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1. 再婚したら養育費の支払い義務はどうなる?
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1-1. 受け取る側が再婚した場合
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1-2. 支払う側が再婚した場合
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2. 再婚に伴う養育費の減額はどれくらい?
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3. 養育費減額請求の手続き
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3-1. 相手と交渉する
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3-2. 養育費減額調停や審判
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4. 再婚に伴う養育費減額を弁護士に相談するメリット
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5. 共同親権制度が再婚後の養育費に与える影響は?
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6. 再婚後の養育費に関してよくある質問
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7. まとめ 再婚に伴う養育費の減額や打ち切りは、男女問題に強い弁護士に相談を
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1. 再婚したら養育費の支払い義務はどうなる?
子どもがいる夫婦が離婚する際には、子どもと一緒に暮らさない親が、一緒に暮らす親に対して「養育費」を支払う義務を負います。
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用を指します。子どもが社会的かつ経済的に自立するまでに要する費用であり、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などが含まれます。また、養育費をもとにした生活水準は、養育費を支払う義務を負う親と同程度のものが想定されています。
養育費は監護する親のためではなく、あくまでも子どものための費用であるため、養育費を受け取っている側が再婚したとしても、それだけで養育費が減額されたり打ち切られたりするものではありません 。また、支払う側が再婚した場合でも、ただちに養育費の支払いをしなくてよいということにはなりません。
もっとも、事情によって減額や免除となるケースもあります。以下で具体的に解説します。
1-1. 受け取る側が再婚した場合
【子どもが再婚相手と養子縁組をした場合】
再婚相手に一義的に子どもの扶養義務が発生するため、支払う側の支払い義務がなくなったり減額が認められたりする可能性があります。
【子どもが再婚相手と養子縁組をしていなくても、再婚相手から援助がある場合】
再婚相手と一緒に生活をしていて十分に金銭的援助がある場合などは、養子縁組していなくても減額ないし免除事由になることもあります。つまり、「再婚相手と子どもを養子縁組させなければ養育費をもらい続けることができる」とは一概には言えません
。
筆者が弁護士として依頼された調停でも、再婚相手の収入資料を提出したり、子どもの生活状況を主張したりするなどして、子どもが再婚相手と養子縁組をしていなくても減額が認められたケースがあります。
1-2. 支払う側が再婚した場合
支払う側に新たに扶養家族ができたときは、減額が認められる場合があります。たとえば以下のようなケースです。
【再婚相手の収入が低い、もしくは何らかの理由により働けず無収入の場合】
【再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組をした場合】
【再婚相手との間に子どもが生まれた場合】
筆者が依頼された調停でも、再婚相手が働けない事情を具体的に説明することによって、減額が認められた事例があります。
ただし、離婚時の養育費の取り決め時点で再婚相手が妊娠していたなど、近いうちに扶養義務の対象が増えることがわかっていた場合は、その事情を考慮したうえで養育費を取り決めたものとして、減額が認められないケースもあります。
2. 再婚に伴う養育費の減額はどれくらい?
