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1. 養育費をもらわないという選択肢はあり?
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2. 養育費をもらわないメリットはある?
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2-1. 配偶者と極力関わりたくない人にはメリットがある
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2-2. 養育費をもらわなくても面会交流はしなければならない
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2-3. 経済的に厳しくなるのはデメリット
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3. 養育費をもらわない人はどのくらいいる?
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3-1. 養育費をもらっていない人の割合
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3-2. 養育費をもらわない理由
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3-3. 実際に養育費をもらわずに離婚した事例
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4. 離婚後に養育費を請求できるケースは?
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4-1. 取り決めをしていない場合
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4-2. 養育費をもらわないと合意した場合
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4-3. 合意はあるが支払いがない場合
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4-4. 離婚時と状況が変わった場合
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5. 離婚後に養育費を請求する方法
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6. 養育費は離婚時に取り決めたほうがいい
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7. 養育費の未払いを防止する方法
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8. 養育費をもらうべきか迷ったら弁護士に相談
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9. 養育費をもらわない方がいいのか迷う場合によくある質問
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10. まとめ 養育費を受け取らない選択は慎重に検討すべき
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1. 養育費をもらわないという選択肢はあり?
一般的に、子どもを育てるにはお金がかかるため、育てている側は養育費をもらった方がいいのは間違いありません。それでも、相手と関わりたくない、一刻も早く離婚したいといった理由で、養育費をもらわない選択をする人もいます。
お互いが合意していれば、養育費をゼロにしても問題はありません。ただし、今後の生活に大きく影響するものなので、慎重に検討したうえで判断してください。
2. 養育費をもらわないメリットはある?
養育費をもらわないと決める前に、養育費をもらうメリット・デメリットについて考えてみましょう。
2-1. 配偶者と極力関わりたくない人にはメリットがある
養育費をもらわない最大のメリットは、相手と関わる機会が減ることです。養育費を受け取らなければ、支払いの場面や、支払いがない場合の督促で相手と関わる必要がなくなり、養育費に関するトラブルも避けられます。そのため、離婚問題が早く解決することもあります。
ただし、養育費をもらわないからといって、元配偶者と完全に関わらなくて済むわけではありません。DVなどの一部の例外を除いて、「養育費をもらわないこと=面会交流の権利を失うこと」にはならないからです。養育費の支払いがなくても、子どもと元配偶者の面会交流は引き続き認められます。
2-2. 養育費をもらわなくても面会交流はしなければならない
先ほども説明した通り「養育費をもらわない=面会交流をしなくてよい」とはならない点に注意が必要です。子どもの健全な成長のためには、非監護親(子どもと離れて暮らす親)と継続的に交流がある方が望ましいとされるため、相手が調停などで面会交流を求めた場合、養育費の支払いがなくても原則として認められます。
一方で、DVなどの理由で子どもの成長に悪影響がある場合、裁判所は面会交流を認めないこともあります。
法律上、面会交流を拒否できない場合は、養育費を請求しつつ、親族の協力や第三者機関を利用して元配偶者との直接的なやり取りを避ける方法をおすすめします。
2-3. 経済的に厳しくなるのはデメリット
養育費をもらわないデメリットは、経済的に厳しくなることです。現在は収入があっても、事故や病気で収入が減る可能性や、予想以上に子どもの教育費がかかることも考えられます。養育費を放棄するかどうかは、一時的な感情だけでなく、将来のことも考えて慎重に判断しましょう。
3. 養育費をもらわない人はどのくらいいる?
