃げるのであれば、ひとまずは子どもの安全が確保されるため、児童相談所が積極的に介入してくる可能性は低いです。とはいえ、逃げることに失敗する可能性がゼロではないことを踏まえると、もしものときに助けてもらうためにも事前に話をしておいた方がよいでしょう。

警察は児童虐待の通告先ではありません。しかし、児童虐待が傷害罪や暴行罪などの刑罰法規に違反している場合や、別居後に配偶者が押し掛けてくる危険がある場合に備えて、相談をしておくのもよいです。

また、虐待する配偶者から逃げてもそこで終わりではなく、離婚を成立させたり親権争いをしたり虐待する配偶者からの面会交流要求を阻止したりする必要があります。別居後の対応を見据えて、同居中から弁護士に相談をしていた方がスムーズでしょう。

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3-2. 別居をする

同居しながら協議離婚が成立すればよいのですが、離婚自体を拒否されたり、離婚条件が折り合わなかったりして協議離婚が成立しないこともあります。また、離婚を申し入れることで配偶者が逆上したり、子どもを残した状態で家から追い出されたりする危険がある場合は、協議離婚の申し入れをすること自体がリスクとなります。

このような場合には、まずは子どもを連れて別居をしながら離婚に向けて手続きを進めるしかありません。別居先としては、実家の世話を受ける、新たに賃借物件を借りる、シェルターに入るなどが考えられます。

3-3. 離婚する

別居をして子どもを虐待親から引き離した後は、改めて離婚を求めていくことになります。協議離婚で合意が成立すればよいのですが、成立しない場合は離婚調停を申し立てたり離婚訴訟を提起したりすることになります。離婚を請求する側が相手方よりも収入が低いのであれば、婚姻費用分担調停も併せて申し立てましょう。

ただし、相手方が子どもに執着している場合は、離婚にあたって親権を主張されたり、面会交流調停を申し立てられたり、子の引渡し審判を申し立てられたりすることもあります。

4. 子どもへの虐待を理由に離婚はできる?

子どもへの虐待は、民法第770条1項5号の定める「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当することが多いです。そのため、配偶者が子どもを虐待していたことについて争いがない場合や、虐待について十分な証拠によって立証できる場合は離婚が成立します。

しかし、虐待はDVと同じく家庭内での密室で生じることが多く、証拠を残すのが難しいです。そもそも子どもは通常の日常生活を送るなかでもけがをすることがあるため、写真や診断書では証拠としては断片的であり、加害者から「別の機会にけがをした」と弁解されると、虐待があったと断定しにくくなります。

虐待をしている様子を録音・録画すればよいという考えもあるでしょう。しかし、「自分のいないところで子どもを虐待される」「虐待の現場を目にしたら録音・録画をするよりもすぐに止めに入る」「録音・録画をしていることが発覚したら激しい報復を受ける危険がある」など、とっさに対応できないということも珍しくありません。また、虐待ではなくしつけの範囲であるという弁解をされ、それを覆せないことも多いです。

そうなると、実際には虐待があったとしても、裁判上は虐待が存在しないものと扱われてしまいます。そのような場合には、虐待を理由とした離婚ではなく、3~5年程度の別居をして、別居期間経過により婚姻関係は破綻していると主張していくことになるでしょう。

5. 虐待がからむ離婚で弁護士に相談するメリット

虐待が絡む離婚事件では、加害者が虐待を否認し争ってきた場合に、どのように虐待を立証するか、あるいはそれが困難な場合にどのような形での解決を目指すかを考えなければなりません。また、虐待の加害者が親権を主張したり、子どもとの面会交流を求めてきたり、子の引渡しの審判を申し立ててきたりする場合に、反論をしていかなければなりません。

虐待がからむ離婚事件は、通常の離婚事件以上に慎重な判断が必要なため、弁護士に相談をするメリットは大きいです。

6. 虐待で離婚する場合に慰謝料請求はできる?

配偶者が子どもを虐待したことにより離婚する場合、虐待を理由とした離婚慰謝料を請求することも可能です。

虐待や虐待に伴う子どもの被害を立証できた場合、子どもの被害の大きさにもよりますが、数十万〜数百万円程度の慰謝料が認められます。ただ、やはり虐待の立証は難しいことが多いというのが実情です。身体的な大けががある場合は損害がわかりやすい一方で、心理的虐待によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、診断書があったとしても実際のところどの程度の損害が発生したと評価するべきか判断が難しくなっています。

そのため、慰謝料にはあまりこだわらず、子どもの安全確保を優先させるべきでしょう。

7. 虐待を理由に離婚する際、親権はどうなる?