養育費の金額は、双方の話し合いで決めることができます。話し合いで合意するのであれば、いくらでなければいけない、ということはありません。もっとも、話し合いにおいても、裁判所が公表している「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」の養育費算定表を参考にすることが多いです。算定表は双方の年収から養育費の目安額を示す一覧であり、調停や審判といった法的手続きでは、原則的に算定表を用います。
ただし、算定表は、養育費を支払う側に、ともに生活をする扶養義務の対象者がいない場合の表であり、支払う側が再婚して扶養義務の対象者とともに生活することになった場合には、そのまま用いることができません。
そもそも、算定表は複雑な算定式に基づいて作成されたものです。支払う側が再婚してともに生活をする扶養義務の対象者ができた場合は、養育費算定表を利用せずに、年収とあらかじめ定められた基礎収入割合などから養育費の額を計算する方法を用います。
また、養育費の算出にあたっては収入が算定表にある上限を超えている場合も問題になりますが、筆者が依頼された調停では、算定表の上限を超えた収入を得ていた依頼者に有利になる主張をし、算定表の上限で収めたケースがありました。
3. 養育費減額請求の手続き
養育費減額請求には主に2つの手続きがあります。調停や審判の手続きはもちろん、相手との話し合いも弁護士に依頼することができます。
3-1. 相手と交渉する
相手と話し合うことができるのであれば、まずは話し合い、新たな養育費の金額や支払方法を取り決めます。合意ができた場合は、後々のトラブルを避けるため、合意内容を書面に、できれば公正証書にしておくべきです。公正証書は公務員である公証人が作成する公文書であり、きわめて強い証拠となります。
3-2. 養育費減額調停や審判
話し合いがまとまらないときは、支払う側が養育費減額調停を申し立てます。
調停の申立てに必要な書類は以下のとおりです。
養育費申立書(家庭裁判所のホームページに書式と記載例があります)
子どもの戸籍謄本
申立人の収入資料
事情説明書(減額ないし免除の理由となる事情がわかる資料)
申立ては、相手の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に持参もしくは郵送でします。
調停でも合意に至らない場合は、審判に移行し、家庭裁判所が金額を決定します。
なお、調停の成立や審判が出るまでは、最初の取り決めどおりに支払い、減額や免除が決まった場合は、申立て時(もしくは内容証明郵便で減額ないし免除を請求したとき)にさかのぼって支払いすぎた差額分を精算 します。
4. 再婚に伴う養育費減額を弁護士に相談するメリット
養育費の減額はケースバイケースでの判断が多くなります 。また、養育費の減額に関する話となると、感情的な話し合いになって当事者同士で揉める場合も多いのですが、親同士の仲が悪くなることは子どもにとってよくありません。
弁護士に相談すれば、「減額したい」「減額されそうで困る」といった際におおよその適正な金額を計算してもらって見通しについてアドバイスが受けられます。また、弁護士には交渉や調停手続きなどもしてもらうことが可能です。その際、より有利な事情を検討してもらえますし、当事者同士で直接やりとりをしない分、冷静な話し合いもできます。
離婚した相手との交渉は精神的にストレスとなることも多いものの、筆者の経験からは、弁護士に依頼することによってそのストレスが大幅に軽減されるケースが多いようです。再婚による養育費の問題がある場合は、男女問題の経験が豊富な弁護士に相談するのがお勧めです。

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5. 共同親権制度が再婚後の養育費に与える影響は?
2026年5月までに導入される共同親権制度によって、離婚後も元夫婦の双方が子どもの親権を持つことができるようになります。共同親権となった場合の養育費の取り扱いや、併せて新設される制度や規定について解説します。
まず、共同親権自体の影響ですが、親は親権の有無にかかわらず子どもに対する扶養義務があるため、共同親権そのものは、現在の養育費の取り扱いに影響はないと思われます。
もっとも、共同親権制度に併せて新設される制度からは影響があります。
まず、現在では、養育費請求には取り決めのほか、調停や審判が必要ですが、取り決めがなくても、離婚時から、子どもを養育する親が相手に最低限の養育費を請求できる「法定養育費制度」が新設されます。
また、養育費不払いが問題になっている現状を改善するため、養育費が支払われない場合に、ほかの債権よりも優先して養育費を支払う側の財産の差し押さえを可能とする「先取特権」が養育費につけられるようになります。加えて、養育費を取り決める当事者の負担軽減のため、調停で養育費を決める段階でも、裁判所が当事者の資産状況や収入の情報開示命令を出すことができるようになります。
6. 再婚後の養育費に関してよくある質問
7. まとめ 再婚に伴う養育費の減額や打ち切りは、男女問題に強い弁護士に相談を
別れた夫婦のどちらかが再婚すると、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合、または子どもが再婚相手と養子縁組をしていなくても再婚相手から援助がある場合、支払う側の再婚相手の収入が低い場合など、再婚に伴う事情によって、養育費の減額もしくは打ち切りが認められるケースがあります。
ただし、養育費の見直しが認められるかどうかは一律に決まっているわけではなく、さまざまな事情が加味されて決まる ことが多いです。そのため、再婚に伴う養育費の減額や打ち切りについては、自身で判断されるのではなく、男女問題に強い弁護士に相談することをお勧め します。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)