実際に養育費をもらわないと決めた人はどれくらいいるのでしょうか?もらわない理由とともに説明します。
3-1. 養育費をもらっていない人の割合
厚労省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費の取り決めをしていない母子世帯が51.2%、父子世帯が69.0%です(いずれも推計値)。
メディアでは、養育費をもらえない母子家庭が取り上げられることが多いですが、実は、養育費をもらえない父子家庭の方が割合的には多いのです。
3-2. 養育費をもらわない理由
上記と同じ厚労省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費の取り決めをしていない最も大きな理由として、「相手と関わりたくない」というものが多く、母子世帯で34.5%、父子世帯で19.8%を占めています。
また、同調査によれば、一旦は養育費の交渉をしたものの、「取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった」という回答も、母子世帯で5.6%、父子世帯で1.3%あります。
このことから、本当は養育費を支払ってほしいけれど、諦めているという人もいることがわかります。
3-3. 実際に養育費をもらわずに離婚した事例
私が実際に相談を受けた人の中にも、とにかく相手と関わりたくないという理由で、「養育費はいらない」とおっしゃる人もいます。
私としては、子どもの将来を考えて、少しでも養育費をもらうことをおすすめしています。しかし、DVがひどくて相手の名前を聞くだけでも精神的に不安定になるような人や、平均よりはるかに収入が多いような人は、本人の希望を優先し、養育費なしでの離婚を相手方に提案し、離婚の合意をすることもあります。
なお、少数ですが、権利者側が養育費をいらないと言っても、義務者側から「養育費は親の責任として払いたい」と言う人もおり、養育費を払いたい義務者と、養育費は欲しくない権利者でもめることもあります。
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4. 離婚後に養育費を請求できるケースは?
離婚後に養育費を請求しようとする場合にはいくつかのパターンがあります。
養育費の取り決めをしていない場合
離婚時に養育費をもらわないと合意した場合
合意をしたのに支払ってもらえない場合
離婚時と事情が変わったので増額・減額してほしい場合
それぞれ順番に説明します。
4-1. 取り決めをしていない場合
養育費の取り決めをせずに離婚した場合でも、今後の養育費は請求できます。ただし、過去の分は請求できません。
2024年5月の民法改正で、法定養育費が新たに定められました(民法766条の3)。これは、取り決めがない場合でも最低限の養育費を請求できる制度で、2026年5月までに施行される予定です。
4-2. 養育費をもらわないと合意した場合
養育費をもらわないという合意は、原則有効です。ただし、次の場合には養育費を請求できることがあります。
【詐欺や脅迫により合意をした場合】
だまされたり脅迫されたりして合意した場合、その合意を取り消して養育費を請求できます(民法96条1項)。脅迫とは具体的に暴力を伴うようなケースを指し、「合意しなければ離婚しないと言われた」という程度では足りません。
【合意時から事情の変更がある場合】
当初予想しなかった事情が生じた場合、事情変更を理由に養育費を請求できます。具体的には、無職だった非監護親が就職したり、監護親(子どもと一緒に暮らし面倒を見る親)が失職したりしたような場合です。
【子どもの扶養料として請求する場合】
養育費とは異なりますが、子どもは親に対して扶養料を請求することができます。養育費は、監護親が子どもを育てるための費用を請求するものであるのに対し、扶養料は子ども自身が自分の生活費を親に対して求めるものです。養育費と扶養料は法律上別物とされており、仮に養育費を請求しないという合意があった場合でも、扶養料を請求することは可能です。なお、監護親が子どもの代理として扶養料を請求する際、養育費を放棄した趣旨を考慮して扶養料が減額される場合もあります。
4-3. 合意はあるが支払いがない場合
養育費に関する合意があれば、未払い分について過去に遡って請求することができます。ただし、養育費にも時効があり、相手が時効を主張すれば、時効成立後の養育費は請求できなくなります。養育費の時効は5年で、支払日ごとに順次消滅します。例えば、2025年1月分は2030年1月に時効となります。しかし、裁判所の手続きで取り決めをした場合は、時効期間が10年になります。
4-4. 離婚時と状況が変わった場合
すでに養育費の取り決めがある場合でも、合意をしたときから事情が変わった場合には、養育費の増額または減額を請求することが可能です。養育費の増額または減額が認められるケースとして以下のような場合があります。
【増額が認められる可能性が高いケース】
・非監護親の収入が大幅に上がった
・監護親の収入が大幅に下がった
