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財産分与で通帳開示に応じない配偶者への対処法 調べ方を解説

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配偶者が通帳開示を拒む背景には主に2つの理由があります (c)Getty Images
離婚の際には、財産分与についても話し合います。ただし、夫婦の一方が管理していた財産は、そもそも資料の開示を受けなければ、財産の全体像がわかりません。財産分与の話し合いで通帳の開示を拒否された場合の対応について、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 預貯金はどこまでが財産分与の対象?
  • 2. 財産分与時の通帳開示は義務? 開示請求は可能?
  • 3. 配偶者が通帳開示を拒否する理由
  • 3-1. 財産分与を避けたいと思っている
  • 3-2. 離婚を先延ばしにしようとしている
  • 4. 財産分与時の通帳開示を拒否された場合の対処法
  • 4-1. 弁護士を通じて開示を求める(任意交渉)
  • 4-2. 弁護士会照会を行う
  • 4-3. 調停委員に説得してもらう
  • 4-4. 裁判所に調査嘱託を申し立てる
  • 5. 配偶者に通帳開示を拒否された場合に弁護士へ依頼するメリット
  • 5-1. 相手の財産隠しの端緒を発見できる
  • 5-2. 心理的なストレスを軽減できる
  • 5-3. 財産分与の話し合いをスムーズに進めることができる
  • 5-4. 調停委員へとのやりとりを適切に行うことができる
  • 6. 離婚時の財産分与と通帳開示に関してよくある質問
  • 7. まとめ 財産分与の際の通帳開示は弁護士に依頼するのが賢明

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1. 預貯金はどこまでが財産分与の対象?

結婚から別居、または離婚までの婚姻期間中に貯めた預貯金や取得した不動産などは、夫婦どちらの名義であったとしても、基本的に夫婦の「共有財産」であり、財産分与の対象となります。

一方、結婚前に貯めていた預貯金や、婚姻期間中であっても自身の親族から相続や生前贈与を受けた財産などは「特有財産」として財産分与の対象にはなりません。

結婚前から使っている預貯金の口座については、婚姻期間中に貯めた預貯金の「共有財産」と結婚前に貯めていた「特有財産」が同じ口座に入っている場合もありますが、基本的には別居時、または離婚時の残高から結婚時の残高を差し引いた金額が財産分与の対象となると考えられます。

離婚の際の財産分与では、原則として「共有財産」を2分の1ずつ 分けます。

2. 財産分与時の通帳開示は義務? 開示請求は可能?

財産分与の際に通帳を開示する義務はありません。しかし、公平に「共有財産」を分け合うためには、預貯金通帳で出入金の履歴を確認し合う必要 があります。

当事者間の話し合いで預貯金通帳の開示を拒否された場合でも、「4. 財産分与時の通帳開示を拒否された場合の対処法」で述べる方法によって開示を受けることができる場合があります。

3. 配偶者が通帳開示を拒否する理由

配偶者が通帳開示を拒む背景には主に2つの理由があります。その意思が変わらない限り、財産分与の話し合いはスムーズに進みません。

3-1. 財産分与を避けたいと思っている

一方の配偶者が預貯金の開示を拒否する理由としては、自分の預貯金を財産分与することを避けたいと思っている場合が挙げられます。

離婚の場面では、自分の手元になるべく多くの財産を残したい心理がはたらくため、相手が把握していない財産はあえて開示せず、なるべく隠し通したい と考える傾向があります。離婚の話し合いのなかで任意にすべての財産の開示を受けることができるケースは少ないと考えておいたほうがよいでしょう。

3-2. 離婚を先延ばしにしようとしている

一方の配偶者がそもそも離婚を拒否していたり、離婚を先延ばしにしようとしていたりすると、預貯金通帳の開示を拒否する場合があります。

財産分与は離婚を前提とするため、離婚する意思がない場合や離婚を先延ばしにしたいと考えている場合には、財産分与に関する資料の開示をしないケースが多いです。

4. 財産分与時の通帳開示を拒否された場合の対処法

財産分与時の通帳開示を拒否された際の対処法としては、主に以下の4つの方法が考えられます。

  • 弁護士を通じて開示を求める(任意交渉)

  • 弁護士会照会を行う

  • 調停委員に説得してもらう

  • 裁判所に調査嘱託を申し立てる

4-1. 弁護士を通じて開示を求める(任意交渉)

配偶者から預貯金の通帳開示を拒否された場合の対処法として、まずは、離婚の交渉を弁護士に依頼し、弁護士を通じて開示を求める方法が考えられます。

一方の配偶者が財産分与を避けたいと思っている場合でも、弁護士を通じて開示を求めることにより、財産を隠し通すことはできないとあきらめて、調停や訴訟に進む前に任意に通帳などの開示を受けられる 可能性があります。

また、当事者間の話し合いでは、一方の配偶者がそもそも離婚を拒否しているために、通帳などを開示してこない場合でも、他方の配偶者が弁護士に依頼することにより話が進む場合もあります。弁護士に依頼をすると、離婚の意思が固いことを示すことができるため、離婚に向けた話し合いが進み、通帳などの開示を受けることができる こともあります。

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4-2. 弁護士会照会を行う

弁護士に依頼し、弁護士会を通じて、口座があると思われる金融機関に対して照会する弁護士会照会という方法もあります。ただし、弁護士会照会に対しては原則として回答する義務があるものの、金融機関の取扱いとしては、依頼者以外の名義の口座については、判決や審判などの債務名義がある場合を除き、名義人の同意がないと回答しないのが通例 です。

