離婚問題に強い弁護士を探す
朝日新聞社運営の離婚情報ポータルサイト
更新日: / 公開日:

婚姻費用を払わないとどうなる? リスクは? 払えない場合の対処法

更新日: / 公開日:
婚姻費用を払わないと、差し押さえに遭う可能性があります(c)Getty Images
別居する夫婦の間では、生活費や子どもの教育費などについて、婚姻費用の分担を行います。ご自身が支払義務を負う婚姻費用を払わないと、離婚手続きにおいて不利に働き得るほか、強制執行で財産を差し押さえられてしまうおそれがあるので注意が必要です。婚姻費用を払わない場合のリスクや、支払いが難しい場合の対処法などについて、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 婚姻費用の支払義務は拒否できない
  • 2. 婚姻費用を払わないリスク
  • 2-1. 悪意の遺棄として法定離婚事由に当たる
  • 2-2. 遅延損害金や慰謝料を請求される
  • 2-3. 強制執行で財産を差し押さえられる
  • 3. 婚姻費用を払わなくていいケースは?
  • 4. 婚姻費用を減額できるケース
  • 4-1. 相場額以上の婚姻費用を請求されている
  • 4-2. 借金の返済などで生活が困窮している
  • 4-3. 支払う側の収入が下がった
  • 4-4. 受け取る側の収入が上がった
  • 4-5. 勝手な理由で一方的に別居された
  • 4-6. 相手が夫婦関係を破綻させた有責配偶者である
  • 5. 婚姻費用を減額するための方法
  • 5-1. 相手と減額交渉をする|合意内容は公正証書にまとめる
  • 5-2. 婚姻費用減額請求調停を申し立てる
  • 5-3. 家庭裁判所の審判によって婚姻費用を減額してもらう
  • 5-4. 弁護士に相談する
  • 6. 婚姻費用について、よくある質問
  • 7. まとめ|婚姻費用の支払いが大変な方は、弁護士のサポートを受けよう

今すぐ電話できる!
無料相談OK 事務所も!
朝日新聞社運営「離婚のカタチ」で
離婚問題に強い弁護士を探す

1. 婚姻費用の支払義務は拒否できない

「婚姻費用」とは、夫婦の婚姻生活に必要となる費用です。生活費や子どもの教育費などが婚姻費用に当たります。夫婦は、それぞれの資産や収入などの事情に応じて、婚姻費用を分担する義務を負います(民法760条)。同居している夫婦は、日常生活の中で婚姻費用を分担するのが一般的です。

これに対して別居している夫婦は、いずれか一方が相手方に金銭を支払って婚姻費用を精算します。

子どもと同居しないか、または配偶者よりも収入が多い方は、婚姻費用の支払義務を負うケースが多いです。

婚姻費用の支払義務を負う場合は、配偶者から請求を受けている限り、払わずに済ませることは認められません 。婚姻費用の適正額を確認した上で、速やかに支払いましょう。

2. 婚姻費用を払わないリスク

支払義務のある婚姻費用を払わないと、以下のリスクを負うことになってしまいます。

  • 悪意の遺棄として法定離婚事由に当たる

  • 遅延損害金や慰謝料を請求される

  • 強制執行で財産を差し押さえられる

それぞれについて説明します。

2-1. 悪意の遺棄として法定離婚事由に当たる

資産や収入があるにもかかわらず、婚姻費用を分担しないことは、夫婦間の義務を正当な理由なく放棄する「悪意の遺棄」に当たる可能性があります。悪意の遺棄は法定離婚事由の一つです(民法770条1項2号)。法定離婚事由を作った側は、配偶者が離婚訴訟を提起すると、判決によって強制的に離婚が成立してしまうリスクを負います。

2-2. 遅延損害金や慰謝料を請求される

婚姻費用の支払いが遅れると、遅れた期間に応じて年3%の遅延損害金が発生します。また、婚姻費用の支払いを怠ったこと(=悪意の遺棄)を理由に、配偶者から慰謝料を請求されるおそれもあります。

支払義務のある婚姻費用の支払いを拒否すると、結局それ以上の金額を支払うことになりかねない ので注意が必要です。

2-3. 強制執行で財産を差し押さえられる

未払いとなっている婚姻費用については、配偶者が強制執行を申し立てる可能性があります。

婚姻費用に関する強制執行の申立ては、「債務名義」を裁判所に提出して行います。債務名義に当たるのは、確定判決・調停調書・審判書・強制執行認諾文言が記載された公正証書などです。婚姻費用の精算を公正証書で取り決めた場合は、その公正証書を用いて、直ちに強制執行を申し立てられるリスクがあります。

公正証書がない場合でも、婚姻費用請求訴訟などを経て配偶者が債務名義を取得すると、強制執行を申し立てられるリスクが生じます。

強制執行では、支払義務者の預貯金や給与などが差し押さえられ、強制的に婚姻費用の支払いへ充当されます。預貯金や給与などが差し押さえられると、生活に大きな影響が出てしまうことは避けられないでしょう。

3. 婚姻費用を払わなくていいケースは?