・子どもに通常以上の医療費がかかるようになった
・子どもの進学により高額の学費がかかるようになった
【減額が認められる可能性が高いケース】
・非監護親の収入が大幅に下がった
・監護親の収入が大幅に上がった
・監護親が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組した
・非監護親が再婚し、再婚相手との間に子どもができるなど扶養家族が増えた
このようなケースでは、養育費の調整について元夫婦で話し合いを行います。話し合いでまとまらない場合には、調停や裁判に移行することもあります。
5. 離婚後に養育費を請求する方法
離婚時に養育費の取り決めがなかった場合、後から請求する方法としては、話し合い、養育費請求調停・審判があります。
【話し合いで養育費を請求する】
離婚後も相手と連絡が取れ、冷静に話し合える相手であれば、まずは話し合いで解決を試みましょう。柔軟な取り決めが可能で、納得の上で決めれば支払いが途切れにくくなります。合意ができた場合は、後々のトラブルを防ぐために合意書を作成することをおすすめします。
【養育費請求調停・審判をする】
話し合いが難しい場合、家庭裁判所に調停を申し立て、裁判所で話し合いを行います。調停で合意できなければ、審判に進み、裁判官が決定します。
6. 養育費は離婚時に取り決めたほうがいい
さまざまな理由で、離婚時に養育費の取り決めをしない人もいますが、養育費の請求をわずかでも考えているのであれば、離婚時に決めておくことをおすすめします。
離婚後に「やっぱり請求したい」となると、まずは相手の住所や経済状況を調べなければなりません。離婚後に養育費を請求するのは手間が増えるため、離婚時にしっかりと取り決めておくべきです。
7. 養育費の未払いを防止する方法
養育費の未払いを防ぐために最も効果的なのは、支払わなければ給与や財産を差し押さえられるようにしておくことです。そのためには、話し合いで決めた場合、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成する必要があります。調停や裁判で決まった場合は、裁判所の調停調書や判決書に基づいて強制執行が可能です。これにより、将来の養育費も差し押さえができます。
8. 養育費をもらうべきか迷ったら弁護士に相談
養育費を受け取るべきか、放棄してもよいか迷った場合は、まず弁護士に相談しましょう。請求できないと思っていたものが実際には可能だったり、金額が想像より大きくなったりすることもあります。また、金額で争いがある場合、過去の裁判例を基に適正な金額を算出してもらうことができます。弁護士に依頼すれば、相手と直接やり取りをする必要もないため、精神的な負担や手間も少ないです。
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9. 養育費をもらわない方がいいのか迷う場合によくある質問
養育費の取り決めがあれば、未払い分は時効消滅しない限り遡って請求可能です。取り決めがない場合、支払い義務は請求時から発生し、過去の分は請求できません。
しかし、2024年の民法改正により、養育費の合意がない場合でも最低限度の養育費を請求できるようになり、改正後は過去分も請求可能です。
養育費と面会交流は別問題です。養育費を放棄しても、面会交流が認められる場合があります。ただし、DVなどで面会交流が認められない場合は、養育費を放棄すれば、相続以外の場面で、元配偶者との関わりを断つことが可能です。
相手が無収入である場合など、養育費を諦めざるを得ない場合もあります。しかし、単に相手が支払わないと言っているだけの場合は、調停や審判を通じて養育費を請求し、それでも支払わない場合は、給与等を差し押さえて取り立てることは可能です。
また、養育費を支払わないという合意をしてしまっている場合でも、子どもの扶養料として請求できる場合もあるので、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてください。
養育費をもらっている場合は、その養育費の80%が所得とみなされます。そのため、養育費の80%の金額と自分自身の収入を合計すると所得制限に引っかかってしまい、児童扶養手当が減額されることがあります。なお、児童扶養手当をもらっていることが、養育費の金額に影響することはありません。
10. まとめ 養育費を受け取らない選択は慎重に検討すべき
「早く離婚したい」「相手と関わりたくない」などの理由で、養育費を受け取らない選択をする人もいます。しかし、養育費は子どもを育てるために必要なお金ですので、将来のことも考えて慎重に判断すべきです。
基本的には離婚をする前に、養育費の取り決めをしておくことをおすすめします。養育費の話し合いをするのが難しい場合は、弁護士に依頼することで、相手と直接やり取りをせずに済みます。養育費の問題で悩んでいる人は、一度弁護士に相談してアドバイスをもらうようにしてください。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)