弁護士を通じた交渉でも相手が通帳などの開示を拒否する場合には、弁護士照会についても同意が得られないことがほとんどです​​。なお、自身が預貯金口座の名義人である場合には、銀行に問い合わせれば取引履歴を取得できます。

4-3. 調停委員に説得してもらう

家庭裁判所に離婚調停や財産分与請求調停を起こし、中立の立場の調停委員から預貯金通帳の開示を説得してもらう手段も考えられます。具体的には、相手から任意に通帳などの開示を受けられていないことを調停委員に説明し、調停委員から相手に対し開示をはたらきかけてもらうという方法です。

弁護士を通じた交渉では開示を受けられない場合でも、調停手続きのなかで調停委員からの説得によって開示を受けることができる場合もあります。

4-4. 裁判所に調査嘱託を申し立てる

離婚調停や財産分与請求調停、離婚訴訟の手続きにおいて、預貯金口座を隠していると考えられる金融機関に対して裁判所から調査嘱託を実施してもらうように申し立てる方法もあります。

配偶者が財産を隠していると思われる口座を特定して、そこに預貯金の残高がある可能性が高いことを主張し、裁判所が調査嘱託の必要性を認めた場合には、裁判所から金融機関に対して残高や取引履歴を照会してもらうことができます。裁判所からの調査嘱託に対しては、金融機関からの回答が得られるケースが多い です。ただし、裁判所が調停段階で調査嘱託を実施することはあまり多くありません。

通帳開示を拒否された場合の対処法と強制度
通帳開示を拒否された場合の対処法と強制度を図解。裁判所からの調査嘱託に対しては、金融機関からの回答が得られるケースが多い

5. 配偶者に通帳開示を拒否された場合に弁護士へ依頼するメリット

相手に通帳開示を拒否されたときに、弁護士に相談すれば法的手続きを見据えた対応ができます。その点も含め、弁護士へ依頼するメリットは主に4つあります。

5-1. 相手の財産隠しの端緒を発見できる

当事者間の話し合いでは通帳などの資料の開示を拒否していた配偶者も、弁護士を通じて開示を求めることで資料の開示に応じる可能性があります。弁護士はさまざまな事例に対応してきているため、弁護士と一緒に手元にある資料を検討することで、本人のみでは気づかなかった相手の財産隠しの端緒を発見できる 場合もあります。

5-2. 心理的なストレスを軽減できる

当事者間の交渉では、どうしても互いに感情的になり、冷静な話し合いができないことも少なくありません。弁護士に依頼することで、直接話し合いをする場合に比べて心理的なストレスを軽減できるメリットもあります。

5-3. 財産分与の話し合いをスムーズに進めることができる

弁護士に依頼することで離婚の意思が固いことを示せるため、離婚すること自体や財産分与の話し合いをスムーズに進めることができる可能性があります。また、経験豊富な弁護士に依頼すれば、自分にとって有利に交渉を進められる 場合があります。

5-4. 調停委員へとのやりとりを適切に行うことができる

離婚調停や財産分与請求調停の申立てをする場合でも、弁護士に依頼したほうが調停委員への説明や調停委員への説得の求めも適切に行えます。

調停では、限られた時間で適切な説明をし、調停委員に状況を理解してもらうことが重要であり、弁護士に依頼したほうがスムーズに要点を説明できる場合が多いです。加えて、調査嘱託申立てなどを検討する場合にも、裁判所に必要性を認めてもらうために資料などを収集する必要があるため、事前に弁護士に相談するメリットがあります。

6. 離婚時の財産分与と通帳開示に関してよくある質問

Q. 配偶者が共有財産の預貯金を使い込んでいたらどうなる?
配偶者がギャンブルなどで預貯金を使い込んでいたことが発覚した場合、本来であれば、使い込んだ金額が残っていたはずとして、財産分与の額に反映させることを求める対応も考えられます。もっとも、そもそも配偶者に十分な資力がなく、預貯金がほとんど残っていない場合には、十分な金額の財産分与を受けられない場合もあります。 なお、生活費や子どもの学費などで使った分は、基本的には使い込みとは言えません。一方の配偶者に金銭の管理を任せていた場合には、預貯金の取引履歴の開示と金銭の使途について説明を求め、使い込みであるかどうかを検討していきます。
Q. 夫婦の共有財産を隠す行為は犯罪にあたる?
配偶者との間では、窃盗などの罪は、その刑を免除するとされているため(刑法244条1項)、預貯金口座などの夫婦の共有財産を隠していたことがわかった場合でも刑事責任を問うことは難しいでしょう。 ただし、公平に財産分与を行うためには、適切な資料開示が必須です。 財産の開示がされないと離婚の協議や調停、裁判が長期化することに加え、あとから財産隠しが判明した場合には、不当利得返還請求や損害賠償請求を検討可能な場合もあります。そのため、これらの説明をし、通帳の開示の説得のための交渉材料として使うことも考えられます。

7. まとめ 財産分与の際の通帳開示は弁護士に依頼するのが賢明

婚姻期間中に貯めた財産は、夫婦どちらの名義であったとしても、基本的に夫婦の「共有財産」であり、財産分与の対象となります。離婚後の生活を送るために財産分与は重要であり、通帳開示を拒否された場合でもあきらめずに対応することが大切です。相手が共有財産を明らかにしない場合は、弁護士を通じて開示を求める、弁護士会照会を検討する、調停委員に説得してもらう、裁判所に調査嘱託を申し立てるといった対処法があります。

財産分与の際に通帳開示を求める場合、最終的には裁判所を通じた手続きをとるケースを見据え、資料の確保などが非常に重要なので、法律の専門家​​である弁護士に依頼することをお勧めします。

(記事は2025年3月1日時点の情報に基づいています)

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