婚姻費用を払わないことについて相手方が同意している場合(婚姻費用を請求してこない場合)には、婚姻費用を払わなくても構いません。しかし、実際には婚姻費用を請求してくるケースが多いでしょう。また、資産や収入などの事情に照らして、ご自身ではなく配偶者が婚姻費用の支払義務を負うケースもあります。

たとえばご自身が子どもと同居するケースでは、ご自身の方が配偶者よりもよほど収入が多い場合を除いて、配偶者が婚姻費用の支払義務を負うことになる可能性が高い です。また、ご自身が子どもと同居しないケースでも、配偶者の方がご自身よりも大幅に高額な収入を得ている場合には、配偶者が婚姻費用の支払義務を負うことがあります。

これらのケースにおいては、婚姻費用を支払う必要はありません。反対に、配偶者に対して婚姻費用を請求しましょう。

離婚手続きの相談ができる弁護士をお探しなら朝日新聞社運営 「離婚のカタチ」
初回無料
相談アリ
離婚が
得意な弁護士
エリアで
探せる

4. 婚姻費用を減額できるケース

婚姻費用は、必ずしも配偶者の言い値で支払わなければならないとは限りません。以下のようなケースでは、請求されている婚姻費用を減額できる可能性があります。

  • 相場額以上の婚姻費用を請求されている

  • 借金の返済などで生活が困窮している

  • 支払う側の収入が下がった

  • 受け取る側の収入が上がった

  • 勝手な理由で一方的に別居された

  • 相手が夫婦関係を破綻させた有責配偶者である

それぞれについて解説していきます。

4-1. 相場額以上の婚姻費用を請求されている

婚姻費用の適正額は、夫婦間の収入バランスや子どもの有無・人数・年齢などによって決まります。簡単に婚姻費用の適正額を把握するためには、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を利用するのが便利です。

適正額を超える婚姻費用を請求されたら、減額を求めましょう。協議がまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判を申し立てれば、適正額まで減額された婚姻費用が認定されます。

なお、2022年度の司法統計によると、婚姻費用の月額は、夫が義務者で妻が権利者の場合、8万円以下が50%近くを占めています。

4-2. 借金の返済などで生活が困窮している

住宅ローンなどの借金の返済により、収入の割りに可処分所得が少ない場合には、通常の水準よりも婚姻費用を減額してもらえることがあります。家庭裁判所の調停・審判を利用する場合は、困窮している生活状況を示す資料などを提出して、婚姻費用の減額を求めましょう。

4-3. 支払う側の収入が下がった

婚姻費用を一度取り決めた後でも、義務者(支払う側)の収入が減少した場合には、婚姻費用の減額を求めることができます。たとえば人事異動・転職によって収入が減った場合や、倒産・病気で無職になった場合などには、婚姻費用の減額が可能です。収入が減少したことが分かる資料(給与明細や確定申告書など)を示して、婚姻費用の減額を主張しましょう。

4-4. 受け取る側の収入が上がった

権利者(受け取る側)の収入が増加した場合にも、取り決めた婚姻費用の減額を求めることができます。配偶者の収入増が大幅である場合には、婚姻費用を支払う側と受け取る側が逆転するケースもあります。配偶者が収入状況の開示を拒否する場合には、家庭裁判所の調停・審判を通じて開示を請求しましょう。

4-5. 勝手な理由で一方的に別居された

夫婦には同居義務があるところ(民法752条)、配偶者が勝手な理由で一方的に別居した場合には、婚姻費用の減額が認められる可能性があります。家庭裁判所の調停・審判を利用する場合には、別居の経緯などを丁寧に説明して、相場どおりの婚姻費用を支払うべき状況ではないことを伝えましょう。

ただし、一方的な別居を理由に減額が認められる婚姻費用は、配偶者の生活費相当額に限られる傾向にあります。子どもの養育費に相当する部分については、減額が認められにくい 点に注意してください。

4-6. 相手が夫婦関係を破綻させた有責配偶者である

配偶者が不貞行為やDVなどによって夫婦関係を破綻させた場合は、婚姻費用請求の全部または一部が権利濫用として認められないことがあります(民法1条3項)。夫婦関係の破綻について配偶者に責任があることを示して、婚姻費用の減額または請求棄却を求めましょう。

5. 婚姻費用を減額するための方法

配偶者から請求されている、またはすでに取り決めた婚姻費用を減額するためには、以下の方法を検討しましょう。

  • 相手と減額交渉をする|合意内容は公正証書にまとめる

  • 婚姻費用減額請求調停を申し立てる

  • 家庭裁判所の審判によって婚姻費用を減額してもらう

  • 弁護士に相談する

5-1. 相手と減額交渉をする|合意内容は公正証書にまとめる

まずは配偶者との間で、婚姻費用の減額について交渉しましょう。減額すべき合理的な理由を丁寧に説明すれば、配偶者も減額を受け入れるかもしれません。減額についての合意がまとまったら、公証役場に申し込んで、合意内容をまとめた公正証書を作成しましょう。合意内容を明確化することで、後のトラブルを予防できます。