相手方の虐待を理由に、自分は親権を当然に取れるとは考えないようにしてください。虐待の事実は、親権を決める要素の一つに過ぎませんし、虐待を立証できなければ、ないものとして扱われる可能性もあります。

7-1. 虐待の立証ができなければ、虐待はないものとして扱われる

証拠などで虐待の存在が認定される場合、基本的に虐待をした親は親権者として不適切であると考えられ、親権を認められないことが多いです。もっとも、虐待は家庭内の密室で起きる上、証拠保全が難しいため、実際には虐待が存在したものの、証拠上は虐待がなかったものと扱われる場合があります。その場合は、虐待が存在しないことを前提として、他の要素から親権者を決定することになります。

幼い子どもを虐待している親が主たる監護者でなかった場合、主たる監護者の親は子どもを連れて別居をすることで親権問題は解決できます。視点を変えると、虐待の立証ができなくても親権を取得できそうな人は、親権取得のために虐待の証拠を保全することにそこまでこだわらなくてもよいわけです。

一方、主たる監護者が虐待をしている場合、虐待をしていないものの主たる監護者ではない親が、証拠が不十分な状態で子連れ別居を敢行すると、子の引渡しの審判を起こされて子どもを取り返される危険があります。主たる監護者でなかった親が親権を得たいがために、配偶者による架空の虐待をでっち上げようとすることはよくあるので、十分に証拠をつかんでいない限り裁判所からはそのような事案と同視されてしまいます。

子どもが一定の年齢以上(おおむね小学校高学年以上)の場合は、親権や監護権については子ども本人の意思が重視されます。通常であれば、虐待を受けている子どもが虐待をしている親の方を選ぶ可能性は低いでしょう。ただ、子ども自身の同意を伴う性的虐待がなされていた場合は、判断能力が低い子どもが虐待をしている親とともに暮らすことを選ぶ可能性があります。このような場合、性的虐待の証拠をしっかり押さえてから動く必要があります。

また、虐待されている子どもを残して家を出た後で子の引渡しの審判をした場合、別居後に児童相談所による一時保護がなされでもしない限り、子どもの虐待がなかったかのように虐待している親に取り繕われて、子の引渡し請求が却下される可能性が高いです。

7-2. 虐待の有無は親権者決定の判断要素の一つに過ぎない

注意しなければならないのは、児童虐待防止法で定義する虐待に該当することがあったからといって、それだけで当然に裁判所が虐待をした親を親権者として不適切と考え、他方の親が親権者としてふさわしいと考えるかというと、必ずしもそうとは限らないという点です。

親権はさまざまな要素からの総合判断で決定されます。虐待のほとんどは子どもの心身を大きく危険にさらすため、虐待をしている親が親権者として適格であるとされることは少ないです。

しかし、子どもの面前で配偶者に暴力を振るうことは児童虐待防止法上の「心理的虐待」に該当しますが、子ども自身が暴力を振るっている親と同調して暴力を振るわれている親を軽んじている場合は、環境として適切であるか否かはさておき、子どもの心身への危険はありません。また、過去には児童虐待防止法上の虐待に該当する行為をしたことがあるものの、真摯に反省をして子どもとの関係性を良好に保てている親であれば、過去の虐待を掘り起こして親権者として不適格とするべきではないでしょう。

このように、児童虐待防止法上の虐待があれば当然に親権者として排除されるというわけではありません

7-3. 虐待する親が親権者になった場合は親権変更が起き得る

虐待をする親であっても、裁判上は虐待の証拠が出てこなかったために親権者となるということはあります。ただ、虐待をする親が親権者となった場合、その後に虐待がエスカレートして子どもが児童相談所に一時保護される場合や、親権者決定にあたって子ども本人の意思が重視される年齢になったときに、子ども自身が虐待をしている親から別居親への親権者変更を求めるようになる場合など、離婚後の事情の変更により親権者を変更すべきとなることがあります

ただ、子どもとのつながりを失っていては、一時保護されたときに児童相談所からの連絡が来なかったり、子ども自身が親権者変更を求めなかったりします。虐待をする親に親権を取られたときは、面会交流を続けるなどして、子どもとのつながりを持ち続けてください。そもそも別居親が面会交流を続けて子どもとのつながりを持つことは、同居親の虐待がなくとも、基本的には子どもにとって利益につながるものなのです。

7-4. 共同親権の導入で考えられる可能性

2026年の5月までに、離婚後共同親権を導入する改正民法が施行されることになっています。当事者双方の同意がない場合、原則として共同親権になるのか、それとも原則として単独親権になるのかは裁判所の運用に任されており、条文上は明らかではありません。