5-2. 婚姻費用減額請求調停を申し立てる

婚姻費用の減額に関する合意がまとまらないときは、家庭裁判所に婚姻費用減額請求調停を申し立てましょう。

調停では、民間の有識者から選任される調停委員が、夫婦それぞれと個別に面談を行って合意成立を仲介します。夫婦間で直接話し合うよりも、客観的・中立的な立場にある調停委員の仲介により、冷静な話し合いができる点が調停のメリットです。婚姻費用の減額について合意がまとまったら調停成立となり、合意内容を記した調停調書が作成されます。

5-3. 家庭裁判所の審判によって婚姻費用を減額してもらう

婚姻費用減額請求調停が不成立となった場合は、家庭裁判所が審判を行って婚姻費用の金額を決定します。審判に当たっては、調停・審判の過程で提出された主張や資料が総合的に考慮されます。各手続きを通じて、婚姻費用を減額すべきである旨を示す十分な資料を提出することが大切です。

5-4. 弁護士に相談する

婚姻費用の減額請求は、弁護士を通じて行うと成功率が高まると考えられます。

弁護士には、婚姻費用の減額に関する交渉・調停・審判などの対応を一任できます。弁護士が具体的な事情に即して、婚姻費用を減額すべき事情を示す証拠を示しながら説得的な主張を行うことで、婚姻費用を減額できる可能性が高まります

実際に筆者が受任した事件でも、支払う側の収入が減少したこと、受け取る側の収入が増加したこと、突発的な出費が重なって生活が苦しくなったことなどを理由に、月数千円から数万円程度の減額を得られた事例が複数ありました。婚姻費用の減額を求めたい方は、一度弁護士にご相談ください。

離婚手続きの相談ができる弁護士をお探しなら朝日新聞社運営 「離婚のカタチ」
初回無料
相談アリ
離婚が
得意な弁護士
エリアで
探せる

6. 婚姻費用について、よくある質問

婚姻費用に関して、よくある質問と回答をまとめました。

Q. 婚姻費用はいつまで支払う必要があるの?
婚姻費用は請求を受けた時点から、配偶者との別居を解消して再度同居を始めるか、または配偶者と離婚する時点まで支払う必要があります。
Q. 婚姻費用の差し押さえを回避する方法は?
支払義務のある婚姻費用については、義務内容のとおりに支払うほかありません。特に公正証書がある場合は、すぐにでも強制執行を申し立てられて財産を差し押さえられるリスクがあるので、できる限りお金を工面して支払いましょう。 将来にわたる婚姻費用については、過去に合意で取り決めた時点から事情変更が生じていれば、減額を請求できる可能性がありますので、弁護士にご相談ください。
Q. 婚姻費用を払わないと罰則がある?
罰則(刑罰や過料)を受けることはありませんが、不払いを続けていると、最終的に強制執行によって財産を差し押さえられ、婚姻費用の支払いへ充当されます。 財産の差押えを受けると生活に大きな影響が出てしまうので、支払義務のある婚姻費用は期限どおりに支払いましょう。

7. まとめ|婚姻費用の支払いが大変な方は、弁護士のサポートを受けよう

婚姻費用は、必ずしも配偶者の請求どおりに支払うべきとは限りません。相場に比べて過大な請求を受けている場合は、減額を求めましょう。また、すでに取り決めた婚姻費用についても、事情変更があれば減額を請求できることがあります。配偶者との協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停・審判を利用して減額を求めることも検討すべきです。

弁護士のサポートを受けることで、婚姻費用を減額できる可能性が高まります。婚姻費用の請求を受けた方や、すでに取り決めた婚姻費用の支払いが大変な方は、弁護士にご相談ください。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

今すぐ電話できる!
無料相談OK 事務所も!
朝日新聞社運営「離婚のカタチ」で
離婚問題に強い弁護士を探す

この記事に関連するタグ

離婚とお金 別居中の婚姻費用

弁護士を探す

離婚問題に強い弁護士を探す
※「離婚のカタチ弁護士検索サービス」への掲載を希望される場合は > こちら をご確認下さい
弁護士を探す 弁護士を探す
朝日新聞社が運営する「離婚のカタチ」は、離婚の悩みに寄り添うポータルサイトです。
「踏み出す一歩 未来の選択」をコンセプトに、 離婚で悩む人を一人でも減らしたい。
そんな思いで弁護士やカウンセラーら離婚問題に取り組む専門家が集まりました。
離婚の手続きについての正確な情報と、離婚の悩みの解決に取り組む弁護士を検索できるサービスであなたをサポートします。
新しい未来に向けて一歩踏み出してみませんか。