ただ、改正民法は共同親権にしなければならないケースについては定めていないものの、「このような場合は共同親権にしてはならない」ということを定めています。具体的には、改正民法第819条7項1号で、「父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」を、離婚後共同親権の適用除外事由として定めています。そのため、虐待の存在を立証できる場合、共同親権の適用はありません

とはいえ、虐待の存在を立証することは難しいものです。また、虐待の存在に関する証拠を裁判所に提出したらすぐに虐待が認定され、親権について判断してもらえるわけではなく、相手方からさまざまな反論が出ることでそれに対する対応をしなければならなくなります。最終的には虐待を理由として共同親権を拒否できたとしても、対応しなければならない負担は大きくなるでしょう。

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8. 虐待をする親から面会交流を求められたら拒否できる?

面会交流を拒否できるか(拒否すべきか)は、個別具体的な事情を踏まえて実施することが子どもにとってプラスになるのかどうかを、慎重に検討していくことになります。

虐待をする親は一般的に子どもに対して執着心が強いことが多く、親権・監護権を主張したり、それが叶わないと面会交流を求めてくることが多いです。

虐待の立証が難しいことは今までで述べてきた通りなのですが、面会交流の場合は少し事情が変わってきます。それは、「虐待があったから(存在が立証できたから)面会交流は拒否できる」「虐待がなかったから(存在が立証できなかったから)面会交流を拒否できない」という単純な話にならないためです。

面会交流は、実施することが子どもにとってプラスになるなら実施するが、マイナスになるなら実施しないというのが原則です。そのため、虐待があったかどうかはグレーだが子どもの拒否反応が強い場合は、虐待の有無は白黒つけないまま子どもにとってマイナスだと判断され、面会交流をさせないということになります。

反対に、児童虐待防止法上の虐待の事実はあったものの、子どもが親を許しており親も真摯に反省している場合は、面会をさせるという形になります。もっとも、虐待の存在が立証できなかったためにとりあえず面会交流を実施させてみたが、だんだんと子どもの拒否が強くなって面会交流が中止されるということもあるでしょう。

9. 虐待に関するよくある質問

Q. 児童虐待は犯罪にあたる?どこに通報義務がある?

児童虐待防止法上の児童虐待の多くは刑事法に違反します。具体的には、身体的虐待なら暴行罪(刑法第208条)、傷害罪(同第204条)。性的虐待なら監護者わいせつ罪(同179条1項)、監護者性交等罪(同2項)、児童ポルノ禁止法違反(同法第7条3項)、ネグレクトは保護責任者遺棄罪(刑法第218条)、心理的虐待は脅迫罪(同法222条1項)などに該当することがあります。

もっとも、児童虐待防止法の児童虐待の定義と刑事法の構成要件は必ずしも一致していないので、児童虐待防止法上の児童虐待の定義には該当するものの刑事法違反にはならない、ということもあります。たとえば、子どもに否定的な発言を投げかけ続けることは児童虐待防止法上の心理的虐待に該当しますが、刑事法には違反しません。

ただし、児童虐待を発見した場合は、自身または児童委員を通して、市町村、都道府県が設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければなりません

Q. 自分が暴力をふるってしまったり、暴言をやめられなかったりする場合はどうしたらいい?

子どもに暴力をふるったり暴言を吐いたりしてしまう、自分でもやめたいと思っているのにやめられずに自身も苦しんでいるという人は、市町村の「子ども家庭課」「児童福祉課」などに相談をするのがよいでしょう。

市町村の「子ども家庭課」「児童福祉課」といった部署は、児童虐待の通告先であるとともに、まだ「虐待を受けた」とまではいえない段階の子どもやその親を支援していくという役割を持っています。重大な事件に至る前に、早めに相談しましょう。

Q. 虐待を受けた子どもにどんなケアをするべき?

虐待を受けた子どもに対してどのようなケアをすべきかはケースバイケースです。比較的心の傷が浅い子どももいれば、深く傷ついている子どももいます。一見すると元気なようでありながら、虐待の影響で問題行動を繰り返す子どももいます。

素人判断をすることなく、児童精神科などを受診して医師の助言指導に従ってケアするべきでしょう。

10. まとめ 虐待に気づいたら離婚も選択肢に入れて

子どもを虐待をする配偶者との同居を続けることは、子どもの心身の傷を広げていくことにつながります。行動の選択ミスは、自分自身だけではなく子どもの心身に大きな影響を与えるため、離婚を選択肢に入れるとともに、離婚のためにどのような行動をとるべきか、専門家に相談をしながらよく考えましょう。

(記事は2025年4月1日時点の情報に基づいています)

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